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804.転売屋は植物を見つける
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「ワフ?」
「どうした、レイ。」
一仕事終えた俺がレイを連れて街の周りを散歩していた時だった。
畑の北側、ちょうどカニバフラワー達が並んでいる所で足を止める。
俺達に気づいたのか頭の上で大きくなったカニバフラワーがカカカカと挨拶をしてくれた。
今日も元気そうだ。
だが、レイの視線は上ではなく下。
今日は地面が血に染まっていないので魔物が食われた感じはなさそうだ。
ん?
レイの視線の先に目をやると、地面から何かが生えている。
よく見ると出ているのは小さな双葉。
まるで絵に描いたような見事な双葉が五つ、顔を出している。
雑草、ではなさそうだ。
っていうかここは魔物の血がしみこみ過ぎて地面の魔素が濃く普通の植物は育たない。
にもかかわらずこんな所に芽をだすとは。
クンクンと匂いを嗅ぐレイ、そして俺の顔を見るなり一声吠えた。
鑑定しろという事だろうか。
言われるがまま手を伸ばして双葉に触れる。
『マジックポット。魔素を糧に成長する吸魔植物の一種で、吸収した魔素を体内で凝縮して【魔素の雫】を精製する。また葉にも濃い魔素が蓄積されている為、薬や錬金術の材料など様々な用途に用いられる。魔素の濃い場所でしか生育できず主にダンジョンの奥や魔物の巣でのみ発見される。最近の平均取引価格は銀貨30枚。最安値銀貨25枚、最高値銀貨40枚。最終取引日は120日前と記録されています。』
この価格はマジックポットと呼ばれるこいつの価格で、魔素の雫ってやつにはまた別の値段がつけられるのだろう。
しかし普通はダンジョンの中でしか生きられないはずの植物がこんな場所に目を出すとか、カニバフラワーの下だからという理由だけで片づけていいんだろうか。
元々畑近辺の土壌はかなり魔素が濃いってのは前々から言われていたが、この辺りはそれよりもさらに濃い、それこそダンジョンの奥底ぐらいに濃くなっているそう考えるべきなんだろう。
「こんなのが生えて来るってことは、お前たちが頑張っているって証拠なんだろうなぁ。」
「「「カカカカ!」」」」
「マジックポットっていうらしいぞ、仲良くしてやれ。」
「ワフ!」
「それと、コッコにも勝手に食うなよって言っとけよ。」
普通の雑草だけでなく魔素の濃い植物を好むだけにうってつけのエサと言える。
とはいえ珍しいだけに食われると困るなぁ。
柵を作るわけにもいかないし、一応アグリには報告だけしておくか。
ひとまずその場を離れてアグリに事情を話すと、珍しく驚いた顔をしていた。
あのアグリがここまで驚くなんて珍しい。
「そんなに驚くことか?」
「カニバフラワーが生えているのですから不思議ではないかもしれませんが、それでもダンジョンの奥にしか生えない植物です。やはりこの土地は特別なんでしょう。」
「そう考えるべきだよなぁ。」
「休耕することなく野菜を作ることが出来る時点で異常ですけどね。」
「それを言うな、考えたら負けだ。」
「そのおかげで幸せに暮らせていますから、有難い事です。」
異常であることは認識している、でもそれで生活が豊かになっているのであれば何も言うまい。
自給率の低かったこの街も、この畑のおかげで野菜に関してはかなりの量を自給自足出来るようになっている。
元々肉はダンジョンから回収していたので後は主食だけ、そこに米が入ったおかげで麦の消費量は激減。
結果、不作でも飢えることなくやっていくことが出来ている。
困ったら芋があるしな。
もっとも、拡張計画が終了して人口が急増すれば話は別だ。
それを見越して畑の拡張をと遠回しに言われているのだが、そこまで手は回らないしなによりそれに回す労働力が無い。
先に労働力を確保するのか、それとも食料を確保するのか。
現実的なのは後者だが、この土地の特性を考えると前者でも何とかなりそうなんだよなぁ。
はてさてどうしたもんか。
「とりあえず後で確認だけしておいてくれ。」
「かしこまりました。」
「それでどうだ、他に困っていることはないか?」
「冬野菜の生育も順調ですし、魔物の襲撃もなく穏やかです。ただ・・・。」
「なんだ?」
勿体ぶるように言った後、空を見上げるアグリ。
冬の曇天はいつもと変わらず、いやちょっと重いか。
「雪か?」
「はい、私の勘ではありますが近々雪になりそうです。それもかなりの。」
「となると雪対策をしておかないとなぁ。覆いに焔の石、作業用のヒーターに燃料。」
「それとマジックポットにも雪除けをつけてあげる必要があります。双葉は柔らかくすぐにつぶれてしまいますので。」
せっかく芽吹いたのにすぐにつぶれてしまうのはもったいない。
新たな仲間にカニバフラワーも喜んでいるだけに、それをみすみす枯らすのは可愛そうだ。
とはいえ、人間の方の準備もあるわけで。
そっちはアグリに全部丸投げするしかないな。
ひとまず畑の対応を任せて急ぎ屋敷に戻り対策を講じる。
あれやこれやと走り回って、少し落ち着いたのは夕方前。
倉庫横の勝手口から畑の北側に抜けると、カニバフラワーが一斉にこちらを向いた。
「「「「「カカカカカカ。」」」」」
「どうした?何かあったか?」
朝とは明らかに違う反応に流石の俺でもビビってしまう。
大量の口がこっちを向いて歯を鳴らすんだから当然だろう。
とはいえ威嚇しているわけではなさそうなので近づくと、一斉に地面の方を向いた。
誘導されるがまま視線を降ろす。
「え?」
そこにあったのは小さな双葉、ではなく腰ぐらいの大きさに育ったラフレシア。
いや、固有名詞が出てくるぐらいにそっくりなんだがよく見ると中央に口がある。
間違いない、口だ。
その証拠に小さな舌が口から出ており、何かを探すように小刻みに動いている。
正直キモイ。
鮮やかな黄色い花の直径はおおよそ50cm程か?その下に豊富な葉っぱを蓄えていて、蔓も伸びている。
これは近づいて大丈夫なんだろうか。
「あれ、大丈夫なのか?」
「「「「カカカカ。」」」」
大丈夫と言わんばかりにカニバフラワーが首を上下に振る。
うーむ、まさか半日でこんなことになるとは。
さすがダンジョンに生息するだけの事はある。
「これはシロウ様どうし・・・えぇ!」
「な、そういう反応するよな。」
「これがマジックポットですか。」
「鑑定してないが個数から見てもそうだろう、彼ら曰く危険はないらしいけど、一応キキに確認してくる。」
「私も本物を見るのは初めてです、水で育つのでしょうか。」
「わからん。」
吸魔植物って言うぐらいだから魔素を吸うんだろうけど、そもそも水やりは必要なんだろか。
急ぎ店に戻ってキキに話を聞くと、驚いて畑までついてきた。
その結果、やはりマジックポットで間違いないようでかつ危険もないらしい。
「こんな場所に生えるなんて、恐らくはカニバフラワーの食べた魔物の血が土壌に吸収され魔素が蓄積されているんだと思うんですけど。え、これだけで論文が書けますよ。」
「書かないでいいから。そんな事したらどう考えても面倒になる、っていうかこのままで冒険者に持っていかれないよな?」
「この街の冒険者であればカニバフラワーの危険性は理解しているはずですので大丈夫だとは思いますが、一応囲いと立札で誰の持ち物か周知した方がいいと思います。」
「急ぎ立てておきます。」
「基本は魔素を吸って育つので何もしなくていいはずですけど・・・。」
そう言いながら自分のポケットをガサゴソと漁るキキ。
そして取り出したのは欠片。
小型の魔石、いや屑石か。
それをおもむろにマジックポットに投げた次の瞬間。
足元に伸びていた蔓が素早く反応し、キャッチしたと思われる花の口に放り込んだ。
他の花が悔しそうに口をパクパクさせている。
なんていうホラー映像。
これ、人が食われたりしないよな?
本当に大丈夫だよな?
「食ったな。」
「食べましたね。」
「本当に大丈夫なんだよな?」
「マジックポットの蔓に人や魔物が捕食されたという記録はありません。魔導具や魔石に反応した記録がありましたのでもしやと思ったのですが。」
「って事はだ、使い道のない屑石食わせたらどうなるんだ?」
「それは、体内に吸収されてそして・・・。」
二人して顔を見合わせる。
マジックポットは魔素を吸収して体内で魔素の雫と呼ばれる素材を生成する。
生息場所と効果から察するにそれは非常に価値があり、かつ有効に利用できるものなのだろう。
それに比べて屑石とはその名の如くゴミとしての価値しかない魔石の欠片。
少量の魔力は含んでいるものの、長時間魔道具を動かす事も出来ない。
しかしながら魔石を運搬する中でどうしても出てきてしまうし、弱い魔物を倒すと回収できるので彼らの収入減の為にも買取されている。
一応使えなくもないしな。
とはいえ、屑石は屑石。
使われずに山のように積みあがる不良在庫。
それが価値のある魔素の雫に生まれ変わるとしたらどうだ?
恐らくは同じことを考えたやつもいるだろうけど、わざわざそんなものを持って魔物の巣やダンジョンに潜るような奴はいない。
なので今まで実現したことはないだろう。
それが目の前で行えて、加えて結果が出たら?
「やばいな。」
「はい、もし可能なら大変なことになります。」
「とはいえ、何もしないのももったいない。奴らも喜んでいるみたいだしとりあえず実験してみるか。」
「では急ぎ魔石を持ってきます。」
「アグリ。」
「急ぎ柵を作って触れないよう周知します、もちろん他言いたしません。」
「宜しく頼む。」
もし本当に成功したのなら大変なことになる。
なので俺達だけの秘密というわけだ。
視線を戻すともっとよこせと他のマジックポットがうねうねと蔦を振り回し、中央の小さな舌を小刻みに動かしている。
黄色い花びらの中央は、カニバフラワーの様な真っ赤な口。
下と上に巨大な花が待ち構えるうちの畑って・・・。
「「「「「カカカカ!」」」」」
「「「「「ババババ!」」」」」
カニバフラワーが歯を鳴らすとマジックポットが蔓で地面をたたく。
まるで意思疎通をするかのようって、してるんだろうなぁ。
こうしてうちの畑に新たな仲間が加わったのだった。
「どうした、レイ。」
一仕事終えた俺がレイを連れて街の周りを散歩していた時だった。
畑の北側、ちょうどカニバフラワー達が並んでいる所で足を止める。
俺達に気づいたのか頭の上で大きくなったカニバフラワーがカカカカと挨拶をしてくれた。
今日も元気そうだ。
だが、レイの視線は上ではなく下。
今日は地面が血に染まっていないので魔物が食われた感じはなさそうだ。
ん?
レイの視線の先に目をやると、地面から何かが生えている。
よく見ると出ているのは小さな双葉。
まるで絵に描いたような見事な双葉が五つ、顔を出している。
雑草、ではなさそうだ。
っていうかここは魔物の血がしみこみ過ぎて地面の魔素が濃く普通の植物は育たない。
にもかかわらずこんな所に芽をだすとは。
クンクンと匂いを嗅ぐレイ、そして俺の顔を見るなり一声吠えた。
鑑定しろという事だろうか。
言われるがまま手を伸ばして双葉に触れる。
『マジックポット。魔素を糧に成長する吸魔植物の一種で、吸収した魔素を体内で凝縮して【魔素の雫】を精製する。また葉にも濃い魔素が蓄積されている為、薬や錬金術の材料など様々な用途に用いられる。魔素の濃い場所でしか生育できず主にダンジョンの奥や魔物の巣でのみ発見される。最近の平均取引価格は銀貨30枚。最安値銀貨25枚、最高値銀貨40枚。最終取引日は120日前と記録されています。』
この価格はマジックポットと呼ばれるこいつの価格で、魔素の雫ってやつにはまた別の値段がつけられるのだろう。
しかし普通はダンジョンの中でしか生きられないはずの植物がこんな場所に目を出すとか、カニバフラワーの下だからという理由だけで片づけていいんだろうか。
元々畑近辺の土壌はかなり魔素が濃いってのは前々から言われていたが、この辺りはそれよりもさらに濃い、それこそダンジョンの奥底ぐらいに濃くなっているそう考えるべきなんだろう。
「こんなのが生えて来るってことは、お前たちが頑張っているって証拠なんだろうなぁ。」
「「「カカカカ!」」」」
「マジックポットっていうらしいぞ、仲良くしてやれ。」
「ワフ!」
「それと、コッコにも勝手に食うなよって言っとけよ。」
普通の雑草だけでなく魔素の濃い植物を好むだけにうってつけのエサと言える。
とはいえ珍しいだけに食われると困るなぁ。
柵を作るわけにもいかないし、一応アグリには報告だけしておくか。
ひとまずその場を離れてアグリに事情を話すと、珍しく驚いた顔をしていた。
あのアグリがここまで驚くなんて珍しい。
「そんなに驚くことか?」
「カニバフラワーが生えているのですから不思議ではないかもしれませんが、それでもダンジョンの奥にしか生えない植物です。やはりこの土地は特別なんでしょう。」
「そう考えるべきだよなぁ。」
「休耕することなく野菜を作ることが出来る時点で異常ですけどね。」
「それを言うな、考えたら負けだ。」
「そのおかげで幸せに暮らせていますから、有難い事です。」
異常であることは認識している、でもそれで生活が豊かになっているのであれば何も言うまい。
自給率の低かったこの街も、この畑のおかげで野菜に関してはかなりの量を自給自足出来るようになっている。
元々肉はダンジョンから回収していたので後は主食だけ、そこに米が入ったおかげで麦の消費量は激減。
結果、不作でも飢えることなくやっていくことが出来ている。
困ったら芋があるしな。
もっとも、拡張計画が終了して人口が急増すれば話は別だ。
それを見越して畑の拡張をと遠回しに言われているのだが、そこまで手は回らないしなによりそれに回す労働力が無い。
先に労働力を確保するのか、それとも食料を確保するのか。
現実的なのは後者だが、この土地の特性を考えると前者でも何とかなりそうなんだよなぁ。
はてさてどうしたもんか。
「とりあえず後で確認だけしておいてくれ。」
「かしこまりました。」
「それでどうだ、他に困っていることはないか?」
「冬野菜の生育も順調ですし、魔物の襲撃もなく穏やかです。ただ・・・。」
「なんだ?」
勿体ぶるように言った後、空を見上げるアグリ。
冬の曇天はいつもと変わらず、いやちょっと重いか。
「雪か?」
「はい、私の勘ではありますが近々雪になりそうです。それもかなりの。」
「となると雪対策をしておかないとなぁ。覆いに焔の石、作業用のヒーターに燃料。」
「それとマジックポットにも雪除けをつけてあげる必要があります。双葉は柔らかくすぐにつぶれてしまいますので。」
せっかく芽吹いたのにすぐにつぶれてしまうのはもったいない。
新たな仲間にカニバフラワーも喜んでいるだけに、それをみすみす枯らすのは可愛そうだ。
とはいえ、人間の方の準備もあるわけで。
そっちはアグリに全部丸投げするしかないな。
ひとまず畑の対応を任せて急ぎ屋敷に戻り対策を講じる。
あれやこれやと走り回って、少し落ち着いたのは夕方前。
倉庫横の勝手口から畑の北側に抜けると、カニバフラワーが一斉にこちらを向いた。
「「「「「カカカカカカ。」」」」」
「どうした?何かあったか?」
朝とは明らかに違う反応に流石の俺でもビビってしまう。
大量の口がこっちを向いて歯を鳴らすんだから当然だろう。
とはいえ威嚇しているわけではなさそうなので近づくと、一斉に地面の方を向いた。
誘導されるがまま視線を降ろす。
「え?」
そこにあったのは小さな双葉、ではなく腰ぐらいの大きさに育ったラフレシア。
いや、固有名詞が出てくるぐらいにそっくりなんだがよく見ると中央に口がある。
間違いない、口だ。
その証拠に小さな舌が口から出ており、何かを探すように小刻みに動いている。
正直キモイ。
鮮やかな黄色い花の直径はおおよそ50cm程か?その下に豊富な葉っぱを蓄えていて、蔓も伸びている。
これは近づいて大丈夫なんだろうか。
「あれ、大丈夫なのか?」
「「「「カカカカ。」」」」
大丈夫と言わんばかりにカニバフラワーが首を上下に振る。
うーむ、まさか半日でこんなことになるとは。
さすがダンジョンに生息するだけの事はある。
「これはシロウ様どうし・・・えぇ!」
「な、そういう反応するよな。」
「これがマジックポットですか。」
「鑑定してないが個数から見てもそうだろう、彼ら曰く危険はないらしいけど、一応キキに確認してくる。」
「私も本物を見るのは初めてです、水で育つのでしょうか。」
「わからん。」
吸魔植物って言うぐらいだから魔素を吸うんだろうけど、そもそも水やりは必要なんだろか。
急ぎ店に戻ってキキに話を聞くと、驚いて畑までついてきた。
その結果、やはりマジックポットで間違いないようでかつ危険もないらしい。
「こんな場所に生えるなんて、恐らくはカニバフラワーの食べた魔物の血が土壌に吸収され魔素が蓄積されているんだと思うんですけど。え、これだけで論文が書けますよ。」
「書かないでいいから。そんな事したらどう考えても面倒になる、っていうかこのままで冒険者に持っていかれないよな?」
「この街の冒険者であればカニバフラワーの危険性は理解しているはずですので大丈夫だとは思いますが、一応囲いと立札で誰の持ち物か周知した方がいいと思います。」
「急ぎ立てておきます。」
「基本は魔素を吸って育つので何もしなくていいはずですけど・・・。」
そう言いながら自分のポケットをガサゴソと漁るキキ。
そして取り出したのは欠片。
小型の魔石、いや屑石か。
それをおもむろにマジックポットに投げた次の瞬間。
足元に伸びていた蔓が素早く反応し、キャッチしたと思われる花の口に放り込んだ。
他の花が悔しそうに口をパクパクさせている。
なんていうホラー映像。
これ、人が食われたりしないよな?
本当に大丈夫だよな?
「食ったな。」
「食べましたね。」
「本当に大丈夫なんだよな?」
「マジックポットの蔓に人や魔物が捕食されたという記録はありません。魔導具や魔石に反応した記録がありましたのでもしやと思ったのですが。」
「って事はだ、使い道のない屑石食わせたらどうなるんだ?」
「それは、体内に吸収されてそして・・・。」
二人して顔を見合わせる。
マジックポットは魔素を吸収して体内で魔素の雫と呼ばれる素材を生成する。
生息場所と効果から察するにそれは非常に価値があり、かつ有効に利用できるものなのだろう。
それに比べて屑石とはその名の如くゴミとしての価値しかない魔石の欠片。
少量の魔力は含んでいるものの、長時間魔道具を動かす事も出来ない。
しかしながら魔石を運搬する中でどうしても出てきてしまうし、弱い魔物を倒すと回収できるので彼らの収入減の為にも買取されている。
一応使えなくもないしな。
とはいえ、屑石は屑石。
使われずに山のように積みあがる不良在庫。
それが価値のある魔素の雫に生まれ変わるとしたらどうだ?
恐らくは同じことを考えたやつもいるだろうけど、わざわざそんなものを持って魔物の巣やダンジョンに潜るような奴はいない。
なので今まで実現したことはないだろう。
それが目の前で行えて、加えて結果が出たら?
「やばいな。」
「はい、もし可能なら大変なことになります。」
「とはいえ、何もしないのももったいない。奴らも喜んでいるみたいだしとりあえず実験してみるか。」
「では急ぎ魔石を持ってきます。」
「アグリ。」
「急ぎ柵を作って触れないよう周知します、もちろん他言いたしません。」
「宜しく頼む。」
もし本当に成功したのなら大変なことになる。
なので俺達だけの秘密というわけだ。
視線を戻すともっとよこせと他のマジックポットがうねうねと蔦を振り回し、中央の小さな舌を小刻みに動かしている。
黄色い花びらの中央は、カニバフラワーの様な真っ赤な口。
下と上に巨大な花が待ち構えるうちの畑って・・・。
「「「「「カカカカ!」」」」」
「「「「「ババババ!」」」」」
カニバフラワーが歯を鳴らすとマジックポットが蔓で地面をたたく。
まるで意思疎通をするかのようって、してるんだろうなぁ。
こうしてうちの畑に新たな仲間が加わったのだった。
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