花騎士と兎の魔法

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花騎士と兎の魔法

1話

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 私は12番目の王様の娘…コア・ソラ・サフラン、それが私の名。

 遡ること1年前、ヴァドス兄様の正式な婚約者の発表がありました。小国の王女で…とても美しい人だそうです。兄様は、お姉様と比べられることも多くて苦労していたみたいです。

 発表前から何度かお兄様はその婚約者様と交流もされてきていたので、晴れてお嫁に迎えれることになったのは嬉しく思う。

   ✤

 今日は花嫁をお迎えする日。宮廷にいれば、必ず目にするあの方が今すぐ側にいます。

 任命式のあの日始めて会った、魔法使いさん。あの、おっきなもふもふな毛に覆われた…獣人の方、見た目はとっても愛らしいのに、何故か眼つきは悪くて…じっとされていたら皆さんに大人気なのですが…触れようとする人達を睨んでるみたい。触った人は彼の逆立てた毛に、バチバチって微量の電流を受けて遠ざかる。それを今も何度か目にしています。

「ふぅ。」
「ど、どうしました?」

 兎の魔法使いさんのため息?に思わず声をかけてしまった。

「ローブの素材が体に合わないみたいなんです。」
「え?」
「毛が立っているでしょ?」
「ええ。えっ!!」

 もしかして、魔法で電気流していたんじゃないの!!って思わず心の中で叫んでました。

「もしかして…」
「ええ。帯電です。」

「宮廷魔法長にローブを変えてもらえるようお願いましょ?せっかく愛くるしいお姿なのにもふもふできないなんて…」
「もふもふ?」

 いけない、思わず心の声が出てしまったみたい!

「なんでも無いです。このまま魔法を使うのは危険ですからお仕事に支障をきたす前になんとかしないと。」

 私はもふりたい下心を隠し、彼の先輩魔法使いに相談し、ローブの手配をお願いしました。

「魔法師ローア様、あちらへ。」
「魔法師様?」
「ローアです。花騎士殿、お気遣いありがとうございます。」

 魔法使いの中でも1つ上の位の方々を魔法師と呼ぶのですが…どうやらこの方は位の高い方だったようです。任命式では魔法使い全体の紹介だけでしたから…気付けませんでした。

 私が声をかけるまで、言えずにいたなんて…なんだかおとなしい様子も愛らしく思えてしまいます。
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