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144.転売屋はギルド協会の後ろ盾を得る

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マートンさんに聞くと、加工品主にインゴット系はどこでも引く手数多らしく捌くのには困らないようだ。

他にも板金になっている物や、針金状に加工されている物も良く使用するらしい。

ミラの言うように加工品はなかなかよさそうな感じだ。

だが、それに比例するように値段も上がる。

流石に業者にそれだけの金を渡すのは怖いなぁ。

まぁ、ダンもいるし大丈夫だろうけど盗人に襲われないとも限らない。

出来るだけ情報は隠しておく方がいいだろう。

とはいえ、出口で見張られていて購入履歴を読み上げられるとバレるんだよな。

エリザに行ってもらう方がいいだろうか。

悩ましい所だ。

「で、結局どうするのよ。」

「悩んでるんだよ。」

「別に私は構わないわよ?朝行って夜帰ってくるだけだし、何もなければそれだけでお金がもらえるもの。」

「でも何かあったら大変だろ?」

「それはこの間も同じよ。魔物も盗人も、切れば死ぬわ。」

割り切っているというかなんというか。

過去にそういう依頼もこなして人も殺したことがあるんだろう。

そんな事でメンタルをやられているようじゃ冒険者なんてできないんだろうな。

殺らなければ殺られる。

命の取り合いをするのは魔物も人間も同じことだ。

違うとすれば人間の方が狡猾で、めんどくさいって事ぐらいだな。

「最悪荷物を置いて逃げてもいいからな。」

「危ない時はね。」

「ではエリザ様に行ってもらうんですね。」

「あぁ、本人が大丈夫と言うのなら俺が悩む必要はない。無事で帰ってこい、それだけだ。」

「ふふ、私がシロウを置いてどこかに行くはずないじゃない。」

「買い付けは業者に任せていいだろう、金の管理と護衛に専念してくれ。護衛料は・・・。」

「それは今晩支払ってくれるんでしょ?私、ソロソロだから覚悟してよね。」

何がソロソロなのかはあえて聞くまい。

子供を作るつもりはないだろうからそっちじゃないのは確かだし、三人共アネットの作った避妊薬を飲んでいるのは知っている。

生理は来るがかなり軽くなり加えて排卵を抑制して懐妊し辛くする薬だ。

おもに娼館で使われている奴だが、女性冒険者は生理をコントロールできると常用している人も多いと聞く。

元の世界で言う低用量のピルと同じだろう。

昔は使用してると好き物みたいな感じでとらえられていたが、今では生活品質の向上に用いられている。

俺にはその苦労はわからないが、あると便利なんだから使えばいいだろう。

俺もまだ子持ちになるつもりはない。

「では夜はお酒を控え、肉類を増やします。頑張ってくださいシロウ様。」

「強壮剤必要でしたら仰ってくださいね。」

「・・・翌日に残らない程度で頼む。」

「ふふふ、この間一緒になった冒険者から色々と聞いてきたから覚悟してよね。」

一体何を聞いてきたんだろうか。

楽しみなような不安なような。

底なしの体力で言えばアネットだが、エリザはかなりパワフルだからなぁ。

翌日マジで全身筋肉痛なんだ。

それでも苦痛ではない。

好きな女と好きな事をするんだ、イヤなはずないじゃないか。


「大丈夫?」

「大丈夫だ問題ない。」

「えへへ、張り切りすぎちゃった。ごめんね。」

翌朝、全身筋肉痛の俺と晴れやかな顔をしたエリザはギルド協会へと向かっていた。

隣町での買い付けと土地の件を伝えるためだ。

一歩進むごとに股関節が痛む。

まるで操り人形のようにぎこちない歩き方になってしまう。

一応大丈夫とは言ったが、あまり大丈夫じゃないかもしれない。

昨日のエリザは飼い犬というより野獣って感じだったな。

アネットが作ったヤバい薬でも飲んでたんじゃないかと疑ってしまうぐらいだ。

「ようこそお越しくださいました・・・大丈夫ですかシロウさん。」

「気にするな。」

「あれ、ニア!なんでいるの?」

「ちょっとね。それじゃあまた。」

「えぇ。貴重な情報ありがとうございました。」

羊男の頬にニアさんがキスをして去って行った。

おーおー、朝っぱらから見せつけてくれちゃって。

そんなことしたらうちの野獣が・・・ほら見ろ、うらやましそうな顔で見てやがる。

「帰ったらな。」

「えへへ、うん!」

「土地の件ですよね?」

「それと隣町への買い付けについて情報を仕入れたい。」

「また行かれるのですか?」

「いや、俺はいかないがエリザが行く。今回は事前にしっかりと情報を仕入れてから行かないとな。」

いつもの部屋に案内され、ソファーに深く腰掛ける。

ふぅ、楽になった。

「まずは土地の方からお聞きします。」

「現在の予定では、まず隣町から土の魔道具を仕入れてきてそれで土を耕す予定だ。それと並行するように簡易の柵を設置、ギルドにはその人員を確保してもらいたい。」

「なるほど魔道具ですか、考えましたね。」

「あれなら力の弱い女性でも問題ないし、耕し方も均一に出来る。人員を少なくする分柵の方に人員を回せるだろう。」

「わかりました、何台用意されますか?」

「五台だ。」

「ではそちらに人員を五人、男性を十人手配します。」

まぁ、妥当な線だな。

別に耕すだけが仕事じゃない、道具の準備や材料の搬入なんかの仕事もある。

屋外で作業するので警備も必要だが、その辺は言わなくても大丈夫だろう。

「手始めに冬野菜を植える予定だ。マジカルキャロット、グリーンラディッシュ、オニオニオンが今の候補だな。加えて畑の中心部に希少性の高い薬草を植える予定でもいる。」

「マジカルキャロットにオニオニオンですか、いいチョイスですね。」

「最初は街で消費できる程度に抑えるつもりだが、問題が無ければ二回目は増やす予定だ。だがそれには問題があってな・・・。」

「倉庫をどうするかですね。」

「わかってるじゃないか。」

「我々としても国に税金を取られるぐらいならここに収めて欲しいというのが本音です。その為のお手伝いぐらいはさせて頂きたいと思っています。」

「ならそれなりにでかいやつ、作ってくれるよな?」

「あくまでも個人用の畑に見合うサイズまでです。収穫量が多いのであれば、街の中に別の倉庫をご用意しますよ。」

「それは有料なんだろ?」

「格安でとお約束させてもらいます。」

まぁ、妥当なところか。

自分で倉庫を建てなくて済むだけでも大きな収穫だ。

軌道に乗るかもまだわからないし、結果要りませんでしたっていう可能性も否定できない。

俺は良く知らないが、税務官的な奴が来た時に不釣り合いな倉庫があると指摘されかねないんだろう。

その辺は任せてしまった方が何かと都合がいいだろうな。

「わかった、倉庫の場所は分かるようにしておくから後は勝手にやってくれ。希望は農機具が保管し易くて、害獣害虫対策が出来ている事だ。」

「お任せください。」

これで畑は問題なし。

んじゃ、もう一個の方だな。

「後は隣町の件だが・・・。」

「現在の専売品リストになります、まずはこちらをご確認ください。」

「用意周到だな。」

「あの女の悔しそうな顔が見れるのであれば喜んで働きますよ。」

「何か恨みでもあるのか?」

「無ければこんな事しません。」

ま、それもそうだ。

提示されたリストに目を通すと、前回俺が持ち込んだ素材が追加されていた。

同じ品で利益を出すのは難しいようだ。

唯一載っていなかったのはブラウンマッシュルームだが、これも時間の問題かもしれない。

そうなると一度ギルドに卸してからって事になるのか。

余り高値で売ることは出来そうにないな。

「買う方は問題ないよな?」

「魔道具にも制限が付きますが、今回の個数であれば大丈夫です。主に大型の魔道具はギルド協会の許可が無いと持ち出すことが出来ないとか。」

「商売あがったりじゃないか。」

「それが嫌で逃げ出す商人も多いそうです。」

「だろうなぁ。」


「今回は何を買い付けるんですか?」

「工業用の加工品、板金や針金なんかを仕入れるつもりだ。」

「冒険者が強くなるのは有難い事です。」

「買い付けは業者に頼むが、また文句を言ってくる可能性もあるからここからの注文品って事にしたいんだが・・・そういうことは出来るのか?」

俺の提案に羊男が腕を組み俯いてしまった。

考えているようだ。

「ねぇ、なんでギルドの注文品にするの?」

「そりゃ個人よりも街の方が文句言いにくいからだよ。」

「でも、街が仕入れるなんてことある?」

「もちろんあります。今回は闘技大会が近い事を言い訳にして仕入れれば問題ないでしょう。ギルドの許可証を出しますのでそれを提示するように業者へは伝えてください。」

「闘技大会?」

「そっか、11月だもんね。」

「冒険者を集めたお祭りのようなものです。」

好きだねぇ、そういうの。

俺からしたら誰が一番強いかなんてどうでもいい話だが、強い奴は仕事も増えるだろうし冒険者からしてみれば重要な大会なんだろう。

って事はだ。

それに向けた道具が良く売れるって事だ。

「殺し合うのか?」

「いえ、使用するのは刃を潰した武器ですので怪我人は出ますが死人は出ません。」

「そうか、良い事を聞いた。」

「それ用の装備を買い付けるのね。」

「わざわざ儲けを捨てる理由はない、がっつりやらせてもらおう。」

「是非そうしてください、シロウさんが儲かれば私達も儲かります。」

「どうせ賭けの胴元をして儲けるつもりだろ?俺の稼ぎなんて微々たるもんだよ。」

戦いは金になる。

基本賭け事ってのは胴元が儲かるようになってるからな、人死にが出ないならやらない理由はないだろう。

「いやぁ、そんなことはしませんよ。」

「表だってはそうだろうが、裏ではやってるよな。」

「私は何も言わないわよ。出る方だし。」

「お前も出るのか?」

「当たり前よ!これでも優勝候補って言われてるんだから。」

「優勝したことは?」

「な、ないけど・・・。」

つまりは噛ませ犬って事だ。

犬だけに。

それも過去の話だ。

武器依存じゃないって事はそれ以外の装備で身を固めれば可能性が高くなるってことだ。

俺がついていて負けなど許すはずがない。

エリザの為にも仕入れを強化するとしよう。

「ま、こっちとしては無事に仕入れが出来れば問題ない。許可証はいつ発行できる?」

「明日の朝一番にお持ちします。ただし、金貨5枚までですからね。」

「十分だ。」

「それじゃあ私はこれで、野暮用があるんです。」

「急に悪かったな。」

ニア関係の何かだろう、別に羊男が何しようが俺には関係ない。

さぁ儲ける準備は出来たぞ。

後は実行あるのみだ。
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