上 下
23 / 62
Ⅱ 騎士団の陰謀

第16話 守る力

しおりを挟む
アリア・エインズワース:帝都のはずれにある森で店を営んでいる魔女。21歳。
アーロン・ストライフ:魔法使いの助手兼用心棒をやっている青年。21歳。
ソフィー:元ハルモニア帝国第2皇女だった少女。18歳。
フィリップ・ベルナルド:元帝国騎士団所属だった鳥使いの男性。本名はウルフィリア・レインフォルス。32歳。
ルーナ:ハルモニア帝国第4皇子の側近をしている女性。20歳。
レオンハルト・ハイデルバッハ:帝国騎士団小隊長を務める青年。19歳。

バーナード・メイザース:ハルモニア帝国騎士団団長を務める男。42歳。
セシル・エインズワース:アリアの師匠の魔女。30歳。
アレン・ウィル・ハルモニア:元ハルモニア帝国の皇子。セシルの助手兼用心棒をやっている。30歳。

~モブ~
ホムンクルス


 ホロロコリス、時計塔跡地。

バーナード 「もういい、死ね」

(SE 剣を振りかざす音)

レオンハルト 「うわああああっ!!」

(SE 剣と剣がぶつかる音)

レオンハルト 「…………っ。うぅ……」

(SE レオンハルトが倒れる音)

アレン 「おいおい、騎士のくせに情けねえな」

バーナード 「お前は……!」

セシル 「……やはり、間に合わなかったか」

バーナード 「アルトリウスの差し金か。どこまでもお見通しのようだ」

セシル 「殿下は、この先のことも言っていたよ。キミの目的は果たされない。そこに倒れているアリアたちが勝つと、ね」

バーナード 「そうか……。だが、そうはならない」

アレン 「あ? どうなるってんだよ」

セシル 「……! アレン、離れろ!」

アレン 「くっ!」

(SE アレンが飛び退く音)

バーナード 「ふふふ、はははは!」

(SE 波動が迸る音)

セシル 「……っ! この魔力……、旧時代の……」

バーナード 「やはり、まだ安定していないか」

アレン 「おいおい、なんだよ、あの剣……」

セシル 「皇帝の証と同じか、いやしかし……」

アレン 「ちっ、考えるのはあとだ。今は退くぞ」

セシル 「あ、ああ」

アレン 「……っ!」

(SE 時が止まる音)

バーナード 「……無意味だ」

(SE 時が動き出す音)

アレン 「なにっ!?」

セシル 「アレンの魔法が解除された、だと……?」

バーナード 「こちらの効果は問題なく働いたか」

アレン 「どういうからくりだ? その剣」

バーナード 「……及第点といったところか」

アレン 「くそ、空間転移を使うしかないか……」

(SE 空間転移する音)

バーナード 「やつらとともに空間転移で飛んだか……」

バーナード 「まあいい、この剣も調整が必要だ……。その後でやつらともども葬ってやろう」



 ホロロコリス、稽古場跡地。

ソフィー 「……ん、んん」

セシル 「……目が覚めたようだね」

ソフィー 「……アリア、さん?」

セシル 「残念だが、私はアリアではない」

ソフィー 「……はっ、アーロンさんたちは!?」

アレン 「大丈夫だ。ケガはしてるが、みんな無事だ」

ソフィー 「……あなたは、アレンお兄様!?」

アレン 「久しぶりだな、ソフィア」

ソフィー 「アレンお兄様こそ、ご健勝でなによりです」

アレン 「ソフィア、ここは城じゃないし、俺はもう皇族じゃない。普通にしてろって」

ソフィー 「……わかりました。では、お兄様も、私のことはソフィーと呼んでください」

アレン 「わかった」

レオンハルト 「……ん、んん……」

アレン 「お、起きたか?」

レオンハルト 「……! 皆さんは!?」

セシル 「大丈夫だ、皆生きている。じきに目を覚ますだろう。だが、このアーロンはひどい。生きているのが奇跡と言えるくらいだ」

ソフィー 「そんなに……」

アレン 「ソフィー、治癒術はやめたほうがいい」

ソフィー 「え……?」

セシル 「アレンの時間停止や空間転移と違って、キミの治癒術は魂に直接干渉する」

セシル 「今のアーロンは、神降ろしの酷使によって、魂がすり減っている状態にある。そんな状態で、キミの治癒術を受ければ、魂に揺らぎが生じてしまう」

ソフィー 「揺らぎ?」

セシル 「下手をすれば……。キミたちは、魂を亡くした者の最期を看取ったことはあるんだったね」

レオンハルト 「…………」

ソフィー 「それじゃあ私、なにをすれば……?」

レオンハルト 「…………っ」

セシル 「私は、子どものお守りをしたいからキミたちを助けたんじゃない」

ソフィー 「え……」

セシル 「泣くだけなら赤ん坊でもできる。足手まといになる気なら、とっとと帝都に帰るといい」

レオンハルト 「そ、そんな……!」

セシル 「特に、キミは致命的だ。レオンハルト」

レオンハルト 「……っ」

セシル 「いまだに腹を決めかねている。バーナードが敵だというのは、最初からわかっていたことだろう。なにを迷う必要がある」

レオンハルト 「それは……」

セシル 「キミは今の小隊長という地位に甘んじるばかりか、自己満足の正義に酔っている。平民出身の騎士とはいえ、隊長格ともなれば、平民よりは余裕のある暮らしを送ることができるしな」

レオンハルト 「そんなことは……」

セシル 「では、キミはいったいなにをした? 倒れていく仲間たちをただ見ていただけじゃないか」

レオンハルト 「……っ」

(SE レオンハルトが走り去る音)

ソフィー 「ひどいです! あなたに、レオくんのなにがわかるっていうんですか!?」

アレン 「セシル、今のは言い過ぎじゃないか?」

セシル 「……これで折れるようなら、それこそ致命的だろう」

ソフィー 「私、レオくんを探してきます。皆さんをお願いします」

(SE ソフィーが出ていく音)

アレン 「…………」

ルーナ 「……んん、ソフィー?」

フィリップ 「……う、く」

アリア 「……うぅ」

アレン 「目を覚ましたか」

セシル 「…………」

アリア 「師匠! アレンさんも! ……くっ」

アレン 「アリア、久しぶりだな」

セシル 「……」

アリア 「……アーロンはやはり……」

セシル 「そうだ。魂の損傷がひどい。手伝ってくれるか?」

アリア 「わかりました」

フィリップ 「……あいたたた、こりゃ、盛大にやられたね」

ルーナ 「アンタたちは?」

(SE 刀に触れる音)

アレン 「おいおい、助けてもらった恩人に向かって刀を抜こうとするなって。なかなか物騒なお姉ちゃんだな」

ルーナ 「……」

フィリップ 「……青年に雰囲気が似てるよね」

ルーナ 「やりづらいわね……」

アレン 「っと、俺はアレン。これでも一応元皇族だ。で、あっちのは、魔法使いのセシル・エインズワース。アリアに魔法を教えた師匠だ」

ルーナ 「なるほど。エインズワースは師匠から……」

フィリップ 「意外だよね、あのアリアちゃんがそういう決め方するの」

ルーナ 「あ、私はルーナ。ここ、ホロロコリス出身よ。で、こいつは、フィリップ」

フィリップ 「ちょっと、ルーナちゃん?」

アレン 「ま、元気があるみたいならいいけどよ」

ルーナ 「……ソフィーとレオがいない……」

セシル 「それなら、さっき出ていったよ」

ルーナ 「出ていったって……」

セシル 「戻ってこないかもな」

ルーナ 「は?」

アリア 「師匠?」

ルーナ 「……私、出るわ」

フィリップ 「ちょっとルーナちゃん?」

ルーナ 「ソフィーたちを探してくる。面倒なことになってないか見てくるだけよ」

(SE ルーナが出ていく音)

フィリップ 「……素直じゃないなぁ」

アリア 「フィリップ、ルーナを頼む」

フィリップ 「りょーかい」

(SE フィリップが出ていく音)

アリア 「師匠、アーロンの治療が終わったら、知っていることをすべて話してほしいです」

セシル 「……疑っているのかい?」

アリア 「いえ、そんなことは……」

アレン 「いいじゃねえか、話してやっても。どうせ知ることになるんだから」

セシル 「……わかった、いいだろう」

────────────

 ホロロコリス、商店街跡地。

レオンハルト 「……僕に、力があれば……」

ホムンクルス 「…………」

レオンハルト 「……! 大丈夫ですか?」

ホムンクルス 「対象発見……」

レオンハルト 「え?」

ホムンクルス 「戦闘開始」

(SE 剣が出現する音)

レオンハルト 「ほ、ホムンクルス……?」

ホムンクルス 「……!」

レオンハルト 「だけど、僕は……」

ホムンクルス 「…………!!」

(SE 剣を振る音)

レオンハルト 「……っ!」

(SE 盾と剣がぶつかる音)

レオンハルト 「はあっ!」

(SE 剣を振る音)

ホムンクルス 「……っ! 肉体の損傷を確認。閃光弾、発射」

(SE ホムンクルスが消滅する音)

(SE 閃光弾が打ち上げられる音)

レオンハルト 「な、なんだ?!」

ホムンクルス 「……閃光弾を確認。閃光弾の発射位置、確認。対象を確認」

レオンハルト 「……? まだいるのか?」

ホムンクルス 「戦闘開始」

────────────

 ホロロコリス、噴水広場跡地。

ソフィー 「……レオくん、どこ行ったんだろう?」

(SE 閃光弾が打ち上げられる音)

ソフィー 「なに?」

ホムンクルス 「優先順位第3位の対象者、発見。戦闘開始」

(SE 剣が出現する音)

ソフィー 「ホムンクルス? こんなときに……」

(SE 銃に触れる音)

ソフィー 「……やるしかない」

ホムンクルス 「……!」

(SE 剣を振る音)

ソフィー 「くっ……!」

(SE ソフィーが後ろに跳んで避ける音)

(SE 銃声)

ホムンクルス 「……!」

(SE ホムンクルスが消滅する音)

ソフィー 「……っ! まだいる……?」



 ホロロコリス、稽古場跡地。

アリア 「……アーロン」

セシル 「魂の回復には、充分な休息が必要だ。今、我々にできることは、彼をリラックスさせることだな。起きたらまた、別の処置をしよう」

アリア 「そうですね……」

(SE ごそごそ音)

アレン 「……色々持ってるのな。もしかして、こういうことになったときのために用意してたのか?」

アリア 「当然です。私だって、旧時代の魔法についての文献を読み漁ってるんですよ」

セシル 「ふふ、キミのことだ、アーロンの神降ろしを見たその日から調べていたんじゃないのかい?」

アリア 「な、なぜそれを?!」

セシル 「ふふ、これでも私はキミの師匠だからね、それくらいわかるさ」

アリア 「師匠……」

セシル 「ほら、薬を調合するよ」

アリア 「あ、はい」

────────────

 ホロロコリス、商店街跡地。

(SE 屋根から屋根に飛び移る音)×何度か

フィリップ 「ルーナちゃん、どこ行ったんだろう?」

フィリップ 「……ホムンクルスたちがどこかに移動してる?」

フィリップ 「誰かいるのか?」

ホムンクルス 「…………」

フィリップ 「……あれ、レオか?」

ホムンクルス 「……!」

(SE 剣を振る音)

レオンハルト 「うああっ!」

(SE レオンハルトが転ぶ音)

フィリップ 「……レオ、反撃しようとしていないな」

レオンハルト 「…………」

ホムンクルス 「……!!」

(SE 剣を振る音)

レオンハルト (……もう、いいか)

フィリップ 「まさか……!」

(SE 弓を射る音)

(SE ホムンクルスが消滅する音)

レオンハルト 「え? これは……」

(SE 着地音)

フィリップ 「……っ!」

(SE 短刀を振る音)×何度か

(SE ホムンクルスが消滅する音)×何度か

レオンハルト 「フィリップさん!? ……あいや、ウルフィリアさん……」

フィリップ 「今まで通りでいいよ。……さ、やるよ」

────────────

 ホロロコリス、噴水広場跡地付近。

ルーナ 「……どこもかしこもホムンクルス。これじゃあのときと同じじゃない……」

(SE 刀を振る音)

ホムンクルス 「……っ!」

(SE ホムンクルスが消滅する音)

ルーナ 「……アリアが見たらなんて言うか」

(SE 銃声)

ルーナ 「……この音、広場の方から……」

(SE 移動の音)

ルーナ 「ソフィー!」

ソフィー 「ルーナさん?!」

ルーナ 「大丈夫? ケガはない?」

ソフィー 「え、あ、はい。私は大丈夫です」

ルーナ 「そう……。それにしても、このホムンクルスたち、どこに向かってるの?」

(SE ホムンクルスを斬り伏せる音)

(SE ホムンクルスが消滅する音)

ソフィー 「さあ? でも、さっき閃光弾みたいなのが、あっちの方で上がってました」

ルーナ 「なるほど。それなら……!」

(SE ルーナがソフィーを抱き上げる音)

ソフィー 「うぇ!? ちょっと、ルーナさん!?」

ルーナ 「しっかり掴まってなさいよ!」

(SE ジャンプする音)

(SE 屋根に着地する音)

ルーナ 「……っと、やってみれば、意外とできるものね」

ソフィー 「ふぇ? これ、アーロンさんがやってたみたいな魔力で身体強化するっていう……」

ルーナ 「そういうこと。さ、このまま屋根を伝っていくわよ」

ソフィー 「はい!」

────────────

 ホロロコリス、商店街跡地。

フィリップ 「レオ、キミは、なんのために騎士になったんだい?」

(SE 弓を射る音)

(SE ホムンクルスが消滅する音)

レオンハルト 「僕は……!」

(SE 剣を振る音)

(SE 盾と剣がぶつかる音)

レオンハルト 「皆を守るために……!」

(SE 盾で剣をはじく音)

レオンハルト 「騎士になったんです!」

(SE 剣を振る音)

(SE ホムンクルスが消滅する音)

フィリップ 「だったら、迷うな!」

(SE 闇属性の魔法が発動する音)

フィリップ 「──────魂の鳴動ソウルブラスト!!」

(SE 風が強く吹く音)

(SE ホムンクルスたちが消滅する音)

フィリップ 「……くっ、レオ、自分の道を進むんだ! その先にきっと、キミの求めるものが必ずある!」

レオンハルト 「フィリップさん……!」

(SE 着地音)

ルーナ 「……今のはなに? おっさんがやったの?」

レオンハルト 「ルーナさん、それに殿下も……」

ソフィー 「…………」

ルーナ 「ソフィーが、ここに向かってくるホムンクルスたちを一掃してくれたから、しばらくは安全よ」

フィリップ 「へぇ、ソフィーちゃんが……」

ソフィー 「…………」

(SE ソフィーが怒りながら歩く音)

ソフィー 「レオくん……」

レオンハルト 「殿下……?」

(SE ビンタする音)

レオンハルト 「……ッ!」

ソフィー 「レオくん、なんでひとりで抱え込もうとするの?!」

レオンハルト 「……!」

フィリップ 「ソフィーちゃん……」

ソフィー 「迷ってるなら、遠慮しないで相談してよ! 仲間でしょ!?」

フィリップ 「レオ、ソフィーちゃんの言う通りだよ? さっき俺が発破かけてなかったら、キミはキミ自身が抱えている問題に気づくことすらできなかったよね?」

レオンハルト 「……その通りですね。でん……いや、ソフィーさん、フィリップさん、ありがとうございます。おかげで目が覚めました」

ルーナ 「……レオ、アンタの盾があるから、私たちは安心して戦えるのよ。それを忘れないで」

レオンハルト 「ルーナさん、すみません」

ソフィー 「ちょっとルーナさん! 言い方がキツいですって!」

フィリップ 「ルーナちゃんはツンデレだからね」

ルーナ 「ツン……、はあ!? そんなんじゃないわよ!」

レオンハルト 「あはは……!」



 ホロロコリス、稽古場跡地。

アーロン 「ん、んん……」

アリア 「アーロン! 大丈夫か?」

アーロン 「……アリア? ……なんだこれ、身体がめちゃくちゃ重い」

セシル 「魂をひどく損傷しているからね、当然だ」

アーロン 「あんたは……?」

セシル 「私はセシル・エインズワース、アリアの師匠だ」

アーロン 「そうか、あんたが……」

アレン 「おお、起きたか」

アーロン 「……! あのときの! ……痛つつ」

アリア 「アーロン、まだ寝てないとダメだ」

(SE 稽古場の戸が開く音)

ソフィー 「あ、アーロンさん、目を覚ましたんですね」

ルーナ 「……よかった」

フィリップ 「お、ルーナちゃんがデレた」

ルーナ 「デレてない!!」

レオンハルト 「……戻りました」

アリア 「……レオ」

アーロン 「ん? もしかして、俺の出る幕なかった?」

フィリップ 「ごめんね、おじさんが取っちゃった」

アーロン 「そっか。さんきゅな、おっさん」

レオンハルト 「ご迷惑をおかけしました……」

セシル 「まったくだ」

ソフィー 「……っ!」

アレン 「おいセシル……」

アーロン 「で、あんたたちの目的はなんなんだ?」

セシル 「……私たちは、アルトリウス殿下の命を受けて、キミたちを助けにきたんだ」

ソフィー 「助けって……!」

セシル 「もちろん、助ける価値があるならの話だ。そこの騎士くんが改心したのかは知らないが、わざわざ足手まといを治療した私の身にもなってほしいね」

アーロン 「……気に入らねえな」

セシル 「ほう……」

アーロン 「治療してもらったことには感謝してる。だけど、仲間をコケにされる筋合いはねえ」

セシル 「仲間、か。青臭い顔で青臭いことを言うんだな」

フィリップ 「……セシルちゃん、ちょっと年下をいびりすぎじゃない? 大人げないわよ」

セシル 「……まあいい。治療に戻ろう。アーロン、これを飲むといい」

アリア 「まさか……。師匠、駄目ですよ。それを飲んだら……」

セシル 「さあ、飲むんだ」

アーロン 「…………」

アーロン (どうする、飲むか?)

アーロン 「……んく、んく……、っはあ」

(SE 心臓の鼓動)

アーロン 「……っ!!」

アリア 「……飲んで、しまったのか」

アーロン 「ぐ、あああああっ!!」

ソフィー 「何を飲ませたんですか!?」

(SE 銃を構える音)

セシル 「血の気が多い皇女様だな」

アリア 「あの薬はおそらく、月の雫だろう。魂に作用する霊薬、ということしかわからない」

ルーナ 「月の雫……」

セシル 「ご名答だよ。月の雫は、魂を増強させる薬だ。手っ取り早く回復させるには、これしかない」

アーロン 「……あああ、くそ……!」

セシル 「もっとも、その身を焼くような痛みに耐えられる精神力あれば、だけどね」

アレン 「…………」

アリア 「なんでそんな危険な薬を……」

セシル 「そうでもしなければ、あのバーナードを討つことはできないからだ」

アレン 「あの騎士団長を止めるには、どうしても神降ろしを使いこなさなくちゃいけないからな」

セシル 「この痛みに耐えることができれば、神降ろしを使いこなすこともできるだろう」

アリア 「…………」

ルーナ 「アリア、どうする?」

アリア 「見守るしかない……。こうなってしまった以上、私にできることは……」

アーロン 「……っ! 上等だ! 耐えてやろうじゃねえの……!」

アリア 「アーロン……?」

セシル 「……では、私たちは行くとしようか」

フィリップ 「……」

セシル 「私たちの任務は終わった。あとは任せたよ」

フィリップ 「……言われなくても、やるつもりだよ」

(SE セシルとアレンが出ていく音)

レオンハルト 「行ってしまいましたね……」

アリア 「……アーロン! 大丈夫か?!」

アーロン 「……ぐぐぐ、なんとか……っ!」

ソフィー 「アーロンさん……!」

ルーナ 「ちょっと、本当に大丈夫なの?」

アーロン 「……な、なんとか」

フィリップ 「それに関しては大丈夫だと思うよ。セシルちゃんは、性格こそアレだけど、錬金術の腕は確かだ。それに、青年なら大丈夫だ」

(SE 黒いオーラがにじみ出る音)

アーロン 「ぐ、ぐぁああっ!」

アリア 「アーロン!」

(SE 黒いオーラが暴走する音)

アーロン 「……っ!」

ソフィー 「アーロンさん!」

アーロン 「ぐぅぁっ……!」

アリア 「……!」

アーロン 「……っ! 洒落臭せぇっ!!」

(SE 黒いオーラが爆発する音)

レオンハルト 「ソフィーさん!」

(SE 盾を構える音)

ソフィー 「きゃあああっ!」

アリア 「アーロン!」

ルーナ 「なんなのっ!?」

フィリップ 「……! 青年、やったみたいだね……!」

アーロン 「……はあ、はあ」

アリア 「アーロン! 大丈夫か?!」

(SE 肩を掴む音)

アーロン 「……あ、ああ、大丈夫だ。心配し過ぎだっての」

アリア 「だって……!」

ルーナ 「こほん」

アリア 「すまない、取り乱した」

ルーナ 「取り繕えてないわよ……」

レオンハルト 「アーロンさん、あの力を制御できるようになったんですか?」

アーロン 「だといいんだけど……」

(SE 黒いオーラが出る音)

ソフィー 「腕にだけオーラが……」

(SE 黒いオーラが消える音)

アーロン 「……できた」

フィリップ 「さすが青年、あの激痛に耐えて、神降ろしをものにするなんてね」

ルーナ 「これで、あの騎士団長を倒せるだけの力は手に入ったわね」

レオンハルト 「僕も、やります……!」

アーロン 「ああ、だけどなにがあるかわからない。気ぃ引き締めていこうぜ」



 ホロロコリス、時計塔跡地、鐘楼。

バーナード 「くふふふ、はははは!!」

バーナード 「ついに、ついに完成したぞ。神滅煌剣カイザーシュトラールが!」

(SE 剣をかかげる音)

バーナード 「さあ、定められた運命などないことを証明しよう!!」

つづく
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜

摩訶子
大衆娯楽
ボイコネのみで公開していた声劇台本をこちらにも随時上げていきます。 ご利用の際には必ず「シナリオのご利用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m

声劇・シチュボ台本たち

ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。 声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。 使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります) 自作発言・過度な改変は許可していません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

性転換タイムマシーン

廣瀬純一
SF
バグで性転換してしまうタイムマシーンの話

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

フリー台詞・台本集

小夜時雨
ライト文芸
 フリーの台詞や台本を置いています。ご自由にお使いください。 人称を変えたり、語尾を変えるなどOKです。 題名の横に、構成人数や男女といった表示がありますが、一人二役でも、男二人、女二人、など好きなように組み合わせてもらっても構いません。  また、許可を取らなくても構いませんが、動画にしたり、配信した場合は聴きに行ってみたいので、教えてもらえるとすごく嬉しいです!また、使用する際はリンクを貼ってください。 ※二次配布や自作発言は禁止ですのでお願いします。

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...