925 / 976
短い秋の駆け足とともに駆けずり回るのが山の生活です 2
しおりを挟む
飯田さんについていって一緒にケーキの納品状況を見てきた。
こういうのもなんだけどまだ朝の八時過ぎ。
昨夜のうちに焼き上げたスポンジにデコレーションしていざ納品。
昨晩飯田さんから聞き捨てならない言葉を聞いたので実際見てみたいという好奇心程度だったのだが……
スマホを取り出してもう一度時間を確認。
朝の八時ちょっと過ぎた所。
飯田さんはトランクを開けてしっかりと固定しているクーラーボックスの中から箱に入れたケーキを取り出して二つ重ねながら燈火の店へと歩けば
「「「おはようございます」」」
朝からさわやかなおばさ……お姉さま達の挨拶に飯田さんも一瞬固まるもそこは気付かれないくらいに自然に振り向いて
「おはようございます。まだまだ暑いですね」
そんな挨拶をさりげなくかわしたところで中から燈火が店のドアを開けてくれた。
「おはようございます。って、綾人も一緒か?珍しい」
「あー、昨夜不審な言葉を聞いたからちょっとのぞき見に」
「不審って……」
なんだ?
そんなコトさえ疑問にも覚えない様子の燈火はきっとこの状況を見慣れてしまったせいだろう。
ちらりと店の入り口の軒下に並ぶおばさ……お姉さま達を一瞬ちらりと見れば一瞬彷徨った視線に察する事は出来た。
苦手な人種に妥協したなと……
「とりあえず少し話そうか」
「どうぞ……」
飯田さんより先に俺を通してくれた時に視界の端がとらえたおばさ……お姉さんたちの視線の厳しさに一瞬なんでと問いただしたかったが、そこは皆様お待ちかねのケーキを手にするのが神・飯田だからだろう。
だから何なんだよ。
モラルと常識をわきまえない客は迷惑だと声を出して言いたい。
それがたとえ燈火の店の営業にダメージを与えて店をたたむことになっても俺の知った事じゃない。
ひどい、それが何なんだ。
行列を作る名店でもないただの喫茶店。
しかも住宅街の一角に建つ店舗。
「ご近所迷惑って言葉を知ってるか?」
「あの年齢の人達に勝てる攻略法をぜひ聞きたい」
気持ちいいほど開きなおった顔で言い切った燈火。
確かに燈火には無理かもしれないが
「何も攻略する相手は外の人達だけじゃないだろう」
ちらりと二回目のケーキを運んできた飯田さんを見る。
店に入って来たとたんに俺たちの視線を受けた飯田さんはドアが閉まったところで固まってしまったので、ふっとすぐに視線を外せば
「暴動が起きるぞ」
「この店は誰の店だ」
疲れたように言えばそれだけで飯田さんは理解してそそくさとケーキをショーケースの中に入れていた。
その様子をちゃんと見てから
「飯田さんもこちらに」
俺が座るカウンターの隣の席をトントンと叩けば気まずそうな顔で、でもおとなしく座る。
「言いたいことはわかりますね」
「はい」
少しだけ沈黙。
もうね、耳としっぽが垂れているのが見ないでもわかるって言うのってどうよって問いただしたいけど
「週に一度だからって黙認してきました」
「はい」
ケーキの切れ端とかを食べさせてもらって言うのは心苦しいのですが、ここは商業地区ではありません」
「はい」
「向こう三件両隣、すべて普通のご家庭の住宅街です」
「はい」
「営業時間前にお客様が並ばれるのは極力避けなければいけません」
「はい」
ここは飯田さんに見習って燈火が返事をする。
「もし、すでに並んでいるお客様に早朝より並ばれないようにと言えないのなら、このケーキサービスはやめるべきだと思います」
「はい」
なんて言うけどせっかくお客様が楽しみにしているのにと言うのはわかりきってる言葉。
だからその前に
「飯田さん。このケーキの事を青山さんはご存じでしょうか?」
「はい」
今までと同じように返答。
だけど俺はそこを見逃すほど甘くない。
スマホを取り出して電話をかけようとした時点で
「すみません。青山は知りません」
「マイヤーに鍛えてもらった俺の耳をなめないでくださいね」
多少だけど確実に拾い上げた戸惑いを指摘すれば飯田さんはすんなりと認めてくれた。
きっと簡単に高額ともいえるお金を動かす俺に対して悪意ある人達から守る為に教えてくれたのだろう。少なくともマイヤーに鍛えてもらってからは何気ない会話に潜む悪意を聞き分けることはできるようになった。あからさまな態度でわかる分には問題外だが、少なくとも言い寄ってくる人達は確実にいて、そういう人たちこそ確実に心地よい距離感をとりながら近づいてくることを俺はカレッジにいる間に山ほど体験した。
この村やふもとの町ではいまだに吉野と言う名前が幅を利かせてくれてそういったヤバいひとはいないけど。きっとそこに長沢さん達元吉野の職人さんだった人たちがいまだにジイちゃんに代わって俺を守ってくれているだけなのだろう。頭が下がる思いだ。
そんな中で俺はここで店を開くという燈火の希望に全力で応援したのだ。
その結果が
「オープン時散々ご迷惑かけておいてなおかけ続ける。
皆さん黙って店舗運営に反対しなかったのにそれに対するのがこれとは、燈火の爺さんも悲しんでいるだろうな」
「はい。大変申し訳なく思います」
俺もだけど燈火も大概爺ちゃんっ子なので、大好きな爺ちゃんの家を継いだ孫がご近所の皆さんが何も言わないだけに対策を何も取らないとはさすがにいかがなものかと遠回しで言っても分からないからとストレートに言った所でやっと反省をしてくれた。
「今日は仕方がないとして、お客様のお帰りの時にそれとなく言うように。
このような事が続くようならケーキサービスは終了するし、終了しなくてもせめて九時以降にしてもらうようにご協力を仰ぐ事。
そして飯田さんは事後承諾でも青山さんに言うように。たとえ金銭が絡んでなくてもMon chateauの飯田が料理を提供している事は青山さんと交わした雇用契約上違法です。ケーキを作るのなら青山さんに許可をもらうようにしてください」
「「はい」」
ハモる声は確実にわんこが反省したもの。
ここまで言えば理解してもらえたかと思い、俺は席を立って
「圭斗の所に挨拶に行ってきます。飯田さんこのあと少し付き合ってもらいたいので圭斗の家の方に来てくださいね」
「わかりました」
言って楽しく談笑するおばさ……お姉さま方の前を通り過ぎる。
まるで俺なんてどうでもいいというように気にも留めずにおしゃべりに花を咲かせるのを聞きながら道を挟んだ遠藤と表札を掲げる家の門をくぐって
「おはよー」
「珍しいな。朝から山から下りてくるなんて」
すでに皆さんお仕事の時間と言うように集まっている様子の中に少し疲れた顔をしているのか圭斗自らお茶を入れてくれた。
「なんかあったのか?」
「まあ、神・飯田のケーキテロでご近所迷惑勃発と言う木曜日名物?」
なんて言ってみれば
「あれな。朝七時過ぎには並び始めていておばさん達家の事はいいのかっておもうよなw」
なんて道を挟んだお向いさんの遠藤の意図せずに発せられた意見に家も大切だよなと出されたお茶を啜るのだった。
こういうのもなんだけどまだ朝の八時過ぎ。
昨夜のうちに焼き上げたスポンジにデコレーションしていざ納品。
昨晩飯田さんから聞き捨てならない言葉を聞いたので実際見てみたいという好奇心程度だったのだが……
スマホを取り出してもう一度時間を確認。
朝の八時ちょっと過ぎた所。
飯田さんはトランクを開けてしっかりと固定しているクーラーボックスの中から箱に入れたケーキを取り出して二つ重ねながら燈火の店へと歩けば
「「「おはようございます」」」
朝からさわやかなおばさ……お姉さま達の挨拶に飯田さんも一瞬固まるもそこは気付かれないくらいに自然に振り向いて
「おはようございます。まだまだ暑いですね」
そんな挨拶をさりげなくかわしたところで中から燈火が店のドアを開けてくれた。
「おはようございます。って、綾人も一緒か?珍しい」
「あー、昨夜不審な言葉を聞いたからちょっとのぞき見に」
「不審って……」
なんだ?
そんなコトさえ疑問にも覚えない様子の燈火はきっとこの状況を見慣れてしまったせいだろう。
ちらりと店の入り口の軒下に並ぶおばさ……お姉さま達を一瞬ちらりと見れば一瞬彷徨った視線に察する事は出来た。
苦手な人種に妥協したなと……
「とりあえず少し話そうか」
「どうぞ……」
飯田さんより先に俺を通してくれた時に視界の端がとらえたおばさ……お姉さんたちの視線の厳しさに一瞬なんでと問いただしたかったが、そこは皆様お待ちかねのケーキを手にするのが神・飯田だからだろう。
だから何なんだよ。
モラルと常識をわきまえない客は迷惑だと声を出して言いたい。
それがたとえ燈火の店の営業にダメージを与えて店をたたむことになっても俺の知った事じゃない。
ひどい、それが何なんだ。
行列を作る名店でもないただの喫茶店。
しかも住宅街の一角に建つ店舗。
「ご近所迷惑って言葉を知ってるか?」
「あの年齢の人達に勝てる攻略法をぜひ聞きたい」
気持ちいいほど開きなおった顔で言い切った燈火。
確かに燈火には無理かもしれないが
「何も攻略する相手は外の人達だけじゃないだろう」
ちらりと二回目のケーキを運んできた飯田さんを見る。
店に入って来たとたんに俺たちの視線を受けた飯田さんはドアが閉まったところで固まってしまったので、ふっとすぐに視線を外せば
「暴動が起きるぞ」
「この店は誰の店だ」
疲れたように言えばそれだけで飯田さんは理解してそそくさとケーキをショーケースの中に入れていた。
その様子をちゃんと見てから
「飯田さんもこちらに」
俺が座るカウンターの隣の席をトントンと叩けば気まずそうな顔で、でもおとなしく座る。
「言いたいことはわかりますね」
「はい」
少しだけ沈黙。
もうね、耳としっぽが垂れているのが見ないでもわかるって言うのってどうよって問いただしたいけど
「週に一度だからって黙認してきました」
「はい」
ケーキの切れ端とかを食べさせてもらって言うのは心苦しいのですが、ここは商業地区ではありません」
「はい」
「向こう三件両隣、すべて普通のご家庭の住宅街です」
「はい」
「営業時間前にお客様が並ばれるのは極力避けなければいけません」
「はい」
ここは飯田さんに見習って燈火が返事をする。
「もし、すでに並んでいるお客様に早朝より並ばれないようにと言えないのなら、このケーキサービスはやめるべきだと思います」
「はい」
なんて言うけどせっかくお客様が楽しみにしているのにと言うのはわかりきってる言葉。
だからその前に
「飯田さん。このケーキの事を青山さんはご存じでしょうか?」
「はい」
今までと同じように返答。
だけど俺はそこを見逃すほど甘くない。
スマホを取り出して電話をかけようとした時点で
「すみません。青山は知りません」
「マイヤーに鍛えてもらった俺の耳をなめないでくださいね」
多少だけど確実に拾い上げた戸惑いを指摘すれば飯田さんはすんなりと認めてくれた。
きっと簡単に高額ともいえるお金を動かす俺に対して悪意ある人達から守る為に教えてくれたのだろう。少なくともマイヤーに鍛えてもらってからは何気ない会話に潜む悪意を聞き分けることはできるようになった。あからさまな態度でわかる分には問題外だが、少なくとも言い寄ってくる人達は確実にいて、そういう人たちこそ確実に心地よい距離感をとりながら近づいてくることを俺はカレッジにいる間に山ほど体験した。
この村やふもとの町ではいまだに吉野と言う名前が幅を利かせてくれてそういったヤバいひとはいないけど。きっとそこに長沢さん達元吉野の職人さんだった人たちがいまだにジイちゃんに代わって俺を守ってくれているだけなのだろう。頭が下がる思いだ。
そんな中で俺はここで店を開くという燈火の希望に全力で応援したのだ。
その結果が
「オープン時散々ご迷惑かけておいてなおかけ続ける。
皆さん黙って店舗運営に反対しなかったのにそれに対するのがこれとは、燈火の爺さんも悲しんでいるだろうな」
「はい。大変申し訳なく思います」
俺もだけど燈火も大概爺ちゃんっ子なので、大好きな爺ちゃんの家を継いだ孫がご近所の皆さんが何も言わないだけに対策を何も取らないとはさすがにいかがなものかと遠回しで言っても分からないからとストレートに言った所でやっと反省をしてくれた。
「今日は仕方がないとして、お客様のお帰りの時にそれとなく言うように。
このような事が続くようならケーキサービスは終了するし、終了しなくてもせめて九時以降にしてもらうようにご協力を仰ぐ事。
そして飯田さんは事後承諾でも青山さんに言うように。たとえ金銭が絡んでなくてもMon chateauの飯田が料理を提供している事は青山さんと交わした雇用契約上違法です。ケーキを作るのなら青山さんに許可をもらうようにしてください」
「「はい」」
ハモる声は確実にわんこが反省したもの。
ここまで言えば理解してもらえたかと思い、俺は席を立って
「圭斗の所に挨拶に行ってきます。飯田さんこのあと少し付き合ってもらいたいので圭斗の家の方に来てくださいね」
「わかりました」
言って楽しく談笑するおばさ……お姉さま方の前を通り過ぎる。
まるで俺なんてどうでもいいというように気にも留めずにおしゃべりに花を咲かせるのを聞きながら道を挟んだ遠藤と表札を掲げる家の門をくぐって
「おはよー」
「珍しいな。朝から山から下りてくるなんて」
すでに皆さんお仕事の時間と言うように集まっている様子の中に少し疲れた顔をしているのか圭斗自らお茶を入れてくれた。
「なんかあったのか?」
「まあ、神・飯田のケーキテロでご近所迷惑勃発と言う木曜日名物?」
なんて言ってみれば
「あれな。朝七時過ぎには並び始めていておばさん達家の事はいいのかっておもうよなw」
なんて道を挟んだお向いさんの遠藤の意図せずに発せられた意見に家も大切だよなと出されたお茶を啜るのだった。
210
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!
野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。
私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。
そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる