妄想日記6<<EVOLUTION>>

YAMATO

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Chapter7(女優編)

Chapter7-⑤【Good Old Fashioned Lover Boy】後編

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「ああ、間違いない。
あそこに木屋が見えるだろ。
あれが目印だ。」
声の主は見えないが、年配者の様だ。
「テツヤの言う事を鵜呑みにしていいのか？」
もう一人の男は若そうだ。
会話からテツヤの知り合いだと分かる。
「ああ、テツヤから画像が送られてきた。
中々の上物だ。
あれなら中国の裕福層に高く売れるぞ。
オークションしたら、一気に羽上がるだろう。」
聞き間違いはない。
『中々の上物』というは消去法で自分に間違いなさそうだ。
その自分をオークションに出し、中国に売ると言っている。
ワタルはテツヤの真意を知った。
東京でなら人身売買等、遠い世界の話として笑い飛ばしただろう。
機内で見た石垣島は台湾の側で、日本本土より中国の方が近い。
ここでワタル一人いなくなっても、誰も騒がないだろう。
唯一期待出来るのはシンだけだが、警察へ行く姿は思い浮かばない。
『僕だけのヒーローになってくれますか？』
抜け抜けを良く言った物だ。
沸々と怒りが沸き上がってきた。

「今晩が引き渡しだ。
とするとオークションは明後日辺りか？」
「それは無理だ。
顧客に連絡するのに三日は必要だからな。
明明後日、この船でオークションすると、一斉メールを出しておくよ。」
「ああ、そうしてくれ。
ここからなら一日あれば港に着くだろう。
明明後日なら充分余裕がある。」
年配者の満足げに言う。
「画像見せてくれよ。
マジか？物凄いド変態だ。」
「だから言っただろ。
中国の裕福層はこの手のヒーローかぶれになら幾らでも金を出すだろう。」
「余裕があるなら、その前に味見しようぜ。」
若い男の卑猥な笑い声にぞっとする。
「ああ、構わん。
性欲を抜いといたと言ってたからな。
完全に服従するか、試しておけ。
客に届ける前に検査は重要だ。」
「ラジャー！」
若い男の陽気な返事を海の中で聞く。
ワタルは出来る限り潜水でクルーザーが離れる。
また嵌められたかと思うと、悔しさより、情けなさが先に立つ。
甘い言葉にまんまと騙された。
涙が水中メガネの中で溜まる。
『そう簡単にやられてたまるか！』
槍を持つ手に力が入った。

一人の戦いが始まる。
いつも誰が助けてくれた。
だが今回は自力でここを脱出するのだ。
クルーザーの存在に気付いた事はラッキーだ。
お陰でテツヤの思惑を知る事が出来た。
何も知らずに今晩を迎えるのとは大違いだ。
『このツキを生かさないとな。』
進化したワタルは冷静に対応策を検討する。
おどおどしている暇はなかった。
小屋の裏に山下の姿はない。
二人で買い出しに行った様だ。
『やはりツキがある！』
採ってきたウニを調理する。
山盛りになったウニに特製のエキスを掛けた。

「ただいま。
あれ、料理まで作ってくれたのですか？」
段ボールを置いたテツヤが汗を拭く。
その後ろに山下が立っていた。
その姿を見て、目を疑う。
ラバースーツを脱いだ山下は別人の様だ。
げっそり頬がこけ、脂肪の欠片もない。
体脂肪で言えば5％を切っているだろう。
病的な筋肉美だった。

(つづく)

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