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9.修道女、腹黒神父を誘惑する
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地下室に連れ込まれ、どれほどの時間が経ったのだろうか。
「は、や、あ……」
部屋はひんやりとしているが、うつ伏せになったアンジェラは、汗まみれだ。尻を上げさせられ、幾度となく、レオナルドの熱杭を受け入れたせいである。蜜口からは愛液が滴り、白いシーツは色が変わるほど、濡れそぼっていた。
レオナルドは背後からアンジェラの両乳房を揉みながら、ぷっくりと立ち上がった尖りを摘まむ。あたたかい指の腹で乳首を捏ねられると、膣襞が雄槍をさらに喰い締めた。そうして狭まった胎を、レオナルドはさらに擦り続ける。
「はあ、あ、あ……」
「俺の形に馴染んできたな」
顎をつかまれ、レオナルドの唇で唇を塞がれる。飲み切れなかった唾液が顎を伝い落ちた。
「ふ、ふん、あうっ」
レオナルドはアンジェラの舌を強く吸うと、ひと際大きく肉襞を突き上げ、敏感になった膣内に射精した。シーツに突っ伏すアンジェラの胎から肉竿を抜き出すと、レオナルドはアンジェラを仰向けにする。
「も、もう、やめて」
蜜襞はいまだにレオナルドの雄を求めるように蠕動し、飲み込み切れない白濁がこぷりと、裂け目から溢れた。身体はレオナルドを欲していようとも、これ以上貫かれては、アンジェラの理性がもたない。
「もう挿れないから、安心しろ」
レオナルドは告げるも、アンジェラから離れる気配はない。それならこちらから距離を取ろうと、ゆっくり身体を起こしたアンジェラだったが、下生えにレオナルドが唇を寄せてきたので、驚きに身をこわばらせた。
――な、何を……。
レオナルドは赤く色づいた花芯を、柔らかく吸い上げたのだ。アンジェラは突然のことに、つま先を跳ね上げる。
「そ、そんな汚いところ、舐めないで」
「不思議だな。俺の精液をたっぷり注ぎ込んでやったのに、薔薇の香りがする」
「そ、そんなこと。…は、あ、あ、あん」
レオナルドの髪をつかみ、引き剥がそうとするが、びくともしない。なだめるように内ももをなで上げたレオナルドは、上目遣いでアンジェラを見据えた。
夜よりも深い闇色の瞳が、アンジェラの一挙手一投足を見逃さない。
重く膨らんだ突起を含む唇が、徐々に蜜口に達し、柔らかい舌が潤んだ襞口に、ぬるりと入り込んでくる。
「あ、あ、はぅ……、や!」
指や雄槍とは違い、レオナルドの舌は優しく肉壁をねぶった。アンジェラはもどかしい刺激に身もだえするしかない。
――もっと、硬いので擦って欲しい。
もぞもぞと腰を揺らしていると、レオナルドは「舌じゃ物足りないようだな」と、ぐっしょりと濡れそぼった蜜壺を指先で掻き回した。
「ち、ちがう」
「その割には俺の指を、美味しそうに飲み込んでいるぞ」
レオナルドは充血した小さな花芽を舌先で転がしながら、愛液を蜜襞から掻き出していく。
胎の奥から蜜が、とめどなく溢れ、アンジェラは自分の身体に恐怖を覚えた。
――いいようにされて興奮するなんて、私はやっぱり淫乱なのだわ……。
どう抗ってもこの性からは逃れられない。ならば、堕ちるところまで堕ちよう。
アンジェラはレオナルドの髪から手を離した。
「どうした?」
顔を上げたレオナルドの唇は、アンジェラが吐き出した蜜液で、淫靡に濡らついていた。
心配そうな口調だが、本当は何を考えているのか、アンジェラは読み取ることができない。
――そもそもこの男がいなければ、私は聖女になれたのに。
八つ当たりだと理性ではわかっていても、どす黒い怒りを抑えられなかった。
何度もアンジェラの胎で果てたはずなのに、レオナルドの雄杭はいまだ大きくそり上がっている。
アンジェラに欲情しているのか。いや、薬を待つ村人のために、身を挺しただけだ。アンジェラに対して抱いているのは、よくても同情か、哀れみの気持ちだけだろう。
アンジェラは無意識にレオナルドの猛りをつま先でそっと撫で上げた。触れた途端、レオナルドの身体がぶるりと震える。
我に返り、ずっしりと重い肉竿から、素早く足を引っ込めた。
――わ、私は何を……。
「積極的だな。俺のが気に入ったのか?」
レオナルドは相変わらず余裕そうに、アンジェラに微笑みかける。
しかし、その額にはうっすらと汗が浮かんでいた。彼も自分と同じ快楽に溺れる、ただの人間なのだ。そう結論付けたアンジェラのなかで、理性の箍が外れる。
「……貴方こそ、私の胎がお気に入りのようね」
もう一度つま先でレオナルドの急所に触れた。亀頭から竿まで弾力のある肉塊をつま先でなでると、レオナルドは嫌がることなくアンジェラの所作をつぶさに眺めている。
なんとも言えない優越感に煽られ、ますます強く熱槍を踏みつける。
「ふ……」
まぶたを閉じたレオナルドが、熱い吐息を吐き出した。アンジェラはレオナルドの弱点を探り当てようと、懸命に足指を動かしていく。
浮き上がった筋を殊更強く押し込めば、レオナルドは慌てたように足首を掴み、引き剥がそうとした。
「どうかしましたか、ファーザー?」
相手を試すような意地の悪い声がこぼれる。人を見下すことは悪だと修道院では教えられているのに。アンジェラは自分自身に驚いた。
何があろうと慈悲の心ですべてを受け入れる。それが修道院で神に仕える者、聖女を目指す者の心構えである。
――でも、私はもう聖職者じゃないもの。我慢なんてしないわ。
「私の胎内に入りたくて、仕方ないんじゃないの?」
アンジェラはゆっくりと、両脚を開いた。
聖女になる道を絶たれた今、両親を見返そうと頑張ったり、修道女たちの模範であろうとする必要もない。
ある修道女に投げつけられた言葉が、投げやりになったアンジェラの脳裏に、浮かび上がる。
✙
『その娘の罰を一緒に引き受けて、何様のつもり? シスター・アンジェラ』
『私たちは同じ屋根の下で生活をともにする姉妹よ。妹の罪を引き受けて何が悪いの? シスター・ジュリア』
そばかすの目立つ少女は、数人の取り巻きを引き連れ、アンジェラを見下ろしている。
年下のシスターは、朝の祈りに遅れ、罰として修道院長から礼拝堂の掃除を命じられていた。
遅れた原因は、ジュリアたちが用事を言い付けたせいだったため、見兼ねたアンジェラは、掃除の手伝いをすることにしたのだが。
鼻の周りにそばかすを散らした少女――ジュリアも聖女を目指しており、アンジェラを目の敵にしていた。同じ商家出身でライバル意識でもあるのだろうか。そのほかにアンジェラには、敵視される心当たりがない。
腕組みをしたジュリアは鼻を鳴らし、ふくよかな身体をさらにふくらませる。
『その善人ぶった態度がわざとらしいのよ。ファーザーたちに色目を使って……。どんなに取り繕っても私の目は誤魔化せないからね』
困っている者を助けるのは何も、修道女の特権ではない。神を信仰し、人の心を持っている者なら誰でもアンジェラと同じ行動をするだろうに。
――要は、私に言いがかりをつけたいだけなのね。
隅で縮こまりながら、黙々と床拭きをする瘦せっぽちのシスターを視界の端に入れつつ、アンジェラは思案した。ここで言い合いになっても、年下の彼女を困らせるだけである。
ジュリアとその取り巻きは、アンジェラが言い返さないのをいいことに、罵詈雑言を吐き続けている。
やれ、「ストロベリーピンクの淫魔」や「男を食い物にする魔女」などなど。
アンジェラは陳腐な悪口を聞き流し、木目にこびりついた床の埃を無心で擦る。
『修道院を出たら、道端で男に縋るしか能のない淫乱のくせに、生意気なのよ!』
『……なんですって?』
さすがに聞き捨てならず、腹の底から声を絞り出したアンジェラに、少女たちは一瞬ひるんだが、さらに、
『アンタがここでちやほやされているのは、その見た目のおかげなのよ!』
『何を根拠に……』
誰がアンジェラを大事にしているというのだ。本気で意味がわからず、アンジェラは立ち上がると、ジュリアたちに迫った。彼女たちは顔を見合わせると、嫌らしく目を細める。
『何にも知らないのね。可哀想な魔女さん。いいわ、教えてあげる。アンタがここに置いてもらえている理由はね――』
『あなたたち、いい加減になさい! 外にまで、はしたない声が聞こえていますよ。修道女としての自覚を持ちなさい』
突如、正面扉が開かれ、顔を真っ赤にした修道院長が飛び込んできた。彼女の後ろからアンジェラと一緒に掃除をしていたはずのシスターが顔を出している。申し訳なさそうにアンジェラを一瞥すると、彼女は走り去った。
中断されても、アンジェラの怒りは治まらなかった。ジュリアの首根っこをつかんで、アンジェラが修道院に居られる理由とやらを聞き出したかったが、修道院長の監視のもと、床掃除を再開せざるを得なかったため、問いただす機会を逃してしまった。
忘れようとしても頭にこびりついて剥がれない。親の仇のように床を睨みながら、アンジェラは無心で掃除を続けた。
✙
『修道院を出たら道端で男に縋るしか能のない淫乱のくせに』
――なぜ、今思い出すのよ。私の馬鹿。
シスター・ジュリアの言ったとおりだ。せいぜい、この忌々しい見た目を利用して生き延びるしか術がないのなら、目の前の男を練習台にしようではないか。
アンジェラの豹変ぶりに、レオナルドは一瞬固まった。しかしすぐに唇の端をゆがめ、アンジェラに顔を近づける。
「どういう風の吹き回しだ」
「嫌がる私の方が好みなの?」
「……いや、いまの君も悪くない」
レオナルドはアンジェラの唇に唇を寄せた。軽くついばむような、もどかしいキスに、アンジェラはレオナルドの真意を測りかねる。
――私に飽きてしまったのかしら。
ここまでアンジェラを穢しておきながら、今さらぞんざいに扱うなんて、どういうつもりなのか。
腹が立ったアンジェラは、勢いよくレオナルドの唇に噛みついた。
「……きゃっ!」
歯と歯が盛大にぶつかり、アンジェラは口元を手で覆った。涙目でレオナルドを見れば、顔を逸らし俯いている。心なしか肩が震えているような……。
――もしかしなくても、失敗しているわよね。
レオナルドの身体はますます震えを大きくしている。もしかして怒らせてしまったのだろうかと、アンジェラは肩を縮こまらせた。
「は、や、あ……」
部屋はひんやりとしているが、うつ伏せになったアンジェラは、汗まみれだ。尻を上げさせられ、幾度となく、レオナルドの熱杭を受け入れたせいである。蜜口からは愛液が滴り、白いシーツは色が変わるほど、濡れそぼっていた。
レオナルドは背後からアンジェラの両乳房を揉みながら、ぷっくりと立ち上がった尖りを摘まむ。あたたかい指の腹で乳首を捏ねられると、膣襞が雄槍をさらに喰い締めた。そうして狭まった胎を、レオナルドはさらに擦り続ける。
「はあ、あ、あ……」
「俺の形に馴染んできたな」
顎をつかまれ、レオナルドの唇で唇を塞がれる。飲み切れなかった唾液が顎を伝い落ちた。
「ふ、ふん、あうっ」
レオナルドはアンジェラの舌を強く吸うと、ひと際大きく肉襞を突き上げ、敏感になった膣内に射精した。シーツに突っ伏すアンジェラの胎から肉竿を抜き出すと、レオナルドはアンジェラを仰向けにする。
「も、もう、やめて」
蜜襞はいまだにレオナルドの雄を求めるように蠕動し、飲み込み切れない白濁がこぷりと、裂け目から溢れた。身体はレオナルドを欲していようとも、これ以上貫かれては、アンジェラの理性がもたない。
「もう挿れないから、安心しろ」
レオナルドは告げるも、アンジェラから離れる気配はない。それならこちらから距離を取ろうと、ゆっくり身体を起こしたアンジェラだったが、下生えにレオナルドが唇を寄せてきたので、驚きに身をこわばらせた。
――な、何を……。
レオナルドは赤く色づいた花芯を、柔らかく吸い上げたのだ。アンジェラは突然のことに、つま先を跳ね上げる。
「そ、そんな汚いところ、舐めないで」
「不思議だな。俺の精液をたっぷり注ぎ込んでやったのに、薔薇の香りがする」
「そ、そんなこと。…は、あ、あ、あん」
レオナルドの髪をつかみ、引き剥がそうとするが、びくともしない。なだめるように内ももをなで上げたレオナルドは、上目遣いでアンジェラを見据えた。
夜よりも深い闇色の瞳が、アンジェラの一挙手一投足を見逃さない。
重く膨らんだ突起を含む唇が、徐々に蜜口に達し、柔らかい舌が潤んだ襞口に、ぬるりと入り込んでくる。
「あ、あ、はぅ……、や!」
指や雄槍とは違い、レオナルドの舌は優しく肉壁をねぶった。アンジェラはもどかしい刺激に身もだえするしかない。
――もっと、硬いので擦って欲しい。
もぞもぞと腰を揺らしていると、レオナルドは「舌じゃ物足りないようだな」と、ぐっしょりと濡れそぼった蜜壺を指先で掻き回した。
「ち、ちがう」
「その割には俺の指を、美味しそうに飲み込んでいるぞ」
レオナルドは充血した小さな花芽を舌先で転がしながら、愛液を蜜襞から掻き出していく。
胎の奥から蜜が、とめどなく溢れ、アンジェラは自分の身体に恐怖を覚えた。
――いいようにされて興奮するなんて、私はやっぱり淫乱なのだわ……。
どう抗ってもこの性からは逃れられない。ならば、堕ちるところまで堕ちよう。
アンジェラはレオナルドの髪から手を離した。
「どうした?」
顔を上げたレオナルドの唇は、アンジェラが吐き出した蜜液で、淫靡に濡らついていた。
心配そうな口調だが、本当は何を考えているのか、アンジェラは読み取ることができない。
――そもそもこの男がいなければ、私は聖女になれたのに。
八つ当たりだと理性ではわかっていても、どす黒い怒りを抑えられなかった。
何度もアンジェラの胎で果てたはずなのに、レオナルドの雄杭はいまだ大きくそり上がっている。
アンジェラに欲情しているのか。いや、薬を待つ村人のために、身を挺しただけだ。アンジェラに対して抱いているのは、よくても同情か、哀れみの気持ちだけだろう。
アンジェラは無意識にレオナルドの猛りをつま先でそっと撫で上げた。触れた途端、レオナルドの身体がぶるりと震える。
我に返り、ずっしりと重い肉竿から、素早く足を引っ込めた。
――わ、私は何を……。
「積極的だな。俺のが気に入ったのか?」
レオナルドは相変わらず余裕そうに、アンジェラに微笑みかける。
しかし、その額にはうっすらと汗が浮かんでいた。彼も自分と同じ快楽に溺れる、ただの人間なのだ。そう結論付けたアンジェラのなかで、理性の箍が外れる。
「……貴方こそ、私の胎がお気に入りのようね」
もう一度つま先でレオナルドの急所に触れた。亀頭から竿まで弾力のある肉塊をつま先でなでると、レオナルドは嫌がることなくアンジェラの所作をつぶさに眺めている。
なんとも言えない優越感に煽られ、ますます強く熱槍を踏みつける。
「ふ……」
まぶたを閉じたレオナルドが、熱い吐息を吐き出した。アンジェラはレオナルドの弱点を探り当てようと、懸命に足指を動かしていく。
浮き上がった筋を殊更強く押し込めば、レオナルドは慌てたように足首を掴み、引き剥がそうとした。
「どうかしましたか、ファーザー?」
相手を試すような意地の悪い声がこぼれる。人を見下すことは悪だと修道院では教えられているのに。アンジェラは自分自身に驚いた。
何があろうと慈悲の心ですべてを受け入れる。それが修道院で神に仕える者、聖女を目指す者の心構えである。
――でも、私はもう聖職者じゃないもの。我慢なんてしないわ。
「私の胎内に入りたくて、仕方ないんじゃないの?」
アンジェラはゆっくりと、両脚を開いた。
聖女になる道を絶たれた今、両親を見返そうと頑張ったり、修道女たちの模範であろうとする必要もない。
ある修道女に投げつけられた言葉が、投げやりになったアンジェラの脳裏に、浮かび上がる。
✙
『その娘の罰を一緒に引き受けて、何様のつもり? シスター・アンジェラ』
『私たちは同じ屋根の下で生活をともにする姉妹よ。妹の罪を引き受けて何が悪いの? シスター・ジュリア』
そばかすの目立つ少女は、数人の取り巻きを引き連れ、アンジェラを見下ろしている。
年下のシスターは、朝の祈りに遅れ、罰として修道院長から礼拝堂の掃除を命じられていた。
遅れた原因は、ジュリアたちが用事を言い付けたせいだったため、見兼ねたアンジェラは、掃除の手伝いをすることにしたのだが。
鼻の周りにそばかすを散らした少女――ジュリアも聖女を目指しており、アンジェラを目の敵にしていた。同じ商家出身でライバル意識でもあるのだろうか。そのほかにアンジェラには、敵視される心当たりがない。
腕組みをしたジュリアは鼻を鳴らし、ふくよかな身体をさらにふくらませる。
『その善人ぶった態度がわざとらしいのよ。ファーザーたちに色目を使って……。どんなに取り繕っても私の目は誤魔化せないからね』
困っている者を助けるのは何も、修道女の特権ではない。神を信仰し、人の心を持っている者なら誰でもアンジェラと同じ行動をするだろうに。
――要は、私に言いがかりをつけたいだけなのね。
隅で縮こまりながら、黙々と床拭きをする瘦せっぽちのシスターを視界の端に入れつつ、アンジェラは思案した。ここで言い合いになっても、年下の彼女を困らせるだけである。
ジュリアとその取り巻きは、アンジェラが言い返さないのをいいことに、罵詈雑言を吐き続けている。
やれ、「ストロベリーピンクの淫魔」や「男を食い物にする魔女」などなど。
アンジェラは陳腐な悪口を聞き流し、木目にこびりついた床の埃を無心で擦る。
『修道院を出たら、道端で男に縋るしか能のない淫乱のくせに、生意気なのよ!』
『……なんですって?』
さすがに聞き捨てならず、腹の底から声を絞り出したアンジェラに、少女たちは一瞬ひるんだが、さらに、
『アンタがここでちやほやされているのは、その見た目のおかげなのよ!』
『何を根拠に……』
誰がアンジェラを大事にしているというのだ。本気で意味がわからず、アンジェラは立ち上がると、ジュリアたちに迫った。彼女たちは顔を見合わせると、嫌らしく目を細める。
『何にも知らないのね。可哀想な魔女さん。いいわ、教えてあげる。アンタがここに置いてもらえている理由はね――』
『あなたたち、いい加減になさい! 外にまで、はしたない声が聞こえていますよ。修道女としての自覚を持ちなさい』
突如、正面扉が開かれ、顔を真っ赤にした修道院長が飛び込んできた。彼女の後ろからアンジェラと一緒に掃除をしていたはずのシスターが顔を出している。申し訳なさそうにアンジェラを一瞥すると、彼女は走り去った。
中断されても、アンジェラの怒りは治まらなかった。ジュリアの首根っこをつかんで、アンジェラが修道院に居られる理由とやらを聞き出したかったが、修道院長の監視のもと、床掃除を再開せざるを得なかったため、問いただす機会を逃してしまった。
忘れようとしても頭にこびりついて剥がれない。親の仇のように床を睨みながら、アンジェラは無心で掃除を続けた。
✙
『修道院を出たら道端で男に縋るしか能のない淫乱のくせに』
――なぜ、今思い出すのよ。私の馬鹿。
シスター・ジュリアの言ったとおりだ。せいぜい、この忌々しい見た目を利用して生き延びるしか術がないのなら、目の前の男を練習台にしようではないか。
アンジェラの豹変ぶりに、レオナルドは一瞬固まった。しかしすぐに唇の端をゆがめ、アンジェラに顔を近づける。
「どういう風の吹き回しだ」
「嫌がる私の方が好みなの?」
「……いや、いまの君も悪くない」
レオナルドはアンジェラの唇に唇を寄せた。軽くついばむような、もどかしいキスに、アンジェラはレオナルドの真意を測りかねる。
――私に飽きてしまったのかしら。
ここまでアンジェラを穢しておきながら、今さらぞんざいに扱うなんて、どういうつもりなのか。
腹が立ったアンジェラは、勢いよくレオナルドの唇に噛みついた。
「……きゃっ!」
歯と歯が盛大にぶつかり、アンジェラは口元を手で覆った。涙目でレオナルドを見れば、顔を逸らし俯いている。心なしか肩が震えているような……。
――もしかしなくても、失敗しているわよね。
レオナルドの身体はますます震えを大きくしている。もしかして怒らせてしまったのだろうかと、アンジェラは肩を縮こまらせた。
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