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白銀の世界で春を謳う 1
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毎日とは言わないけど飽きもせずに降る雪にも負けず圭斗は雪をかきにここまでやってくる。家主の綾人はストーブの前でパソコンを弄るだけ。何となく理不尽と思うもちゃんと給料を発生させる仕事なのでこれはアルバイトだと割り切る圭斗に俺も割り切って見る事にしている。そしていつの間にか雪かきの仕方や雪を屋根から降ろす方法も教えてもらっていた。俺の場合は授業料と言う事でプラマイゼロ。安い労働力を得たもんだと感心してしまった。
その圭斗が来る時に何やら資材を持ち込んで烏骨鶏の家の倉庫へと運んでいた。トラックでここまで来る事が出来ないのでスノーモービルに荷台のソリを接続して決して多い量ではないがパネルや断熱材が山のように準備されていた。
そして今日も倉庫に運んでから雪かきをして、終えた所でお昼となっていた。
お昼当番は俺と綾人でじゃんけんで決める。綾人はジャンケンが強く、今日も俺が負けて準備したメニューはもんじゃ。綾人が畑で作ったと言うキャベツの甘さにびっくりしてキャベツの天ぷらを作る俺に綾人はしょんぼりした目を向けてきたが、今俺のブームはキャベツだ。四分の一にカットしたキャベツにベーコンを挟んだコンソメスープも無限に食べれそうだけど綾人のしょんぼりとした顔を見ずに堪能する。
どうせ、どれもこれももう堪能したと言うのだろう。だが、このキャベツの美味さを色々な角度から味わう為にはとりあえず全部挑戦する。これに限る。
それはさておきホットプレートを囲んで男三人もんじゃのヘラが無かったので急きょそこらに在った木で圭斗に作ってもらって土手の中でふつふつと沸騰する出汁を眺める。その中ではコロコロに切ったお餅も沈んでいるし、鉄板の隅でタコも焼かれていた。チーズは混ぜる派ではなく焼いてからもんじゃとこそぎ落としながら食べると言う綾人のスタイルになにそれ美味しそうと既に好き勝手食べる事は決定となっていた。明太子がないのが残念だったが、コーンもツナも用意してお好みで自分で合わせろと言うスタイルは酷く適当だが、それもまたうまそうだ。一番人気はコーンビーフだろうか。焼けるのが待ちきれなくて既に鉄板の上に置かれて焼きながらちまちまと食べていた。一番解せないのが何故か隅っこでソーセージや猪の肉が焼かれているがそれはもんじゃ何ておやつだと主張する綾人の判断なので見ないふりをする。
圭斗が車なのでお酒はなしという事だが今夜は絶対ビールを飲む!心に決めた。
「って言うかさ、もんじゃってこう言う食べ物?」
もんじゃ初心者の圭斗は取り皿に取り分けてねっちねっちと食べながら不思議そうな顔をしていた。
「だからおやつなんだよ」
綾人は言いながら台所からスープを吸ったインスタントラーメンを持ち出して来て袋の中でバリバリと割り出した。お湯を入れて三分のヒヨコが目印のインスタントラーメンをもんじゃに振りかけてもっちもっちと食べる。
「あー、俺も欲しい」
「面倒だから全部かけるか」
疑問でもなく決定と言う様に綾人は容赦なくもんじゃにかければ圭斗はより一層不思議な食べ物に変ったと顔を顰めていたが
「まぁ、さっきより歯ごたえがあっていいのか?」
言いながらももんじゃでタコを包んでせっかちなたこ焼きのようにして食べてるあたりまだ謎な物なのだろう。
「東京じゃご飯と一緒に食べる」
「俺は食べないけどな」
綾人とはどうやら話が合わないようで残念。
「俺の場合ご飯じゃなくてビール。本を読みながらのんびり縁側で食べる。ちなみに飯田さんには不評だった」
「飯田さんでも好き嫌いあるんだ」
蓮司のふとした疑問に綾人は呆れたような顔で
「ここまで準備するのならしっかりお好み焼きを焼きましょう。何だかせっかちなお好み焼きを食べているようでもったいない気がします、だってさ」
「俺は飯田さんの意見に一票」
圭斗が猪の肉の上にもんじゃを乗せて食べていた。自由だなと感心しながらも気付けば猪の肉はほぼなくなっていた。俺ほとんど食べてないのにと慌てて残りの中から一枚確保すれば残りを綾人と圭斗が奪い合うように取り皿に移していた。お前らな……いや、そうじゃなくて。
「所で前から気になってたんだけど、烏骨鶏の小屋の裏の倉庫に何か資材置いているだろ?なにをするつもりなんだよ」
「ん?ああ、蓮司は知らないのか?」
圭斗に振られた綾人は肉を頬張りながらまだ言ってないとだけ言う。
「烏骨鶏小屋を修理するのか?」
もっちもっちと餅入りのもんじゃを食べていれば
「烏骨鶏の小屋の二階、前は養蚕場だったらしいけど、俺が知る限りそんなのやって無くってさ。何になってるかと思えば茅の置き場になっていて。隣の離れを直した時に茅を下ろして今何もない状態なんだけどもったいないから手入れしようかって圭斗と話してたんだ」
「へえ、見て見たいかも」
「じゃあ、これ食べたら一度見に行こう。烏骨鶏を外に出せる様になったら工事を始めたいからな」
「それまでかたづけと掃除だな」
ウンザリと言う綾人だが
「なぁ、それ、俺がここに居る間手伝ってもいいか?」
二人はきょとんとして
「大工経験は?」
「中学、高校の美術の授業のみ」
うーんと圭斗は悩むも
「まぁ、良いんじゃね?圭斗が指示とフォローして、失敗したら蓮司が資材の代金払うって事で」
意外とケチだなと思うも
「遊びじゃないんだから何の知識のないど素人のおもちゃにされてたまるかだ」
「その通りです」
もっともすぎて頭を下げるのだった。
その圭斗が来る時に何やら資材を持ち込んで烏骨鶏の家の倉庫へと運んでいた。トラックでここまで来る事が出来ないのでスノーモービルに荷台のソリを接続して決して多い量ではないがパネルや断熱材が山のように準備されていた。
そして今日も倉庫に運んでから雪かきをして、終えた所でお昼となっていた。
お昼当番は俺と綾人でじゃんけんで決める。綾人はジャンケンが強く、今日も俺が負けて準備したメニューはもんじゃ。綾人が畑で作ったと言うキャベツの甘さにびっくりしてキャベツの天ぷらを作る俺に綾人はしょんぼりした目を向けてきたが、今俺のブームはキャベツだ。四分の一にカットしたキャベツにベーコンを挟んだコンソメスープも無限に食べれそうだけど綾人のしょんぼりとした顔を見ずに堪能する。
どうせ、どれもこれももう堪能したと言うのだろう。だが、このキャベツの美味さを色々な角度から味わう為にはとりあえず全部挑戦する。これに限る。
それはさておきホットプレートを囲んで男三人もんじゃのヘラが無かったので急きょそこらに在った木で圭斗に作ってもらって土手の中でふつふつと沸騰する出汁を眺める。その中ではコロコロに切ったお餅も沈んでいるし、鉄板の隅でタコも焼かれていた。チーズは混ぜる派ではなく焼いてからもんじゃとこそぎ落としながら食べると言う綾人のスタイルになにそれ美味しそうと既に好き勝手食べる事は決定となっていた。明太子がないのが残念だったが、コーンもツナも用意してお好みで自分で合わせろと言うスタイルは酷く適当だが、それもまたうまそうだ。一番人気はコーンビーフだろうか。焼けるのが待ちきれなくて既に鉄板の上に置かれて焼きながらちまちまと食べていた。一番解せないのが何故か隅っこでソーセージや猪の肉が焼かれているがそれはもんじゃ何ておやつだと主張する綾人の判断なので見ないふりをする。
圭斗が車なのでお酒はなしという事だが今夜は絶対ビールを飲む!心に決めた。
「って言うかさ、もんじゃってこう言う食べ物?」
もんじゃ初心者の圭斗は取り皿に取り分けてねっちねっちと食べながら不思議そうな顔をしていた。
「だからおやつなんだよ」
綾人は言いながら台所からスープを吸ったインスタントラーメンを持ち出して来て袋の中でバリバリと割り出した。お湯を入れて三分のヒヨコが目印のインスタントラーメンをもんじゃに振りかけてもっちもっちと食べる。
「あー、俺も欲しい」
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疑問でもなく決定と言う様に綾人は容赦なくもんじゃにかければ圭斗はより一層不思議な食べ物に変ったと顔を顰めていたが
「まぁ、さっきより歯ごたえがあっていいのか?」
言いながらももんじゃでタコを包んでせっかちなたこ焼きのようにして食べてるあたりまだ謎な物なのだろう。
「東京じゃご飯と一緒に食べる」
「俺は食べないけどな」
綾人とはどうやら話が合わないようで残念。
「俺の場合ご飯じゃなくてビール。本を読みながらのんびり縁側で食べる。ちなみに飯田さんには不評だった」
「飯田さんでも好き嫌いあるんだ」
蓮司のふとした疑問に綾人は呆れたような顔で
「ここまで準備するのならしっかりお好み焼きを焼きましょう。何だかせっかちなお好み焼きを食べているようでもったいない気がします、だってさ」
「俺は飯田さんの意見に一票」
圭斗が猪の肉の上にもんじゃを乗せて食べていた。自由だなと感心しながらも気付けば猪の肉はほぼなくなっていた。俺ほとんど食べてないのにと慌てて残りの中から一枚確保すれば残りを綾人と圭斗が奪い合うように取り皿に移していた。お前らな……いや、そうじゃなくて。
「所で前から気になってたんだけど、烏骨鶏の小屋の裏の倉庫に何か資材置いているだろ?なにをするつもりなんだよ」
「ん?ああ、蓮司は知らないのか?」
圭斗に振られた綾人は肉を頬張りながらまだ言ってないとだけ言う。
「烏骨鶏小屋を修理するのか?」
もっちもっちと餅入りのもんじゃを食べていれば
「烏骨鶏の小屋の二階、前は養蚕場だったらしいけど、俺が知る限りそんなのやって無くってさ。何になってるかと思えば茅の置き場になっていて。隣の離れを直した時に茅を下ろして今何もない状態なんだけどもったいないから手入れしようかって圭斗と話してたんだ」
「へえ、見て見たいかも」
「じゃあ、これ食べたら一度見に行こう。烏骨鶏を外に出せる様になったら工事を始めたいからな」
「それまでかたづけと掃除だな」
ウンザリと言う綾人だが
「なぁ、それ、俺がここに居る間手伝ってもいいか?」
二人はきょとんとして
「大工経験は?」
「中学、高校の美術の授業のみ」
うーんと圭斗は悩むも
「まぁ、良いんじゃね?圭斗が指示とフォローして、失敗したら蓮司が資材の代金払うって事で」
意外とケチだなと思うも
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