年下俺様アイドルの、正しい飼い方

６人目のJOKER③

「おーい、奏！完全に、素の顔になってるよ？
　もうすぐ出番なんだから、その表情はやめろ」

　なのにそう言った桜輔の顔も、俺同様とても嬉しそうで。
　嘘にまみれてはいてもこんなにも温かで、優しい気持ちになれるこのグループのメンバーの一員になれて良かったと、改めて感じた。

　天の邪鬼で素直に気持ちを伝えるのが苦手な俺にはそんな発言、死んでも出来そうにないけれど。

　再びイントロが流れ出し、舞台にライトが灯る。
　瞳を閉じて、自分自身のスイッチを入れ直して。
　にこっと笑い、素の自分のモノよりもちょっぴり高い声色を使い、返事をした。

「分かってるよ、桜輔くん。
　皆で力を合わせて、最高のステージにしようね！」

***
　先程の白ベースの王子様みたいな衣装から今度は、グレーベースのスーツ姿に着替えてステージに上がると、ファンの子達のボルテージは最高潮に。

　しっとりとしたバラードから始まった、後半戦。

　前半とは異なり、激しさは控えめな楽曲が多めの構成となっているのも幸いし、鈴をフォローすると言ったが、その必要はほとんどないくらい彼女のパフォーマンスは見事だった。

　本番最後の一曲はアップテンポなモノで、これは激しく高度なテクニックの必要なダンスが売りだ。

　そのため最初は、皆苦戦した。
　中でも記憶力があまりよろしくない玲のヤツは中々振り付けを覚える事が出来ず、鈴は何度も練習に付き合わさせられたとぼやいていた。

　だから本人とは遜色がないくらい、歌もダンスも完璧だった。
　いや。......彼女は完璧過ぎた・・・・・・・・のだ。

　初めてのライブにテンションの上がった鈴が仁の忠告も忘れ、華麗なる美声をうっかり披露してしまった結果。
　......この日のライブは音痴な玲の起こした『一日限りの奇跡』と言われ、ファンの子達の間で長く伝説として語り継がれる事となる。
　ヤバい、マジでウケる！