絶対零度の王子さま(アルファポリス版)

みきかなた

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~大学生編~

第50章 冬の嵐

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今年もクリスマスの時期はアルバイト先で忙しく過ごし、バイトの無い日に一佳と華やかなイルミネーションに彩られた街を二人で歩き回りのんびり過ごしました。「クリスマスプレゼントだよ。」と一佳にオープンハートのネックレスを買ってもらいました。色もピンクゴールドで凄く可愛いのです!私からはチェックのマフラーをプレゼントしました。一佳は凄く気に入ってくれて、出掛けるたびに彼の首元にはチェックのマフラーが巻かれていたのです。



お正月、大学受験を控えた瑠佳ちゃんに誘われて、一佳と一佳パパ&ママの五人で初詣に行き合格祈願をしました。一佳パパとは初めてのご対面です!お顔は一佳と似ていないけどダンディーなイケメンさんで、瑠佳ちゃんに甘々なんですよ。私も優しくしていただきました。瑠佳ちゃんは一佳と同じK大法学部を目指しています。彼女の成績なら確実でしょう!

お参りのあとはレストランでお昼ご飯を食べ、一佳の家に寄って一佳ママの手作りケーキをご馳走になりました。甘えん坊の瑠佳ちゃんは私にべったりで、一佳が邪魔にしてブリブリ怒っていました。可愛い妹なんだから許してあげてもいいのにぃ!

「七海、坂本先生のこと覚えてる?」

「サカモッチャンのこと?覚えてるよ、高三の時に私たちの担任だったもの。」

「先生、三月いっぱいで辞めちゃうんだって。」

「え、どうして?」

「お父さんの具合が悪くて、お兄さんと二人で会社を引き継ぐって言ってた。」

「サカモッチャンに会社経営なんて出来るのか。」

「だよねー!みんなそう言ってるよ。」

それから懐かしい母校の話で盛り上がりました。一佳が家庭教師をしていた祐典くんや啓司くん達も元気に高校生活を楽しんでいるようです。

そうだ、坂本先生は潤くんの従姉の眞子さんとお付き合いしていたはず……あれからどうなったのかな、潤くんの口から眞子さんの話が出ることは無かったのです。

なんだか気になります……そうだ、潤くんに聞いてみよう!

「あけましておめでとう!潤くん、今電話してていい?」

「おめでとう、今年もよろしくな。七海、一佳と初詣に行ったんだ。俺も誘えよ!お前らと行こうと思っていたのに!」

「う、ごめんね!瑠佳ちゃんやお父さんとお母さんも一緒だからダメって一佳に言われて誘えなくて……」

「相変わらず嫉妬深い奴だ。つか一佳のヤロウ、家族ぐるみで七海を囲い込もうとしているな。」

「一佳ファミリーはみんな優しいねぇ。私、大好き!」

「そのうち、七海も一佳の家族の一員になるかもなー。」

「え、そ、そんなことは……」

「まあ、もっとイイ男が現れるかも知れないから、あんまり一佳にばっかり縛られるなよ。」

クククと潤くんは笑いました。

「そうだ!瑠佳ちゃんに聞いたけど、坂本先生が学校をお辞めになるそうよ。」

「だってな。俺も生徒会絡みで聞いたよ。お兄さんがやり手で、会社はお父さんとお兄さんに任せきりで今まで自分は好きな教師をしていられたけど、これからは親孝行しないとって言っていたらしい。」

「あの……先生と眞子さんとはどうなったの?」

「サカモッチャンと同棲していたのがバレて、伯母さんが責任を取らせるって学校に怒鳴りこむ勢いだったから俺が間に入って止めたんだ。だけどずいぶん前の話で、その後はどうなったか知らないよ。眞子の家は木谷瀬の本家だから一人っ子の眞子は医療関係者の婿を取らなきゃならないんだ。ハナから教師と付き合うなんて無理なんだよ。」

淡々とした潤くんの声を聞いていたら、ふと胸が痛くなりました。

「潤くんはまだ眞子さんが好き?」

「そんなことはねーよ。イイ女が見つかれば速攻付き合うし、七海が俺に惚れてくれれば話は早い。」

「それは無いよー!」

「うわ、速攻で振るな。一佳にたまには俺とも遊べって言っといて。」

潤くんはまたクククと笑い、電話を切りました。



一月、大学が始まり、すぐに学年末試験も始まりました。学部の友達の実和子ちゃんと図書館に寄りテスト勉強をしていたら、後ろからポンと肩を叩かれました。振り向いたら厳つい体格の彼が見おろしていました。

「浅田くん、久しぶり!」

「よぉ、全然逢って無かったな。」

浅田くんはいつもと同じ優しい笑顔を浮かべました。

「あの、さ、七海ちゃんにこんなことを聞くのはアレだけど、藤原、最近変わった?」

「ううん、別に今まで通りよ?忙しくてあんまり逢えないけど。」

「そっか、七海ちゃんもなら、気にしすぎかな。」

「何かあった?」

「いや、最近、藤原が白石を避けているみたいでさ……飲み会にも来ないんだ。白石が気にしているから……」

それって、私がヤキモチを妬いて、駄々をこねたせいかな……

「悪い、気にしないで、また一緒に遊ぼう。」

浅田くんはごめんと手を合わせ去って行きました。

「七海、あの人誰?カッコいいね!」

「法学部の浅田くん。友達の友達よ。」

「友達って、藤原一佳くんでしょ?いいなー七海の周りはイケメンだらけで!誰か紹介してよ!」

「でも、浅田くんはこのみちゃんが狙っているよ。」

「このみと私って、タイプが被るわね!」

実和子ちゃんとこのみちゃんは私を通じて仲良くなったのです。そう言えば、このみちゃんとも久しく逢っていないわ。また飲み会か遊びのイベントを企画しよう!



その夜、一佳に電話をしました。テスト勉強もあったから、最近逢っていなかったのです。

「一佳、元気?」

「元気じゃねーよ、七海が足りない。」

「アハハ、一佳らしくないセリフだねー!」

「……お前って、時々イラつく。」

怒られてしまいましたが、その後は普通にお互いの近況を報告しました。

「テストが終わったら遊びに行かない?潤くんやこのみちゃんや、浅田くんや愛奈ちゃんと……」

「俺は七海と二人きりがイイ。」

「でもー!」

「誰にそんなことを吹き込まれたんだ?」

「そう言う訳じゃ無くて、みんなと遊んでいないから……」

「ま、とりあえずOKしておくよ……それより、七海の誕生日なんだけど、旅行に行かないか?一泊か、二泊くらいで……」

「え、二人だけで?」

「当たり前だろ!」

一佳がイライラし始めたので、「考えておくね!」と電話を切りました。

そうかー私の誕生日か、去年はディズニーランドに行ったのよね!今年は旅行かぁ、どこがいいかな、一泊なら近くの温泉かな?一佳と二人きりだってー!

「……え、あ、そ、それって、もしかして!?」

私は一佳が怒っていた理由に気付いて、ベッドの上でジタバタ悶えてしまいました!



試験も無事に終わり、二月になってやっと時間が出来たので、とりあえず近況報告と言うことで潤くんと飲み会を開くことにしました!

「めんどくせー。」

一佳はブツブツ文句ばかり言います。

「一佳、友達付き合いは大切だよ!」

「つか、マジで時間が無いんだ。一秒でもあったら七海と居たいのに……」

「今日はゆっくり出来るよ。あ、今度実和子ちゃんとも飲み会をしようって話していたんだ、一佳も参加してね。」

「実和子って、このみ2号みたいなヤツね。」

クククと笑って、一佳はお店に入るとすぐに私の横をキープしました。あとから来た潤くんは私の横に無理やり割り込んできて一佳に追い出されていました。

しばらくはお互いの話をし合ってお酒も進みました。すると潤くんがポツリと漏らしたのです。

「七海、あの話だけど……」

「なんだよ、あの話って。」

「一佳には相談していないって!……サカモッチャンと眞子のことだよ。眞子、大学を辞める気らしい。」

驚きました、なんで、そんなもったいない!

「辞めてどうするの?……もしかして、結婚?」

「うん、そうかな、でも伯母さんが尋常じゃ無い怒り方をしているから、駆け落ちでもしかねない状況だって、ウチの母親がうろたえてた。」

「潤はどうなんだよ、眞子を止めないのか?」

一佳が唸ると、潤くんはフッと笑いました。

「眞子が頑固なの、知っているだろ?反対されたら火に油を注ぐようなもんだ。」

「潤が止めたら、眞子だって考え直すだろ。」

「うん、でも、もう、いいかな……もう、俺の知ってる眞子じゃねーし。」

潤くんは煽るように次々ビールを飲み干しました。まだ眞子さんが好きなのかな……私は黙って潤くんと一佳のやり取りを見守っていました。

すっかり潰れた潤くんを送るためにタクシーに乗り、私の家経由で帰りました。

「七海、潤に変な同情をするなよ。」

一佳はムッとしてタクシーを降りた私に言い放ちました。

「大丈夫だよ、信用して。」

「……七海は、潤に騙されやすいだろ。」

「ヒドイよ、信用して!」

「……分かった。」

去っていくタクシーを見送って私は呆然と立ち尽くしていました。



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