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Chapter7(女優編)
Chapter7-⑩【It's a Hard Life】後編
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ユウヤは改札には向かわず、ロータリーでタクシーに乗った。
男も次のタクシーに乗る。
ウインカーを出した車はユウヤのタクシーの後ろにぴったり付いた。
ワタルもタクシーに乗り込む。
「前のタクシーと同じ所へ。」
運転手はバックミラーでワタルをちらっと見たが、何も言わずに車を走らせた。
豪華なホテルの車寄せで停まった。
ショルダーバッグを下げた男がロビーに入って行く。
ワタルも続いて入って行くと、フロントにユウヤの姿が見えた。
男はソファーに座り、やはりフロントを見ている。
後ろのソファーに座り、様子を伺う。
スマホを自撮りモードにすると、ディスプレイに男の薄い後頭部が映し出された。
スマホの向きを変え、エントランスを眺める。
白いセーターにサングラスとマフラーをした男が入ってきた。
芸能人然とした男はユウヤの言った若手俳優だろう。
羽田アサヒ、テレビを見ないワタルでも名前を知っている。
ビールのCMに出ていて、祭にもポスターが貼ってあった。
ゲイにもファンは多い。
そのアサヒが真っ直ぐこっちに向かってきた。
顔を上げた男が小さく手を上げる。
『えっ、知り合い?』
ユウヤの情事の相手と記者らしき男が声を潜めた。
ワタルは脇にあった英字新聞を広げて、視線を落とす。
日本人離れした体格でこの新聞を見ていれば、ガードが甘くなる筈だ。
「お前、密会なんだろ?
もっと地味にしろや。
まあ、座れ。」
男がソファーを叩く音が聞こえた。
「小栗さん以外にカメラマンはいないっすよね?
後ろの男は外人か。」
辺りを見回したアサヒがソファーに座る。
男の名前が小栗と分かった。
「キャップをタクシーに忘れちゃってさ、参ったよ。」
「ああ、大丈夫だ。
同業者がいれば、直ぐに分かるさ。」
「早くリーク代くれよ。
今月派手に遊んじゃってさ、金欠なんだ。」
アサヒが声を潜める。
ワタルは新聞紙を捲り、耳に意識を集中した。
「あれっ、少ない。
話と違うじゃないか。
これならユウヤから小遣い貰った方がマシだ。」
「安心しろ、それは手付金だ。
残りの報酬は上手くいってからだ。」
「本当だろうな?」
アサヒの声が大きくなる。
「約束は守る。
俺もジャーナリストだからな。」
「だったら信用するよ。
で、俺はどうすればいいんだ?」
「部屋の鍵を開けておけ。
30分したら、俺が乗り込む。
カメラを向けたら、思い切り淫らな格好で奴に絡め。」
「俺だと分からない様にちゃんと加工しろよ。」
「それも約束だ。
絶対に守る。
俺のターゲットは奴だけだからな。
いや、鎌倉恵と言った方が正しいか。」
小栗の声と共にシャッター音が聞こえた。
「まあ、若手俳優より、大女優の転落の方が雑誌は売れるからな。
俺が消えたところで変わりは山程いるけど、恵さんの変わりはいないよな。
いい写真取れたら、あんたの出世は間違いなしだ。
偉くなったら、たっぷり仕事回してくれよ。
じゃあ、30分後だな。」
アサヒが立ち上がった。
(つづく)
男も次のタクシーに乗る。
ウインカーを出した車はユウヤのタクシーの後ろにぴったり付いた。
ワタルもタクシーに乗り込む。
「前のタクシーと同じ所へ。」
運転手はバックミラーでワタルをちらっと見たが、何も言わずに車を走らせた。
豪華なホテルの車寄せで停まった。
ショルダーバッグを下げた男がロビーに入って行く。
ワタルも続いて入って行くと、フロントにユウヤの姿が見えた。
男はソファーに座り、やはりフロントを見ている。
後ろのソファーに座り、様子を伺う。
スマホを自撮りモードにすると、ディスプレイに男の薄い後頭部が映し出された。
スマホの向きを変え、エントランスを眺める。
白いセーターにサングラスとマフラーをした男が入ってきた。
芸能人然とした男はユウヤの言った若手俳優だろう。
羽田アサヒ、テレビを見ないワタルでも名前を知っている。
ビールのCMに出ていて、祭にもポスターが貼ってあった。
ゲイにもファンは多い。
そのアサヒが真っ直ぐこっちに向かってきた。
顔を上げた男が小さく手を上げる。
『えっ、知り合い?』
ユウヤの情事の相手と記者らしき男が声を潜めた。
ワタルは脇にあった英字新聞を広げて、視線を落とす。
日本人離れした体格でこの新聞を見ていれば、ガードが甘くなる筈だ。
「お前、密会なんだろ?
もっと地味にしろや。
まあ、座れ。」
男がソファーを叩く音が聞こえた。
「小栗さん以外にカメラマンはいないっすよね?
後ろの男は外人か。」
辺りを見回したアサヒがソファーに座る。
男の名前が小栗と分かった。
「キャップをタクシーに忘れちゃってさ、参ったよ。」
「ああ、大丈夫だ。
同業者がいれば、直ぐに分かるさ。」
「早くリーク代くれよ。
今月派手に遊んじゃってさ、金欠なんだ。」
アサヒが声を潜める。
ワタルは新聞紙を捲り、耳に意識を集中した。
「あれっ、少ない。
話と違うじゃないか。
これならユウヤから小遣い貰った方がマシだ。」
「安心しろ、それは手付金だ。
残りの報酬は上手くいってからだ。」
「本当だろうな?」
アサヒの声が大きくなる。
「約束は守る。
俺もジャーナリストだからな。」
「だったら信用するよ。
で、俺はどうすればいいんだ?」
「部屋の鍵を開けておけ。
30分したら、俺が乗り込む。
カメラを向けたら、思い切り淫らな格好で奴に絡め。」
「俺だと分からない様にちゃんと加工しろよ。」
「それも約束だ。
絶対に守る。
俺のターゲットは奴だけだからな。
いや、鎌倉恵と言った方が正しいか。」
小栗の声と共にシャッター音が聞こえた。
「まあ、若手俳優より、大女優の転落の方が雑誌は売れるからな。
俺が消えたところで変わりは山程いるけど、恵さんの変わりはいないよな。
いい写真取れたら、あんたの出世は間違いなしだ。
偉くなったら、たっぷり仕事回してくれよ。
じゃあ、30分後だな。」
アサヒが立ち上がった。
(つづく)
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