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夏休みを迎えるための踏ん張りどころ 2
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兄貴は家を引き払う為、倉庫を借りようかと言っていたが職場の近くに小さいけど部屋を借りたそうだ。
こことは違い借りる部屋があるんだと「へー」なんて嫉妬を含めて聞いてしまったが
「アパートなんてあるわけないだろ?
仕方がないから通える距離の家を借りてるんだ。真を見習って」
さらにドヤ顔。
「家の管理大丈夫?」
庭は手伝ってもらわないと結構大変だよと言えば
「その点真の家とは違ってコンパクトな家だぞ。古いけど。
庭も駐車場の分と少しあるだけだし。荷物も運びこんだが、そのままの状態でほったらかしだ」
からりと笑い
「引っ越しの日には職場の人達や母さんも手伝いに来てくれて雑草とかも刈ってくれたから今なら綺麗な状態で見られるよ」
「引っ越しとか早くない?」
「まあ、軽トラ借りて荷物移しただけだからな。
人数があれば一人分の引っ越しなんて簡単だったよ」
まあ、確かにそうだけどさと思う俺の引っ越しの一番時間を使ったのは仕事部屋の配線問題ぐらいだ。
「ところで真の所のちびっこ達は元気にしてるか?」
どこか心配げな声はきっとあの一件を聞いているのだろう。
「やっぱり聞いた?」
「まあ、暁さん達じゃないけどその周りの人達が大慌てでさ、分社の人達の話しだと山が動いたとかなんとか?」
ああ、それが玄さんの本当の姿ですとはあの騒動を思い出せば言えるはずもなく
「へー、俺は見てなかったなー」
兄貴ごめん。
兄貴が手間暇かけて面倒を見た弟はこうやってさらりと嘘が言える大人になりました。
「そうか。現場にいたって言うから詳しく聞いてみたかったんだが、俺が言える事じゃないが緑青は無事かい?」
「うん。主の大家さんがちゃんと迎えに来たし飯田さんって言う、兄貴は知ってる?料亭の?」
「ああ、それぐらい知ってるぞ」
馬鹿にするなと言う声だったが何かを察したように
「まさかあそこで料理を頂いたとか?!」
「ご自宅の方でご飯を頂きました」
お店ではなくと言えば少しだけほっとしたような溜息が零れ落ちた。
「あそこ中はよくわからないが何か気配があるだろ?」
「ああ、付喪神ですね。
ちゃんと名を与えられて使命を持ってます」
「………」
無言の兄貴に俺はやってしまったかと思ったが、変に好奇心を持たせないように
「大家さんの付喪神です。
番犬としてちゃんと料亭を守ってますので好奇心でウロチョロすると普通に警察案件だからやめてください」
「やだなあ。何かあったらどう対処しようか話し合った程度だよ」
乾いた笑い声が聞こえるが
「今回うちの親父達が他人の付喪神を攫ってこんな事が起きたんだ。
大家さんが激おこで先方の付喪神を強制的に貰い受けた挙句に視覚も封じたから……
触らぬ神に祟りなし、だよ」
今度こそ返事はなかった。
どれだけの大きな事件だったか、そして俺が知らないと言った出来事が逆にただの真実に変わった事にぎこちなく息を飲み込む音がスピーカー越しに聞こえてしばらくの無言ののちに
「母さんから聞いたけどお盆明けに引き渡しになるそうだ」
「うん。現状維持で渡す事を条件にしたんだってね」
「すでに不動産屋が購入を決めてくれたようだ」
「あそこ、立地だけは無駄に良いからね」
「だからさ、一度こっちにこいよ。最後の姿ぐらい見ないか?」
そんな兄貴のお誘いに俺は少しだけ心を動かされたけど
「最後の姿はこの間見たからもういいよ。
爺ちゃんと派手に喧嘩して周囲の人達にも見られちゃったし……」
行きづらいという事を言えばその話も母さん経由で聞いていたらしく少し言葉を詰まらせて
「そうだったな。真には辛い思い出しかないから見たくもないか」
「兄貴、後はよろしく」
ただそれだけを言うのがやっとで、そのまま電話を切った。
俺が思うより心が受けていたダメージは存外に深く、感情が溢れそうになるものの
「真、どこか痛いの?」
家の中をぐるぐると飛び回って朱華を引き離してやって来た緑青に見つかってしまった。ちなみに朱華は梁に止まってばてて情けない姿をさらしていた。
玄さんと岩さん、そして出来立ての四阿をお気に入りにしている真白がこの場にいないのが幸いだろうか。
緑青だけにでも見られた事も失敗したと思ったが、嘘も隠し事も通用しないこのちみっこ達に俺は少しだけ情けない心を吐き出してしまう。
「放火の件で実家を手放さないといけなくなったんだけど、一応生まれ育た家だから寂しいとかはあるけどほっとしているし俺もいる」
「緑青にはわからないけど、複雑なんだね?」
「そうなんだ。複雑なんだよ」
あの家に帰りたくなくって実家を出て嬉しいはずなのに、いざ生まれ育った家がなくなるのはなんとも言えなくて
「だったら緑青は真が寂しくないようにずっとこの家で一緒に居てあげるね!」
俺よりもはるかに長生きする緑青の励ます言葉に俺はくすぐったく思いながらも大家さんの
『時間をかけてゆっくりと向かい合え』
と言われた言葉を思い出した。
そう考えればこれから長い時間一緒に暮らすだろう緑青達の優しさにいつかこの言葉にできない思いに名前を付ける事が出来るのだろうかと思えば
「これからもよろしくな、緑青」
「うん!真もよろしくね!」
あの事件を乗り越えて確実に成長している緑青を頭に乗せて家の裏の畑の無人販売所までお散歩に行くよとみんなに声をかけた。
こことは違い借りる部屋があるんだと「へー」なんて嫉妬を含めて聞いてしまったが
「アパートなんてあるわけないだろ?
仕方がないから通える距離の家を借りてるんだ。真を見習って」
さらにドヤ顔。
「家の管理大丈夫?」
庭は手伝ってもらわないと結構大変だよと言えば
「その点真の家とは違ってコンパクトな家だぞ。古いけど。
庭も駐車場の分と少しあるだけだし。荷物も運びこんだが、そのままの状態でほったらかしだ」
からりと笑い
「引っ越しの日には職場の人達や母さんも手伝いに来てくれて雑草とかも刈ってくれたから今なら綺麗な状態で見られるよ」
「引っ越しとか早くない?」
「まあ、軽トラ借りて荷物移しただけだからな。
人数があれば一人分の引っ越しなんて簡単だったよ」
まあ、確かにそうだけどさと思う俺の引っ越しの一番時間を使ったのは仕事部屋の配線問題ぐらいだ。
「ところで真の所のちびっこ達は元気にしてるか?」
どこか心配げな声はきっとあの一件を聞いているのだろう。
「やっぱり聞いた?」
「まあ、暁さん達じゃないけどその周りの人達が大慌てでさ、分社の人達の話しだと山が動いたとかなんとか?」
ああ、それが玄さんの本当の姿ですとはあの騒動を思い出せば言えるはずもなく
「へー、俺は見てなかったなー」
兄貴ごめん。
兄貴が手間暇かけて面倒を見た弟はこうやってさらりと嘘が言える大人になりました。
「そうか。現場にいたって言うから詳しく聞いてみたかったんだが、俺が言える事じゃないが緑青は無事かい?」
「うん。主の大家さんがちゃんと迎えに来たし飯田さんって言う、兄貴は知ってる?料亭の?」
「ああ、それぐらい知ってるぞ」
馬鹿にするなと言う声だったが何かを察したように
「まさかあそこで料理を頂いたとか?!」
「ご自宅の方でご飯を頂きました」
お店ではなくと言えば少しだけほっとしたような溜息が零れ落ちた。
「あそこ中はよくわからないが何か気配があるだろ?」
「ああ、付喪神ですね。
ちゃんと名を与えられて使命を持ってます」
「………」
無言の兄貴に俺はやってしまったかと思ったが、変に好奇心を持たせないように
「大家さんの付喪神です。
番犬としてちゃんと料亭を守ってますので好奇心でウロチョロすると普通に警察案件だからやめてください」
「やだなあ。何かあったらどう対処しようか話し合った程度だよ」
乾いた笑い声が聞こえるが
「今回うちの親父達が他人の付喪神を攫ってこんな事が起きたんだ。
大家さんが激おこで先方の付喪神を強制的に貰い受けた挙句に視覚も封じたから……
触らぬ神に祟りなし、だよ」
今度こそ返事はなかった。
どれだけの大きな事件だったか、そして俺が知らないと言った出来事が逆にただの真実に変わった事にぎこちなく息を飲み込む音がスピーカー越しに聞こえてしばらくの無言ののちに
「母さんから聞いたけどお盆明けに引き渡しになるそうだ」
「うん。現状維持で渡す事を条件にしたんだってね」
「すでに不動産屋が購入を決めてくれたようだ」
「あそこ、立地だけは無駄に良いからね」
「だからさ、一度こっちにこいよ。最後の姿ぐらい見ないか?」
そんな兄貴のお誘いに俺は少しだけ心を動かされたけど
「最後の姿はこの間見たからもういいよ。
爺ちゃんと派手に喧嘩して周囲の人達にも見られちゃったし……」
行きづらいという事を言えばその話も母さん経由で聞いていたらしく少し言葉を詰まらせて
「そうだったな。真には辛い思い出しかないから見たくもないか」
「兄貴、後はよろしく」
ただそれだけを言うのがやっとで、そのまま電話を切った。
俺が思うより心が受けていたダメージは存外に深く、感情が溢れそうになるものの
「真、どこか痛いの?」
家の中をぐるぐると飛び回って朱華を引き離してやって来た緑青に見つかってしまった。ちなみに朱華は梁に止まってばてて情けない姿をさらしていた。
玄さんと岩さん、そして出来立ての四阿をお気に入りにしている真白がこの場にいないのが幸いだろうか。
緑青だけにでも見られた事も失敗したと思ったが、嘘も隠し事も通用しないこのちみっこ達に俺は少しだけ情けない心を吐き出してしまう。
「放火の件で実家を手放さないといけなくなったんだけど、一応生まれ育た家だから寂しいとかはあるけどほっとしているし俺もいる」
「緑青にはわからないけど、複雑なんだね?」
「そうなんだ。複雑なんだよ」
あの家に帰りたくなくって実家を出て嬉しいはずなのに、いざ生まれ育った家がなくなるのはなんとも言えなくて
「だったら緑青は真が寂しくないようにずっとこの家で一緒に居てあげるね!」
俺よりもはるかに長生きする緑青の励ます言葉に俺はくすぐったく思いながらも大家さんの
『時間をかけてゆっくりと向かい合え』
と言われた言葉を思い出した。
そう考えればこれから長い時間一緒に暮らすだろう緑青達の優しさにいつかこの言葉にできない思いに名前を付ける事が出来るのだろうかと思えば
「これからもよろしくな、緑青」
「うん!真もよろしくね!」
あの事件を乗り越えて確実に成長している緑青を頭に乗せて家の裏の畑の無人販売所までお散歩に行くよとみんなに声をかけた。
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