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十五章因縁の対決
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「よしみんな逃げるぞ」
囚われの子供達がいる牢を片っ端から破壊していく。鍵を探すのが面倒なので主に俺の剛力での破壊だけど。セキュリティついてる檻はなさそうでよかった。
最近囚われたばかりの子は出られた事を喜んでいるが、何年もここで生活しているような子や洗脳が根深い子はなかなか牢の外へ出ようとはしなかった。怯えて殺されると思い込んでいたり、ここは自分の住処だと言い張る子までいる。
慣れや洗脳ってのは怖いもんだ。殺戮や排除の考え方を植え付けられて、それが普通だと思わせる思想教育。
これから洗脳を解いていってやりたいものだが、一度先入観や固定概念がついてしまうとそれを変えるのは難しい。バカ社長を倒した後に、ばーちゃんの家で全員を一度見てあげた方がいいだろう。
「とりあえず今は頼りにならんが警察にも連絡しておくか」
今後のこの子達の引き取り手が必要だろう。役に立たん刑事の下衆谷や熊谷にもたまには仕事をさせよう。
「ねえ、お兄ちゃん。あの子ってもしかして直純君じゃない?」
「は?直純って……」
未来が奥の方にいる綺麗な美少年を指さす。小学生くらいの男の子が目の焦点があわない瞳を宿して遠くを見据えている。直純は黒崎兄妹がバカ社長に連れて行かれた後の早苗さんと一樹さんの子供であり、直と悠里の弟。サッカーの実力を見込まれて海外へ留学に出ていたが……
「たしかに、直純だ」
最近、早苗さんがサッカー留学に出ている直純と連絡が取れないと嘆いていたが、まさかの日本にいて施設に囚えられていたというのか。くそ、全然気づかなかった。
「直純!おい、直純ってば!俺がわからないのか!?」
俺が両肩を掴んで揺さぶりながら声を掛けても、直純の視線の先には何も映さず、なんの感情も表さない。他の子供達も声を掛けているが、彼だけは反応がほとんどなかった。
「これはかなり深刻な状態ですね。奴らの洗脳教育と催眠術を真に受けすぎて感情はおろか声も発せなくなっているようです」
「これはさすがに俺でも解けないレベルだ。ばあちゃんに術を解いてもらわないと解除できないよ」
「では一先ず、子供達を下に逃がしましょう。これだけ大勢いるので時間がかかりますが……」
「下にはもう相田や青龍会が来てると思うし、そのうち警察も来るだろ。彼らに保護を任せよう」
俺が殿を務めながら子供達を順に裏口まで誘導する。途中で何度か襲撃があったが、俺や久瀬さんはもちろんの事、お化け類が苦手な未来が発狂状態なので敵ではない。何往復かの誘導を終えて、残りも数人という所で声を掛けられた。
「ねえ……もしかして、まま?」
「へ……?」
声にふと気づくと、小さな子供二人がこちらを見上げていた。ボロボロな服に傷だらけの黒髪ツインテールの女の子はしっかりしたような子。隣にいる銀髪の子は引っ込み思案なのか大人しそうな男の子だった。
あれ……どこかで見たことがるような二人だな。どこだったかなぁ。顔も誰かに似ているような……。
「この二人、なんかお兄ちゃんに似てて可愛いね。名前なんていうの?」
未来が膝を折って目線の高さで話かけると、ツインテールの女の子は腰に手を当てて得意げになる。
「あたし、甲梨。2しゃい」
「えっ」
「こっちが直樹。おんなじ2しゃい。ふたごにゃの」
「っ……お前達……っ!」
「きがついたらね、ここにいたの。いつかね、パパとママ、たすけにきてくれりゅって……しんじてたの」
俺は懐かしい気持ちになった。名前を聞いてはっきりした。だってこの小さな二人はどう見ても俺の子だからだ。女だった時の俺の前世の可愛い子供達なのだ。こんな所で逢えるなんて。
俺は思わず二人ごと両手で抱きしめた。
ああ、可愛い。懐かしい。この二人は俺が女だった前世で高校時代に妊娠しちゃって産んだ時の子達だよ。転生していたんだな。
「ママ……もしかして……」
「おぼえてりゅ?」
その二人の質問に俺は静かに頷く。
「ああ、思い出したよ。お前たちの顔と名前を聞いてね。甲梨、直樹……俺の可愛い子供達だろう?」
「っ、うん!ママ、ママっ」
「おかーしゃおかーしゃ!」
二人も俺を抱きしめ返してくれた。前世ぶりの再会で、泣き始める二人の頭を撫でる。
「お、お兄ちゃん、この二人の事知ってるの?」
「あ、ああ。真白と甲夜みたいなもんだよ」
久瀬さんは前世の記憶があるのでこの二人を見ても驚きはあまりないようだ。
「ママ、パパもいりゅ?」
「いるよ。きっとこの施設のどこかにいる」
「おとーしゃ。あいたい」
「もうすぐ会えるよ。直樹はパパ大好きだったものな。それにな、お前達には二人のお姉ちゃんがいるんだよ。後で紹介してあげる」
「おねえちゃん?」
「うん。とりあえずここを出てからな」
甲梨と直樹の手を両手でしっかり握って何度目かの廊下へ出ようとすると、ゴロゴロと巨体が横切った。
「はははは、よくもやってくれたぎゃ。逃がすわけがねーだぎゃ!」
先ほどの肉だるまが通せんぼしながら戻ってきた。
「今はお前に構ってられないんだが、邪魔をするなら容赦せんぞ」
「やってみるがいいだぎゃ!わしは最強無敵の看守で誰よりも強くてイケメンnひぎゃふへえっ!!」
どうでもいい自画自賛を最後まで聞くことなく、奴は特殊な銃弾の嵐を浴びて昏倒した。そのまま煙をあげて瞬く間に灰となって消えるのを見届ける。まがいものの霊薬の血の末路はやはり惨めなものだ。
「相沢先生。あんた無事だったんだな」
肉だるまを片付けた先にはボロボロの姿の相沢先生が疲れた顔で立っていた。
「ご心配おかけしました。わざと奴らに捕まって、いろいろ自分の記憶と照らし合わせながら情報収集をしていたんです」
相沢先生はどっから盗んできたのかサブマシンガンを肩に担いでいる。
囚われの子供達がいる牢を片っ端から破壊していく。鍵を探すのが面倒なので主に俺の剛力での破壊だけど。セキュリティついてる檻はなさそうでよかった。
最近囚われたばかりの子は出られた事を喜んでいるが、何年もここで生活しているような子や洗脳が根深い子はなかなか牢の外へ出ようとはしなかった。怯えて殺されると思い込んでいたり、ここは自分の住処だと言い張る子までいる。
慣れや洗脳ってのは怖いもんだ。殺戮や排除の考え方を植え付けられて、それが普通だと思わせる思想教育。
これから洗脳を解いていってやりたいものだが、一度先入観や固定概念がついてしまうとそれを変えるのは難しい。バカ社長を倒した後に、ばーちゃんの家で全員を一度見てあげた方がいいだろう。
「とりあえず今は頼りにならんが警察にも連絡しておくか」
今後のこの子達の引き取り手が必要だろう。役に立たん刑事の下衆谷や熊谷にもたまには仕事をさせよう。
「ねえ、お兄ちゃん。あの子ってもしかして直純君じゃない?」
「は?直純って……」
未来が奥の方にいる綺麗な美少年を指さす。小学生くらいの男の子が目の焦点があわない瞳を宿して遠くを見据えている。直純は黒崎兄妹がバカ社長に連れて行かれた後の早苗さんと一樹さんの子供であり、直と悠里の弟。サッカーの実力を見込まれて海外へ留学に出ていたが……
「たしかに、直純だ」
最近、早苗さんがサッカー留学に出ている直純と連絡が取れないと嘆いていたが、まさかの日本にいて施設に囚えられていたというのか。くそ、全然気づかなかった。
「直純!おい、直純ってば!俺がわからないのか!?」
俺が両肩を掴んで揺さぶりながら声を掛けても、直純の視線の先には何も映さず、なんの感情も表さない。他の子供達も声を掛けているが、彼だけは反応がほとんどなかった。
「これはかなり深刻な状態ですね。奴らの洗脳教育と催眠術を真に受けすぎて感情はおろか声も発せなくなっているようです」
「これはさすがに俺でも解けないレベルだ。ばあちゃんに術を解いてもらわないと解除できないよ」
「では一先ず、子供達を下に逃がしましょう。これだけ大勢いるので時間がかかりますが……」
「下にはもう相田や青龍会が来てると思うし、そのうち警察も来るだろ。彼らに保護を任せよう」
俺が殿を務めながら子供達を順に裏口まで誘導する。途中で何度か襲撃があったが、俺や久瀬さんはもちろんの事、お化け類が苦手な未来が発狂状態なので敵ではない。何往復かの誘導を終えて、残りも数人という所で声を掛けられた。
「ねえ……もしかして、まま?」
「へ……?」
声にふと気づくと、小さな子供二人がこちらを見上げていた。ボロボロな服に傷だらけの黒髪ツインテールの女の子はしっかりしたような子。隣にいる銀髪の子は引っ込み思案なのか大人しそうな男の子だった。
あれ……どこかで見たことがるような二人だな。どこだったかなぁ。顔も誰かに似ているような……。
「この二人、なんかお兄ちゃんに似てて可愛いね。名前なんていうの?」
未来が膝を折って目線の高さで話かけると、ツインテールの女の子は腰に手を当てて得意げになる。
「あたし、甲梨。2しゃい」
「えっ」
「こっちが直樹。おんなじ2しゃい。ふたごにゃの」
「っ……お前達……っ!」
「きがついたらね、ここにいたの。いつかね、パパとママ、たすけにきてくれりゅって……しんじてたの」
俺は懐かしい気持ちになった。名前を聞いてはっきりした。だってこの小さな二人はどう見ても俺の子だからだ。女だった時の俺の前世の可愛い子供達なのだ。こんな所で逢えるなんて。
俺は思わず二人ごと両手で抱きしめた。
ああ、可愛い。懐かしい。この二人は俺が女だった前世で高校時代に妊娠しちゃって産んだ時の子達だよ。転生していたんだな。
「ママ……もしかして……」
「おぼえてりゅ?」
その二人の質問に俺は静かに頷く。
「ああ、思い出したよ。お前たちの顔と名前を聞いてね。甲梨、直樹……俺の可愛い子供達だろう?」
「っ、うん!ママ、ママっ」
「おかーしゃおかーしゃ!」
二人も俺を抱きしめ返してくれた。前世ぶりの再会で、泣き始める二人の頭を撫でる。
「お、お兄ちゃん、この二人の事知ってるの?」
「あ、ああ。真白と甲夜みたいなもんだよ」
久瀬さんは前世の記憶があるのでこの二人を見ても驚きはあまりないようだ。
「ママ、パパもいりゅ?」
「いるよ。きっとこの施設のどこかにいる」
「おとーしゃ。あいたい」
「もうすぐ会えるよ。直樹はパパ大好きだったものな。それにな、お前達には二人のお姉ちゃんがいるんだよ。後で紹介してあげる」
「おねえちゃん?」
「うん。とりあえずここを出てからな」
甲梨と直樹の手を両手でしっかり握って何度目かの廊下へ出ようとすると、ゴロゴロと巨体が横切った。
「はははは、よくもやってくれたぎゃ。逃がすわけがねーだぎゃ!」
先ほどの肉だるまが通せんぼしながら戻ってきた。
「今はお前に構ってられないんだが、邪魔をするなら容赦せんぞ」
「やってみるがいいだぎゃ!わしは最強無敵の看守で誰よりも強くてイケメンnひぎゃふへえっ!!」
どうでもいい自画自賛を最後まで聞くことなく、奴は特殊な銃弾の嵐を浴びて昏倒した。そのまま煙をあげて瞬く間に灰となって消えるのを見届ける。まがいものの霊薬の血の末路はやはり惨めなものだ。
「相沢先生。あんた無事だったんだな」
肉だるまを片付けた先にはボロボロの姿の相沢先生が疲れた顔で立っていた。
「ご心配おかけしました。わざと奴らに捕まって、いろいろ自分の記憶と照らし合わせながら情報収集をしていたんです」
相沢先生はどっから盗んできたのかサブマシンガンを肩に担いでいる。
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