435 / 976
木漏れ日が差し込む白い部屋で 1
しおりを挟む
朝オリオールさんの作る朝食を頂きながら何だかなーとこの食卓を眺めていた。
飯田さんも手伝ったと言う様に美味しいご飯の匂いを纏わせながら起こしに来てくれて、昨晩同様の顔ぶれにここは一瞬どこだったかと素直にねぼける事にして置いた。
「ほら、時差ボケしてないで温かいうちに食べましょう」
現実逃避はさせてくれないらしい。
出されたパンと野菜がたっぷりのシチュー。野菜をじっくりと焼いてスクランブルエッグを添えて、なかなかどうして烏骨鶏の卵が恋しいと思うのは単なる卵の味を知ってしまった味覚が訴えかける贅沢だ。
脳内が記憶する味覚と実際味わう味覚との差に違和感を覚えていれば
「何だ、アヤトは卵が嫌いだったか?」
「好き嫌いはいかんぞ」
「子供は体の為にもしっかりと食べないと大きくなれないぞ」
クソジジイどもは揃いも揃って朝から俺をイラつかせるのが上手いらしい。
俺の不機嫌の理由に気付いてか
「オリオール、綾人さんはもう立派な成人だし身長はもう伸びません。好き嫌いはおばあ様がちゃんと育てて下さったので出された物を食べない真似は致しません。
それに卵料理は好きな方ですが、この卵がいつも食べている卵より味が薄いので不満なだけです」
「飯田さん、それを正直に俺の前で言われると複雑なんだけど」
俺のコンプレックスな所をそれだけ堂々と紹介されるのってこれは何と言う嫌がらせかと思いながらチクリと言えばすぐにあまりのぞんざいな紹介だった事に気付いてくれたようですみませんと謝っていってくれるも
「若い若いと思ってたのにもう大人か」
「カオルを預かった時は子供だったがもっと大人びていたからな」
「俺、その
時の飯田さんよりも年上なんですが」
二十三歳だと言えば三人とも大げさな悲鳴とポーズをとって頭に手を置いて
「通りでこんな小さな子供が旅行が出来るわけだ」
わけのわからん感想を無視してスープを頂く。
うん。こっちは舌に馴染のある味で安心すると言う様におかわりを貰う。
「で、出発は何時頃に?」
「一応朝一でエドガーがここに迎えに来る事になっている」
と言った所で車のエンジン音が聞こえてまさかのタイミングでチャイムが鳴った。
「ああ、そう言えば出かける前に打合せするんだっけな」
思い出せば折角の料理だが味わう前にガツガツと腹に収める。皆さん微妙な顔をされてますが、自慢じゃないですがオリオールさんの元に残った最後の弟子にしっかりとこの舌は調教されてますのでこの程度のお料理は週一で堪能させてもらっている故に慣れたお味。ガキのように味わう前に満腹を満たせてもらいますと食べつくす。
ふむ、足りないな……
なんて事は言わずに食べ終えたタイミングで迎えに行ってくれた飯田さんがエドガーさんを迎え入れてコーヒーをお出ししてくれていた。
「アヤトおはよう。昨日の今日で、すごいな……」
キッチンが使えるようになったとか、視線がオリオールさんに釘付けだとかいろいろ俺同様思う所はある物の
「すみません、顔洗って来るので少し待っていてください」
使える部屋はここと俺が巣に決めた部屋だけなのでそちらに来てもらうと着替えをお見せしなくてはいけない罰ゲームなので皆さんの食事風景に居心地悪くもここで待ってもらうとする。
シャワーを浴びる前に寝たので着替える前にざっと浴びて身支度を整える。
そして再びキッチンに戻ってこれば……
「アヤト、ご馳走になってるよ」
エドガーは何故か朝食を食べて待っていた。
何してんだこの人と思っていれば、俺の感情の乏しいと定評のある表情から飯田さんは何かを察して片づけを始めてくれた。年寄りよりもこう言うのは若い方が空気を察してか食事のスピードが上がり、ジジイどもが食べ終わる頃には何とか食べ終える努力をしてくれた。
その後は飯田さんが三人に一度帰る様に説得してくれて、やっと打ち合わせをするのにふさわしい静かな空間を確保するのだった。
口元を拭うエドガーはまず俺にご馳走になった事を感謝して
「さて、まずはお知らせしたい事があります。
あれから事務所に戻った所、あちらから親族の同席を求められました。一応遺産と言う試算になる予定の物だからと仰られましたが」
「想定内。別に構わないよ。って言うか、拒否しても来るだろうからそう言う事なら見える場所に居て貰う方が安全だしね。
それと俺の方も彼、飯田さんを連れていくから」
そんな俺の返答にエドガーは器用に右目側の眉毛を跳ね上げて
「なかなか肝が据わってるなー?
彼はボディガード?いい体格しているけど?」
なんて茶化すも
「一度遺産相続で殺されかけられた体験をするとこれぐらいの度胸は付くさ。
因みに彼はボディガードでもなんでもありません。
ただ、ジビエなんかが大好きで、狩りなんかも嗜むシェフです」
事実を並べたが聞きようにはとても怖い事を連想できるワードにエドガーは一瞬呼吸を忘れたかのように飯田さんを見るも、飯田さんは俺がこんな紹介の仕方をするのはいつもの事なのですっかり耐性をつけてにっこりと笑って黙って俺に緑茶を淹れてくれた。
知らない事はないだろうが抹茶入りの深蒸し茶は今のエドガーさんにはそれはそれは毒々しい色に見えるようで、俺が息を吹き付けて飲む様子にそれは本当に飲んでいい物なのかというような視線でおかわりを貰わないようにゆっくりとコーヒーをすするのだった。
飯田さんも手伝ったと言う様に美味しいご飯の匂いを纏わせながら起こしに来てくれて、昨晩同様の顔ぶれにここは一瞬どこだったかと素直にねぼける事にして置いた。
「ほら、時差ボケしてないで温かいうちに食べましょう」
現実逃避はさせてくれないらしい。
出されたパンと野菜がたっぷりのシチュー。野菜をじっくりと焼いてスクランブルエッグを添えて、なかなかどうして烏骨鶏の卵が恋しいと思うのは単なる卵の味を知ってしまった味覚が訴えかける贅沢だ。
脳内が記憶する味覚と実際味わう味覚との差に違和感を覚えていれば
「何だ、アヤトは卵が嫌いだったか?」
「好き嫌いはいかんぞ」
「子供は体の為にもしっかりと食べないと大きくなれないぞ」
クソジジイどもは揃いも揃って朝から俺をイラつかせるのが上手いらしい。
俺の不機嫌の理由に気付いてか
「オリオール、綾人さんはもう立派な成人だし身長はもう伸びません。好き嫌いはおばあ様がちゃんと育てて下さったので出された物を食べない真似は致しません。
それに卵料理は好きな方ですが、この卵がいつも食べている卵より味が薄いので不満なだけです」
「飯田さん、それを正直に俺の前で言われると複雑なんだけど」
俺のコンプレックスな所をそれだけ堂々と紹介されるのってこれは何と言う嫌がらせかと思いながらチクリと言えばすぐにあまりのぞんざいな紹介だった事に気付いてくれたようですみませんと謝っていってくれるも
「若い若いと思ってたのにもう大人か」
「カオルを預かった時は子供だったがもっと大人びていたからな」
「俺、その
時の飯田さんよりも年上なんですが」
二十三歳だと言えば三人とも大げさな悲鳴とポーズをとって頭に手を置いて
「通りでこんな小さな子供が旅行が出来るわけだ」
わけのわからん感想を無視してスープを頂く。
うん。こっちは舌に馴染のある味で安心すると言う様におかわりを貰う。
「で、出発は何時頃に?」
「一応朝一でエドガーがここに迎えに来る事になっている」
と言った所で車のエンジン音が聞こえてまさかのタイミングでチャイムが鳴った。
「ああ、そう言えば出かける前に打合せするんだっけな」
思い出せば折角の料理だが味わう前にガツガツと腹に収める。皆さん微妙な顔をされてますが、自慢じゃないですがオリオールさんの元に残った最後の弟子にしっかりとこの舌は調教されてますのでこの程度のお料理は週一で堪能させてもらっている故に慣れたお味。ガキのように味わう前に満腹を満たせてもらいますと食べつくす。
ふむ、足りないな……
なんて事は言わずに食べ終えたタイミングで迎えに行ってくれた飯田さんがエドガーさんを迎え入れてコーヒーをお出ししてくれていた。
「アヤトおはよう。昨日の今日で、すごいな……」
キッチンが使えるようになったとか、視線がオリオールさんに釘付けだとかいろいろ俺同様思う所はある物の
「すみません、顔洗って来るので少し待っていてください」
使える部屋はここと俺が巣に決めた部屋だけなのでそちらに来てもらうと着替えをお見せしなくてはいけない罰ゲームなので皆さんの食事風景に居心地悪くもここで待ってもらうとする。
シャワーを浴びる前に寝たので着替える前にざっと浴びて身支度を整える。
そして再びキッチンに戻ってこれば……
「アヤト、ご馳走になってるよ」
エドガーは何故か朝食を食べて待っていた。
何してんだこの人と思っていれば、俺の感情の乏しいと定評のある表情から飯田さんは何かを察して片づけを始めてくれた。年寄りよりもこう言うのは若い方が空気を察してか食事のスピードが上がり、ジジイどもが食べ終わる頃には何とか食べ終える努力をしてくれた。
その後は飯田さんが三人に一度帰る様に説得してくれて、やっと打ち合わせをするのにふさわしい静かな空間を確保するのだった。
口元を拭うエドガーはまず俺にご馳走になった事を感謝して
「さて、まずはお知らせしたい事があります。
あれから事務所に戻った所、あちらから親族の同席を求められました。一応遺産と言う試算になる予定の物だからと仰られましたが」
「想定内。別に構わないよ。って言うか、拒否しても来るだろうからそう言う事なら見える場所に居て貰う方が安全だしね。
それと俺の方も彼、飯田さんを連れていくから」
そんな俺の返答にエドガーは器用に右目側の眉毛を跳ね上げて
「なかなか肝が据わってるなー?
彼はボディガード?いい体格しているけど?」
なんて茶化すも
「一度遺産相続で殺されかけられた体験をするとこれぐらいの度胸は付くさ。
因みに彼はボディガードでもなんでもありません。
ただ、ジビエなんかが大好きで、狩りなんかも嗜むシェフです」
事実を並べたが聞きようにはとても怖い事を連想できるワードにエドガーは一瞬呼吸を忘れたかのように飯田さんを見るも、飯田さんは俺がこんな紹介の仕方をするのはいつもの事なのですっかり耐性をつけてにっこりと笑って黙って俺に緑茶を淹れてくれた。
知らない事はないだろうが抹茶入りの深蒸し茶は今のエドガーさんにはそれはそれは毒々しい色に見えるようで、俺が息を吹き付けて飲む様子にそれは本当に飲んでいい物なのかというような視線でおかわりを貰わないようにゆっくりとコーヒーをすするのだった。
246
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる