534 / 1,027
532.転売屋はぬいぐるみを作る
しおりを挟む
「これは何事だ?」
「コットーネが大量発生したのよ。ほんと大変だったんだから。」
「なぁ、最近そういうの多くないか?」
「ダンジョンなんてそんなもんよ。まぁ、一度溢れてから魔力のバランスがおかしいんでしょうけど、直に治るわ。」
「ならいいんだけど。」
「とにかく、これをどうにかしないと。ちなみにいくら?」
『コットーネの綿毛。コットーネの飛ばすフワフワとした綿毛は衣服から布団など様々な用途に用いられており、特に上質なものは取引価格も高い。しかし、ただの綿毛と油断していると身動きが取れなくなり、根っこから伸びた触手に体液を吸われる事故が年に数件報告されている。最近の平均取引価格は銅貨5枚。最安値銅貨2枚最高値銅貨10枚最終取引日は本日と記録されています。』
巨大な綿花を想像するとわかり易いだろうか。
そいつが、蔦を足代わりにしてペタペタとダンジョンを歩き回っているらしい。
獲物を見つけると自らの綿花を飛ばしてくるが所詮は綿。
焼くなり払うなりすれば問題ないのだが、大量の綿に囲まれると身動きが取れなくなり最後は吸われる。
何をだって?
口に出したくないね。
「銅貨2枚。」
「だよねー。かさばるわりに売れないんだよなぁ。」
「燃やせばいいじゃないか。」
「でも売ればもうかるでしょ?」
「数が少なきゃ売れるかもしれないが、こんなに一気に数が増えると売れるもんも売れないって。」
「圧縮するのも大変なのよねぇ。」
「冬前なら需要もあっただろうが、残念だったな。」
布団にするには良かったかもしれない。
服にも使うし、どてらみたいな防寒着もある。
冬ならばまだ需要もあるが、これから暖かくなるにつれてそれも減少するだろう。
どこぞのファストファッションの様に大量生産大量販売の世界じゃない。
余れば値崩れし最後は捨てられる運命だろう。
残念だったな。
「ま、仕方ないか。当分はダンジョンの奥に転がしておくわね。」
「百穴のあったあたりに敷いておけばミケが寝るんじゃないか?」
「あ、それいいかも。ちょっとベッキーに相談してくる。」
「そこはニアじゃないのか?」
ダンジョンを管理しているのは冒険者ギルドだ、ダンジョンの一角を占拠するならそこにお伺いを立てるのが筋だと思うんだが・・・。
ま、今はベッキーが寝床にしてるしギルドもベッキーには貸しがある。
文句は言わないだろう。
エリザが元気よく飛び出していく。
やれやれ元気だなぁ。
「数が多いのも考え物ですね。」
「特に場所をとるやつはな。日常的に使うとはいえ量が多すぎる。何か新しく消費するやつを作らないと減らないだろう。」
「重量はありませんが嵩がありますから、運んでもこの価格では赤字です。シロウ様のいうようにここで消費しないことには難しいでしょう。」
「とはいえ何に使うかだなぁ。」
布団もどきはあるからそれに使うのが一番消費できるだろうけど、これから温かくなるのに布団の出番は少なくなる一方だ。
肌掛けぐらいなら使えるかもしれないが、わざわざ買ってくれるかどうか。
服の産地でもないので衣服で消費できる量は限られている。
いっそ染めるか?とも考えたが、結局糸にするのが大変なんだよなぁ。
元値が安いとはいえ下手に人件費をかけると製品にしたときに回収できない可能性もある。
元値が安いと製品も安くなるのはどの世界も同じだ。
何か特別感を出すしか方法はなさそうだが・・・。
ミラと二人で悩んでいるとカランカランと店のベルが鳴り客が入ってきた。
うちには珍しく子連れの客。
子供は小学生になろうかって感じで、右手にぬいぐるみを抱いている。
「買取をお願いできますか?」
「もちろんです、こちらへどうぞ。」
「お願いします。」
女性客だったのでミラにお任せだ。
ガキは物珍しそうにきょろきょろとあたりを見回している。
ふむ、走り回ったりしないのはいい事だ褒めてやろう。
店の奥からラムネもどきを取り出し、店頭のガキの前にしゃがんでみる。
突然男が出てきたものだから驚いて母親の後ろに隠れてしまった。
「すみません。」
「いやいい、いい子にしてるからお菓子をと思っただけだ。」
「お菓子?」
「食べるか?」
返事の代わりに小さく頷く少女。
申し訳ありませんというってことはあげても問題ないんだろう。
一粒掌にのせてやると恐る恐るという感じで口の中に運んだ。
とたんに目を丸くする。
「美味いか?」
「シュワシュワして美味しい。」
「そうか、なら残りは食べていいぞ。兄弟はいるのか?」
「ううん、私だけ。あと、くまちゃん。」
「名前は?」
「ベア。」
まんまじゃねぇか。
クマのぬいぐるみを自慢気に抱きやっと笑顔を見せた。
余程気に入っているんだろう、所々ほつれている。
「仲良しなんだな。」
「うん!」
「そんないいものじゃないんですけど、家族の代わりにと作ってやったら気に入りまして。」
「ほぉ、手作りなのか。」
「素人でお恥ずかしいのですが。」
「いやいや、いい出来だ。」
この子が大事にするのもうなずける。
ほつれがあるとはいえ中の綿が出ているわけでもなし。
中々頑丈に作っているようだ。
ん、綿?
「お待たせしました銀貨10枚になります。」
「やっぱりそんなものですよねぇ。」
「物入りなのか?」
「二週間主人が帰ってこないものですから。覚悟はしているのですが、やっぱりまだ待ちたくて。」
「そうか。」
この街ではよくある話だ。
冒険者が家族を残してダンジョンで失踪する。
死んだ姿をだれも見ていないから失踪っていう扱いになるんだよな。
不憫だが冒険者を旦那に持つ女の宿命だ。
俺だっていつ逆の立場になるかわからない。
「お父さん、帰ってくるよ。」
「そうね、頑張って待ってないとね。」
「婦人会には連絡したのか?」
「はい。お声がけしてもらって、お仕事もいくつか。でも生まれつき体が弱く皆さんの様に長時間立っていられないんです。つい、寂しさを紛らわせるためにこんなものを。」
そういう人もいるだろう。
冒険者の嫁だから皆強いわけじゃない。
病気がちの人もいるし彼女の様に体の弱い人もいる。
そういう人にも援助をしているはずなんだが、今はいろいろ忙しく手が回っていないのかもしれない。
まぁ、忙しくした原因はほぼ俺なんだけども。
「仮にこれと同じようなのを作るとしたらどのぐらい作れる?」
「え?」
「材料はあるとして一日で何個作れるんだ?」
「この程度でよければ二つ三つは出来ると思います。」
「他にも作れる人はいるのか?」
「そうですね、私も教えてもらった身なので得意にしている人はほかにも心当たりがあります。」
なるほどなるほど。
「シロウ様。」
「幸い材料はある。そのままだと価値はないが加工してやればそれなりの値段で売れると思わないか?」
「私はオオカミの人形が欲しいです。」
「俺に言うなよ。」
作るのは俺じゃない。
熊だけじゃアレなので他にも何種類か作ってもらえると有難い。
それも含めて考えてみてもいいだろう。
「あ、食べちゃった。」
「なぁ、ベアのお友達がいると嬉しいか?」
「うん!」
「そうか、嬉しいか。」
「そしたら寝るときも寂しくないもん。」
「そうだな。美味しいもの食べてみんな一緒なら寂しくないな。」
くしゃくしゃと頭をなでてやると恥ずかしそうにえへへと笑う少女。
よし、やるか。
「ぬいぐるみの制作を依頼したい。月産100体、種類は任せるが5種類は最低ほしい。材料費はこちらで持つから作業する人材はそっちで集めてもらえるか?報酬は一か月銀貨10枚、出来が良ければ増額もある。」
「そんな急にいわれましても。」
「別に返事は急がなくていい。婦人会には俺の方から依頼を出すから可能かどうかを教えてくれ。最初は糸作りからになるかもしれないが作れなくても最初は報酬を出そう。美味しいご飯食べたいよな?」
「お母さんのご飯とっても美味しいんだよ!」
「だそうだ。それを売るのはいいが、帰ってくるのを待ってるんだろ?」
売り物は旦那のものと思われる長剣。
色からさっするに隕鉄か何かだろう。
少し欠けているために値段は安いが悪いものじゃないはずだ。
もし仮に戻ってきたのなら、それさえあればまた戦えるかもしれない。
俺はそれを彼女の腕に戻し、ミラは何も言わずに銀貨を10枚カウンターにのせた。
「これは前金だ。とりあえず5個作ってもらえないか?うちの女達が欲しいと言っているんだ。えぇと・・・。」
「狼と熊、それと鹿もいいですね。可愛らしいのであればスライムでも構いません。出来ますか?」
「本当に私なんかの品でいいんでしょうか。」
「これだけ娘さんに愛される品です、大丈夫ですよ。」
「お姉ちゃんもお母さんのぬいぐるみが欲しいの?」
「うん、お姉ちゃんも一緒に遊んでいい?」
「出来たら一緒に遊ぼうね!」
ミラの表情があまりにも優しいものだから思わずドキッとしてしまった。
普段クールな感じなだけに、ギャップがやばい。
惚れてまうやろ。
「ってことだ。急な依頼で大変かもしれないが宜しく頼む。」
「・・・はい。あの人の為にも頑張ってみようと思います。」
「何かあれば婦人会を頼れ。今はドタバタしているがあそこは悪い組織じゃない。」
「わかりました。」
「じゃあねお兄ちゃんお姉ちゃん!」
「気を付けてな。」
店の外で見送ると、母親と少女は何度も何度もこちらを振り返り頭を下げていた。
「どう思う。」
「当たると思います。ぬいぐるみは子供だけのものではありません、大人でも欲しい時があります。」
「ってことは町の半数は買うな。」
「いえ、もっとです。魔物の中にも可愛いのはいますから、ダンジョンシリーズとして売り出せば国中で売れるかもしれません。」
「マジか。」
「はい、可能性はあります。」
ミラがそういうのであれば間違いないだろう。
売れる可能性があるのならやるまでだ。
なんせ材料は山ほどあるからな。
全部をミケの寝床にするのはもったいない。
さて、さっそくどんな人形が欲しいかリサーチしないと。
まずは・・・モニカの所だな。
やると決めたら即行動。
それから二日後、正式に婦人会を通じてぬいぐるみ製作をすることが決定した。
「コットーネが大量発生したのよ。ほんと大変だったんだから。」
「なぁ、最近そういうの多くないか?」
「ダンジョンなんてそんなもんよ。まぁ、一度溢れてから魔力のバランスがおかしいんでしょうけど、直に治るわ。」
「ならいいんだけど。」
「とにかく、これをどうにかしないと。ちなみにいくら?」
『コットーネの綿毛。コットーネの飛ばすフワフワとした綿毛は衣服から布団など様々な用途に用いられており、特に上質なものは取引価格も高い。しかし、ただの綿毛と油断していると身動きが取れなくなり、根っこから伸びた触手に体液を吸われる事故が年に数件報告されている。最近の平均取引価格は銅貨5枚。最安値銅貨2枚最高値銅貨10枚最終取引日は本日と記録されています。』
巨大な綿花を想像するとわかり易いだろうか。
そいつが、蔦を足代わりにしてペタペタとダンジョンを歩き回っているらしい。
獲物を見つけると自らの綿花を飛ばしてくるが所詮は綿。
焼くなり払うなりすれば問題ないのだが、大量の綿に囲まれると身動きが取れなくなり最後は吸われる。
何をだって?
口に出したくないね。
「銅貨2枚。」
「だよねー。かさばるわりに売れないんだよなぁ。」
「燃やせばいいじゃないか。」
「でも売ればもうかるでしょ?」
「数が少なきゃ売れるかもしれないが、こんなに一気に数が増えると売れるもんも売れないって。」
「圧縮するのも大変なのよねぇ。」
「冬前なら需要もあっただろうが、残念だったな。」
布団にするには良かったかもしれない。
服にも使うし、どてらみたいな防寒着もある。
冬ならばまだ需要もあるが、これから暖かくなるにつれてそれも減少するだろう。
どこぞのファストファッションの様に大量生産大量販売の世界じゃない。
余れば値崩れし最後は捨てられる運命だろう。
残念だったな。
「ま、仕方ないか。当分はダンジョンの奥に転がしておくわね。」
「百穴のあったあたりに敷いておけばミケが寝るんじゃないか?」
「あ、それいいかも。ちょっとベッキーに相談してくる。」
「そこはニアじゃないのか?」
ダンジョンを管理しているのは冒険者ギルドだ、ダンジョンの一角を占拠するならそこにお伺いを立てるのが筋だと思うんだが・・・。
ま、今はベッキーが寝床にしてるしギルドもベッキーには貸しがある。
文句は言わないだろう。
エリザが元気よく飛び出していく。
やれやれ元気だなぁ。
「数が多いのも考え物ですね。」
「特に場所をとるやつはな。日常的に使うとはいえ量が多すぎる。何か新しく消費するやつを作らないと減らないだろう。」
「重量はありませんが嵩がありますから、運んでもこの価格では赤字です。シロウ様のいうようにここで消費しないことには難しいでしょう。」
「とはいえ何に使うかだなぁ。」
布団もどきはあるからそれに使うのが一番消費できるだろうけど、これから温かくなるのに布団の出番は少なくなる一方だ。
肌掛けぐらいなら使えるかもしれないが、わざわざ買ってくれるかどうか。
服の産地でもないので衣服で消費できる量は限られている。
いっそ染めるか?とも考えたが、結局糸にするのが大変なんだよなぁ。
元値が安いとはいえ下手に人件費をかけると製品にしたときに回収できない可能性もある。
元値が安いと製品も安くなるのはどの世界も同じだ。
何か特別感を出すしか方法はなさそうだが・・・。
ミラと二人で悩んでいるとカランカランと店のベルが鳴り客が入ってきた。
うちには珍しく子連れの客。
子供は小学生になろうかって感じで、右手にぬいぐるみを抱いている。
「買取をお願いできますか?」
「もちろんです、こちらへどうぞ。」
「お願いします。」
女性客だったのでミラにお任せだ。
ガキは物珍しそうにきょろきょろとあたりを見回している。
ふむ、走り回ったりしないのはいい事だ褒めてやろう。
店の奥からラムネもどきを取り出し、店頭のガキの前にしゃがんでみる。
突然男が出てきたものだから驚いて母親の後ろに隠れてしまった。
「すみません。」
「いやいい、いい子にしてるからお菓子をと思っただけだ。」
「お菓子?」
「食べるか?」
返事の代わりに小さく頷く少女。
申し訳ありませんというってことはあげても問題ないんだろう。
一粒掌にのせてやると恐る恐るという感じで口の中に運んだ。
とたんに目を丸くする。
「美味いか?」
「シュワシュワして美味しい。」
「そうか、なら残りは食べていいぞ。兄弟はいるのか?」
「ううん、私だけ。あと、くまちゃん。」
「名前は?」
「ベア。」
まんまじゃねぇか。
クマのぬいぐるみを自慢気に抱きやっと笑顔を見せた。
余程気に入っているんだろう、所々ほつれている。
「仲良しなんだな。」
「うん!」
「そんないいものじゃないんですけど、家族の代わりにと作ってやったら気に入りまして。」
「ほぉ、手作りなのか。」
「素人でお恥ずかしいのですが。」
「いやいや、いい出来だ。」
この子が大事にするのもうなずける。
ほつれがあるとはいえ中の綿が出ているわけでもなし。
中々頑丈に作っているようだ。
ん、綿?
「お待たせしました銀貨10枚になります。」
「やっぱりそんなものですよねぇ。」
「物入りなのか?」
「二週間主人が帰ってこないものですから。覚悟はしているのですが、やっぱりまだ待ちたくて。」
「そうか。」
この街ではよくある話だ。
冒険者が家族を残してダンジョンで失踪する。
死んだ姿をだれも見ていないから失踪っていう扱いになるんだよな。
不憫だが冒険者を旦那に持つ女の宿命だ。
俺だっていつ逆の立場になるかわからない。
「お父さん、帰ってくるよ。」
「そうね、頑張って待ってないとね。」
「婦人会には連絡したのか?」
「はい。お声がけしてもらって、お仕事もいくつか。でも生まれつき体が弱く皆さんの様に長時間立っていられないんです。つい、寂しさを紛らわせるためにこんなものを。」
そういう人もいるだろう。
冒険者の嫁だから皆強いわけじゃない。
病気がちの人もいるし彼女の様に体の弱い人もいる。
そういう人にも援助をしているはずなんだが、今はいろいろ忙しく手が回っていないのかもしれない。
まぁ、忙しくした原因はほぼ俺なんだけども。
「仮にこれと同じようなのを作るとしたらどのぐらい作れる?」
「え?」
「材料はあるとして一日で何個作れるんだ?」
「この程度でよければ二つ三つは出来ると思います。」
「他にも作れる人はいるのか?」
「そうですね、私も教えてもらった身なので得意にしている人はほかにも心当たりがあります。」
なるほどなるほど。
「シロウ様。」
「幸い材料はある。そのままだと価値はないが加工してやればそれなりの値段で売れると思わないか?」
「私はオオカミの人形が欲しいです。」
「俺に言うなよ。」
作るのは俺じゃない。
熊だけじゃアレなので他にも何種類か作ってもらえると有難い。
それも含めて考えてみてもいいだろう。
「あ、食べちゃった。」
「なぁ、ベアのお友達がいると嬉しいか?」
「うん!」
「そうか、嬉しいか。」
「そしたら寝るときも寂しくないもん。」
「そうだな。美味しいもの食べてみんな一緒なら寂しくないな。」
くしゃくしゃと頭をなでてやると恥ずかしそうにえへへと笑う少女。
よし、やるか。
「ぬいぐるみの制作を依頼したい。月産100体、種類は任せるが5種類は最低ほしい。材料費はこちらで持つから作業する人材はそっちで集めてもらえるか?報酬は一か月銀貨10枚、出来が良ければ増額もある。」
「そんな急にいわれましても。」
「別に返事は急がなくていい。婦人会には俺の方から依頼を出すから可能かどうかを教えてくれ。最初は糸作りからになるかもしれないが作れなくても最初は報酬を出そう。美味しいご飯食べたいよな?」
「お母さんのご飯とっても美味しいんだよ!」
「だそうだ。それを売るのはいいが、帰ってくるのを待ってるんだろ?」
売り物は旦那のものと思われる長剣。
色からさっするに隕鉄か何かだろう。
少し欠けているために値段は安いが悪いものじゃないはずだ。
もし仮に戻ってきたのなら、それさえあればまた戦えるかもしれない。
俺はそれを彼女の腕に戻し、ミラは何も言わずに銀貨を10枚カウンターにのせた。
「これは前金だ。とりあえず5個作ってもらえないか?うちの女達が欲しいと言っているんだ。えぇと・・・。」
「狼と熊、それと鹿もいいですね。可愛らしいのであればスライムでも構いません。出来ますか?」
「本当に私なんかの品でいいんでしょうか。」
「これだけ娘さんに愛される品です、大丈夫ですよ。」
「お姉ちゃんもお母さんのぬいぐるみが欲しいの?」
「うん、お姉ちゃんも一緒に遊んでいい?」
「出来たら一緒に遊ぼうね!」
ミラの表情があまりにも優しいものだから思わずドキッとしてしまった。
普段クールな感じなだけに、ギャップがやばい。
惚れてまうやろ。
「ってことだ。急な依頼で大変かもしれないが宜しく頼む。」
「・・・はい。あの人の為にも頑張ってみようと思います。」
「何かあれば婦人会を頼れ。今はドタバタしているがあそこは悪い組織じゃない。」
「わかりました。」
「じゃあねお兄ちゃんお姉ちゃん!」
「気を付けてな。」
店の外で見送ると、母親と少女は何度も何度もこちらを振り返り頭を下げていた。
「どう思う。」
「当たると思います。ぬいぐるみは子供だけのものではありません、大人でも欲しい時があります。」
「ってことは町の半数は買うな。」
「いえ、もっとです。魔物の中にも可愛いのはいますから、ダンジョンシリーズとして売り出せば国中で売れるかもしれません。」
「マジか。」
「はい、可能性はあります。」
ミラがそういうのであれば間違いないだろう。
売れる可能性があるのならやるまでだ。
なんせ材料は山ほどあるからな。
全部をミケの寝床にするのはもったいない。
さて、さっそくどんな人形が欲しいかリサーチしないと。
まずは・・・モニカの所だな。
やると決めたら即行動。
それから二日後、正式に婦人会を通じてぬいぐるみ製作をすることが決定した。
12
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる