23 / 52
発展編
21.鶴の恩返しならぬ
しおりを挟む
午後になり一時間ほど過ぎた頃だろうか。康宇からご令息が到着したと伝えられた。
「では、行きましょうか?」
獅朗に呼ばれ、美云と暁丹は社長室へ向かうため三人でエレベーターホールに行こうとしたところ、なぜか佳敏も一緒に執務室を出てくる。
「ちょっと、何よぉ三人して変な顔して。邪魔はしないわよ。静かに見守ってるから、アタシも一緒に行くわよ。」
特に獅朗にジト目で見られて佳敏が言い訳をしつつも、一緒に行くことは諦めないらしい。
はぁ、と小さくため息をつく獅朗。
「本当に邪魔はしませんね?」
一応、念を押す。
「しないわよ。たまにはアタシを信じなさい。」
「キャット、ついでに春紅さんまでついてくるなんてことは無いのね?」
「大丈夫よ。アタシが止めたから。」
なぜか胸を張って答える佳敏。
どうせ来月になれば嫌でも毎日顔を合わせるのに。他のマネージャーたちは遠慮して来ないのに。
やはり猫は猫だ。仕事中ですら自由に立ち回る。
しょうがないので 佳敏も連れて社長室へ向かうことにした。
社長室のある階へ着き、向かった先には令息と社長だけで、仲良く談笑をしていた。本当に仲の良い親子で、ここに夫人も加わるとさらに華やぐ。
獅朗たちがやって来ると、令息が立ち上がりわざわざ四人のところへやって来る。
「こんにちは。はじめまして。王㬶天です。今回は引き受けてくださりありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。」
まっすぐな視線を美云に送ってくる㬶天は佳敏と同じくらいの高身長で、170cmある美云ですら見上げるほどだった。
それに、顔立ちは精悍で男らしい男と言った感じだ。身体は程よく筋肉質で長い足を持て余しているようだ。
現に暁丹は目の前の㬶天を見てぼうっとしている。
セックスアピールの塊のようなキャット、ちょっと中性的な見た目の獅朗、そこに㬶天。見目麗しい男たち三人が美云の目の前にいた。
「こちらこそ研修担当になれて光栄です。これからビシビシ鍛えますから覚悟していてください!」
にっこり笑いながら㬶天を見つめ返す。
実は㬶天に会うのはこれが初めてではない。毎年、王家の屋敷で年に一度開かれるパーティで何度か目にしている。
初めて会った頃はまだまだ小さく、ひょろっとしたお坊ちゃんだった。それが今では立派に成長している。将来の王財閥の舵取りになる人の器にふさわしい成長と思えた。
打ち合わせは始終和やかに進み、そろそろお開きとなった時だった。
「そう言えば、獅朗さんには一緒にサッカーで遊んでもらった記憶があります。」
㬶天が口を開く。
「そうでしたね。あれはいつ頃でしたっけ?中学か、高校か、、、」
高校生の頃でしたね。と㬶天が続ける。
ほう。そんな頃から付き合いがあったのか、と美云は話に耳を澄ませる。
「確か、当時流行っていたバブルボールサッカーをやりに行こうってパーティの席で話していたら、話を聞いた㬶天君も行きたいって社長におねだりしていましたね。」
獅朗の話にそうでしたね、と照れくさそうに相づちを打つ㬶天は笑うと少年のような顔立ちになる。
それを見たキャットが内心舌舐りをしている顔になってるので思わず肘でつつくと、なによ?と言わんばかりにすんと元の顔に戻る。
「それで、試合はどうだったんですか?」
暁丹が二人に訊ねると、勝ち負けと言うより、みんなバブルボールを身につけて転がるのが楽しくて、試合にはならなかったとのことだった。社長も夫人も参加して楽しんだらしい。
恐らく、古参の美云がこの話を知らないのは李莉の看病をしていた頃だからだろうと年齢を頭の中で逆算してみる。
では、そろそろ。と今度こそお開きになり、では来月からよろしくお願いします。と獅朗たち四人は社長室を後にした。
一課に戻るエレベーターの中で美云はふと思いついたことを口にする。
「もしかして、獅朗に研修のお願いをしたのは㬶天君自身ですか?」
「・・・ええ。そうです。中々、研修担当部所が決まらない中、痺れを切らしたらしいご令息にご指名を受けました。」
少し間が空くも答えが返ってくる。
なるほど。世話焼き上手と言うのを㬶天が覚えていたと言うことだろう。
「獅朗さん、モテますね。」
暁丹がニヤニヤする。
「ちょっとあんた、男にまでモテるわけ?やるじゃない?それよりも、来月からあんなのが毎日ウチの課にやってくるってことは・・・毎日、嵐が吹き荒れるんじゃないかしら?ふふ。」
佳敏曰く、毎日、女子社員がやってきててんやわんやで獅朗のチームは大変そうね。と他人事のように言う。
「ご心配無く。ご令息がいてもいなくても一課はいつも佳敏さんのお陰でてんやわんやですから。」
それに、と続く。
「そうならないように研修担当を美云にお願いしたんですから。」
獅朗が佳敏にウインクしたところでエレベーターが一課の階に着いた。
......
今週は二話更新がんばります_(..)_
「では、行きましょうか?」
獅朗に呼ばれ、美云と暁丹は社長室へ向かうため三人でエレベーターホールに行こうとしたところ、なぜか佳敏も一緒に執務室を出てくる。
「ちょっと、何よぉ三人して変な顔して。邪魔はしないわよ。静かに見守ってるから、アタシも一緒に行くわよ。」
特に獅朗にジト目で見られて佳敏が言い訳をしつつも、一緒に行くことは諦めないらしい。
はぁ、と小さくため息をつく獅朗。
「本当に邪魔はしませんね?」
一応、念を押す。
「しないわよ。たまにはアタシを信じなさい。」
「キャット、ついでに春紅さんまでついてくるなんてことは無いのね?」
「大丈夫よ。アタシが止めたから。」
なぜか胸を張って答える佳敏。
どうせ来月になれば嫌でも毎日顔を合わせるのに。他のマネージャーたちは遠慮して来ないのに。
やはり猫は猫だ。仕事中ですら自由に立ち回る。
しょうがないので 佳敏も連れて社長室へ向かうことにした。
社長室のある階へ着き、向かった先には令息と社長だけで、仲良く談笑をしていた。本当に仲の良い親子で、ここに夫人も加わるとさらに華やぐ。
獅朗たちがやって来ると、令息が立ち上がりわざわざ四人のところへやって来る。
「こんにちは。はじめまして。王㬶天です。今回は引き受けてくださりありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。」
まっすぐな視線を美云に送ってくる㬶天は佳敏と同じくらいの高身長で、170cmある美云ですら見上げるほどだった。
それに、顔立ちは精悍で男らしい男と言った感じだ。身体は程よく筋肉質で長い足を持て余しているようだ。
現に暁丹は目の前の㬶天を見てぼうっとしている。
セックスアピールの塊のようなキャット、ちょっと中性的な見た目の獅朗、そこに㬶天。見目麗しい男たち三人が美云の目の前にいた。
「こちらこそ研修担当になれて光栄です。これからビシビシ鍛えますから覚悟していてください!」
にっこり笑いながら㬶天を見つめ返す。
実は㬶天に会うのはこれが初めてではない。毎年、王家の屋敷で年に一度開かれるパーティで何度か目にしている。
初めて会った頃はまだまだ小さく、ひょろっとしたお坊ちゃんだった。それが今では立派に成長している。将来の王財閥の舵取りになる人の器にふさわしい成長と思えた。
打ち合わせは始終和やかに進み、そろそろお開きとなった時だった。
「そう言えば、獅朗さんには一緒にサッカーで遊んでもらった記憶があります。」
㬶天が口を開く。
「そうでしたね。あれはいつ頃でしたっけ?中学か、高校か、、、」
高校生の頃でしたね。と㬶天が続ける。
ほう。そんな頃から付き合いがあったのか、と美云は話に耳を澄ませる。
「確か、当時流行っていたバブルボールサッカーをやりに行こうってパーティの席で話していたら、話を聞いた㬶天君も行きたいって社長におねだりしていましたね。」
獅朗の話にそうでしたね、と照れくさそうに相づちを打つ㬶天は笑うと少年のような顔立ちになる。
それを見たキャットが内心舌舐りをしている顔になってるので思わず肘でつつくと、なによ?と言わんばかりにすんと元の顔に戻る。
「それで、試合はどうだったんですか?」
暁丹が二人に訊ねると、勝ち負けと言うより、みんなバブルボールを身につけて転がるのが楽しくて、試合にはならなかったとのことだった。社長も夫人も参加して楽しんだらしい。
恐らく、古参の美云がこの話を知らないのは李莉の看病をしていた頃だからだろうと年齢を頭の中で逆算してみる。
では、そろそろ。と今度こそお開きになり、では来月からよろしくお願いします。と獅朗たち四人は社長室を後にした。
一課に戻るエレベーターの中で美云はふと思いついたことを口にする。
「もしかして、獅朗に研修のお願いをしたのは㬶天君自身ですか?」
「・・・ええ。そうです。中々、研修担当部所が決まらない中、痺れを切らしたらしいご令息にご指名を受けました。」
少し間が空くも答えが返ってくる。
なるほど。世話焼き上手と言うのを㬶天が覚えていたと言うことだろう。
「獅朗さん、モテますね。」
暁丹がニヤニヤする。
「ちょっとあんた、男にまでモテるわけ?やるじゃない?それよりも、来月からあんなのが毎日ウチの課にやってくるってことは・・・毎日、嵐が吹き荒れるんじゃないかしら?ふふ。」
佳敏曰く、毎日、女子社員がやってきててんやわんやで獅朗のチームは大変そうね。と他人事のように言う。
「ご心配無く。ご令息がいてもいなくても一課はいつも佳敏さんのお陰でてんやわんやですから。」
それに、と続く。
「そうならないように研修担当を美云にお願いしたんですから。」
獅朗が佳敏にウインクしたところでエレベーターが一課の階に着いた。
......
今週は二話更新がんばります_(..)_
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
王子の甘い囁き
克全
恋愛
4話5696文字で完結済み
主人公である43歳の女性、藤崎美優は、35歳で総合商社を独立して小さな貿易会社を設立しました。最初は大きな夢を描いていましたが、社員を食べさせるために忙しいだけの日々を送っていました。ある日、彼女の人生は予期せぬ出来事によって一変します。彼女は年下の王子様に出会い、彼の溺愛を受けることとなります。美優の心には深い感情が芽生え、彼女は自身の人生に輝きを取り戻していくのです。
契約妻ですが極甘御曹司の執愛に溺れそうです
冬野まゆ
恋愛
経営難に陥った実家の酒造を救うため、最悪の縁談を受けてしまったOLの千春。そんな彼女を助けてくれたのは、密かに思いを寄せていた大企業の御曹司・涼弥だった。結婚に関する面倒事を避けたい彼から、援助と引き換えの契約結婚を提案された千春は、藁にも縋る思いでそれを了承する。しかし旧知の仲とはいえ、本来なら結ばれるはずのない雲の上の人。たとえ愛されなくても彼の良き妻になろうと決意する千春だったが……「可愛い千春。もっと俺のことだけ考えて」いざ始まった新婚生活は至れり尽くせりの溺愛の日々で!? 拗らせ両片思い夫婦の、じれじれすれ違いラブ!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
Play With Me
てらだりょう
恋愛
彼女欲しい。
別に、やれる相手になんかとある不自由してない。恋、してえんだけど、恋ってどうやったら始まるんだ?好きな女ってどうやったら出来るんだ?
適当に生きてきて適当に夜の世界で生きるユウ、生まれて初めて本気で好きになった人は年上のミステリアスな美女。彼女のために成長するとある男の子のお話。
You Could Be Mineのサブキャラ、ユウのお話です。
※本作は10年ほど前が初出の作品です。当時の改訂版となりますが、設定などは初出当時のまま使用しておりますのでご理解、ご容赦のほどお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる