不死身のバンパイアになった俺は、廃墟と化したこの世界で好きに生きようと思います

珈琲党

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41 ドワーフ鉱山にお出かけ

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 クロエがドワーフに会いたいと言うので、皆でドワーフ鉱山に行くことになった。俺はちょくちょく顔を出していたのだが、ジャンヌにとっては久しぶりの訪問になる。クロエはドワーフに会うのは初めてで、非常に興奮していた。

「いろいろな災難に見舞われましたが、それでもこちらに来れて幸せです。
 ふはぁぁぁ、あの伝説のドワーフに会えるとはぁ。ありがたやぁ……」

 クロエは喜びのあまり泣き始める。

「待て待て。泣くほどのもんじゃないから、落ち着け」

「ハヒィ! ずびばぜん……」

 また涙と鼻水とよだれで顔がぐしゃぐしゃになるのだった。
 ジャンヌがクロエの顔を拭ってやっている。

「あの連中の鍛冶の腕前は確かだぞ。
 このロングソードなどはなかなかの業物わざものだしな」

 ジャンヌはロングソードを意味もなく抜いてニヤニヤする。

「私たちの農具や自転車の修理などもやってもらってお世話にはなってますが、
 大酒のみで偏屈ですからね。崇拝するほどの人格ではありませんな」

 ホビットのドワーフたちに対する評価は辛めだ。表面的ないさかいはなくなったが、微妙な部分で価値観が違うせいか、まだ仲良しとは言えないようだ。

「荷物は全部載せたか? じゃぁ皆車に乗ってくれ」

 ドワーフに頼まれている本や酒、ホビットの作った野菜や修理の必要な道具類、それからゴブリンやこないだの暗殺者からはぎ取った装備など、車の荷室は荷物で一杯だ。やはり、バンタイプの車はこういう時に便利だな。

 助手席にジャンヌ、俺の後ろにクロエが乗った。
 ホビットは基本的にはドワーフには会いたがらない。今回も留守番だ。

「じゃぁ、留守を頼む。まぁ車だからすぐだけどな」

「はい。いってらっしゃいませ、領主様」


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「それにしてもブラドさん、この自動車という乗り物は凄いですね。
 乗り心地も良いし、速いし、荷物もこんなに積めるし」

「異界震のおかげで今はこんな状況だが、以前の世界では必需品だったんだ。
 この車の整備もドワーフがやったんだぜ。
 燃料も連中が作ってるし、これが今動かせるのは連中のおかげだな」

「はへぇぇ」

 クロエはテクノロジーに関しては非常に思い入れが強い。
 彼女がドワーフを尊敬しているのも、多分その辺りにあると思う。

「しかしブラド、このようなものがあると、馬が用無しになってしまうな」

 サファイア号のことを考えたのか、ジャンヌが少し悲しげな顔をする。

「確かに異界震以前の世界では、日常では馬をほとんど見なかった。
 一部の娯楽や、行事で使われるくらいだったからな。
 けど、今のところは道の整備がまだまだだから、馬もまだ有用だと思うぞ」

「そうか! そうだな」

 俺としては道の整備も急ぎたいところではあるが……。

「さぁ、着いたぞ」

「ブラドは冗談が下手だ。そんなわけが……えぇ。
 なにぃ!? 鉱山が近づいたのではないだろうな?」

 いつもはリヤカーを引いて歩いていたから、一時間ほどかかっていた。今回は車だから、五分程度で到着したのだった。ジャンヌの驚く気持ちも分かる。


「うわぁ、スゴイですね! 自動車がこんなにも……」

「はぁぁぁぁ!? 何だこれは!」

 二人が驚きの声を上げる。
 ドワーフの鉱山前は、大規模な中古車展示場のようになっていたのだった。
 俺が以前に来たときから、さらに自動車の数が増えていた。

「また増えたな……。
 お~い! やってるか?」

 ドワーフたちが中からどたどたと出てくる。

「おぅ、ご苦労さん。今日も荷物が満載じゃの。
 この車があって正解じゃろうが」

 まさか、そのためにこの車をくれたんだろうか。領主とはいったい……。

「酒と本と食料と、ホビットたちの注文と、それからくず鉄。
 あと、この子は向こうから飛ばされて来た魔術師見習いだ。見学に連れてきた」

「クッ、クロエです。よろしくお願いいたします」

「ふん、そうか。わしはここの責任者のドルフじゃ。よろしくの。
 魔術師とは珍しいのぉ。わしも会うのは初めてじゃ」

「私はまだ見習いです。まだまだ未熟者です」

「ガッハッハッ、まぁ、いくつになっても勉強じゃ。
 自分はまだまだという気持ちは大事じゃの」

「彼女は魔術師なだけあって、技術的なことにも興味があるんだ。
 いろいろと見せてやってくれるか」

「分かった、良いじゃろう」

「それにしても、また車が増えたな。あんなにどうするんだ?」

「特にどうするというわけではないんじゃが、
 放置されている車を見つけると無性に直したくなるんじゃ」

「気持ちは分かるがな……」

 クロエは、巨大な原油の蒸留装置を前に呆然としていた。

「これは、いったい……」

「それは、原油からいろいろと有用な油を抽出する装置じゃ。
 ガスも出てくるが、ガスは風呂炊きに使っておる」

 クロエはいつも持っている分厚いノート片手に、ドルフに様々な質問を投げかけ始めるのだった。やがて疲れ果てたドルフは、別なドワーフにクロエを託した。

「すまんの、わしは他にやることがあるのじゃ。あとはこいつに聞いてくれ」

「あっ、ありがとうございました、ドルフさん」

「それでブラド、他にも用があるんじゃろ?」

「あぁ、すまない。実はジャンヌにまた作ってやってもらいたいんだ」

 こないだガーゴイル達に襲撃されたときに、空中のガーゴイルに剣が届かず苦戦したのだった。それにこりた彼女は遠距離用の武器を欲しがった。

「私としては弓が良いと思うのだ。
 いしゆみは威力はあるが携帯できないし、連射もできない。
 備え付けの兵器としては良い物だが、急な対応には向かないしな」

「ふん、なるほどの」

「彼女は力が強いから、強弓ごうきゅうが良いかなと思ってな。
 それでちょっと調べたら、こんなのがあって」

 俺は一枚のイラストを取り出してドルフに見せた。
 ドルフの目がキラリと光った。

「これは、なかなか面白そうじゃの」

 イラストにはコンパウンドボウが描かれていた。コンパウンドボウとは、滑車とワイヤーの力を利用した特殊な弓だ。普通の弓に比べると少々複雑な造りで、故障しやすいというデメリットはあるが、射程距離や命中精度はぐっと良くなる。

「資料も集めて持ってきているんだが、どうだろうか」

「わかった。引き受けよう」

「いつもすまないなぇ」

「なんのなんの、それは言わない約束じゃよ、ガッハッハッ」

「よぉし! これで不安はなくなった!」

 新しい武器を約束してもらって、ジャンヌは拳を振り上げて喜ぶのだった。


 その後、岩風呂を発見したジャンヌがいきなり入ろうとするのを羽交い締めにして止めたり、ドワーフを質問攻めにしているクロエを無理矢理引き剥がしたりして、なんとか帰還することに成功した。
 今度からは、二人一緒に連れてくるのはやめようと思った。







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