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第四十一話
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結婚式まであと二時間くらいという中で、私はアイリーン殿下と雑談をして過ごしていました。
思えば、ミリムとこのように他愛もない話をしたことはあまりなかったかもしれません。
彼女は私の話が面白くないとほとんど聞く耳を持ってくれませんでしたから。
しかし、そこでストップしていたのは間違いだったかもしれません。
もっと、あの子に歩み寄れれば。両親が教育などを放置しているなら、私があの子の面倒を背負うくらいの気構えでぶつかっていれば、もっと変わった未来があったのかもしれないと思うとやりきれません。
「それで、兄さんが毎日のようにシャルロットお義姉様の演奏が凄かったって惚気話を聞かせるから、どんなものかと聴いてみたのよ。そしたら、私、いつの間にか涙が出ていてさ~」
楽しそうに私が演奏をしていた時のことを話すアイリーン殿下。
この方が私の義妹になる――そう考えるとそれが私がずっと欲しかったもののように思えて、目頭が熱くなります。
そうでした。私はミリムと普通に姉妹らしく仲良くしていたかったのです。
それなのに、時が過ぎるにつれて、あの子との溝は深まるばかりで……いつの間にか気持ちが離れてしまっていました。
「……シャルロットお義姉様、泣いているの? やっぱり、国を離れるのは寂しい?」
「いえ、そうではないのです。アイリーン殿下のような御方が義妹になることが嬉しくて。……実の妹とはあまり仲が良くありませんでしたから」
いつの間にか涙を流してしまっていた私にアイリーン殿下は心配そうな声をかけます。
あとでメイクを直しませんと……。
どうしてなのでしょうね。自分の幸せを掴むというときにこんなことを思うなんて。
結婚式前にナーバスになっているのでしょうか。
「妹さんと仲が悪かったの? シャルロットお義姉様の妹さんって、仮面をつけて出席するっていう子だよね?」
「そうです。すみません、妹は蜂に刺されたらしく、顔に何箇所も赤い腫れが――」
「ああ、別に私は気にしてないわよ。さっき、公爵家の跡取りって人が他の出席者に挨拶しているところを見たけど、きちんとアルビニア語で挨拶していて、結構長めにスピーチしていたから、流石はシャルロットお姉様の妹さんって思ったけど。そっか、仲悪かったんだ」
「――っ!?」
ミリムがアルビニア語で挨拶していたですって? しかもスピーチするほどって……。
あの子、自己紹介くらいなら何とか覚えられたかもしれませんが、海外の言葉などを勉強するようになったなんて信じられません。
エルムハルト様が余程の教え上手だったのでしょうか。
それならば、私も諦めずに接していたら、彼女を変えることができたのかもしれません。
「ねぇ、私もさ。兄さんと仲が悪かったんだ。三年くらい前まで。あの人って融通利かないところがあるじゃない? でもね、思いっきり大喧嘩したら、スッキリしちゃって……今はそれなりに上手くやれてるのよ」
「アイリーン殿下……?」
「だからね、もしもシャルロットお義姉様が妹さんと仲直りしたいんだったら、一度本気でぶつかった方が良いかも。わざわざ、国境を越えて結婚式まで来てくれているんだから、まだ手遅れじゃないよ」
アイリーン殿下は自身の経験からミリムと全力で喧嘩覚悟でぶつかってみたいと仰せになります。
そういえば、ミリムと喧嘩したことはなかったかもしれませんね。
怒ろうとすると両親が止めてミリムを守っていましたし。
今度、ゆっくり話せたら……本音で語ってみよう。そして、ミリムの本音を聞こう。
エルムハルト様はキチンと再教育したらしく、スピーチが出来るほどなら結婚式は大丈夫でしょう。
「アイリーン殿下、ありがとうございます。私、ミリムと一度話し合ってみます」
「うん。それがいいよ。応援してるね、お義姉様」
私は立ち上がり、今日の結婚式を成功させること、そしてミリムと真剣に向き合うことを決意しました。
自分の人生がここからガラッと変わるようなことを実感しています――。
思えば、ミリムとこのように他愛もない話をしたことはあまりなかったかもしれません。
彼女は私の話が面白くないとほとんど聞く耳を持ってくれませんでしたから。
しかし、そこでストップしていたのは間違いだったかもしれません。
もっと、あの子に歩み寄れれば。両親が教育などを放置しているなら、私があの子の面倒を背負うくらいの気構えでぶつかっていれば、もっと変わった未来があったのかもしれないと思うとやりきれません。
「それで、兄さんが毎日のようにシャルロットお義姉様の演奏が凄かったって惚気話を聞かせるから、どんなものかと聴いてみたのよ。そしたら、私、いつの間にか涙が出ていてさ~」
楽しそうに私が演奏をしていた時のことを話すアイリーン殿下。
この方が私の義妹になる――そう考えるとそれが私がずっと欲しかったもののように思えて、目頭が熱くなります。
そうでした。私はミリムと普通に姉妹らしく仲良くしていたかったのです。
それなのに、時が過ぎるにつれて、あの子との溝は深まるばかりで……いつの間にか気持ちが離れてしまっていました。
「……シャルロットお義姉様、泣いているの? やっぱり、国を離れるのは寂しい?」
「いえ、そうではないのです。アイリーン殿下のような御方が義妹になることが嬉しくて。……実の妹とはあまり仲が良くありませんでしたから」
いつの間にか涙を流してしまっていた私にアイリーン殿下は心配そうな声をかけます。
あとでメイクを直しませんと……。
どうしてなのでしょうね。自分の幸せを掴むというときにこんなことを思うなんて。
結婚式前にナーバスになっているのでしょうか。
「妹さんと仲が悪かったの? シャルロットお義姉様の妹さんって、仮面をつけて出席するっていう子だよね?」
「そうです。すみません、妹は蜂に刺されたらしく、顔に何箇所も赤い腫れが――」
「ああ、別に私は気にしてないわよ。さっき、公爵家の跡取りって人が他の出席者に挨拶しているところを見たけど、きちんとアルビニア語で挨拶していて、結構長めにスピーチしていたから、流石はシャルロットお姉様の妹さんって思ったけど。そっか、仲悪かったんだ」
「――っ!?」
ミリムがアルビニア語で挨拶していたですって? しかもスピーチするほどって……。
あの子、自己紹介くらいなら何とか覚えられたかもしれませんが、海外の言葉などを勉強するようになったなんて信じられません。
エルムハルト様が余程の教え上手だったのでしょうか。
それならば、私も諦めずに接していたら、彼女を変えることができたのかもしれません。
「ねぇ、私もさ。兄さんと仲が悪かったんだ。三年くらい前まで。あの人って融通利かないところがあるじゃない? でもね、思いっきり大喧嘩したら、スッキリしちゃって……今はそれなりに上手くやれてるのよ」
「アイリーン殿下……?」
「だからね、もしもシャルロットお義姉様が妹さんと仲直りしたいんだったら、一度本気でぶつかった方が良いかも。わざわざ、国境を越えて結婚式まで来てくれているんだから、まだ手遅れじゃないよ」
アイリーン殿下は自身の経験からミリムと全力で喧嘩覚悟でぶつかってみたいと仰せになります。
そういえば、ミリムと喧嘩したことはなかったかもしれませんね。
怒ろうとすると両親が止めてミリムを守っていましたし。
今度、ゆっくり話せたら……本音で語ってみよう。そして、ミリムの本音を聞こう。
エルムハルト様はキチンと再教育したらしく、スピーチが出来るほどなら結婚式は大丈夫でしょう。
「アイリーン殿下、ありがとうございます。私、ミリムと一度話し合ってみます」
「うん。それがいいよ。応援してるね、お義姉様」
私は立ち上がり、今日の結婚式を成功させること、そしてミリムと真剣に向き合うことを決意しました。
自分の人生がここからガラッと変わるようなことを実感しています――。
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