52 / 149
前門の虎、後門のシベリアンハスキー②
しおりを挟む
「えっと……あの、日和さん?」
僕は別に、日和さんに『彼女がいる』と思われると困るのではない。
そんなの、死ぬほどどうだっていい。
そもそもの話、好きでもない我が社のアイドルと、社内恋愛なんて。
……そんな面倒事、冗談じゃない!
慌てて彼女の勘違いを正そうとした、そのタイミングで。
僕の姿を見付けた早乙女くんが、笑顔で手を振った。
「おーい、大晴!こっち、こっち!」
やたらと目立つイケメンが大きな声で叫んだものだから、自然と注目が集まる。
本人はそんなの、全く気にしていない様子だけれど。
ついプッと吹き出し、僕も小さく手を振り返した。
「あれが僕の、友達!
じゃあね、日和さん。気を付けて」
にっこりと微笑み、告げたのだけれど。
ぎゅっと手首を両手で掴まれ、彼女はまたしてもあざと可愛く笑って言った。
「ありがとうございました、佐瀬さん。
あの……今日はたくさんお話が出来て、楽しかったです」
普通であっても、全力で回避したい日和さんからの猛アピール。
しかも今は僕への執着心の塊である、早乙女くんが見ているのだ。
恐る恐る、視線を彼の方に向けてみる。
すると彼はキラキラと、まばゆいぐらいに胡散臭い微笑を浮かべていた。
彼女からそっと手を離し、無理矢理笑顔を顔面に貼り付け告げた。
「そうだね。
やっぱり皆で飲みに行くと、楽しいね」
ふたりでは絶対にごめんだと、暗にアピールを試みる。
しかし相手は、思った以上の猛者だった。
「佐瀬さんって、恥ずかしがり屋さんなんですね。
とっても、可愛いです。
あ……年上なのに、こんな風に言ったら失礼か」
てへ☆という擬音までも聞こえそうなほど、あざと過ぎるコンボ技。
ますます引きつる、僕の顔面。
「じゃあ、おやすみなさい。
佐瀬さん、また月曜に会社で!」
まるで僕の恋人であるかの如く当たり前みたいな顔をして早乙女くんにもペコリと一礼すると、僕に小さく手を振り、駅の改札口に向かいパタパタと駆け出した。
僕は別に、日和さんに『彼女がいる』と思われると困るのではない。
そんなの、死ぬほどどうだっていい。
そもそもの話、好きでもない我が社のアイドルと、社内恋愛なんて。
……そんな面倒事、冗談じゃない!
慌てて彼女の勘違いを正そうとした、そのタイミングで。
僕の姿を見付けた早乙女くんが、笑顔で手を振った。
「おーい、大晴!こっち、こっち!」
やたらと目立つイケメンが大きな声で叫んだものだから、自然と注目が集まる。
本人はそんなの、全く気にしていない様子だけれど。
ついプッと吹き出し、僕も小さく手を振り返した。
「あれが僕の、友達!
じゃあね、日和さん。気を付けて」
にっこりと微笑み、告げたのだけれど。
ぎゅっと手首を両手で掴まれ、彼女はまたしてもあざと可愛く笑って言った。
「ありがとうございました、佐瀬さん。
あの……今日はたくさんお話が出来て、楽しかったです」
普通であっても、全力で回避したい日和さんからの猛アピール。
しかも今は僕への執着心の塊である、早乙女くんが見ているのだ。
恐る恐る、視線を彼の方に向けてみる。
すると彼はキラキラと、まばゆいぐらいに胡散臭い微笑を浮かべていた。
彼女からそっと手を離し、無理矢理笑顔を顔面に貼り付け告げた。
「そうだね。
やっぱり皆で飲みに行くと、楽しいね」
ふたりでは絶対にごめんだと、暗にアピールを試みる。
しかし相手は、思った以上の猛者だった。
「佐瀬さんって、恥ずかしがり屋さんなんですね。
とっても、可愛いです。
あ……年上なのに、こんな風に言ったら失礼か」
てへ☆という擬音までも聞こえそうなほど、あざと過ぎるコンボ技。
ますます引きつる、僕の顔面。
「じゃあ、おやすみなさい。
佐瀬さん、また月曜に会社で!」
まるで僕の恋人であるかの如く当たり前みたいな顔をして早乙女くんにもペコリと一礼すると、僕に小さく手を振り、駅の改札口に向かいパタパタと駆け出した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
948
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる