転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す

エルリア

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104.転売屋は不思議なものを手に入れる

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見た目だけがガキの不思議な存在を連れて蚤の市を見て回る。

暇つぶしとか言っておきながら随分と楽しそうじゃないか。

いい年した大人?が子供みたいにはしゃぎやがって。

え、お前は楽しくないのかって?

楽しいに決まってるだろ。

「あれはなんだ?」

「食べ物の出店だろう。見た感じ魔物の肉を焼いてるんじゃないか?」

「なに、魔物を?」

「さっき食ったのも魔物の肉だ。何を今更。」

「そ、そうだな。魔物も家畜も肉は肉だ。」

「魔物を家畜化したものが今の家畜だってマスターが言ってたなぁ。」

「人は何でも食べるのだな。」

「生きていくには食べ物がいる。毒が無く食べられるのなら何でも食うさ。まぁ、毒があっても食べるやつもいるけどな。」

もちろん毒を食べるわけじゃない。

ちゃんと毒になる部分を除去してやれば問題はない。

元の世界ではそういう食材が結構あった。

ぶっちゃけ食べ物に命をかけすぎな種族だと俺は思うね。

河豚とかこんにゃくとか納豆とか。

河豚と言えば猛毒の河豚の卵巣を塩漬けと糠漬けにして食べられるようにした奴があったな。

除去すらせずに食べるとか、頭おかしいだろ。

「毒じゃなければ、か。確かにそうだ。」

「だろ?いいからほれ、食ってみろ。」

難しい話は嫌いじゃないがこういう時にする話でもない。

ケバブのように肉を回転させながら焼いているようで、二つ買って一つ押し付けてやる。

トルティーヤのような薄い生地にジューシーな肉の切れ端と野菜がこれでもかと入れてある。

先っぽを少し潰して大きさを調整し、一口でほおばると肉汁が口の中に溢れてきた。

胡椒のピリ辛い感じが何とも言えない。

辛子の空さは苦手だが胡椒の辛さは好きなんだよな。

ちなみにわさびも大丈夫だ。

「美味いな。」

「だろ、こういう日ならではの食べ物だよな。うん。美味い。」

「おぬし食べてばかりだな。」

「仕事はしたからな、今はフリータイムだ。」

「仕事?」

「言ってなかったな、ここで買取屋をやってるんだ。」

なんだそれはと言いたいのが良くわかる顔をしている。

顔は口ほどにものを言うってね。

「冒険者がダンジョンから持ち帰った色々な品を俺が買い取って他の場所で売るのさ。」

「自分で売ればいいではないか。」

「売るのには時間が掛かるだろ?その時間を冒険に費やせばまた金が稼げる。俺はダンジョンに行かずに珍しい品を手に入れることが出来る。win-winの仕事ってやつさ。」

「なるほど効率がいいのだな。」

「見ての通り武勇はからっきしだからな。加えて今日みたいな日に住民が売りに出す不用品の中から良品を見つけるのも仕事だ。っと、あれはなんだ?」

説明するより実際見せる方が早い。

丁度見たことのない品を見つけたので会話を中断して露店の爺さんに話しかけた。

「爺さん、それはなんだい?」

「これか?杖だ。」

「見たらわかるよ。先っぽに石がついてるけど魔道具かなにかか?」

「さぁなぁ、婆さんがつかっとったやつだからワシにはわからん。その婆さんも死んで久しいしな。」

「冒険者だったのか?」

「そんなわけがなかろう。」

「見せてもらっていいか?」

情報は無し。

なら見たら早いってね。

爺さんから杖を受け取るとすぐにスキルが発動する。

『転ばぬ先の杖。魔石の力で転倒を防止することが出来る。最近の平均取引価格は銀貨5枚、最安値銀貨3枚、最高値銀貨9枚、最終取引日は29日前と記録されています。』

名前の通りの品ってか。

初めて見るが俺にも冒険者にも不要の品だな。

「へぇ、面白い品だな。奥さんはこけたことなかったんじゃないか?」

「確かにそうだな、身体は弱かったがこけた記憶は無い。」

「転ばぬ先の杖ってね、それはいいもんだよ売らずに爺さんが使いな。」

「そうか、良いものか。それじゃあ遠慮なくつかわせてもらうよ。」

「それがいい、奥さんも喜ぶだろ。」

「ありがとうよ、そうだこれを持っていきな。」

杖を返すと愛おしそうにその杖を抱きしめる爺さん。

思い入れがあるものの、手元にあると悲しくなることも有る。

だがそれは死ぬまで爺さんを守ってくれるだろう。

俺には不要なものだ。

「これは?」

「孫がダンジョンから持って帰って来たやつなんだが、何かの石らしい。」

「願いの小石じゃないか。」

「願いはもう適ったよ。」

「じゃあ遠慮なく貰っとく、長生きしろよ爺さん。」

杖を返したら石が転がり込んできた。

これで何個目だ?

ま、気長に集めるって話だったし別にいいか。

「待たせたな。」

「品を鑑定するのがお前の仕事か?」

「それもするが今回は偶然だ。良い品じゃなかったからな。」

「なるほど、それらしいものを見つけて買い付けるのか。」

「そういう事だ。結構あるんだぜ、価値が分からず眠ってる品ってのは。」

「それはわかる。いつの間にか物は増えているからな、それをバラまくのもワシの仕事だ。」

ばらまく?

よくわからないな。

というかそもそも何者なのかすらわからないんだが、聞いてもはぐらかされるだけだ。

別に知ったからと言って何かが変わるわけもない。

むしろ知らない方がいい事もある。

「良い品を安く買い高く売る、商売の基本だ。」

「なるほどな。」

「っと、そろそろこの通りも終わりだ。」

「この先には何がある?」

「ダンジョンと信仰所だ。さすがに向こうには店は出てないんだな。」

急に店が無くなりここから先は無人のようだ。

ダンジョンを封鎖しているという話は聞いていないが、わざわざ今日潜るやつは少ないだろう。

「そうか、これで終わりか。」

「まぁそんな顔するな、最後に一番大きなところが残ってる。」

「まだあるのか。」

「むしろそこが一番の通りだな、見て驚け。」

来た道を戻り商店街のある通りへと向かう。

昼を過ぎ少しずつ客が少なくなってきたとはいえ、まだまだ大勢の人でにぎわっている。

「これはまた・・・。」

「すごいだろ。」

「この活気、人間のエネルギーには驚かされる。」

「何も考えずに生きるより何かの為に生きる方が楽しいからな。今日はその終着地点みたいなもんだ。」

「おぬしは何の為に生きている?」

「金に決まってるだろ。」

「金か。」

「それがあれば何でもできるからな。食事も娯楽も何なら命だって買える。」

「他人の命を買うのか。」

買えちゃうんだよね、この世界では。

元の世界でも非合法では買えたかもしれないがそんなことに縁のない人生だった。

その点この世界では人の命が日常的に売り買いされている。

もちろん臓器を売買する為とかではない。

労働力を含め色々な使い方はあるが、決して粗末な使われ方はしていないようだ。

「俺はその命でまた金を稼ぐ。金が金を呼ぶのさ。」

「そんなに稼いで何がしたい。」

「そうだな・・・。」

この世界に来た時は店を持ちたいという目標があった。

だがそれを達成して以降は時々できる小さな目標に向かって生きるだけで、さらに大きな目標を決めることは無かった。

そろそろ次を考えてもいいだろう。

「自分のやりたいことを苦もなく出来るようになりたい。だから金が欲しい。」

「やりたいことをやる為か。」

「何をするにも金は要るからな。金さえあれば思い立った時にそれが出来るだろ?」

「つまり全ては自分の為、というわけだな。」

「そうだ。」

「人間らしい答えよのぉ。」

ハッハッハと今日一番の声を出して笑う。

見た目はガキだがこの笑い方は絶対に違う。

なんなら俺よりもかなり年上な雰囲気すらある。

それこそ100年以上生きてますって言われてもおかしくない。

「あ、シロウじゃない。」

そんな時に俺を呼ぶ声が後ろから聞こえた。

この声はエリザだな。

「店は終わったのか?」

「うん、完売御礼。アネットもかなりの仕事を引き受けてたから無理やり終わらせたの。」

「それがいい、働き過ぎなんだよアネットは。」

「あれ、その子は?」

「さっき大通りで迷子だと思って声をかけたんだが違ったんだ。」

「へぇ、シロウが迷子をねぇ・・・ってボード!?」

「おや、エリザじゃないか。」

なんだなんだ?

まるで久しぶりに会う友人に会ったような反応をする二人。

エリザがここまで驚くのはめずら・・・しくもないか。

「知り合いか?」

「え、あ、うん。ダンジョンでちょっと。」

「ダンジョンで?」

「この間ダンジョンで倒れていたのを救ってやったんだ。血まみれで倒れていてな、たまたまポーションを持っていたから振りかけてやったのさ。」

「それってもしかして出会うきっかけになったやつか?」

「うん。あの時ボードに助けてもらわなかったらあのまま死んでいたかも。でもなんでこんな所に?ダンジョンから出ないんじゃなかったの?」

「別に出ないわけじゃない。出る理由がないだけさ。」

なるほどなぁ、エリザの命の恩人ってわけか。

ここは礼を言うべきなのか?

迷う所だな。

「ちなみに今日はどうして出てきたんだ?」

「冒険者の数が少ないのでな、暇つぶしに出てきただけだ。」

「暇つぶしね。」

「いい暇つぶしになった、礼を言うぞ。」

「そりゃどうも。で、そのお礼ついでにそろそろ何者か教えてもらってもいいか?」

「そうだなぁ・・・。いや、それはまたの機会にするか。」

ってここまで来てそれはないだろ。

だがこの感じだと無理やり聞いても言わないだろうし・・・。

まぁいいさ、エリザに聞けばいいだけの話だ。

知っていたらの話だけどな。

「もう帰っちゃうの?」

「あぁ、色々と楽しませてもらった。」

「そっか、じゃあまたダンジョンでね。」

「あそこまで潜るのはエリザぐらいだからな、次に来た時はその男に免じて茶ぐらい出してやろう。」

「やった!」

何故エリザが恩恵にあずかっているんだろうか。

解せぬ。

「そしてこれが最初に言った礼だ、ほれ落とすなよ。」

そんな気持ちを察したのか、ガキが何かをポケットから取り出した。

慌ててしゃがみそれを受け取る。

『招きの小玉(オーブ)。様々なものを引き寄せる不思議なオーブ。引き寄せる力は持つ者の欲に比例する。取引履歴が無い為相場不明。』

お、おぉ?

相場不明とか初めて出たぞ。

ルティエに作らせた一点物のアクセサリーだって大体の値段が出たのに、こんなことは初めてだ。

ってかこんなもの取り出すとかいったい何者だよ。

「おい、これ・・・。」

「渡すものは渡したからな。さらばだ。」

「いや、ちょっとまて、こら!」

さらばだとだけ言って、本当のガキのようにあっという間に人ごみの向こうに消えてしまった。

残されたのはこの不思議なオーブだけ。

呪われてはいない様だけど・・・。

大丈夫なのか?

「いっちゃったね。」

「だな。」

「何貰ったの?」

「わからん。わからんが大事そうなのでとりあえず持って帰る。で、もっかい出る。」

「えぇ!また~?」

「店じまいしたんだろ?せっかくの蚤の市だ、皆で出かけるぞ。」

よくわからないが大事な物のようなので持って帰ろう。

さすがにこれを持ったままうろつくのは怖い。

一緒に行けるとわかって大喜びするエリザに連れられて店へと戻る。

その後は夜遅くまで四人で蚤の市を堪能するのだった。
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