なんでも言うことを聞いてくれるデリヘル先生♂ 〜どんなプレイでも先生はお答えします〜

田村ケンタッキー

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佐藤善子の場合

クラス委員長佐藤善子の相談(13)

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 次の日、佐藤善子は何食わぬ顔で学校へ行く。
 制服を着た姿を父親に見せた瞬間、父親が泣きそうになったのでダッシュで逃げてきた。母親にはメッセージアプリで自撮り写真を送った。まだ反応がないということは寝ているかもしれない。もしも見ていたら即電話か、メッセージが連投されるだろう。

 自分自身はサボり以前と何変わらぬ日常。いつもの音楽を聞き、いつもの通学路を通る。
 ちょっと違うとしたら、教室を目前にして入れなかったこと。あと一歩、踏み出せずにいた。
 友達の声が聞こえる。自分の名前が出てこないことに寂しさとか怖さとかを感じる。

(大丈夫……たとえ、クラスの皆に嫌われていたとしても……一人だけは味方でいてくれる人がいる……)

 一歩を踏み出す。この一歩は勇気ではなく信頼で勝ち取った一歩。

「おぉ、準備はしっかり進んでいるようで」

 そう、すっとぼけた彼女を見るやいなやクラスメイトが彼女を囲う。
 目を合わせられない。目をつむって未知の衝撃に備える。

「よっちゃーーーん! 元気してた!!?」
「みんな心配してたんだよー!?」
「メッセージもぜんぜん返してくれないじゃん!?」

 歓迎ムード。勝ちを確信して、善子は目を開く。

「ま、まあ、ちょっと体調を崩しちゃってね。ほら、大事な時期だし、あの病気だと嫌じゃん? 慎重になれって両親からも止められてさ~」

 すらすらと出る嘘。嘘が得意だったと思い出す。
 女友達と手を握り合ったり、再会を喜んでいると、

「佐藤」

 ぶっきらぼうな男の声。

「えっと……渡部わたなべくん?」

 普段会話しない男のクラスメイトから声をかけられた。

渡部わたべだ! 同じ委員会の名前を間違えるな!」
「えっと、あはは、そうだった、ごめんごめん」
「謝ることないよー、よっちゃん。こいつクラス委員とは名ばかりで全部よっちゃんに仕事を押し付けたじゃん」
「押し付けてはいない。仕事の要領が悪すぎて任されなかったんだよ」
「もっとだめなやつ~~」

 女子たちに小馬鹿にされ、明らかに悔しそうにするが何も言い返さない渡部。

「そうだよ、俺がだめだったばかりに……佐藤を傷つけることになっちまった。俺がもっとしっかりとしていれば、お前が休むことにはならなかったかもな」
「お、おーいー、渡部くん、出会い頭にその話するー?」

 変に熱血な男のおかげで和やかな歓迎ムードがお通夜みたいな空気に。

(はっきりと謝罪されるより、責任の所在を曖昧にしたままのほうが助かるんですけどー!?)

 渡部、印象に残らない男から印象が悪い男に格下げ。

「だから佐藤。頼りないかも知れないがそれでも俺を頼って欲──」
「よっちゃん! こんな男より私を頼って! それと私もこないだは助けられなくてごめん!」
「体調不良は嘘なんでしょう!? 今度からは正直に言ってね!?」
「お見舞いも! 本当は行くべきだったよね!? お詫びとはいっては何だけどいつかチョットイイアイスを奢らせて!」

 渡部が格好良く決めようとしたが女友達に遮らてしまう。
 しかし結果的には彼の行いが最善の理想的な方向へと舵を切った。

「みんな。ありがとうね。それと渡部くんも」
「べ、べつに、お前のためじゃないが!? 俺はやるべきことをやったまでだ!」
「うわあ、これまたべたなツンデレ……もしかして私に気があったりして」
「はああああああ!? 誰が、お前のような微妙に性格の悪い女なんか!」
「微妙ってのはどういうこと!? 中途半端なのよくないよ!?」

 喧嘩の仲裁役が喧嘩を始めかけたその時、

「はい、みなさん。席についてください。ホームルームの時間です」

 担任の足立康太郎が笑顔で教室に入る。

「またあとでね」
「元気に帰ってきてよかった」
「三日分を取り戻すくらい、おしゃべりしようね」

 女友達は善子の肩を叩いて自分の席へ。

「ちぇっ」

 渡部も渋々と言った表情で席に戻る。

「……先生」

 善子は棒立ちになる。
 つい昨晩のことだ。つい数時間前、目の前の教師と一線を越えた男が立っていた。
 こちらはまだ引きずっているのに、まるで気にしていないような笑顔だった。
 だから、

「……あの箱はどうしてますか?」

 つい意地悪してしまう。
 箱とはゴムのこと。お礼、お詫びといった形で、また体の良い不用品処分で、残りのコンドームを先生に譲渡した。
 動揺を誘おうとする。善子は微妙に性格の悪い女ではない。普通に性格の悪い女だ。
 しかし先生はいつもと変わらぬ笑顔で、

「箱というのは、クラスの目安箱のことでしょうか、

 いつもと変わらない先生に戻っていた。

(……まあ、わかってましたよ? 昨日のが異常だった。いいや、昨日のは夢だったんだ)

 善子は首を振った。

「なんでもありません、先生」

 自分の席に戻り、少し高い位置の先生の顔を見上げる。

「これで全員揃いましたね。とても素晴らしいことだと思います。先生はここからクラスのみなさんの顔を見る……何よりの幸せです」

 届きそうなのに手が届かない距離。
 なのに先生は恋心を何度も打ち砕く。

(あーあ、もっと性格が悪い女だったら良かった。もっと性格が悪きゃ、こんなに引きずらないんだろうな……)

 きっとまた電話をすれば来てくれるのだろう。もっとハードなプレイにも答えてくれるのだろう。
 しかし、それはできない。

(だって先生は、今の私を素敵だと言ってくれたもんね)

 こうして佐藤善子の初恋は幕を閉じた。







────────────────────────────

 これにて佐藤善子編は完結です。
 ヒロインを変えて続く予定です。
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