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夏をだらだら過ごすなんて夢のような話はこの山では伝説です 4
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風呂上りに宮下と長沢さんと一緒に水場を眺めながら話をする。長沢さんの奥さんもやってきてこの便利な山水を溜める水場を眺めながら
「昔は街の色んな所にこう言った水場があったのに、今じゃだいぶ数が減ってねぇ。畑で取れた野菜を洗ったり、洗濯をしたり、水に恵まれたこの街でもみんなお喋りする為に集まったもんだよ」
井戸端会議ならぬ水場会議。水のある所花が咲くと言う物かと
「今は実用的じゃなくなりましたよね。観光客の撮影スポットになったりして」
「まぁ、足湯と言い観光客ウケをする古い町お約束の景色だな」
宮下の意見に頷きながらもサイズを計る宮下と長沢さんの仕事の邪魔にならないように少しだけ離れて見守る。
「して吉野の、どういった作りにする?」
長沢さんはちらりと俺に目を向けるも
「普通に屋根があればいいだけだけど……」
言うも長沢さんの目はそうじゃないと言う。
「折角だからこの水場ももっと使いやすいようにするか?」
「どんなふうに?」
さすがに使った事はないから使いやすいが分らない。
うちでは沢から引いた水は水路を流しっぱなしが基本だし、溜めて使うにしても水道から出るので使いやすいが想像できない。
だけどそこはまだ水道設備が完備しきれていなかった時代を生きる人達から経験がものを言う。
「難しく考えなくていいのよ。
こっちのマスで沢山水を溜めて、少し水を流しながら足元で洗い物が出来る様に浅い洗い場を作っておくのよ」
昔はそこに洗濯ものを入れて足でもんで良く洗ったわと笑うけどさすがに山水冷たいから無理ですとその選択はない。
「二段階は良いけど、やっぱり洗い場は要りません」
そう?なんて少し寂しそうにされるものの
「何かこのコンクリの水場に愛着を持ってしまいましてね。これを壊して作り直すって言うのもったいなくて」
既にこの風景の一つに溶け込んだ景色に今更新しくするつもりはないとだけ言っておく。
「だけど屋根は欲しいんだ」
宮下のそのままが良いのかどっちなんだよと言うツッコミ。確かに言ってる事は矛盾してるかもしれないが
「それはバージョンアップさせると思えば問題ない」
「綾人は相変わらず強引だなぁ」
呆れる宮下に長沢さんの奥さんは笑う。
「屋根を付ける理由はゴミが入らないようにするだけが目的だから。
蓋をするって言うのも考えたけど、そうすると絶対蓋の上に登ろうとするバカが沸いてくるはずだから。たまにだけど凛ちゃんも遊びに来るし、最悪を想定する考えは出来るだけ取り除きたいので」
だったら潰せよと本末転倒な事を言われるかもしれないけど必要なのはこの水場なのだ。この水場を使う縛りがあってこそなんぼ。
「まったく綾人はめんどくさいなあ」
「何気にするな。一郎もそう言う所があったから諦めろ」
この性格はまさかのジイちゃん譲り。
ちょっと感動するのとなんか嫌だなと複雑な気分になる物の水場の中で泳ぐ金魚がちょっと見ない間に妙に大きくなっているのを複雑に眺めてしまう。
余分な水を流す排水溝からちょろちょろと水路をとおり、渡り廊下の下を潜って表庭の方に流さずに家の軒下の水路を流れて行くのを見送る。
宮下に聞けば去年の冬場金網の蓋を取っていたら落ちた雪がどんどん融けて行くから雪かき助かったよと報告があった。
その代り先生が何度か水路に嵌ったと笑う声も思い出す。
「変に近道するからね」
先生の横着な所は三回ほど落ちた所でようやく直ったらしい。
よっぽど冷たいと見えて凄い悲鳴だったと宮下は笑っていたが、所詮片方の足首だけ。全身沈められた事を思えば何て事はないと俺も同じように笑っていた。
「とりあえず屋根があればいいんだな」
これと行って面白味のない仕事だけど
「内田さんにお願いするから、屋根の部分は長沢さん遊んじゃっていいですよ」
圭斗と浩太さんできっと数日で作り上げるのだろう。
日数の分配は基礎になる部分のコンクリが固まる時間程度。
四本の柱に屋根が乗っかるだけの東屋風な景色に
「ベンチとかあったらお昼寝できそうですね」
涼しい風によく寝れそうだと思って言っただけなのに、何故か長沢さんの目がきらりと光ったような気がした。
「ん?」
と思う俺の後ろで宮下が「あーあ」と瞠目。
ちょっと、俺に説明しろよと言うもそれより早く長沢さんはスマホを取り出して後からここに来るように鉄治さんと話をしていた。
だけどまだ気づいていない。
この中で一番目を光らせていた人物が長沢さんの奥さんだなんて、まったくのノーマークに俺達はまだ何も気づいていなかった。
「昔は街の色んな所にこう言った水場があったのに、今じゃだいぶ数が減ってねぇ。畑で取れた野菜を洗ったり、洗濯をしたり、水に恵まれたこの街でもみんなお喋りする為に集まったもんだよ」
井戸端会議ならぬ水場会議。水のある所花が咲くと言う物かと
「今は実用的じゃなくなりましたよね。観光客の撮影スポットになったりして」
「まぁ、足湯と言い観光客ウケをする古い町お約束の景色だな」
宮下の意見に頷きながらもサイズを計る宮下と長沢さんの仕事の邪魔にならないように少しだけ離れて見守る。
「して吉野の、どういった作りにする?」
長沢さんはちらりと俺に目を向けるも
「普通に屋根があればいいだけだけど……」
言うも長沢さんの目はそうじゃないと言う。
「折角だからこの水場ももっと使いやすいようにするか?」
「どんなふうに?」
さすがに使った事はないから使いやすいが分らない。
うちでは沢から引いた水は水路を流しっぱなしが基本だし、溜めて使うにしても水道から出るので使いやすいが想像できない。
だけどそこはまだ水道設備が完備しきれていなかった時代を生きる人達から経験がものを言う。
「難しく考えなくていいのよ。
こっちのマスで沢山水を溜めて、少し水を流しながら足元で洗い物が出来る様に浅い洗い場を作っておくのよ」
昔はそこに洗濯ものを入れて足でもんで良く洗ったわと笑うけどさすがに山水冷たいから無理ですとその選択はない。
「二段階は良いけど、やっぱり洗い場は要りません」
そう?なんて少し寂しそうにされるものの
「何かこのコンクリの水場に愛着を持ってしまいましてね。これを壊して作り直すって言うのもったいなくて」
既にこの風景の一つに溶け込んだ景色に今更新しくするつもりはないとだけ言っておく。
「だけど屋根は欲しいんだ」
宮下のそのままが良いのかどっちなんだよと言うツッコミ。確かに言ってる事は矛盾してるかもしれないが
「それはバージョンアップさせると思えば問題ない」
「綾人は相変わらず強引だなぁ」
呆れる宮下に長沢さんの奥さんは笑う。
「屋根を付ける理由はゴミが入らないようにするだけが目的だから。
蓋をするって言うのも考えたけど、そうすると絶対蓋の上に登ろうとするバカが沸いてくるはずだから。たまにだけど凛ちゃんも遊びに来るし、最悪を想定する考えは出来るだけ取り除きたいので」
だったら潰せよと本末転倒な事を言われるかもしれないけど必要なのはこの水場なのだ。この水場を使う縛りがあってこそなんぼ。
「まったく綾人はめんどくさいなあ」
「何気にするな。一郎もそう言う所があったから諦めろ」
この性格はまさかのジイちゃん譲り。
ちょっと感動するのとなんか嫌だなと複雑な気分になる物の水場の中で泳ぐ金魚がちょっと見ない間に妙に大きくなっているのを複雑に眺めてしまう。
余分な水を流す排水溝からちょろちょろと水路をとおり、渡り廊下の下を潜って表庭の方に流さずに家の軒下の水路を流れて行くのを見送る。
宮下に聞けば去年の冬場金網の蓋を取っていたら落ちた雪がどんどん融けて行くから雪かき助かったよと報告があった。
その代り先生が何度か水路に嵌ったと笑う声も思い出す。
「変に近道するからね」
先生の横着な所は三回ほど落ちた所でようやく直ったらしい。
よっぽど冷たいと見えて凄い悲鳴だったと宮下は笑っていたが、所詮片方の足首だけ。全身沈められた事を思えば何て事はないと俺も同じように笑っていた。
「とりあえず屋根があればいいんだな」
これと行って面白味のない仕事だけど
「内田さんにお願いするから、屋根の部分は長沢さん遊んじゃっていいですよ」
圭斗と浩太さんできっと数日で作り上げるのだろう。
日数の分配は基礎になる部分のコンクリが固まる時間程度。
四本の柱に屋根が乗っかるだけの東屋風な景色に
「ベンチとかあったらお昼寝できそうですね」
涼しい風によく寝れそうだと思って言っただけなのに、何故か長沢さんの目がきらりと光ったような気がした。
「ん?」
と思う俺の後ろで宮下が「あーあ」と瞠目。
ちょっと、俺に説明しろよと言うもそれより早く長沢さんはスマホを取り出して後からここに来るように鉄治さんと話をしていた。
だけどまだ気づいていない。
この中で一番目を光らせていた人物が長沢さんの奥さんだなんて、まったくのノーマークに俺達はまだ何も気づいていなかった。
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