*いにしえのコトノハ*9 苦くて、甘くて、時々しょっぱい

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「こんなにおいしいご飯を食べたのは久しぶりです」

大げさだなと思いつつ、何となくそう言われることは想像がついた。

オレも昨年、入学したばかりの頃は自炊などしておらず、手軽に腹一杯食べられるものを好き勝手選んでいた。

もちろん体重は増え、動きは鈍くなり、好きなものばかりを食べるせいか、ずっと食べ飽きることなく食べ続けるという悪循環だった。

しまいにはおいしいかどうかわからないまま、あるものをひたすら食べていた気がする。

夏休みに帰省して、母親に調理を勉強させられてからはその習慣もなくなった。

食べ物はまんべんなく食べなければいけない。

「野菜はスープでもいいからちゃんと取った方がいいぞ。健康に直結するから」

「そうですね。スープなら手軽そうですね」

「朝もちゃんと食べた方がいい。パンでもいいから」

「そうですよね。実家では食べてたんですけど・・・」

次第にコブラの返事が歯切れの悪いものになってきた。

もしかしたらこいつは食べたいけど食べられない状況だったりするのか?

昔は食べていたけど今は食べてないという状況。

またこの線の細さ。

我慢している、ということか。

すると・・・食費、か?

「仕送りとかしてもらってないのか?」

「あ、それはあります。家賃とは別に2万円」

「2万円?思ったより少ないんだな」

「家に病気がちの弟がいて、あまり甘えられないんです。先月は教材を購入したために残金が乏しくて、それで食費を削ることに」

なるほど、それで朝食抜きか。

教材は確かにお金がかかる。

中には教授自らが出版した本を教材にする場合もあって、せこいことにその巻末にあるレポート用紙に記入してレポートを提出しないと単位なし、としている場合もある。

自分の本を購入してもらうために教授も必死だ。

そういう本が4千円超え、と意外に高かったりする。

そういうのがなければ教材など中古品でも問題ないし、何なら購入せずに誰かと共有なんてことでしのいだりもできる。
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