【完結】スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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初めての朝、3

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 電車が副島の家の最寄り駅へ到着する。
 副島は、日和を気遣いながら足早に人込みをかき分けていく。
 日和は置いていかれないように必死について行った。
 駅近の副島の家まではあっという間で、オートロックを開けて、エレベーターに乗る。
 我慢が出来ないとキスしてこようとする副島を、そっといなして、副島の家の階で止まったエレベーターの扉が開くのももどかしいと飛び出す副島。
 日和は手を引かれて、それについて行く。
 慌てすぎて、玄関のスマートロックを解除するのに少し手間取りながら、部屋に入ると、閉まる扉に日和の背中を押し付けて、あわただしくキスをされた。
「日和…、泊まってって、このまま。今日も帰したくない」
「ン、ッ、仕事、です、あした…っ」
「ここから、行けばいい。あんまりかわらない、でしょ」
「でもっ…、ンん、だめ…」
「帰したくない…、閉じ込めてしまいたい…っ」
 低くつぶやいた副島の声はゾクッとするほど色っぽくて、日和は一瞬息をのんだ。
「ッ…」
「…なんてね? …さすがに…、閉じ込めたり…、しないけど…、今日は帰したくない…」
「あっ…、ちょ、ほんとに、だめ…です…っ」
 副島の手が服に入り込んできたので、慌てて止めた。
「日和…、お願い、あと一回だけ…」
「そんな…、甘えてもダメ、ですよ…。もう、明日仕事行かれなくなっちゃいます」
「うぅ…、日和は大人だ…」
「ふふ。副島さん、可愛いですね」
「このまま玄関で押し倒してしまいたくなるからそういうこと言ってはダメだよ」
「…また来ますから、今度はここに泊めてください」
「わかった…、じゃあこれから僕が着替えるから、車で日和の家まで行って、そのままドライブして、それからここに置くための日和のパジャマとか部屋着とかスリッパとか、そういうものを買いに行こう!」
 言うが早いか、副島は普段着に着替えようと部屋に飛び込んでいった。
 靴すら脱がないまま、玄関でキスに興じていたなんて、おおよそ30代と40代がすることじゃないな、と苦笑した。
 副島の車に乗せてもらって、家に送ってもらう。
 マンションのエントランス付近に停まった高級車は、何か異質な感じがした。
 日和は急いで、自分の家に着替えに戻った。
 結局、副島の家に置くパジャマや着替え、果ては雑貨品まで全てを副島に買ってもらってしまった。
「すいません、全部買っていただいて…」
「いいよ。僕のワガママでもあるんだから」
「ありがとうございます」
 そんな話をしながら、車に乗り込む。
 アレコレとたわいのない話をしながら、副島が車を走らせてくれる。
「あぁ~、帰したくないなァ~!」
 と言いながら、日和の家の前で車を停めた。
「…今度は、おうちに泊まりに行かせていただきますから」
「約束だよ?」
 副島が小指を差し出す。日和はその様子を見て、思わず笑ってしまった。
「約束します」
 名残惜し気に指を離すと、日和は車から降りた。
「またね、日和」
「はい」
 日和は副島の車のテールランプが見えなくなるまで、マンションのエントランス前で見送った。
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