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532.転売屋はぬいぐるみを作る
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「これは何事だ?」
「コットーネが大量発生したのよ。ほんと大変だったんだから。」
「なぁ、最近そういうの多くないか?」
「ダンジョンなんてそんなもんよ。まぁ、一度溢れてから魔力のバランスがおかしいんでしょうけど、直に治るわ。」
「ならいいんだけど。」
「とにかく、これをどうにかしないと。ちなみにいくら?」
『コットーネの綿毛。コットーネの飛ばすフワフワとした綿毛は衣服から布団など様々な用途に用いられており、特に上質なものは取引価格も高い。しかし、ただの綿毛と油断していると身動きが取れなくなり、根っこから伸びた触手に体液を吸われる事故が年に数件報告されている。最近の平均取引価格は銅貨5枚。最安値銅貨2枚最高値銅貨10枚最終取引日は本日と記録されています。』
巨大な綿花を想像するとわかり易いだろうか。
そいつが、蔦を足代わりにしてペタペタとダンジョンを歩き回っているらしい。
獲物を見つけると自らの綿花を飛ばしてくるが所詮は綿。
焼くなり払うなりすれば問題ないのだが、大量の綿に囲まれると身動きが取れなくなり最後は吸われる。
何をだって?
口に出したくないね。
「銅貨2枚。」
「だよねー。かさばるわりに売れないんだよなぁ。」
「燃やせばいいじゃないか。」
「でも売ればもうかるでしょ?」
「数が少なきゃ売れるかもしれないが、こんなに一気に数が増えると売れるもんも売れないって。」
「圧縮するのも大変なのよねぇ。」
「冬前なら需要もあっただろうが、残念だったな。」
布団にするには良かったかもしれない。
服にも使うし、どてらみたいな防寒着もある。
冬ならばまだ需要もあるが、これから暖かくなるにつれてそれも減少するだろう。
どこぞのファストファッションの様に大量生産大量販売の世界じゃない。
余れば値崩れし最後は捨てられる運命だろう。
残念だったな。
「ま、仕方ないか。当分はダンジョンの奥に転がしておくわね。」
「百穴のあったあたりに敷いておけばミケが寝るんじゃないか?」
「あ、それいいかも。ちょっとベッキーに相談してくる。」
「そこはニアじゃないのか?」
ダンジョンを管理しているのは冒険者ギルドだ、ダンジョンの一角を占拠するならそこにお伺いを立てるのが筋だと思うんだが・・・。
ま、今はベッキーが寝床にしてるしギルドもベッキーには貸しがある。
文句は言わないだろう。
エリザが元気よく飛び出していく。
やれやれ元気だなぁ。
「数が多いのも考え物ですね。」
「特に場所をとるやつはな。日常的に使うとはいえ量が多すぎる。何か新しく消費するやつを作らないと減らないだろう。」
「重量はありませんが嵩がありますから、運んでもこの価格では赤字です。シロウ様のいうようにここで消費しないことには難しいでしょう。」
「とはいえ何に使うかだなぁ。」
布団もどきはあるからそれに使うのが一番消費できるだろうけど、これから温かくなるのに布団の出番は少なくなる一方だ。
肌掛けぐらいなら使えるかもしれないが、わざわざ買ってくれるかどうか。
服の産地でもないので衣服で消費できる量は限られている。
いっそ染めるか?とも考えたが、結局糸にするのが大変なんだよなぁ。
元値が安いとはいえ下手に人件費をかけると製品にしたときに回収できない可能性もある。
元値が安いと製品も安くなるのはどの世界も同じだ。
何か特別感を出すしか方法はなさそうだが・・・。
ミラと二人で悩んでいるとカランカランと店のベルが鳴り客が入ってきた。
うちには珍しく子連れの客。
子供は小学生になろうかって感じで、右手にぬいぐるみを抱いている。
「買取をお願いできますか?」
「もちろんです、こちらへどうぞ。」
「お願いします。」
女性客だったのでミラにお任せだ。
ガキは物珍しそうにきょろきょろとあたりを見回している。
ふむ、走り回ったりしないのはいい事だ褒めてやろう。
店の奥からラムネもどきを取り出し、店頭のガキの前にしゃがんでみる。
突然男が出てきたものだから驚いて母親の後ろに隠れてしまった。
「すみません。」
「いやいい、いい子にしてるからお菓子をと思っただけだ。」
「お菓子?」
「食べるか?」
返事の代わりに小さく頷く少女。
申し訳ありませんというってことはあげても問題ないんだろう。
一粒掌にのせてやると恐る恐るという感じで口の中に運んだ。
とたんに目を丸くする。
「美味いか?」
「シュワシュワして美味しい。」
「そうか、なら残りは食べていいぞ。兄弟はいるのか?」
「ううん、私だけ。あと、くまちゃん。」
「名前は?」
「ベア。」
まんまじゃねぇか。
クマのぬいぐるみを自慢気に抱きやっと笑顔を見せた。
余程気に入っているんだろう、所々ほつれている。
「仲良しなんだな。」
「うん!」
「そんないいものじゃないんですけど、家族の代わりにと作ってやったら気に入りまして。」
「ほぉ、手作りなのか。」
「素人でお恥ずかしいのですが。」
「いやいや、いい出来だ。」
この子が大事にするのもうなずける。
ほつれがあるとはいえ中の綿が出ているわけでもなし。
中々頑丈に作っているようだ。
ん、綿?
「お待たせしました銀貨10枚になります。」
「やっぱりそんなものですよねぇ。」
「物入りなのか?」
「二週間主人が帰ってこないものですから。覚悟はしているのですが、やっぱりまだ待ちたくて。」
「そうか。」
この街ではよくある話だ。
冒険者が家族を残してダンジョンで失踪する。
死んだ姿をだれも見ていないから失踪っていう扱いになるんだよな。
不憫だが冒険者を旦那に持つ女の宿命だ。
俺だっていつ逆の立場になるかわからない。
「お父さん、帰ってくるよ。」
「そうね、頑張って待ってないとね。」
「婦人会には連絡したのか?」
「はい。お声がけしてもらって、お仕事もいくつか。でも生まれつき体が弱く皆さんの様に長時間立っていられないんです。つい、寂しさを紛らわせるためにこんなものを。」
そういう人もいるだろう。
冒険者の嫁だから皆強いわけじゃない。
病気がちの人もいるし彼女の様に体の弱い人もいる。
そういう人にも援助をしているはずなんだが、今はいろいろ忙しく手が回っていないのかもしれない。
まぁ、忙しくした原因はほぼ俺なんだけども。
「仮にこれと同じようなのを作るとしたらどのぐらい作れる?」
「え?」
「材料はあるとして一日で何個作れるんだ?」
「この程度でよければ二つ三つは出来ると思います。」
「他にも作れる人はいるのか?」
「そうですね、私も教えてもらった身なので得意にしている人はほかにも心当たりがあります。」
なるほどなるほど。
「シロウ様。」
「幸い材料はある。そのままだと価値はないが加工してやればそれなりの値段で売れると思わないか?」
「私はオオカミの人形が欲しいです。」
「俺に言うなよ。」
作るのは俺じゃない。
熊だけじゃアレなので他にも何種類か作ってもらえると有難い。
それも含めて考えてみてもいいだろう。
「あ、食べちゃった。」
「なぁ、ベアのお友達がいると嬉しいか?」
「うん!」
「そうか、嬉しいか。」
「そしたら寝るときも寂しくないもん。」
「そうだな。美味しいもの食べてみんな一緒なら寂しくないな。」
くしゃくしゃと頭をなでてやると恥ずかしそうにえへへと笑う少女。
よし、やるか。
「ぬいぐるみの制作を依頼したい。月産100体、種類は任せるが5種類は最低ほしい。材料費はこちらで持つから作業する人材はそっちで集めてもらえるか?報酬は一か月銀貨10枚、出来が良ければ増額もある。」
「そんな急にいわれましても。」
「別に返事は急がなくていい。婦人会には俺の方から依頼を出すから可能かどうかを教えてくれ。最初は糸作りからになるかもしれないが作れなくても最初は報酬を出そう。美味しいご飯食べたいよな?」
「お母さんのご飯とっても美味しいんだよ!」
「だそうだ。それを売るのはいいが、帰ってくるのを待ってるんだろ?」
売り物は旦那のものと思われる長剣。
色からさっするに隕鉄か何かだろう。
少し欠けているために値段は安いが悪いものじゃないはずだ。
もし仮に戻ってきたのなら、それさえあればまた戦えるかもしれない。
俺はそれを彼女の腕に戻し、ミラは何も言わずに銀貨を10枚カウンターにのせた。
「これは前金だ。とりあえず5個作ってもらえないか?うちの女達が欲しいと言っているんだ。えぇと・・・。」
「狼と熊、それと鹿もいいですね。可愛らしいのであればスライムでも構いません。出来ますか?」
「本当に私なんかの品でいいんでしょうか。」
「これだけ娘さんに愛される品です、大丈夫ですよ。」
「お姉ちゃんもお母さんのぬいぐるみが欲しいの?」
「うん、お姉ちゃんも一緒に遊んでいい?」
「出来たら一緒に遊ぼうね!」
ミラの表情があまりにも優しいものだから思わずドキッとしてしまった。
普段クールな感じなだけに、ギャップがやばい。
惚れてまうやろ。
「ってことだ。急な依頼で大変かもしれないが宜しく頼む。」
「・・・はい。あの人の為にも頑張ってみようと思います。」
「何かあれば婦人会を頼れ。今はドタバタしているがあそこは悪い組織じゃない。」
「わかりました。」
「じゃあねお兄ちゃんお姉ちゃん!」
「気を付けてな。」
店の外で見送ると、母親と少女は何度も何度もこちらを振り返り頭を下げていた。
「どう思う。」
「当たると思います。ぬいぐるみは子供だけのものではありません、大人でも欲しい時があります。」
「ってことは町の半数は買うな。」
「いえ、もっとです。魔物の中にも可愛いのはいますから、ダンジョンシリーズとして売り出せば国中で売れるかもしれません。」
「マジか。」
「はい、可能性はあります。」
ミラがそういうのであれば間違いないだろう。
売れる可能性があるのならやるまでだ。
なんせ材料は山ほどあるからな。
全部をミケの寝床にするのはもったいない。
さて、さっそくどんな人形が欲しいかリサーチしないと。
まずは・・・モニカの所だな。
やると決めたら即行動。
それから二日後、正式に婦人会を通じてぬいぐるみ製作をすることが決定した。
「コットーネが大量発生したのよ。ほんと大変だったんだから。」
「なぁ、最近そういうの多くないか?」
「ダンジョンなんてそんなもんよ。まぁ、一度溢れてから魔力のバランスがおかしいんでしょうけど、直に治るわ。」
「ならいいんだけど。」
「とにかく、これをどうにかしないと。ちなみにいくら?」
『コットーネの綿毛。コットーネの飛ばすフワフワとした綿毛は衣服から布団など様々な用途に用いられており、特に上質なものは取引価格も高い。しかし、ただの綿毛と油断していると身動きが取れなくなり、根っこから伸びた触手に体液を吸われる事故が年に数件報告されている。最近の平均取引価格は銅貨5枚。最安値銅貨2枚最高値銅貨10枚最終取引日は本日と記録されています。』
巨大な綿花を想像するとわかり易いだろうか。
そいつが、蔦を足代わりにしてペタペタとダンジョンを歩き回っているらしい。
獲物を見つけると自らの綿花を飛ばしてくるが所詮は綿。
焼くなり払うなりすれば問題ないのだが、大量の綿に囲まれると身動きが取れなくなり最後は吸われる。
何をだって?
口に出したくないね。
「銅貨2枚。」
「だよねー。かさばるわりに売れないんだよなぁ。」
「燃やせばいいじゃないか。」
「でも売ればもうかるでしょ?」
「数が少なきゃ売れるかもしれないが、こんなに一気に数が増えると売れるもんも売れないって。」
「圧縮するのも大変なのよねぇ。」
「冬前なら需要もあっただろうが、残念だったな。」
布団にするには良かったかもしれない。
服にも使うし、どてらみたいな防寒着もある。
冬ならばまだ需要もあるが、これから暖かくなるにつれてそれも減少するだろう。
どこぞのファストファッションの様に大量生産大量販売の世界じゃない。
余れば値崩れし最後は捨てられる運命だろう。
残念だったな。
「ま、仕方ないか。当分はダンジョンの奥に転がしておくわね。」
「百穴のあったあたりに敷いておけばミケが寝るんじゃないか?」
「あ、それいいかも。ちょっとベッキーに相談してくる。」
「そこはニアじゃないのか?」
ダンジョンを管理しているのは冒険者ギルドだ、ダンジョンの一角を占拠するならそこにお伺いを立てるのが筋だと思うんだが・・・。
ま、今はベッキーが寝床にしてるしギルドもベッキーには貸しがある。
文句は言わないだろう。
エリザが元気よく飛び出していく。
やれやれ元気だなぁ。
「数が多いのも考え物ですね。」
「特に場所をとるやつはな。日常的に使うとはいえ量が多すぎる。何か新しく消費するやつを作らないと減らないだろう。」
「重量はありませんが嵩がありますから、運んでもこの価格では赤字です。シロウ様のいうようにここで消費しないことには難しいでしょう。」
「とはいえ何に使うかだなぁ。」
布団もどきはあるからそれに使うのが一番消費できるだろうけど、これから温かくなるのに布団の出番は少なくなる一方だ。
肌掛けぐらいなら使えるかもしれないが、わざわざ買ってくれるかどうか。
服の産地でもないので衣服で消費できる量は限られている。
いっそ染めるか?とも考えたが、結局糸にするのが大変なんだよなぁ。
元値が安いとはいえ下手に人件費をかけると製品にしたときに回収できない可能性もある。
元値が安いと製品も安くなるのはどの世界も同じだ。
何か特別感を出すしか方法はなさそうだが・・・。
ミラと二人で悩んでいるとカランカランと店のベルが鳴り客が入ってきた。
うちには珍しく子連れの客。
子供は小学生になろうかって感じで、右手にぬいぐるみを抱いている。
「買取をお願いできますか?」
「もちろんです、こちらへどうぞ。」
「お願いします。」
女性客だったのでミラにお任せだ。
ガキは物珍しそうにきょろきょろとあたりを見回している。
ふむ、走り回ったりしないのはいい事だ褒めてやろう。
店の奥からラムネもどきを取り出し、店頭のガキの前にしゃがんでみる。
突然男が出てきたものだから驚いて母親の後ろに隠れてしまった。
「すみません。」
「いやいい、いい子にしてるからお菓子をと思っただけだ。」
「お菓子?」
「食べるか?」
返事の代わりに小さく頷く少女。
申し訳ありませんというってことはあげても問題ないんだろう。
一粒掌にのせてやると恐る恐るという感じで口の中に運んだ。
とたんに目を丸くする。
「美味いか?」
「シュワシュワして美味しい。」
「そうか、なら残りは食べていいぞ。兄弟はいるのか?」
「ううん、私だけ。あと、くまちゃん。」
「名前は?」
「ベア。」
まんまじゃねぇか。
クマのぬいぐるみを自慢気に抱きやっと笑顔を見せた。
余程気に入っているんだろう、所々ほつれている。
「仲良しなんだな。」
「うん!」
「そんないいものじゃないんですけど、家族の代わりにと作ってやったら気に入りまして。」
「ほぉ、手作りなのか。」
「素人でお恥ずかしいのですが。」
「いやいや、いい出来だ。」
この子が大事にするのもうなずける。
ほつれがあるとはいえ中の綿が出ているわけでもなし。
中々頑丈に作っているようだ。
ん、綿?
「お待たせしました銀貨10枚になります。」
「やっぱりそんなものですよねぇ。」
「物入りなのか?」
「二週間主人が帰ってこないものですから。覚悟はしているのですが、やっぱりまだ待ちたくて。」
「そうか。」
この街ではよくある話だ。
冒険者が家族を残してダンジョンで失踪する。
死んだ姿をだれも見ていないから失踪っていう扱いになるんだよな。
不憫だが冒険者を旦那に持つ女の宿命だ。
俺だっていつ逆の立場になるかわからない。
「お父さん、帰ってくるよ。」
「そうね、頑張って待ってないとね。」
「婦人会には連絡したのか?」
「はい。お声がけしてもらって、お仕事もいくつか。でも生まれつき体が弱く皆さんの様に長時間立っていられないんです。つい、寂しさを紛らわせるためにこんなものを。」
そういう人もいるだろう。
冒険者の嫁だから皆強いわけじゃない。
病気がちの人もいるし彼女の様に体の弱い人もいる。
そういう人にも援助をしているはずなんだが、今はいろいろ忙しく手が回っていないのかもしれない。
まぁ、忙しくした原因はほぼ俺なんだけども。
「仮にこれと同じようなのを作るとしたらどのぐらい作れる?」
「え?」
「材料はあるとして一日で何個作れるんだ?」
「この程度でよければ二つ三つは出来ると思います。」
「他にも作れる人はいるのか?」
「そうですね、私も教えてもらった身なので得意にしている人はほかにも心当たりがあります。」
なるほどなるほど。
「シロウ様。」
「幸い材料はある。そのままだと価値はないが加工してやればそれなりの値段で売れると思わないか?」
「私はオオカミの人形が欲しいです。」
「俺に言うなよ。」
作るのは俺じゃない。
熊だけじゃアレなので他にも何種類か作ってもらえると有難い。
それも含めて考えてみてもいいだろう。
「あ、食べちゃった。」
「なぁ、ベアのお友達がいると嬉しいか?」
「うん!」
「そうか、嬉しいか。」
「そしたら寝るときも寂しくないもん。」
「そうだな。美味しいもの食べてみんな一緒なら寂しくないな。」
くしゃくしゃと頭をなでてやると恥ずかしそうにえへへと笑う少女。
よし、やるか。
「ぬいぐるみの制作を依頼したい。月産100体、種類は任せるが5種類は最低ほしい。材料費はこちらで持つから作業する人材はそっちで集めてもらえるか?報酬は一か月銀貨10枚、出来が良ければ増額もある。」
「そんな急にいわれましても。」
「別に返事は急がなくていい。婦人会には俺の方から依頼を出すから可能かどうかを教えてくれ。最初は糸作りからになるかもしれないが作れなくても最初は報酬を出そう。美味しいご飯食べたいよな?」
「お母さんのご飯とっても美味しいんだよ!」
「だそうだ。それを売るのはいいが、帰ってくるのを待ってるんだろ?」
売り物は旦那のものと思われる長剣。
色からさっするに隕鉄か何かだろう。
少し欠けているために値段は安いが悪いものじゃないはずだ。
もし仮に戻ってきたのなら、それさえあればまた戦えるかもしれない。
俺はそれを彼女の腕に戻し、ミラは何も言わずに銀貨を10枚カウンターにのせた。
「これは前金だ。とりあえず5個作ってもらえないか?うちの女達が欲しいと言っているんだ。えぇと・・・。」
「狼と熊、それと鹿もいいですね。可愛らしいのであればスライムでも構いません。出来ますか?」
「本当に私なんかの品でいいんでしょうか。」
「これだけ娘さんに愛される品です、大丈夫ですよ。」
「お姉ちゃんもお母さんのぬいぐるみが欲しいの?」
「うん、お姉ちゃんも一緒に遊んでいい?」
「出来たら一緒に遊ぼうね!」
ミラの表情があまりにも優しいものだから思わずドキッとしてしまった。
普段クールな感じなだけに、ギャップがやばい。
惚れてまうやろ。
「ってことだ。急な依頼で大変かもしれないが宜しく頼む。」
「・・・はい。あの人の為にも頑張ってみようと思います。」
「何かあれば婦人会を頼れ。今はドタバタしているがあそこは悪い組織じゃない。」
「わかりました。」
「じゃあねお兄ちゃんお姉ちゃん!」
「気を付けてな。」
店の外で見送ると、母親と少女は何度も何度もこちらを振り返り頭を下げていた。
「どう思う。」
「当たると思います。ぬいぐるみは子供だけのものではありません、大人でも欲しい時があります。」
「ってことは町の半数は買うな。」
「いえ、もっとです。魔物の中にも可愛いのはいますから、ダンジョンシリーズとして売り出せば国中で売れるかもしれません。」
「マジか。」
「はい、可能性はあります。」
ミラがそういうのであれば間違いないだろう。
売れる可能性があるのならやるまでだ。
なんせ材料は山ほどあるからな。
全部をミケの寝床にするのはもったいない。
さて、さっそくどんな人形が欲しいかリサーチしないと。
まずは・・・モニカの所だな。
やると決めたら即行動。
それから二日後、正式に婦人会を通じてぬいぐるみ製作をすることが決定した。
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*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
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