上 下
55 / 151

告白②

しおりを挟む
 すると何故か奏くんは、ククッと肩を揺らして楽しそうに笑った。

「うん。千尋さんが居なくて、暇だったから」

 今度は彼の方から抱き締められそうになり、反射的に避けてしまった。
 不機嫌そうに、奏くんの眉間に深いシワが刻まれる。

 訪れた、一瞬の沈黙。
 だけどすぐに合点がいったように彼は満面の笑みを浮かべ、力ずくで私の事を腕の中に閉じ込めた。

「もしかしたら、って思ったんだけど。
 ......やっぱり千尋さん、嫉妬してくれたんだ?
 でも俺が泊まったの、男友達の家だから」

 耳元で、甘く囁かれて。
 ホッとするのと同時にどうしようもないくらい自身の勘違いが恥ずかしくなり、彼に抱き締められたままふるふると小さく震えた。

「可愛いなぁ、ホント」

 クスクスと笑いながら、優しく頭を撫でられる。
 ......こんなの、好きバレ待った無しじゃないか。

「別に、嫉妬なんて......」

 本当は彼の言葉通りだったけれど、バツが悪くてゴニョゴニョと言い訳を口にしようとした。
 だけど彼は笑顔のままじっと私の瞳を覗き込み、愛らしく首を傾げて聞いた。

「えー、残念。......嫉妬、してくれないの?」

 至近距離であまりにも美しい顔面を目にしたモノだから、激しく動揺する私。
 なのに彼は余裕の笑みを浮かべ、更に距離を詰めて来た。

「千尋さん、顔真っ赤なんだけど」

 私の頬に両手を添え、顔をそらす事が出来ないように固定して、今度はさっきとは異なり意地悪く歪む彼の形のよい唇。
 またしてもからかわれたんだと気付き、文句のひとつでも言ってやろうと思ったのに。
 ......彼は急に、真剣な顔をして言った。

「ねぇ、千尋さん。
 俺は千尋さんが嫉妬してくれたら、スゲェ嬉しいよ?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

ハイスペ男からの猛烈な求愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペ男からの猛烈な求愛

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

処理中です...