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10.修道女、堕ちるところまで堕ちていく

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「ふっ。ふははは!」

 レオナルドは目尻に涙をためながら、腹を抱えて笑い出す。いつもの穏やかな笑みではない、年相応の爽やかな笑い声だ。
 呆然としていたアンジェラだが、笑い続けるレオナルドに次第に苛立つ。

「……そんなに笑わなくたっていいじゃないっ」
「すまない。急に色っぽくなったと思いきや、まったく変わっていなくて、安心したんだ」
「貴方は誰にでも「優しいファーザー・レオナルド」を演じるのは、やめにしたのね」
 レオナルドは目尻を緩ませ、
「お互い真っ裸でシスターも神父もないだろう?」
 片膝をたて開き直る。その通りなのだが、同意するのははばかられた。

「私は聖女になる資格を失ったけれど……。貴方をここから追い出そうとする人は、いないわ」
「さあ、どうかな?」
「院長様は貴方を頼りにしているのよ」
「必要なのは俺自身、というより、ユンカー家の後ろ盾だろう」

 レオナルドの実家、ユンカー家は修道院の支援者でもあり、レオナルドを修道院から追い出せば、太い資金源を失うことになる。

「それだけじゃないでしょう? 例えば、薬草園は貴方が管理しなくちゃ、すぐ駄目になってしまうわ」

 薬草園は、主にレオナルドが手入れをしている。彼が世話をしなくなれば、草木は枯れてしまうだろう。
 修道院は大事な収入源と人々の信仰を失いかねない。いくら質素、清貧を掲げていても、金がなければ修道院に身を置く者たちは、飢えてしまう。

「俺の心配をする余裕があるなら、もう少し楽しもうか」

 レオナルドはアンジェラの肩をそっと押した。倒れる勢いはないものの、アンジェラは大人しくベッドに背を預ける。
 からかう口調はそのままだが、レオナルドの視線はアンジェラを馬鹿にするものではない。
 カンテラの灯りを受け黒光りする瞳に見とれていると、レオナルドがゆっくりと覆い被さってきた。その唇は柔らかく、アンジェラは心地よくて目を閉じる。角度を変えてついばまれ、しばらくすると、レオナルドの舌が腔内を探り、アンジェラの舌を甘噛みした。

「はあ……」

 息継ぎの合間にアンジェラは甘い吐息を吐き出す。再び唇を塞がれると思いきや、レオナルドは大きく上下するアンジェラの右の乳房に口づけた。ふくらみを揉みしだかれながら、桃色の尖りを吸われると、下腹部が妖しく痺れる。

「あ、あ、それ、やだ……」

 嫌だと訴えるほど、レオナルドの愛撫は激しくなった。左の乳嘴にゅうかくを捏ねながら、固く育ちきった右の尖りを舌先で転がされると、何も考えられなくなる。

 ――なんて気持ちいいの……。

 アンジェラが乱れている様に興奮しているのか、レオナルドの赤黒い怒張は天を向き、肉竿は血管が浮き出て、今にも欲望を吐き出しそうだ。

 ――早く、欲しい……。
「は、あ、あん……」
「どうして欲しいか、言ってみろ」

 レオナルドはアンジェラの薄い繁みを掻き分け、亀頭を陰唇に擦りつける。蜜襞は雄槍を歓迎するようにひくつかせ、アンジェラの気持ちを代弁した。

「このままでいいのか?」

 ――私が恥ずかしがっている姿を楽しんでいるんだわ。……くやしい。やられっぱなしになんかなってあげないんだから。

 嬌声が喉から零れそうになり、唇を噛みしめる。余裕そうに襞口をくすぐり続けるレオナルドの腰に、アンジェラは両脚を絡め、肉厚な切っ先を埋め込むようにしむけた。

「!」

 思わぬ反撃に挙をつかれたのか、レオナルドはそのままずぶりとアンジェラの蜜口に切っ先を沈ませた。

「は、あ、ん……」

 指とは桁違いの圧迫感は、何度経験しようとも慣れることができない。
 アンジェラは浅く喘ぎ、灼熱の杭をやり過ごそうとするものの、レオナルドが腰をグラインドさせるため、肉筒は勝手に雄槍を喰いしめた。

「桃色髪の乙女が淫乱だというのは、本当なんだな……」

 アンジェラの両膝に手を置き、レオナルドは前後に抜き差しをする。猛った雄を食い止めようと蜜襞が蠕動ぜんどうする。軽口を叩いていたレオナルドの息は上がり、苦しそうである。
 アンジェラ同様、快楽を耐え忍んでいるのだろうか。

 ――私がもっと貴方を欲しがれば、一緒に堕ちるところまで堕ちてくれるのかしら。

 アンジェラは震える両脚に力をこめ、レオナルドの腰をきつく締め上げた。彼に負けじと腰を左右に振ると、レオナルドは「うっ」と小さな呻き声を発する。
 背筋に怪しい震えが走った。苦しそうなレオナルドをもっと見てみたい。そう思うや否や、アンジェラは、左右に細腰を揺らしていた。

「は、あ、あ、あ、はん」

 そのうち自らも気持ちのよい箇所を見つけ、そこに肉槍の先が当たるよう、なかを収縮させる。

「……俺ので勝手に気持ちよくなっているのか?」
「わ、悪い? 貴方だって、私を道具にしているじゃない」

 柔らかい蜜襞を激しくえぐりながら、レオナルドはアンジェラの揺れる両乳房を揉みしだいた。赤く色づいた突起を親指と人差し指で摘ままれ、アンジェラは「あん」と甘い鳴き声をもらす。

「お互い気持ちいいなら、問題ないだろう、が」

 降りてきた子宮口をひときわ大きくえぐられ、アンジェラは首をのけぞらせた。

「や、やっぱり、貴方ろくでもないわね」
「……幻滅したか」

 レオナルドを深くは知らないのだから、幻滅のしようもない。彼の方こそ、純真ぶったアンジェラの痴態を嘲笑っているのではないか。
 反発しそうになるものの、低く響くレオナルドの声音は寂しそうで、アンジェラは気がつくと、彼の引き締まった頬に指をすべらせていた。

「べ、別に、貴方がどんな人であろうと、私には関係ないわ」

 アンジェラは遅かれ早かれ修道院を去る身である。今さら彼を敵視する必要はない。
 そっぽをむいてつぶやいた途端、埋め込まれ続けている雄杭の質量が増したような……。

「ねえ、もう抜いてよ」
「君から誘っておいたくせにそれはないだろう。たっぷり注いでやるよ」
「え、や! んぅっ」

 身をかがめアンジェラの唇にかぶりついたレオナルドは、薄く腹筋の浮き出た腰を激しく振った。ぱちゅぱちゅと濡れそぼった肉と下生え同士がぶつかり、卑猥な水音を立てる。
 薄くとも幅広な彼の胸板に乳首がこすれる。痛くて甘い刺激に、瞼の裏に火花が散った。

「あ、あ、あ……」
「出すぞ」

 ひときわ強くアンジェラの奥を穿ち、レオナルドはなかに熱い劣情を放った。膣壁は貪欲にレオナルドの精を飲み込もうと痙攣している。
 アンジェラを頭ごと抱きしめたレオナルドは、壊れ物を扱うようにアンジェラの髪をなでた。レオナルドの胸元に耳を押しつけると、強い鼓動が聞こえてくる。
 レオナルドが身動きすると、繋がったままの下肢がぐちゅりと粘着質な音を立てた。

 ――やだ、待って。

 アンジェラは出て行こうとするレオナルドの雄茎を引き留めるように、肉筒をすぼめてしまう。

「まだ足りないのか。……とんだ修道女様だ」

 軽口を叩くもレオナルドはそのまま、アンジェラを抱きしめ続けた。修道院に送られて以降、こんなにも長く人肌に触れることはなかった。

 ――彼はただ、結界を解くために、私と【セックス」しただけなのよ。

 そう言い聞かせても、アンジェラを気遣うような抱擁からは逃れがたい。
 ――もう少しだけ、このままでいさせて。
 視界の端では結界文字が、最後の輝きを放ち、金色の砂塵となって、消えていった。

 ――ああ、やっと、解放されるのね。

 安心感が睡魔を連れてくる。身体の力が抜けていき、視界は闇に閉ざされた。
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