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夏休みを迎えるための踏ん張りどころ 1

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 浩太さん達も帰り静かになった部屋で仕事の進み具合を見せてもらう。
 中々こういう光景は新鮮だなと二階へ上がればすでに天井と壁が出来ていた。
 ただ今朝お願いしたばかりなのでロフトから部屋へと変更するための壁はまだない。
 その為にまだ一部壁が出来てないがきっとあっという間に出来てしまうのだろう。
 リビングから見上げる広い空間ももう終わりかと少し寂しさを覚えるもののやっぱり電気代は大切です。
 ダイニング用とリビング用のエアコンを使わないと涼しさを感じない室内なんてエコではありません。
 家賃が一万円なのにそれを無駄にする電気代。
 絶対見逃しません。
 本音を言えばこの吹き抜けのリビングじゃなくても良いのだけど、緑青が安全に飛び回る場所なので狭くするのはよろしくないと思えばそうだと閃いた。
 宮下さんの工場みたいに二階の部屋にリビング側にも窓を作ってもらい、入り口のドアから入って窓から出るなんて言うのも面白いんじゃないかなと思えばさっそく浩太さんに連絡。

「うん。別に作るのは問題ないよ。
 ただそうなると丁度リビングの照明の真正面に窓が来ることになるから、まぶしいよ?それでもいいなら……」
「カーテンを用意するのでお願いします」
 速攻で答えたもののそんな罠があるとは思わなかった。だけどそれもちゃんと計算する浩太さんってかっこいいよなと行き当たりばったりな俺とは違ってちゃんとその後を計画できる大人に俺も成りたいと朱華が尊敬するのも納得と言うように人生の見本の一人に加えた。
 
「朱華ー!追いかけっこしよう!」
「緑青まってー!」

 パタパタと空を飛ぶ二体の付喪神の一体は生まれながらの空の覇者となるべき能力をもち、一生懸命追いかけながらもいずれは優雅に空を舞う事になるだろうヒヨコはそれでも神の眷属と言わんばかりにその姿からあり得ないのに懸命に小さな羽を羽ばたかせる。
 高度こそ落ちなくなったけどまだふらふらとしながら緑青の後を必死に追いかける。
 だけどそのスピードでは緑青は満足できず朱華に自分のしっぽを咥えさせて家の中をくるくると飛び回っていた。
 どうやら工場の方でそうやって遊んでいたのか慣れたように朱華も緑青のしっぽを咥えて飛ぶよりもうまくバランスをとって水平を維持している。
 さすが鳥のバランス感覚。ヒヨコでも完璧だとそこは褒めておく。
 となると飛ぶのが不器用な理由は子供と言うのとあの体型だろう。
 それ以外何がある。
 お家が綺麗になって飯田さんのお弁当でころっころになった姿はしゅっととした……
 まだちょっと子供らしく丸みのある姿だけど飛べるという事は許容範囲だと思って緑青が朱華を振り回すハードな遊びにぶつからないでくれよーと願いながら眺めていた。
 
 そんな俺の希望を詰め込んだロフトからの変更が数日後に仕上がった。工期早いなと皆さんの仕事ぶりを尊敬していればいつの間にか四阿もできていた。
 本当にいつの間にだろうと柱と腰板、それにベンチがぐるりと囲ってあり、中央には希望通りの設置型バーベキューコンロがあった。
 普段は鉄板をはめて机として使うようになっている。
 屋根は取り壊した時の家の素材が使われており

「ちゃちゃっと作った割にはいい出来になったな」
「茅葺屋根も素敵だけどそうするとバーベキューできないですからね」

 先生の家から帰ってきたら出来上がってた四阿を遠藤さんと見上げていた。
 基礎は出来ていたとはいえにょきっと生えたようにできた四阿に感動すれば

「真!お庭にお家が出来てるよ!」
「真!玄はここでピクニックしたいです!」
「真!岩も玄さんとピクニックしたいです!」
「真!完成祝いに畑で真っ赤にむれているトマトをここで食べましょう!」
「真!これは真白のお家ですか?!」

 真白さん、これは犬小屋ではありませんと突っ込みたかったがどこか嬉しそうにしっぽを振る様子にみんなの休憩所だよと心で応えるのがせいぜいだった。
 ちみっこ達も喜んでさっそく屋根の上に登ったり、真白なんかはテーブルの回りをぐるぐると回ったりベンチに上ってから机の上に前足をかけてぶら下がっていた。ジャンプして飛び乗ろうとして届かなかった様子に吹き出してしまえば隣にいた遠藤さんがどうした?と心配する始末。むせたと言ってごまかしたもののそのとたんぽてっと落ちたのを見て期待を裏切らない子だとむせながらも笑ってしまう。

「完成したらここでバーベキューやろうな」
「ですね!畑で取れた野菜を焼いて食べるなんて贅沢ですね」
「それー。綾っさん呼べばお肉持って来てくれるぞ」
「だったら完成披露はもう少ししたら先輩達が帰ってくるのでその時にしましょう」
「あー、もうお盆か。植田達もなんだかんだ言って律儀に帰ってくるからな。実家じゃなく綾っさんの家に」
「大家さんの所ですか……」

 何をしにと疑問を覚えればそれを見透かしたように

「草刈りをして、庭仕事、畑仕事して、水野達や後輩たちを連れて夜中までどんちゃん騒ぎをするのが恒例だそうだ」

 なんて下男な仕事をしているのだろうかと思うも
「真も一度参加してみると良いぞー。綾っさんの人使い荒いのが輝く瞬間だからさ」
「輝くのですか?」
 どういう事だと想像がつかないと思う合間にも緑青が目の前で玄さんを抱きかかえて机の真ん中に運んでいた。
 鉄板が冷たくて気持ちいいねと言っているけど、そこバーベキューコンロだから焼かれても知らないぞと少しだけ心で訴えて見てもそこは自分に都合よく聞こえてないふりをされてしまった。まあ、いいけど。
 
「そういや綾っさんいつになったら京都から帰ってくるんだろ」
「ですね。放火の件はあらかた終わったって沢村さんから聞いています。
 ちょっと破損した掛け軸を修復してもらってるのでそれの仕上がりを見てから帰ると言ってましたが……そう言えば期間は二週間ぐらいといってましたね。
 知人の紹介で特急料金支払って直してもらってるらしいですから」
 暁さんにすぐに直してほしい、割増料金だったらいくらでも払うときりっとした顔で言い切った大家さん。いい顔してますがまためんどくさい事を押し切ったなと思うも向こうも掛け軸の状態を見てすぐに直しましょうと言ってくれた猛者。修復の工程を見学させてもらっているらしい。
 もちろん他にもあの夜玄さん達を解放した為に見られた後始末と言うか問い合わせ、でなく、いろんな所からの面会を九条家の人達と共に捌きながら謝罪して回っているという。
 謝罪して回ってるという時点でうさん臭さしかないけど、あの時岩さんに巻き込まれた付喪神は何も九条家やあの爺さんの所だけではなく、ちょうど居合わせてしまったとか偵察に来たとか言う付喪神も多くいたようでそんな状況になった説明を要求されているという。
 ほら、こう聞くとどこにも謝罪する要素がない。
 俺にはわからない事をしているという事だけは確かだと兄貴に問うも

「そんな雲の上の人達のしている事なんて下々が知るわけないだろ。
 山奥に住んでると人里の情報なんて入ってこないんだよ」

 なんてLIMEでドヤ顔で言われてしまった。




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