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第六話

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 北の山脈を登り続けて、ようやくダンジョンの入口に到達しました。
 ダンジョンの門は禍々しい装飾が目につき、それ以上に禍々しい気配が漂っており、総じて嫌な雰囲気でした。
 こういう得体の知れない場所に飛び込むには勇気が要りますよね……。  
 とはいえ、日和る時間もありませんので私たちは門の中に突入しました。
 これが初めてのダンジョン探索ということになります。
 
「フィアナ様、流石でございますですね~。誰も帰って来られなかった危険なダンジョンに迷いなく飛び込むなんて」
「勇敢な主君に仕えられて光栄でございますで候……」
「門を潜っただけで大袈裟ですよ」

 セレナとリュージュは中に入っただけで褒めて下さいましたが、不安がゼロという訳ではございません。
 ただ、何より人の命を救いたい。その気持ちを優先させただけなのです。
 
 ダンジョンの中は光源が無く、真っ暗なので取り敢えず照明魔法で明かりをつけますか。
 真っ暗ということは――まず確かめなくてはなりませんね……。

「なるほど、こちらからだと外とは別の空間に繋がっているのですか……。大体、予想通りです」

 私はもう一度、門を潜ってみます。
 すると、外には出られずにダンジョンの内部らしい場所に出ました。
 外からの光が一切入らなかったので、分かっていましたが、どうやらギルドマスターの推測どおりみたいです。

「フィアナ様、思ったとおり閉じ込められましたですね~」
「これで某らが、ダンジョンのキーとなる何かを見つけなくては此処から出られんということになりまするな」

「そうでもありませんよ」

「「えっ?」」

 外側の門が内側と繋がっていた事は事実ですから、空間同士の繋がりのズレさえ修正すれば外に繋がる道を強制的に開くことが出来るはずです。
 魔力を圧縮させて解放し空間を歪める必要がありますが、ちょっと試してみましょう……。

「……白銀の聖光プラチナム・レイッ!」

 私は光属性の破邪魔法を繰り出しました。手のひらサイズの直径の銀色の光の球体が門の中で停止して浮遊状態を維持します。
 この球体は小さいですが、莫大な魔力を込めました。

「爆ぜなさい……!」

 私が開いた手のひらを握ると銀色の球体は空間を歪めるほどの大爆発を起こします。
 もちろん、門の周りを結界で防御して爆発の影響があるのは門の内部だけです。
 さて、私の計算ではこのくらいの威力で――。

「あっ……!」
「こ、これは……、な、何という!?」

 門の中の一部が破れて外の光が中に入ってきました。
 思ったよりも小さな穴でしたね。しかし、大柄な人間でも屈むことさえすれば、何とか通れるくらいの大きさはあるでしょう。

「う、嘘でございますですよね? フィアナ様が簡単に出口を――」
「あの異常な熱量の爆発。某の目には太陽が爆発したように見えますり申した」

「とにかく、これで退路は出来ました。一人でも多くの方をこちらに誘導して逃しましょう」

 最初にギルドマスターの話を聞いたとき、まずダンジョンに入ったときに、外への出口を作ろうと決めていました。
 何らかの条件を達成して出口を確保して救出――という流れでは時間がかかりすぎる。  
 ならば、力尽くで門を開けてみようと最初に決意していたのです。

「さぁ、奥に行きますよ」

 果たして生存者は何人いるのか。そして、この先で何が待ち受けているのか。
 不安要素を出来るだけ取り除いて、私はダンジョンの探索を進めることにしました――。

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