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3.喜多村本家に居候
146.レニ、さすらう……
しおりを挟む足を引きずりキョウが自室の前を通り過ぎる。時間を空けてドアを開けるとキョウの姿は廊下にない。
「お労わしや。犯人を見つけねば腹の虫が収まらぬ」
部屋を出たレニはエレベーターに向かい、停止する階数を確かめる。
「やはり、二階か……」
一計を案じ、念を入れ階段で階下に向かう。
「子らの部屋はどこであったか……」
レニは一つひとつ部屋を確認するのは不躾と感じる。
「あの……申し訳ありません。横に逸れていただけますか?」
階段下で考えこんでいると、後ろから声がかかる。振り向くと寝具を抱えるメイドが下りて来ていた。
「これは、すまぬ」
道をふさぎ、すまなく思うレニ。
「いえ、お手間をかけます」
「う、うむ……。これ、そなた、喜多村の子らの部屋はいずこか知らぬか?」
すれ違う際、その年かさのメイドに問う。
「子供たち、ですか? こちらです」
「あ、いや。案内はいらぬ。場所を教えてくれればよい」
作業を繰り下げ案内しようとするメイドを制す。
「左様ですか? この時間ですと皆が寝起きて集まっていると思いますので、中ほどにあるタンポポ様のお部屋です──」
蒲公英を象った銘板の掲げられた部屋だと親切に教えてくれる。
「そうか。手間をかけた……。して、そなたは然程にそれを抱えておるのじゃ? 汚れ物であろう?」
「それは……その、宝物、ですので……」
「意味が分からぬ」
「…………」
黙して事ほど愛おしく抱くメイドの荷物に手をかけてみる。
「うっ……」
広げた際に広がる匂いに手が止まり顔をしかめる。中には襦袢が包みこまれていた。
「失礼いたします!」
汚れ物を曝されメイドは豹変し慌てて走り出す。
「──ま、待て! それはどこにあったものじゃ?」
「風呂場にございます。では……」
逃げるようにメイドは小走りで階下へ下りていく。
「あれは、確かに義兄上のお召しもの」
風呂場で事件は起こったとレニは閃いた。下りてきた階段を引き返す。もう喜多村の子らの事は頭から消え失せていた。
「さて、風呂場か……」
やみくもに探すことはない。風呂場は中央、その方に目を向けると開かれたドアが見える。そこへ歩みよると、こじんまりとした寝室然とした部屋がある。
その向かいには口を開けた枠組みとスイングドアの二つの部屋。トイレと風呂場がある。
躊躇なくスイングドアを通り抜けると、脱衣場が広がっている。
「義兄上の痕跡はないものか……」
部屋の中をくまなく探るが何もない。汚れ物はすでに持ち去られている。
仕方なく、向かいの小さな寝室? に戻る。ざっと見回しても据えられたベッドの他、目につくのはサイドボードくらいしかない殺風景な造り。
「ベッドのみの部屋とは面妖な……」
何かあと一つ、パズルを組み立てるには足りないと感じている。レニはベッドに座りながら考えこむがまとまらない。
「仕方ない。義兄上のところを覗いてみるか」
腰を上げたレニは来た道を戻り階下の子供たちの部屋に向かう。
「レニ様、どうされました?」
「義兄上……」
間が悪く階段から廊下に出ると前からキョウがこちらに向かってくるところに出くわす。廊下の向こうではメイドたちが忙しなく部屋を出入りしている。
「朝食の時間ですよ。戻りましょう」
「……うむ。戻りましょう」
義兄はいつもと変わりないとレニは安堵して、その笑顔に答える。
「子らはどうでありましたか?」
「変わりありません。それがどうされましたか?」
「いえ、早う子をなしましょうぞ」
「え、ええ、そうですね……」
励ますつもりの言葉がキョウには届かぬように顔を曇らせる。
「ただいま戻りました」
「うむ。レイニはどこに行っておった?」
エレベーターで五階に上がり、部屋へ戻る。リビングでは朝食が準備されている最中、ハノリがレニに問い質す。
「それは……」
「レニ様は子供たちの部屋に来られる途中でした」
レニが言い澱むところ、キョウが代弁する。
「ふむ……。そうなのか」
「そうです……」
「まあよい。食事にいたそう」
「はい」
「はい……」
三人は席に着くと食べ始める。レニは先ほどのメイドがいないか探るが年若いメイドたちばかり。
いたとしても、この場では話を聞けないであろう。
「義兄上、ゲームがお好きなのですか?」
「……えっ? いえ、好きと言うほどでは」
「そうなのですか?……」
「そなたら、食事中に話はやめよ」
「は、はい」
「申し訳、ありません」
結局のところ、朝のひと時ではレニに解明の糸口は見えない。
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