*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

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勤務時間は変動性で融通が利くので、好きなように入れさせてもらっている。

時には時間を指定されることもあるが、それほど多くはない。

することがないのでフルタイムと思っていたが、ワッキーが来たなら話は別だ。

店長はオレの気持ちをくんでくれたのだろう。

「でも・・・」

オレはレジで1人、不安そうに立っているコブラに視線を移した。

昨日レジのやり方は説明したものの、1人ではまだ手慣れていないので横に立つようにはしている。

「もちろんコブラくんも一緒に上がっていいよ。プーさんとコブラくんはしばらくニコイチだから」

そう言われて気が晴れた。

オレの心配も何のその。

店長にかかれば全てお見通しだ。

オレは店長の心遣いを嬉しく思った。

「お昼まであと20分か。ワッキー、それまで悪いけど・・・」

「心配ない。販売雑誌に折れなどの問題がないか確認しておこう」

「おぉ、立ち読みを良いように解釈するとそうなるのか」

しかしワッキーが言うと嫌味がない。

店長も立ち読みを続けるワッキーに嫌な顔1つ見せなかった。

20分後、店長の好意に甘え、オレとコブラはバイトを切り上げた。

オレの家に向かって3人並んで歩く。

「ワッキー、こいつオレの隣に住んでるコブラ。コブラ、こっちはオレの親友ワッキー」

歩きながら2人に紹介をする。

ワッキーには旅行をキャンセルした経緯にコブラが絡んでいることを、コブラにはトリップ47を説明した際にワッキーのことを、2人には前もってそれぞれの紹介をしていたので、今は初対面だが初対面でないような反応をしていた。

「あ、本当だ。メッセージが届いてる」

ワッキーがオレに送っていたというメッセージを確認するため携帯電話を確認すると

『旅のおともを受け取るが良い』

という文章の後ろに、プレゼントのような絵文字が付いていた。

「ワッキー!おみやげ買ってきてくれたのか?」

「うむ。おみやげなくして旅とは言わぬ」

初対面のコブラがいても、ワッキーの同級生らしからぬ口調は変わらない。

その話し方が気に入ったのか、コブラは笑みを浮かべたまま聞いている。

「特にこれが美味だったので酒のつまみにしながら旅の報告をしようと思ってな」

と言ってワッキーはリュックから白い袋を取り出した。

中から出てきたのは芋けんぴだった。

「「あー!!塩けんぴー!!」」

オレとコブラが声をそろえて叫び、お互い顔を見合わせてからまた商品に見入る。
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