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第二部
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しおりを挟む「……ん?」
エラがぱちりと目を覚ますと見慣れない天井が目に入った。身体が酷く重く、動いてくれない。視線だけをキョロキョロと動かすとここはジャックの部屋だと気付いた。
いつもなら扉の外に待機しているジャックが今は扉の内側に背中を預けて座り込んでいるのが見えた。頭が下を向いており眠っているのだろうとエラはぼんやりと思った。
「……ジャック」
掠れた小さな声が漏れただけだ。それなのにジャックはガバリと顔を上げ、すごい勢いでエラの眠る寝台までやって来た。
「お、お前」
「……ジャック、怪我してない?」
「……っ」
「……あの魔法使い、貴方に魔法を使ったでしょう。どこか痛い所は……」
「馬鹿野郎!」
ジャックの怒声は塔全体に響いた。エラが呆気に取られ目を見開いていると、バタバタと講師たちがなだれ込んで来た。
「エラさん!目が覚めたんですか!」
「大丈夫ですか?辛い所は無いでしょうか?」
「お水は飲めそうですか?」
「取り敢えず医師を呼ばないと」
「王宮に伝令を飛ばせ!」
「先にナスタジア様だ、先に王宮に伝令を飛ばしたと知れたら大変なことになるぞ……」
「そうだな、急ぐぞ!」
講師たちはエラへそれぞれ労りの声を掛けたかと思えば、またバタバタと退室して行った。そんな彼らを見てエラはまた呆気に取られた。
「せ、先生?」
「エラさん、起きたばかりなのに騒がしくて申し訳ないです」
「いえ……あの、なぜ皆そこまで慌てて……?」
講師はジャックを呆れた顔で見つめた。その目は何も説明していない彼を責めている。ジャックは決まり悪そうに視線を逸らした。
「エラさん、驚かずに聞いていただきたいのですが……あなたはもう三か月近く眠っていたのですよ」
「へ……」
ぽかんとするエラへ講師は申し訳なさそうな表情を浮かべ、あの夜のことを話し始めた。
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