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904.転売屋は入浴剤を仕入れる
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昨夜はこの季節にはめずらしくよく冷え込んだ。
花冷えというんだろうか、冬までは行かないが春の初めのような急激な冷え込みに思わず毛布を抱いて眠ったぐらいだ。
あまりにも寒暖差があると風邪を引きかねないだけに油断は禁物。
今日の夜はしっかり風呂であったまってから眠るとしよう。
「日中はそうでもないんだがなぁ。」
ポカポカ陽気の中いつものように露店を見て回る。
とはいえ、昨日の冷え込みで出店者が減ってしまったのかあまり店が並んでいない。
めぼしいものはなさそうなのでおっちゃんおばちゃんに挨拶して店の様子でも見に行くかな。
「ういっす。」
「あ、おはようございます!」
「昨日はよく冷えたなぁ、風邪引いてないか?」
「寒かったですね。でも、大丈夫です!」
「そりゃ何よりだ。」
店に入るとメルディが元気いっぱいの挨拶をしてくれた。
元気なのはいいことだが、残念ながら店の売上げは元気ではないみたいだな。
カウンターの上に置かれた帳簿にはまだ何も記入されていない。
この寒さで冒険者の出足も鈍ってしまったんだろうか。
外はあったかくなっているので早く客が来て欲しいものだが・・・。
「あ、いらっしゃいませ!」
そんなことを考えているとカランとベルが鳴り、店の戸が開く。
入ってきたのはメルディぐらいのまだ若い女性。
小柄ながら自分と同じぐらいの巨大なリュックサックを背負っていた。
いや、背負わされていた?
まぁどっちでもいいか。
場所を開け店内を物色するフリをして様子を見る。
その女性は俺を一瞥した後まっすぐにメルディのいるカウンターへと向かった。
「買取ですね、お品物をどうぞ。」
「あの、何でも買い取ってくれるんですか?」
「お金になるものであれば基本は何でも買い取りますよ。」
「じゃあお金にならないものは?」
「その場合はごめんなさい。」
俺達の商売は慈善事業じゃない。
なので金にならないものは買い取らないことになっている。
それは店を任せているメルディにも手伝ってくれているキキにも徹底させているので、今の所大きな損失などは発生していない。
それで文句を言うやつはもちろんいるが、毅然とした態度で対応すればほとんどは何とかなる。
ただし、それでも強引な手段をとる奴が三ヶ月に一人ぐらいいるんだよなぁ。
そういう奴は客ですらないので、実力行使で排除する。
キキがいれば魔法で威嚇、いなければ裏庭に移動して大声で助けを呼ぶ。
すると、あっという間に声を聞いた冒険者が駆けつけるという感じだ。
そんなことをするのは大抵流れの冒険者で、この街にいる奴らはそもそもそんなことをしない。
ありがたいことに冒険者にはそれなりに喜ばれているので、俺達に何かあるとすぐに駆けつけてくれるんだよなぁ。
もっとも、メルディもかなりの力持ちなので物理的に排除しようと思えば出来るんだろうけど。
前まではエリザに訓練をつけてもらっていたみたいし、出産後は倉庫整理の傍ら隣のジムで体を鍛えているんだとか。
っと、今はそんな話をしているんじゃなかった。
「みてもらってもいいですか?」
「どうぞ、カウンターの上に乗せてください。」
「いっぱいあるんですけど、とりあえず一個だけ。」
巨大なリュックサックを床に下ろし、中から何かを取り出す。
カウンターのトレイの上に乗せられたのは、小判のような大きさの白い塊。
なんだろう巨大なラムネみたいな感じで触ると崩れそうな感じがする。
「えーっと、これは。」
「お風呂に入れる錠剤で、お湯に入れるとシュワシュワと泡を出しながら薬効が溶け出していくんです。疲れを取ったり体を暖めたりするのに使います。」
「お風呂ですか、これは自分で作られたんですか?」
「はい。でも、中々売れなくて。それで、ここなら何でも買い取ってくれるって聞いて来たんですけど。」
「うーん。取引履歴はないし、時期的にお風呂は少なくなるし・・・。」
メルディのすごい所は取引所で取引された様々な品の取引履歴を暗記していること。
そのために毎日取引所に通っては、最新の取引価格を更新していく努力家でもある。
最近では鑑定スキルと使えるようになったので今まで以上にしっかりと値段を出すことが出来るようになってきた。
ただし弱点もある。
得意なのはあくまでも取引所での取引履歴のあるものだけで、露天で売買されているような品はまったく分からないということだ。
その証拠にチラチラとこちらに目配せして助けを求めてくる。
やれやれ、俺の出番か。
「失礼、確認させてもらっても構わないか?」
「え、あの、貴方は?」
「ここの主人だ。どうやらうちの店員では判断できないらしい。」
「すみません。」
「あの、よろしくお願いします。」
どうやら信じてもらえたようで、メルディが頭を下げた後慌てた様子で頭を下げる。
その拍子にリュックサックが前にずれ落ちて来たので慌ててそれを支えた。
「あ!ごめんなさい!」
「間一髪だったな。その中身全部がこれなのか?」
「はい、そうなんです。」
「かなりの量だな。」
かなりの重量が俺の腕にのしかかって来た。
これを背負ってきたにもかかわらず顔色一つ変えないなんて、メルディ同様見た目に寄らず力持ちなのかもしれない。
さて、気を取り直してどんなもんか確認させてもらうとするかね。
『発泡剤。スパーキジェリーの粉末が入っており、水に入れるとシュワシュワと発泡する。特に40度ほどのお湯だとより強く発泡して同封されている成分が良くしみ出す。代謝向上の効果がある。最近の平均取引価格は銅貨20枚、最安値銅貨11枚、最高値銅貨25枚。最終取引日は3日前と記録されています。』
ふむ、鑑定結果は発泡剤と出ているがこれは完全に入浴剤だな。
効果は代謝の向上、つまり血行が良くなって汗をかくという感じだろうか。
この感じだと他にも色々と効果があるみたいだが、平均取引価格をみるかぎりそこそこの値段で販売されているようだ。
ただ風呂に入れるだけでこの金額、俺は全然アリだが一般の冒険者がそこまで金を払って使うとは考えにくい。
個人で使うならいいんだけども・・・うーむ難しいな。
「ど、どうでしょうか。」
「面白そうだとは思うが他にも種類があるなら見せてくれ、あと総数が分かると助かる。」
「ちょっと待ってくださいね!」
一先ず話が進んだことがうれしかったのか、パッと顔を輝かせて巨大なリュックサックをドシンと降ろす。
いやマジで床が抜けるんじゃないかっていう音だった。
その巨大リュックから取り出されたのは合計7種類。
体力回復、気力向上、裂傷治癒、胃痛緩和、保湿、美肌、精神回復
温泉の効能で聞いた事のあるような物ばかりだが、気になるのは保湿と美肌。
これを入れるだけでその効果があるってすごくないか?
「ふむ、面白いな。どうやって作ってるんだ?」
「ごめんなさい、作り方は教えられなくて。」
「ま、それもそうか。全部でいくつある?」
「えっと、各20ずつはあります。」
「ってことは全部で160。一個、銅貨10枚で買い取るとして銀貨16枚だな。」
「も、もう少し何とかなりませんか?」
「効果もわからないだからなぁ、それでこれ以上は正直無理だ。」
一度使ってみてよさげなら自分用に買ってもいいが、効果もわからない物に不要な金を出すつもりはない。
これも商売なんでね。
「そこをなんとか!」
「逆に聞くが、なんでそんなに金が要るんだ?もっと高値で売りたきゃ自分で売った方がいいだろ。」
「薬代が欲しくて。」
「薬?」
「銀貨20枚あれば母の薬を買って帰れるんです。その為に家にある素材を使って一杯作ったんですけど、全然売れなくて。」
あー、うん。
無理。
そう言うの無理だから。
「わかった20枚出そう。」
「本当ですか!」
「ただし条件がある。これと同数注文するとなると何日かかる?」
「えっと、材料さえあれば三日いただければ。」
「体力気力保湿美肌、それと代謝か。各20個合計100個を三日以内に持ってくる、それが条件だ。できるか?」
「やります!」
ならば結構。
ミラの時もそうだが、母親の為とかそういう涙頂戴系マジでダメなんだって。
もちろんわざとらしいのは流石にわかるが、この感じは本当なんだろう。
それに追加注文した五つは効能的にも十分売れる要素がある。
特に美肌と保湿、それと代謝。
美容関係の素材は貴族に高く売れるからなぁ。
もちろん、効果があったらの話だがそれはうちの女達で確認すればいいだろう。
一先ず代金を支払い、空になったリュックサックを背負って女性は帰って行った。
代わりにカウンターの上には白いタブレットが山のように積まれている。
「あの、大丈夫なんですか?」
「まぁ銀貨20枚程度だし、効果がなかったとしても俺が責任を持って使うさ。」
「銀貨20枚は程度じゃないと思いますけど、今更ですよね。」
「だが効果があればこれが最低でも三倍、いや五倍に化けるんだぞ。」
「え、そんなにですか!?」
「美容関係は貴族相手で金になるし、それに夏になると汗を流すのに結構風呂屋に人が来るからな。体力や気力回復を謳えば夏バテ防止で使えるかもしれん。もちろん俺も使う。」
一つ手に取り顔に近づけると、柑橘系の爽やかな香りが鼻をくすぐる。
どれも微かにだが匂いをつけているようだ。
嫌になるようなきつい奴じゃなくほのかに香る程度。
これなら効果がなくても日々の風呂で楽しめるだろう。
それこそ、昨日のように寒い日にはちょうどいいかもしれない。
「うーん、まだまだ修行が足りません。」
「急ぐ必要はないさ。それに、直近の相場把握に関しては俺よりも優れてるんだ自信を持て。」
「自信つくかなぁ。」
「とりあえずこれで風呂に入ってみてから考えればいいじゃないか。美肌と保湿、どっちがいい?」
「美肌で!」
「だよな。ま、こういうのは経験と度胸だ。数をこなせばメルディでもしっかり買い付けできるから安心しろ。とりあえず俺も五つずつ貰っていく。使うのはまぁ限られそうだが、三日後までに効果を確認しておかないとな。」
コレが売れるにしろ売れないにしろ俺の儲けを考えれば微々たるものだが、それで誰かの家族が助かり加えて風呂に新たな楽しみが増えるのであれば安い買い物だったといえるだろう。
さぁて、帰ってからの女達の反応が楽しみだ。
花冷えというんだろうか、冬までは行かないが春の初めのような急激な冷え込みに思わず毛布を抱いて眠ったぐらいだ。
あまりにも寒暖差があると風邪を引きかねないだけに油断は禁物。
今日の夜はしっかり風呂であったまってから眠るとしよう。
「日中はそうでもないんだがなぁ。」
ポカポカ陽気の中いつものように露店を見て回る。
とはいえ、昨日の冷え込みで出店者が減ってしまったのかあまり店が並んでいない。
めぼしいものはなさそうなのでおっちゃんおばちゃんに挨拶して店の様子でも見に行くかな。
「ういっす。」
「あ、おはようございます!」
「昨日はよく冷えたなぁ、風邪引いてないか?」
「寒かったですね。でも、大丈夫です!」
「そりゃ何よりだ。」
店に入るとメルディが元気いっぱいの挨拶をしてくれた。
元気なのはいいことだが、残念ながら店の売上げは元気ではないみたいだな。
カウンターの上に置かれた帳簿にはまだ何も記入されていない。
この寒さで冒険者の出足も鈍ってしまったんだろうか。
外はあったかくなっているので早く客が来て欲しいものだが・・・。
「あ、いらっしゃいませ!」
そんなことを考えているとカランとベルが鳴り、店の戸が開く。
入ってきたのはメルディぐらいのまだ若い女性。
小柄ながら自分と同じぐらいの巨大なリュックサックを背負っていた。
いや、背負わされていた?
まぁどっちでもいいか。
場所を開け店内を物色するフリをして様子を見る。
その女性は俺を一瞥した後まっすぐにメルディのいるカウンターへと向かった。
「買取ですね、お品物をどうぞ。」
「あの、何でも買い取ってくれるんですか?」
「お金になるものであれば基本は何でも買い取りますよ。」
「じゃあお金にならないものは?」
「その場合はごめんなさい。」
俺達の商売は慈善事業じゃない。
なので金にならないものは買い取らないことになっている。
それは店を任せているメルディにも手伝ってくれているキキにも徹底させているので、今の所大きな損失などは発生していない。
それで文句を言うやつはもちろんいるが、毅然とした態度で対応すればほとんどは何とかなる。
ただし、それでも強引な手段をとる奴が三ヶ月に一人ぐらいいるんだよなぁ。
そういう奴は客ですらないので、実力行使で排除する。
キキがいれば魔法で威嚇、いなければ裏庭に移動して大声で助けを呼ぶ。
すると、あっという間に声を聞いた冒険者が駆けつけるという感じだ。
そんなことをするのは大抵流れの冒険者で、この街にいる奴らはそもそもそんなことをしない。
ありがたいことに冒険者にはそれなりに喜ばれているので、俺達に何かあるとすぐに駆けつけてくれるんだよなぁ。
もっとも、メルディもかなりの力持ちなので物理的に排除しようと思えば出来るんだろうけど。
前まではエリザに訓練をつけてもらっていたみたいし、出産後は倉庫整理の傍ら隣のジムで体を鍛えているんだとか。
っと、今はそんな話をしているんじゃなかった。
「みてもらってもいいですか?」
「どうぞ、カウンターの上に乗せてください。」
「いっぱいあるんですけど、とりあえず一個だけ。」
巨大なリュックサックを床に下ろし、中から何かを取り出す。
カウンターのトレイの上に乗せられたのは、小判のような大きさの白い塊。
なんだろう巨大なラムネみたいな感じで触ると崩れそうな感じがする。
「えーっと、これは。」
「お風呂に入れる錠剤で、お湯に入れるとシュワシュワと泡を出しながら薬効が溶け出していくんです。疲れを取ったり体を暖めたりするのに使います。」
「お風呂ですか、これは自分で作られたんですか?」
「はい。でも、中々売れなくて。それで、ここなら何でも買い取ってくれるって聞いて来たんですけど。」
「うーん。取引履歴はないし、時期的にお風呂は少なくなるし・・・。」
メルディのすごい所は取引所で取引された様々な品の取引履歴を暗記していること。
そのために毎日取引所に通っては、最新の取引価格を更新していく努力家でもある。
最近では鑑定スキルと使えるようになったので今まで以上にしっかりと値段を出すことが出来るようになってきた。
ただし弱点もある。
得意なのはあくまでも取引所での取引履歴のあるものだけで、露天で売買されているような品はまったく分からないということだ。
その証拠にチラチラとこちらに目配せして助けを求めてくる。
やれやれ、俺の出番か。
「失礼、確認させてもらっても構わないか?」
「え、あの、貴方は?」
「ここの主人だ。どうやらうちの店員では判断できないらしい。」
「すみません。」
「あの、よろしくお願いします。」
どうやら信じてもらえたようで、メルディが頭を下げた後慌てた様子で頭を下げる。
その拍子にリュックサックが前にずれ落ちて来たので慌ててそれを支えた。
「あ!ごめんなさい!」
「間一髪だったな。その中身全部がこれなのか?」
「はい、そうなんです。」
「かなりの量だな。」
かなりの重量が俺の腕にのしかかって来た。
これを背負ってきたにもかかわらず顔色一つ変えないなんて、メルディ同様見た目に寄らず力持ちなのかもしれない。
さて、気を取り直してどんなもんか確認させてもらうとするかね。
『発泡剤。スパーキジェリーの粉末が入っており、水に入れるとシュワシュワと発泡する。特に40度ほどのお湯だとより強く発泡して同封されている成分が良くしみ出す。代謝向上の効果がある。最近の平均取引価格は銅貨20枚、最安値銅貨11枚、最高値銅貨25枚。最終取引日は3日前と記録されています。』
ふむ、鑑定結果は発泡剤と出ているがこれは完全に入浴剤だな。
効果は代謝の向上、つまり血行が良くなって汗をかくという感じだろうか。
この感じだと他にも色々と効果があるみたいだが、平均取引価格をみるかぎりそこそこの値段で販売されているようだ。
ただ風呂に入れるだけでこの金額、俺は全然アリだが一般の冒険者がそこまで金を払って使うとは考えにくい。
個人で使うならいいんだけども・・・うーむ難しいな。
「ど、どうでしょうか。」
「面白そうだとは思うが他にも種類があるなら見せてくれ、あと総数が分かると助かる。」
「ちょっと待ってくださいね!」
一先ず話が進んだことがうれしかったのか、パッと顔を輝かせて巨大なリュックサックをドシンと降ろす。
いやマジで床が抜けるんじゃないかっていう音だった。
その巨大リュックから取り出されたのは合計7種類。
体力回復、気力向上、裂傷治癒、胃痛緩和、保湿、美肌、精神回復
温泉の効能で聞いた事のあるような物ばかりだが、気になるのは保湿と美肌。
これを入れるだけでその効果があるってすごくないか?
「ふむ、面白いな。どうやって作ってるんだ?」
「ごめんなさい、作り方は教えられなくて。」
「ま、それもそうか。全部でいくつある?」
「えっと、各20ずつはあります。」
「ってことは全部で160。一個、銅貨10枚で買い取るとして銀貨16枚だな。」
「も、もう少し何とかなりませんか?」
「効果もわからないだからなぁ、それでこれ以上は正直無理だ。」
一度使ってみてよさげなら自分用に買ってもいいが、効果もわからない物に不要な金を出すつもりはない。
これも商売なんでね。
「そこをなんとか!」
「逆に聞くが、なんでそんなに金が要るんだ?もっと高値で売りたきゃ自分で売った方がいいだろ。」
「薬代が欲しくて。」
「薬?」
「銀貨20枚あれば母の薬を買って帰れるんです。その為に家にある素材を使って一杯作ったんですけど、全然売れなくて。」
あー、うん。
無理。
そう言うの無理だから。
「わかった20枚出そう。」
「本当ですか!」
「ただし条件がある。これと同数注文するとなると何日かかる?」
「えっと、材料さえあれば三日いただければ。」
「体力気力保湿美肌、それと代謝か。各20個合計100個を三日以内に持ってくる、それが条件だ。できるか?」
「やります!」
ならば結構。
ミラの時もそうだが、母親の為とかそういう涙頂戴系マジでダメなんだって。
もちろんわざとらしいのは流石にわかるが、この感じは本当なんだろう。
それに追加注文した五つは効能的にも十分売れる要素がある。
特に美肌と保湿、それと代謝。
美容関係の素材は貴族に高く売れるからなぁ。
もちろん、効果があったらの話だがそれはうちの女達で確認すればいいだろう。
一先ず代金を支払い、空になったリュックサックを背負って女性は帰って行った。
代わりにカウンターの上には白いタブレットが山のように積まれている。
「あの、大丈夫なんですか?」
「まぁ銀貨20枚程度だし、効果がなかったとしても俺が責任を持って使うさ。」
「銀貨20枚は程度じゃないと思いますけど、今更ですよね。」
「だが効果があればこれが最低でも三倍、いや五倍に化けるんだぞ。」
「え、そんなにですか!?」
「美容関係は貴族相手で金になるし、それに夏になると汗を流すのに結構風呂屋に人が来るからな。体力や気力回復を謳えば夏バテ防止で使えるかもしれん。もちろん俺も使う。」
一つ手に取り顔に近づけると、柑橘系の爽やかな香りが鼻をくすぐる。
どれも微かにだが匂いをつけているようだ。
嫌になるようなきつい奴じゃなくほのかに香る程度。
これなら効果がなくても日々の風呂で楽しめるだろう。
それこそ、昨日のように寒い日にはちょうどいいかもしれない。
「うーん、まだまだ修行が足りません。」
「急ぐ必要はないさ。それに、直近の相場把握に関しては俺よりも優れてるんだ自信を持て。」
「自信つくかなぁ。」
「とりあえずこれで風呂に入ってみてから考えればいいじゃないか。美肌と保湿、どっちがいい?」
「美肌で!」
「だよな。ま、こういうのは経験と度胸だ。数をこなせばメルディでもしっかり買い付けできるから安心しろ。とりあえず俺も五つずつ貰っていく。使うのはまぁ限られそうだが、三日後までに効果を確認しておかないとな。」
コレが売れるにしろ売れないにしろ俺の儲けを考えれば微々たるものだが、それで誰かの家族が助かり加えて風呂に新たな楽しみが増えるのであれば安い買い物だったといえるだろう。
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