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一人では決して進めれない場所に 4
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相手は多紀さん。食事中だけど通信を繋げれば
「おや、ご飯食べていたのかな?」
「多紀さんお疲れ様です。
何か綾人がおばあさんの命日だからお寺でお経をあげてもらいに行ったらアレルギーかなんかで麓の友達の所に一泊する事になったみたいなのでお留守番してます」
「アレルギーあるの?
あんな山奥で一人なのに、不安だなあ」
心配する多紀さんと同じように俺も頷くも
「所で今日の晩御飯は何かな?」
にこにことした顔でちゃんと生活している?と言うような質問に
「ええと、食事はご飯焚いてお肉と野菜を焼いて食べました。
綾人が居ないけど思い切って竈でご飯焚いてみたら見事おこげだらけになりました」
最初見た時のショックを笑って話せば多紀さんも大変だったなと言う様に笑っていたけど
「薪を多く入れ過ぎた為に火が残りすぎていて、そこに鉄板を置いてお肉と野菜を焼いて食べる事にしたのです。ついでにおこげにも醤油をかけたりして。最高においしかったです」
うんうんと頷く多紀さんはどうやらとことん話を聞くよと言う様に椅子に座り直して先を促してくれた。
それからの事。食にどん欲になって映画を見て触発されて俺の解釈で真似をしてしまった事。そこから始まった過去の自分との対峙、誰かに何か叫びたくて多紀さんに映像を送りつけた事。そして僅かな時間だと言うのにあまりの空腹からのおやつタイム。
冷えるからと先に残りのラーメンを食べなさいと言ってもらえたのでお言葉に甘えさせてもらったものの、調味料の味より強く残る烏骨鶏の卵の甘さに生臭さは今も全く感じていない。
それから多紀さんの映像の演技についての評価からスマホの小さな画面越しの演技指導と言うより人間性をどんどん掘り下げて行く対話の時間。だけど前は表面しか理解できなかった事が今はどんどん深みを探しに行けるようになり
「少し会わなかったつもりだけど随分変わったねぇ?」
「沢山怒られて沢山学んで、沢山考えさせられました」
情けない事ばかりで恥ずかしいと言えば
「それが生きる事だよ。僕だって今もよく怒られる。
それこそ君より年下の綾人君にだって怒られるんだから、生涯勉強だよ」
綾人とそんな出来事があったのかと驚いてしまえばいつの間にかかなりいい時間。あっという間に時間が過ぎたと言って通信終了。
多紀さんと話した事を反芻しながらまた演技の練習に入る。まだ知らない自分を探すように、そしてまだ何も知らない子供だと言う事を理解して模索する。
悩みながらも少し目を瞑ったつもりがいつの間にか朝を迎えていて……
「風邪ひくぞ」
肩を揺り動かされて目が覚めた。
「綾人?あれ、いつの間に……」
ロケットストーブの近くでスキーウェアを脱ぎながら俺に真っ白のビニール袋を頬に当てるように渡してくれてビックリして一気に目が覚めた。
「頼まれていた奴。残りは台所に運んだから」
寒いと言いながらも白湯をゆっくりと飲む様子に
「そういやアレルギーだって圭斗から聞いたけど、何のアレルギーなんだよ。
一応一緒に暮らしているから説明しておけよ」
話を聞いてビビったと言えば年下の生意気な顔が話が分からないと言う様に顔をゆがめるも、少ししてどうやら思い当ったのか
「ああ、圭斗は上手い事言うなあ」
一人うんうんと頷きながら朝食に何故かお稲荷さんを渡された。朝からお稲荷さんとはと思うも
「後でここにも来るけど今朝、飯田さんが圭斗の所に来てくれて用意してくれたんだ。
絶対美味いから食べるように。要らなかったら貰うから」
「誰が渡すか!」
飯田さんの料理の美味さをしっかりと覚えてしまったこの卑しい身体は全力でお稲荷さんを守ると言う様に隠しながら熱いお茶を淹れて一口一口かみしめるように食べる。
五目と言う様に沢山の野菜と香ばしいゴマの香り、少し甘めの味付けだけど野沢菜と梅干だろうか三種類の味に飽きる事無く無限に食べれてしまう。
しっかりと味わいながらレンコンのしゃきしゃき感やニンジンの少しこりっとした歯ざわり、ほのかに香る生姜など、一見見えない所にも沢山の野菜が揚げの中に隠されていた。
「うめえ……」
何だか泣きたくなるような優しい味を大切に食べていれば
「なんか、一晩会わなかっただけで感じが変わったか?」
不思議そうに首を傾ける綾人に素直に種明かしをするのは竈を勝手に借りた理由もある。
多紀さんに話をしたように綾人にも話しをすれば聞き役に徹した綾人が最後に言った言葉。
「俺には分からないけど、壁をぶち抜けたみたいだからいいんじゃね?」
壁と言うより殻か?なんて呟きながらも烏骨鶏の様子見て風呂入れて来ると離れに足を運んで出て行ってしまった。
机の上には俺が頼んだ買い物と、コンビニのシュークリームやケーキ、プリンなどなど。
うん。なんか色々消化してしまったから必要ないような気になってしまったけど後でみんなで食べれば一瞬だと思って冷蔵庫へ入れる。それが飯田さんの嫉妬に変わると言うことはまだ知らないが。
それよりも最近圭斗が来るたびに烏骨鶏の小屋で何かをしている様子の正体を探るべき綾人の背中を追いかけるのだった。
「おや、ご飯食べていたのかな?」
「多紀さんお疲れ様です。
何か綾人がおばあさんの命日だからお寺でお経をあげてもらいに行ったらアレルギーかなんかで麓の友達の所に一泊する事になったみたいなのでお留守番してます」
「アレルギーあるの?
あんな山奥で一人なのに、不安だなあ」
心配する多紀さんと同じように俺も頷くも
「所で今日の晩御飯は何かな?」
にこにことした顔でちゃんと生活している?と言うような質問に
「ええと、食事はご飯焚いてお肉と野菜を焼いて食べました。
綾人が居ないけど思い切って竈でご飯焚いてみたら見事おこげだらけになりました」
最初見た時のショックを笑って話せば多紀さんも大変だったなと言う様に笑っていたけど
「薪を多く入れ過ぎた為に火が残りすぎていて、そこに鉄板を置いてお肉と野菜を焼いて食べる事にしたのです。ついでにおこげにも醤油をかけたりして。最高においしかったです」
うんうんと頷く多紀さんはどうやらとことん話を聞くよと言う様に椅子に座り直して先を促してくれた。
それからの事。食にどん欲になって映画を見て触発されて俺の解釈で真似をしてしまった事。そこから始まった過去の自分との対峙、誰かに何か叫びたくて多紀さんに映像を送りつけた事。そして僅かな時間だと言うのにあまりの空腹からのおやつタイム。
冷えるからと先に残りのラーメンを食べなさいと言ってもらえたのでお言葉に甘えさせてもらったものの、調味料の味より強く残る烏骨鶏の卵の甘さに生臭さは今も全く感じていない。
それから多紀さんの映像の演技についての評価からスマホの小さな画面越しの演技指導と言うより人間性をどんどん掘り下げて行く対話の時間。だけど前は表面しか理解できなかった事が今はどんどん深みを探しに行けるようになり
「少し会わなかったつもりだけど随分変わったねぇ?」
「沢山怒られて沢山学んで、沢山考えさせられました」
情けない事ばかりで恥ずかしいと言えば
「それが生きる事だよ。僕だって今もよく怒られる。
それこそ君より年下の綾人君にだって怒られるんだから、生涯勉強だよ」
綾人とそんな出来事があったのかと驚いてしまえばいつの間にかかなりいい時間。あっという間に時間が過ぎたと言って通信終了。
多紀さんと話した事を反芻しながらまた演技の練習に入る。まだ知らない自分を探すように、そしてまだ何も知らない子供だと言う事を理解して模索する。
悩みながらも少し目を瞑ったつもりがいつの間にか朝を迎えていて……
「風邪ひくぞ」
肩を揺り動かされて目が覚めた。
「綾人?あれ、いつの間に……」
ロケットストーブの近くでスキーウェアを脱ぎながら俺に真っ白のビニール袋を頬に当てるように渡してくれてビックリして一気に目が覚めた。
「頼まれていた奴。残りは台所に運んだから」
寒いと言いながらも白湯をゆっくりと飲む様子に
「そういやアレルギーだって圭斗から聞いたけど、何のアレルギーなんだよ。
一応一緒に暮らしているから説明しておけよ」
話を聞いてビビったと言えば年下の生意気な顔が話が分からないと言う様に顔をゆがめるも、少ししてどうやら思い当ったのか
「ああ、圭斗は上手い事言うなあ」
一人うんうんと頷きながら朝食に何故かお稲荷さんを渡された。朝からお稲荷さんとはと思うも
「後でここにも来るけど今朝、飯田さんが圭斗の所に来てくれて用意してくれたんだ。
絶対美味いから食べるように。要らなかったら貰うから」
「誰が渡すか!」
飯田さんの料理の美味さをしっかりと覚えてしまったこの卑しい身体は全力でお稲荷さんを守ると言う様に隠しながら熱いお茶を淹れて一口一口かみしめるように食べる。
五目と言う様に沢山の野菜と香ばしいゴマの香り、少し甘めの味付けだけど野沢菜と梅干だろうか三種類の味に飽きる事無く無限に食べれてしまう。
しっかりと味わいながらレンコンのしゃきしゃき感やニンジンの少しこりっとした歯ざわり、ほのかに香る生姜など、一見見えない所にも沢山の野菜が揚げの中に隠されていた。
「うめえ……」
何だか泣きたくなるような優しい味を大切に食べていれば
「なんか、一晩会わなかっただけで感じが変わったか?」
不思議そうに首を傾ける綾人に素直に種明かしをするのは竈を勝手に借りた理由もある。
多紀さんに話をしたように綾人にも話しをすれば聞き役に徹した綾人が最後に言った言葉。
「俺には分からないけど、壁をぶち抜けたみたいだからいいんじゃね?」
壁と言うより殻か?なんて呟きながらも烏骨鶏の様子見て風呂入れて来ると離れに足を運んで出て行ってしまった。
机の上には俺が頼んだ買い物と、コンビニのシュークリームやケーキ、プリンなどなど。
うん。なんか色々消化してしまったから必要ないような気になってしまったけど後でみんなで食べれば一瞬だと思って冷蔵庫へ入れる。それが飯田さんの嫉妬に変わると言うことはまだ知らないが。
それよりも最近圭斗が来るたびに烏骨鶏の小屋で何かをしている様子の正体を探るべき綾人の背中を追いかけるのだった。
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