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幸せの進化系 2
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荷物も多いので本当なら車で来れば良かったのだろうけど、それはそれでここに来るまでの道中の楽しみというものが半減されてしまうし、それなりに俺達に気遣ってくれて快適に来たのだ。電車代も大家さんが払ってくれたのだから文句何て思い浮かばないけど……
「大家さんたち何処に行ったんだろう……」
ついて早々飯田さん達にご挨拶に行くと言って姿を消して以来その気配はない。
志月さんもいるのだから自称愛妻家で子煩悩のつっきー(笑)も居るはずだときょろきょろしてしまう。
飯田さんを中心に新しくオープンした和風フレンチのこの店は料亭だった時の名残を残せるだけ残し、それでいてフランス文化を取り入れた部屋も用意してある。
座敷はつらい、和式は苦手、そんな方たちのニーズも応えた客室は全室個室。
当然ながら普通に予約の取れない店となり、お客様の質を求めるように一見さんお断り、ではないがそれなりにお客様は選んでいるようだった。
って言うか予約したお客様が帰り際に予約をしていくからそこで普通に予約がいっぱいになるってどういう事だろう。
そのお客様がキャンセルされた時ほかお客様をお迎えするってどういうシステムとか言っていたけど……
とはいえめったに増えない新規のお客様の食べログではないがその感動は瞬く間にネットで拡散されて、相変わらず予約の取れない店として有名になっていた。
そんなお店を大家さんは一日貸し切りにしてくれた。
俺達の予定とかを聞いて前もって空いていた日に予約を入れてくれたとか話を頂いてからずいぶん時間が経ってしまったが、まれにこちらに用がある時は母屋の方に寄らせていただきそちらでおもてなしを受けていた身としてはお店の方で本気のお料理を頂くのは少々どころかかなり緊張もする。
気が付けばこの広く優雅な敷地の店の中に一人ぽつんとなってしまった寂しさに俺は庭を下りる草履をお借りして散策をさせてもらう。
緑青たちではないが枝を折ったりしたら大ごとだという様に植栽にはなるべく触れないように枯山水の庭に置かれた飛び石を辿って店の入り口まで来てしまった。
何度も庭を見せてもらった事があるから解っていたけどどこの寺院かと言うようなこの京都の土地での優雅な店づくりに改めて俺なんかが足を運べる店じゃないよなと思う。
茅葺屋根の門構えを見上げながら過去の時代にトリップした気分になる店の入り口に相変わらず眺めるだけでも価値があるよなとかつてただ店の前を通り過ぎるのがやっとだったころの俺は今の家に引っ越してから舞い込む幸運を大切にしようと改めて心に誓えば
「え?真?
うそ、真でしょ?!」
なんとなく聞き覚えのある、今となれば耳障りな声で呼ばれてしまった。
しかし悲しいかな、呼ばれた名前に反射的に振り向けば
「ほら、やっぱり真だ。久しぶりー!」
なんで今ごろ、という様な再会の相手はかつての恋人だった人。
「香織……」
いかにも高級と言う服装、それに手に持つのはブランドバッグ。
記憶にある姿からかなり変わってしまい懐かしいという感情のかけらもない今、言葉が続かなかった。
本当になんて言えばいいのかなんてわからなくって再会の挨拶の言葉すら出てこず、かといってあの別れを恨む気持ちはとうに消え失せていた。
そんな無言になってしまった俺に香織は今でも自分に未練があると判断してか蠱惑的に口元に弧を描き
「東京の会社辞めたって聞いたけどこっちに帰って来たの?
だけどこの前偶然真の家の前通ったんだけど、新しいおうちが建ってたけど?」
遠回しに今は何処に居るのか、こんな所で何をしているのかと好奇心交じりのどこか楽し気な顔で俺の事を探る香織は隣に立つ男に腕を絡ませて
「あ、紹介するね。
前に言っていた会社の先輩。今は本社勤めだけど今日はデートの為に戻ってきてくれたの。ディナーデート素敵でしょ?」
腕を組まれた男は俺をまじまじと見て……
「ひょっとして九条真さん、ですか?」
「はえ?あ、はい。九条真ですが……」
会ったことあったっけと思うもなぜか俺の手を掴み強制握手をさせられてしまった。
「初めまして!深川克己と申します!
会社で導入している九条さんのプログラミングを担当させてもらってます!
すごく尊敬してます!」
まさかの信者との遭遇だった。
「いや、あれは俺だけの設計ではなくて……」
「いえいえ、そこは分かっています。導入した日の作業を末席から拝見させていただいたのですが、あんな難しいのをうちの会社に併せて組みなおしたのを見た時はほんとこの世の中すごい人がいるって感動して!」
にぎにぎとされた握手はまだまだ続いていた。いや、そのオリジナルを作った本当にすごい人がこの店の中に居るのですよとは言えないくらいの熱烈な挨拶に逃げ腰になってしまう。
「ちょ、克己。待ってよ……」
なんて香織が間に入ったもののまったく見向きもせずに
「今日はこちらにお仕事で来ていらっしゃるのですか?」
なんてすごい圧に怖気づきそうになるけど……
「真? 散歩にでも行くの?」
なんて聞こえた声は結奈だった。
「大家さんたち何処に行ったんだろう……」
ついて早々飯田さん達にご挨拶に行くと言って姿を消して以来その気配はない。
志月さんもいるのだから自称愛妻家で子煩悩のつっきー(笑)も居るはずだときょろきょろしてしまう。
飯田さんを中心に新しくオープンした和風フレンチのこの店は料亭だった時の名残を残せるだけ残し、それでいてフランス文化を取り入れた部屋も用意してある。
座敷はつらい、和式は苦手、そんな方たちのニーズも応えた客室は全室個室。
当然ながら普通に予約の取れない店となり、お客様の質を求めるように一見さんお断り、ではないがそれなりにお客様は選んでいるようだった。
って言うか予約したお客様が帰り際に予約をしていくからそこで普通に予約がいっぱいになるってどういう事だろう。
そのお客様がキャンセルされた時ほかお客様をお迎えするってどういうシステムとか言っていたけど……
とはいえめったに増えない新規のお客様の食べログではないがその感動は瞬く間にネットで拡散されて、相変わらず予約の取れない店として有名になっていた。
そんなお店を大家さんは一日貸し切りにしてくれた。
俺達の予定とかを聞いて前もって空いていた日に予約を入れてくれたとか話を頂いてからずいぶん時間が経ってしまったが、まれにこちらに用がある時は母屋の方に寄らせていただきそちらでおもてなしを受けていた身としてはお店の方で本気のお料理を頂くのは少々どころかかなり緊張もする。
気が付けばこの広く優雅な敷地の店の中に一人ぽつんとなってしまった寂しさに俺は庭を下りる草履をお借りして散策をさせてもらう。
緑青たちではないが枝を折ったりしたら大ごとだという様に植栽にはなるべく触れないように枯山水の庭に置かれた飛び石を辿って店の入り口まで来てしまった。
何度も庭を見せてもらった事があるから解っていたけどどこの寺院かと言うようなこの京都の土地での優雅な店づくりに改めて俺なんかが足を運べる店じゃないよなと思う。
茅葺屋根の門構えを見上げながら過去の時代にトリップした気分になる店の入り口に相変わらず眺めるだけでも価値があるよなとかつてただ店の前を通り過ぎるのがやっとだったころの俺は今の家に引っ越してから舞い込む幸運を大切にしようと改めて心に誓えば
「え?真?
うそ、真でしょ?!」
なんとなく聞き覚えのある、今となれば耳障りな声で呼ばれてしまった。
しかし悲しいかな、呼ばれた名前に反射的に振り向けば
「ほら、やっぱり真だ。久しぶりー!」
なんで今ごろ、という様な再会の相手はかつての恋人だった人。
「香織……」
いかにも高級と言う服装、それに手に持つのはブランドバッグ。
記憶にある姿からかなり変わってしまい懐かしいという感情のかけらもない今、言葉が続かなかった。
本当になんて言えばいいのかなんてわからなくって再会の挨拶の言葉すら出てこず、かといってあの別れを恨む気持ちはとうに消え失せていた。
そんな無言になってしまった俺に香織は今でも自分に未練があると判断してか蠱惑的に口元に弧を描き
「東京の会社辞めたって聞いたけどこっちに帰って来たの?
だけどこの前偶然真の家の前通ったんだけど、新しいおうちが建ってたけど?」
遠回しに今は何処に居るのか、こんな所で何をしているのかと好奇心交じりのどこか楽し気な顔で俺の事を探る香織は隣に立つ男に腕を絡ませて
「あ、紹介するね。
前に言っていた会社の先輩。今は本社勤めだけど今日はデートの為に戻ってきてくれたの。ディナーデート素敵でしょ?」
腕を組まれた男は俺をまじまじと見て……
「ひょっとして九条真さん、ですか?」
「はえ?あ、はい。九条真ですが……」
会ったことあったっけと思うもなぜか俺の手を掴み強制握手をさせられてしまった。
「初めまして!深川克己と申します!
会社で導入している九条さんのプログラミングを担当させてもらってます!
すごく尊敬してます!」
まさかの信者との遭遇だった。
「いや、あれは俺だけの設計ではなくて……」
「いえいえ、そこは分かっています。導入した日の作業を末席から拝見させていただいたのですが、あんな難しいのをうちの会社に併せて組みなおしたのを見た時はほんとこの世の中すごい人がいるって感動して!」
にぎにぎとされた握手はまだまだ続いていた。いや、そのオリジナルを作った本当にすごい人がこの店の中に居るのですよとは言えないくらいの熱烈な挨拶に逃げ腰になってしまう。
「ちょ、克己。待ってよ……」
なんて香織が間に入ったもののまったく見向きもせずに
「今日はこちらにお仕事で来ていらっしゃるのですか?」
なんてすごい圧に怖気づきそうになるけど……
「真? 散歩にでも行くの?」
なんて聞こえた声は結奈だった。
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