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633.転売屋は正体がばれる
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露店を出して二日目。
今日も朝から飛ぶように商品が売れ、昼過ぎには完売してしまった。
昨日の倍用意した消しゴムから売れたんだからよほどの需要があると思われる。
俺がこの町に住んでいたのなら当分はそれだけを売り続けたんだが、生憎とそういうわけにもいかない。
それにだ、どうせすぐに類似品が発売される。
恐らくは俺の仕入先を調べ、そこから自分で研究して行き着くんだろう。
特許のないこの世界では模倣が常習化している。
もちろんそれを悪とは言わない。
模倣されることで世の中にはやすくていい品が出回り、結果として人々が潤うわけだ。
俺には先行者報酬が入ってきているわけだし、決して無駄ではない。
もし継続して売りたいのであれば、それこそ厳密に材料を管理発注して、漏洩しないように契約書を作る必要があるだろう。
情報漏洩すれば金貨100枚の罰金とかにすれば心配も減る。
それでもどこからかは漏れるんだから世の中不思議なものだ。
「あれ、もしかしてあの人。」
「ん?」
「やっぱり。あの、世界の歩き方に出ていた買取屋のシロウさんですよね?」
店の後片付けをしていると、店の前で立ち止まった若い冒険者が俺に声をかけてきた。
「あぁ、そうだがそれがどうした?」
「すごい!本物だ!あの、握手してください!」
「握手?」
「不倒のエリザとお付き合いされてるんですよね?すごいなぁ、あの普段はどんな人なんですか?」
「興味があるなら本人に聞くといい。エリザ、呼んでるぞ。」
「え?私?」
木箱の裏で休憩していたエリザが顔を出した瞬間に、黄色い歓声が辺りに響き渡る。
俺はあいつのおまけか、まぁいいんだけど。
キャアキャア騒ぐ冒険者をエリザに丸投げして再び片づけをしていると、また誰かが露店の前で立ち止まった。
「あの、買取屋のシロウさんですよね?」
「だからそうだって。エリザならそこにいるぞ。」
「違います、あのコレを買い取って欲しいんですけど。」
「質屋なら他にもあるだろ?」
「シロウさんに見てほしいんです。」
今度は俺と同い年ぐらいの青年だ。
慎重にかばんから取り出されたのは茶色い石。
見た感じ魔石系ではなさそうだが・・・。
「まぁいいか、見せてくれ。」
両手でそれを受け取りると鑑定スキルが発動する。
『割れずの石。落としてもぶつけても割れない石。ただし、中には貴重な宝石が隠されているといわれており実際に取り出された事実もある。方法は不明。最近の平均取引価格は銀貨1枚。最安値銅貨55枚。最高値銀貨5枚。最終取引日は290日前と記録されています。』
「割れずの石ねぇ。で?これを俺に買い取って欲しいのか?」
「高いものではないとは思うんですけど・・・。」
「銅貨50枚。」
「そんなものですか。」
「割れるならもっと高値がつくかもしれないが、割り方がわからない以上ただの石だな。とはいえ、割れないからこその使い道も在る、だから銅貨50枚だ。」
「なるほど。」
「割り方、知ってるのか?」
「残念ながら。あの、買い取って貰えますか?」
てっきり俺に鑑定させてやっぱり止めますというと思ったら違ったようだ。
割り方がわかればいいんだが、まぁギャンブル好きの冒険者には売れるだろう。
「じゃあ銅貨50枚。」
「ありがとうございます!」
代金を受け取り青年は嬉しそうに去っていった。
最近販売ばっかりだっただけにたまには買い取りも面白いな。
「なぁ、ここで買い取りもやってるのか?」
「ん?あぁ、一応な。」
「コレを見てくれ。」
「あ、俺も!」
先程のやり取りを見ていたほかの客が次は自分もと集まってくる。
あっという間に行列が出来てしまい、戻ってきたミラと共に急遽買取会が始まってしまった。
ちなみにエリザは横で冒険者に囲まれている。
王都でも人気があるのはちょっと意外だった。
そんな事をしていると、突然甲高い笛の音があたりに響き渡った。
「誰だ!こんな人だかりを作った奴は!早急に解散しろ、さもなくばしょっ引くぞ!」
「どうやら警備が来てしまったようです。」
「まぁこんな状況になったらなぁ。」
横の露店の前にもはみ出して客があふれてしまっているだけに、どこかの誰かが文句を言ったんだろう。
一応詫びを入れたがあっという間にこうなってしまっただけに収拾がつかない。
それに関しては何も言うつもりはない場を荒らしているのは俺達の方だしな。
「お前か、ここの店主は。」
「そうだ。」
「速やかに解散しろ、これでは他の露店にも迷惑が掛かる。それとお前は詰所まで来い。」
「わかった。」
「なんだ、随分と素直じゃないか。」
「抵抗しただけ無駄だからな。ミラ、後片付けを頼む。それと詰所に誰か来てくれるように頼んでくれないか?人選は任せる。」
「わかりました。」
抵抗は無意味だ。
警備に文句を言う人も複数人いたが、睨まれると何も言えずにあっという間に人混みは無くなった。
後片付けを任せてそのまま詰所へと連れていかれる。
そういえば前にも同じようなことがあったなぁ。
あの時は金銭を要求されたんだっけ。
さすがにこの王都でそんなことはないだろう。
「ここに名前と所属を書け。それと今日の売上は没収だな。」
「は?」
「なんだ文句あるのか。」
「名前はともかくいきなり没収とはどういうことだ?迷惑をかけたのは事実だが、いくらなんでもそれはやりすぎだろう。」
「なんだ、素直についてきたと思ったらこんなところで抵抗するのか?ただじゃ帰れんぞ。」
俺を囲んで複数人の兵士がニヤついている。
冒険者たちに比べれば怖くも何ともないのだが、やり方が気に食わない。
あの場で没収を宣言するのであればともかくこんな場所に連れ込んでからのこの対応。
「ただじゃ帰れないだって?何する気だ?」
「ちょっと痛い目を見てもらうだけだ。見た感じ流れの商人だろう?またここで商売したいのなら大人しくした方が身のためだぞ。」
「それはお前たちの方じゃないのか?」
「なにぃ?」
「そんなちんけな警棒を後ろで振り回したって脅しにもなりやしない。それにだ、こんな所に商人を連れ込んで売上金を没収していると上に知れたら、拘束されるのはお前たちの方じゃないのか?」
「そんなことさせると思っているのか?」
「じゃあどうするんだ?」
「しゃべれないぐらいに痛めつけるんだよ!」
男が拳を振り上げると同時に俺も懐からお守りを取り出す。
それが視界に入った瞬間に、男たちの動きが止まった。
「なっ。」
「誰に喧嘩売っているのかわかっていないのはお前たちの方だったな、見た目が普通だからって油断しすぎだろう。抜き打ち監査とか考えなかったのか?」
俺が取り出したのは王家の紋章が描き込まれたメダル。
本来であれば自分の紋章が書き込まれたメダルを各貴族は所有しているのだが、俺の場合はなりたて貴族。しかも名誉職なのでまだそういったものが作られていなかった。
なので代用品として国王陛下より持たされたものだ。
ちなみにロバート王子が使用していたものらしい。
「貴族に喧嘩売るとはいい度胸だな。まぁ俺もなり立てだし、そもそも権力を振りかざすのは嫌いなんだが、こういう汚い事されたんじゃそういうわけにもいかない。ったく、どこの警備も腐ってるのかよ。」
兵士たちが信じられないと目を見開き、俺が立ち上がると同時に後ろに下がる。
「で?どうするつもりだ?」
「も、申し訳ございませんでした。」
「もうしません、もうしませんのでどうか命だけは!」
「いや、殺すつもりはないんだが。」
流石切り捨てごめんが許されている貴族、向こうもそれを恐れて命乞いをし始めた。
もちろんそのつもりはない。
だが、社会的にはどうかな。
「シロウさん、驚きましたよ。」
「ちょっとどういう状況ですの?警備のみなさんがおびえているじゃありませんか。」
ナイスタイミングで援軍の登場だ。
後ろを振り返るとお久しぶりの二人が立っていた。
「お、ウィフさんが来てくれたのか。良い人選だな。」
「私もいるんですけど?」
「わかってるって。」
「それで、連行されたはずの君を前にして何が起きたのかな?わざわざ王家の紋章を出すあたり余程の状況なんだろうけど。」
「なに、ちょいと悪さをしようとしたんで使わせてもらっただけだ。警備の不正ってどこに申し出ればいいんだ?」
その後、ウィフさんとイザベラの二人がまるで夫婦の様に息の合った動きで処理をしてくれた。
全容解明は先になるが、以前から警備による露店への妨害や押収は行われていたようで、色々と文句が出ていたらしい。
そりゃあ、あんな感じで脅されたら言えなくなるのも仕方がない。
一回我慢するだけでまた商売が続けられると考えれば口も堅くなってしまうだろう。
だが今回は相手が悪かったな。
「今回は世話になった。」
「名誉男爵になってすぐにこれとは、まったく君らしいね。」
「それは喜んでいいのか?」
「もちろんだよ。貴族より先に庶民を相手に商売するところがまたいいね。でも、そのせいでイザベラが不機嫌にもなっているから、そろそろ話を聞いてあげてくれないかな。」
「別に不機嫌なんかになっていませんわ。ただ、消しゴムを安価で売られたのと会いに来るのが遅いと思っただけですの。貴族達を引き止めるのも大変なんですから。」
「そんなに問い合わせが来ているのか?」
「それはもう!じらすのは結構ですけど、それでお客が逃げては意味ありませんわよ。」
別にじらすつもりはなかったようだが結構大変なことになっているようだ。
ならば仕方がない。
本来の予定通り、明日からは貴族相手に商売するとしよう。
今日の一件もあるしすぐに露店を開くのは難しそうだしな。
「わかったじゃあ明日から。」
「いいえ、この後夕食会を催しますからその後たっぷり働いて頂きます。ミラ様にもそのように伝えてあります、マリー様も来られるそうですからしっかり働いてくださいませ。」
「奴隷が命令するのか?」
「命令ではありません、これは雇用主の義務ですわ。」
「相変わらずだなぁ。」
「あはは、ごめんね。」
「別にウィフが謝る必要はありません、私は代理店を任されている身として当然のことをしているだけです。」
「へいへい、働かせてもらいますよ。」
王都に来て早三日。
残り時間もあるわけだし、出来ることはさっさとやってしまおう。
次の相手は金持ち貴族。
何を持ってくるか楽しみだ。
今日も朝から飛ぶように商品が売れ、昼過ぎには完売してしまった。
昨日の倍用意した消しゴムから売れたんだからよほどの需要があると思われる。
俺がこの町に住んでいたのなら当分はそれだけを売り続けたんだが、生憎とそういうわけにもいかない。
それにだ、どうせすぐに類似品が発売される。
恐らくは俺の仕入先を調べ、そこから自分で研究して行き着くんだろう。
特許のないこの世界では模倣が常習化している。
もちろんそれを悪とは言わない。
模倣されることで世の中にはやすくていい品が出回り、結果として人々が潤うわけだ。
俺には先行者報酬が入ってきているわけだし、決して無駄ではない。
もし継続して売りたいのであれば、それこそ厳密に材料を管理発注して、漏洩しないように契約書を作る必要があるだろう。
情報漏洩すれば金貨100枚の罰金とかにすれば心配も減る。
それでもどこからかは漏れるんだから世の中不思議なものだ。
「あれ、もしかしてあの人。」
「ん?」
「やっぱり。あの、世界の歩き方に出ていた買取屋のシロウさんですよね?」
店の後片付けをしていると、店の前で立ち止まった若い冒険者が俺に声をかけてきた。
「あぁ、そうだがそれがどうした?」
「すごい!本物だ!あの、握手してください!」
「握手?」
「不倒のエリザとお付き合いされてるんですよね?すごいなぁ、あの普段はどんな人なんですか?」
「興味があるなら本人に聞くといい。エリザ、呼んでるぞ。」
「え?私?」
木箱の裏で休憩していたエリザが顔を出した瞬間に、黄色い歓声が辺りに響き渡る。
俺はあいつのおまけか、まぁいいんだけど。
キャアキャア騒ぐ冒険者をエリザに丸投げして再び片づけをしていると、また誰かが露店の前で立ち止まった。
「あの、買取屋のシロウさんですよね?」
「だからそうだって。エリザならそこにいるぞ。」
「違います、あのコレを買い取って欲しいんですけど。」
「質屋なら他にもあるだろ?」
「シロウさんに見てほしいんです。」
今度は俺と同い年ぐらいの青年だ。
慎重にかばんから取り出されたのは茶色い石。
見た感じ魔石系ではなさそうだが・・・。
「まぁいいか、見せてくれ。」
両手でそれを受け取りると鑑定スキルが発動する。
『割れずの石。落としてもぶつけても割れない石。ただし、中には貴重な宝石が隠されているといわれており実際に取り出された事実もある。方法は不明。最近の平均取引価格は銀貨1枚。最安値銅貨55枚。最高値銀貨5枚。最終取引日は290日前と記録されています。』
「割れずの石ねぇ。で?これを俺に買い取って欲しいのか?」
「高いものではないとは思うんですけど・・・。」
「銅貨50枚。」
「そんなものですか。」
「割れるならもっと高値がつくかもしれないが、割り方がわからない以上ただの石だな。とはいえ、割れないからこその使い道も在る、だから銅貨50枚だ。」
「なるほど。」
「割り方、知ってるのか?」
「残念ながら。あの、買い取って貰えますか?」
てっきり俺に鑑定させてやっぱり止めますというと思ったら違ったようだ。
割り方がわかればいいんだが、まぁギャンブル好きの冒険者には売れるだろう。
「じゃあ銅貨50枚。」
「ありがとうございます!」
代金を受け取り青年は嬉しそうに去っていった。
最近販売ばっかりだっただけにたまには買い取りも面白いな。
「なぁ、ここで買い取りもやってるのか?」
「ん?あぁ、一応な。」
「コレを見てくれ。」
「あ、俺も!」
先程のやり取りを見ていたほかの客が次は自分もと集まってくる。
あっという間に行列が出来てしまい、戻ってきたミラと共に急遽買取会が始まってしまった。
ちなみにエリザは横で冒険者に囲まれている。
王都でも人気があるのはちょっと意外だった。
そんな事をしていると、突然甲高い笛の音があたりに響き渡った。
「誰だ!こんな人だかりを作った奴は!早急に解散しろ、さもなくばしょっ引くぞ!」
「どうやら警備が来てしまったようです。」
「まぁこんな状況になったらなぁ。」
横の露店の前にもはみ出して客があふれてしまっているだけに、どこかの誰かが文句を言ったんだろう。
一応詫びを入れたがあっという間にこうなってしまっただけに収拾がつかない。
それに関しては何も言うつもりはない場を荒らしているのは俺達の方だしな。
「お前か、ここの店主は。」
「そうだ。」
「速やかに解散しろ、これでは他の露店にも迷惑が掛かる。それとお前は詰所まで来い。」
「わかった。」
「なんだ、随分と素直じゃないか。」
「抵抗しただけ無駄だからな。ミラ、後片付けを頼む。それと詰所に誰か来てくれるように頼んでくれないか?人選は任せる。」
「わかりました。」
抵抗は無意味だ。
警備に文句を言う人も複数人いたが、睨まれると何も言えずにあっという間に人混みは無くなった。
後片付けを任せてそのまま詰所へと連れていかれる。
そういえば前にも同じようなことがあったなぁ。
あの時は金銭を要求されたんだっけ。
さすがにこの王都でそんなことはないだろう。
「ここに名前と所属を書け。それと今日の売上は没収だな。」
「は?」
「なんだ文句あるのか。」
「名前はともかくいきなり没収とはどういうことだ?迷惑をかけたのは事実だが、いくらなんでもそれはやりすぎだろう。」
「なんだ、素直についてきたと思ったらこんなところで抵抗するのか?ただじゃ帰れんぞ。」
俺を囲んで複数人の兵士がニヤついている。
冒険者たちに比べれば怖くも何ともないのだが、やり方が気に食わない。
あの場で没収を宣言するのであればともかくこんな場所に連れ込んでからのこの対応。
「ただじゃ帰れないだって?何する気だ?」
「ちょっと痛い目を見てもらうだけだ。見た感じ流れの商人だろう?またここで商売したいのなら大人しくした方が身のためだぞ。」
「それはお前たちの方じゃないのか?」
「なにぃ?」
「そんなちんけな警棒を後ろで振り回したって脅しにもなりやしない。それにだ、こんな所に商人を連れ込んで売上金を没収していると上に知れたら、拘束されるのはお前たちの方じゃないのか?」
「そんなことさせると思っているのか?」
「じゃあどうするんだ?」
「しゃべれないぐらいに痛めつけるんだよ!」
男が拳を振り上げると同時に俺も懐からお守りを取り出す。
それが視界に入った瞬間に、男たちの動きが止まった。
「なっ。」
「誰に喧嘩売っているのかわかっていないのはお前たちの方だったな、見た目が普通だからって油断しすぎだろう。抜き打ち監査とか考えなかったのか?」
俺が取り出したのは王家の紋章が描き込まれたメダル。
本来であれば自分の紋章が書き込まれたメダルを各貴族は所有しているのだが、俺の場合はなりたて貴族。しかも名誉職なのでまだそういったものが作られていなかった。
なので代用品として国王陛下より持たされたものだ。
ちなみにロバート王子が使用していたものらしい。
「貴族に喧嘩売るとはいい度胸だな。まぁ俺もなり立てだし、そもそも権力を振りかざすのは嫌いなんだが、こういう汚い事されたんじゃそういうわけにもいかない。ったく、どこの警備も腐ってるのかよ。」
兵士たちが信じられないと目を見開き、俺が立ち上がると同時に後ろに下がる。
「で?どうするつもりだ?」
「も、申し訳ございませんでした。」
「もうしません、もうしませんのでどうか命だけは!」
「いや、殺すつもりはないんだが。」
流石切り捨てごめんが許されている貴族、向こうもそれを恐れて命乞いをし始めた。
もちろんそのつもりはない。
だが、社会的にはどうかな。
「シロウさん、驚きましたよ。」
「ちょっとどういう状況ですの?警備のみなさんがおびえているじゃありませんか。」
ナイスタイミングで援軍の登場だ。
後ろを振り返るとお久しぶりの二人が立っていた。
「お、ウィフさんが来てくれたのか。良い人選だな。」
「私もいるんですけど?」
「わかってるって。」
「それで、連行されたはずの君を前にして何が起きたのかな?わざわざ王家の紋章を出すあたり余程の状況なんだろうけど。」
「なに、ちょいと悪さをしようとしたんで使わせてもらっただけだ。警備の不正ってどこに申し出ればいいんだ?」
その後、ウィフさんとイザベラの二人がまるで夫婦の様に息の合った動きで処理をしてくれた。
全容解明は先になるが、以前から警備による露店への妨害や押収は行われていたようで、色々と文句が出ていたらしい。
そりゃあ、あんな感じで脅されたら言えなくなるのも仕方がない。
一回我慢するだけでまた商売が続けられると考えれば口も堅くなってしまうだろう。
だが今回は相手が悪かったな。
「今回は世話になった。」
「名誉男爵になってすぐにこれとは、まったく君らしいね。」
「それは喜んでいいのか?」
「もちろんだよ。貴族より先に庶民を相手に商売するところがまたいいね。でも、そのせいでイザベラが不機嫌にもなっているから、そろそろ話を聞いてあげてくれないかな。」
「別に不機嫌なんかになっていませんわ。ただ、消しゴムを安価で売られたのと会いに来るのが遅いと思っただけですの。貴族達を引き止めるのも大変なんですから。」
「そんなに問い合わせが来ているのか?」
「それはもう!じらすのは結構ですけど、それでお客が逃げては意味ありませんわよ。」
別にじらすつもりはなかったようだが結構大変なことになっているようだ。
ならば仕方がない。
本来の予定通り、明日からは貴族相手に商売するとしよう。
今日の一件もあるしすぐに露店を開くのは難しそうだしな。
「わかったじゃあ明日から。」
「いいえ、この後夕食会を催しますからその後たっぷり働いて頂きます。ミラ様にもそのように伝えてあります、マリー様も来られるそうですからしっかり働いてくださいませ。」
「奴隷が命令するのか?」
「命令ではありません、これは雇用主の義務ですわ。」
「相変わらずだなぁ。」
「あはは、ごめんね。」
「別にウィフが謝る必要はありません、私は代理店を任されている身として当然のことをしているだけです。」
「へいへい、働かせてもらいますよ。」
王都に来て早三日。
残り時間もあるわけだし、出来ることはさっさとやってしまおう。
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