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第二部
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しおりを挟む「信じられないって顔だね」
愉快そうにそう呟くチャーリーの後ろでくすくすと笑い声が聞こえた。そこには見知らぬ男がおり、エラは小さく悲鳴を上げた。
「驚かせたかな。大丈夫、安心して。こいつのおかげでここまで来れたんだ」
エラは必死で頭を働かせる。つまりこの男がチャーリーを誑かしたであろう魔法使い……しかも、ここまで誰にも見つからずに来れるほど高度な魔法を使えるということだ。
「エラ、こんな薄汚い場所は美しい君には似合わない。さぁ、一緒に行こう」
チャーリーはエラが断るとは微塵にも思っていないようで、当たり前のように手を差し出した。エラは震える手をぎゅっと握りしめ頭を下げ、謝罪を始めた。
「殿下……その、これまで申し訳ありませんでした」
「いいんだ、エラ。分かってくれたんだね」
目の前の男は歪んだ笑みを浮かべた。上手く呼吸ができない。胸の音が煩くて自分の声すら聞こえない。それでも伝えなければならなかった。
「僕は心が広いからね。あの舞踏会の時のことは水に流そう」
「いえ、殿下……私はこれまで思わせぶりな態度を取って来ました。ですが、それは魔法使いに出会いたかった、その目的の為でした。ですから……殿下に想いはありません」
「なっ……」
チャーリーは言葉を失い、瞠目した。
「酷い態度ばかり取って申し訳ありませんでした」
「何を……」
「ですので、殿下と共に行くことは……」
「ふざけるな……っ!」
エラの言葉を遮り、大声を上げたチャーリーはエラににじり寄って来た。目は血走り、明らかに正気を失っている。足が震え、逃げ出すことが出来ない。声を上げようにも、喉の奥がひりついて掠れた声しか絞り出せないでいた。
ああ、もう無理だと全てを諦めようとした瞬間、ガチャンと音を立てて扉が開いた。
「おい、どうし……」
先程のチャーリーの怒鳴り声を不審に思ったジャックが駆けつけてくれたのだ。ジャックもまさかチャーリーがいるとは思わず一瞬怯んだがすぐエラを庇おうと近付き、剣に手を掛けた……だが。
「うっ……」
「ジャック!」
チャーリーの仲間である魔法使いによって、ジャックの動きは封じられてしまった。あっという間に床に転がされたジャックの姿を見て、怯えていた心が怒りに染まる。
「はは、ざまぁないな」
「やめて……」
「ふん、止める訳ないだろ」
ジャックを見下した瞳で見つめたかと思うと、そのまま蹴飛ばそうとする姿を見てエラの視界は真っ赤になった。
「……っ、やめてって言ってるのよ!!!」
エラの叫びと共に、爆音が響き渡り塔全体が震えた。
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