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第一部 ダンジョンマスター 前編
ケース4 心象 透 三読目
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「そうだ、勇者、お前が抵抗しなければ、彼女たちの手錠を開けようか」
「......っ! どこまでも非道な!」
「だって、お前は俺を殺しに来たんだろう?」
「当たり前だ! お前は悪なのだから!」
「来なければ、俺に殺されることはなかったのにな」
「ッッッッッ!!!」
「お前が警戒を怠らなければ、二人は捕まらなかったのにな」
「貴様ぁぁぁぁああああ!」
しかし、勇者は地の底から上がってこない。
どうやら勇者スキルの中に限界突破とかそう言った覚醒するだの第二段階だのというものはないらしい。となるとそれが起きたときはスキルではなく百パーセント石の力か......恐ろしい。こいつは可能性ないが。
「それで、どうするんだ?」
「屈するものか、この悪逆非道のダンジョンマスターめ!」
「ほう、その発言、後悔するなよ」
そう言って、俺は牢につながれていた二人を見える位置に移動させる。とはいっても、こんな重いものに人が一人入っていて、それをやすやすと移動できるような筋力はないため、ピクシーに手伝ってもらっている。というか大半が彼女が運んでいる。
「それじゃ、どっちからおいしくいただこうかな......?」
「......! まさか! やめろ!」
「お前は俺を身勝手に殺そうとしたくせに、俺の身勝手はやめろだなんて、そんな勝手が通じると思うか?」
「......すまなかった。俺は何でもしよう。その代わり、彼女たちを解放してくれ」
「わかった、お前がそこまで言うなら、俺は彼女たちの手錠を解いてやろう」
「本当か!」
「あぁ、本当さ。さて、ピクシー、やれ」
「了。右腕、変形。キャノンモード」
そう言った瞬間、ガパ、と腕が展開され、白い砲身が覗いていた。
その奥では、青白い光が今か今かと漏れ出ていた。
「究極電磁式魔法、ライトニングバースト 縮小規模で発動します」
その瞬間、腕が開き、巨大な光の柱が勇者目掛けて襲い掛かった。
「おい、これ殺してないか?」
「勇者スキル『限定蘇生』と『HP自動回復(極)』によりすぐさま回復します。なお十三秒後に体力が一割を超えるので注意してください」
「マジか」
急いで牢を購入し、勇者を放り込んだ。
瞬間、青い水晶が彼の全身をはい回り、そのまま固まってしまった。
これは地下二階に厳重保管.....いや、あそこの先は何もないからもし牢から出されたら厄介だ。落とし穴の横穴にでも部屋を作っておこう。
編集し、それを移動させると、約束通りに彼女たちの手錠を解いてやった。
「ちょっと、この牢から出しなさいよ!」
「いや、牢の鍵、あいつが持ったままだし、てか、俺は手錠しか外す約束してないし」
「な......それでも人間か!」
「正確にはダンジョンマスターらしいぞ」
そう言って、二人の牢を所定の位置に戻し、エレベーターで地下二階へと移動させた。
「いやー、落とし穴、あそこに掘っててよかった」
物理的な罠は勇者には感知されない。なにせ魔法的なものを感じ取っているから、一切使っていないものはわかりようがない。
「それに、あいつら飛んだ間抜けさんだったしな」
普通仲間が二人いなくなって気づかないとか、そんなことあるかよ......
「まぁ、ともあれ一件落着か」
パソコンのモニターも赤い帯が消え、通常運行を示していた。
さて、戦利品の確認と行きますか。
殺した女の死体、身に着けていた装飾品に装備の数々。牢に入れられた二人の仲間で毎時二千のDP収入。そしてメインディッシュの勇者の入った特別牢。こっちは毎時三千に加え、ダンジョン設置物強化一段階のバフが入る。
これの適用範囲はモンスターをはじめ、罠もそうだ。
範囲がおおきくなったり、展開が速くなったり、罠での強化はそれぞれ違うが、あって無駄ということは一切ない。
正直リスクよりもリターンが大きい。
序盤でここまでの好スタートを切れたのは俺くらいのものだろう。が、慢心してはならない。
これから現れるのは今回みたいな甘っちょろい敵ではないかもしれない。決して死にたいわけではないから、俺の代わりにダンジョンを維持できる存在をもう育成しておくか。
「そうだな......ちょうどいい、お前だ」
そう言って呼び出したのは一体の悪魔。
とはいってもかわいらしい三俣の槍を携え、悪魔の羽でパタパタと飛んでいるモンスター。名前はプチデビル。かわいい。
「お前、意地悪が好きなんだって?」
そう言うと、コクコクと頷く。どうやら言葉はわかるが向こうが言葉を発することはできないらしい。
「そんじゃ、これ、やってみろ」
渡したのは一つのノートパソコン。
首をかしげる、そこで俺は説明をする。
「これで罠を設置出来て、これでモンスターを設置できる。それで侵入者を追い返してくれ。ここを超えたら殺してよし。ここを超えたら俺を起こしてくれ」
そう言ったらこくこくと頷いた。可愛い。
そんじゃ、俺は寝るか。もう疲れた、頭使いたくない。
そのままベッドにダイブを決めると、すぐに眠気が訪れ、やがて深い眠りに入った。
翌朝。長い長い夜を超えた気分、というより実際にそうだったのだろう。日課のログイン感覚でダンジョンを見に行く。
「お」
深夜の侵入者は五人。一人、一人、三人と別のグループが入ってきていたようだ。
一人目は矢が飛び出してくるなり逃走。二人目はダンジョン内の天井にある明かりを見ていると足をとられて牢の中。三人はラインを超えたようで、照明の影に隠れていた小さな穴から矢を撃ちだして一人ずつ倒していたようだ。
「お前、なかなかやるなぁ!」
頭をなでると、とてもうれしそうに頭をこすりつけてくる。
かわいい。
「お前、性別あるのか?」
そう聞いてみると、ほっぺを膨れさせて、パソコンのペイントで何かを書き始めた。
「何々......♀? お前、そうだったのか、悪かったな.......」
そう言ったら、ようやく腹の虫がおさまったのか、俺のほうに抱き着いてきた。
よーしよし。
「それじゃ、これから俺も作るかね......」
ドンドンと上に伸ばし、ドンドンと地下も伸ばす。
頂上の最奥の落とし穴の横穴、定番のところに部屋を作って勇者を保管し、コアをそこからさらに深く行き、地下も超えた最奥に俺の部屋の奥に設置した。
DPが結構な速さで溜まるので、ドンドン高くしていた結果、地上五十階層、地下二十五階層、複雑に折り重なる迷路ダンジョンがひとまず完成した。
そして最初の襲撃から一週間が経過した。階層が多いおかげで楽に、深夜に起こされることもなく、防衛に成功している。
しかし、裏方要員こそ育成できているものの、進軍するための軍を作れていない。
というのも、侵入者が多く、罠で対応して、ダンジョンを増築して、を繰り返すとポイントがたまらない。
まぁ、ここまで大きくなったから、とりあえず軍を作るか? まぁ、出口が出口だから、結構強力な大群を揃えないとな。死んでしまっては元も子もない的なあれだ。
俺はあの噴水を思い出す。あのスクランブル交差点を例えに出したぐらいのあの人混みの人数が、すべて勇者レベルとは言わないが、ぶっ壊しスキルがあることぐらい可能性では無きにしも非ず、というか一人ぐらい絶対にいる。
その時に、このダンジョンが有害と判断されたらおしまいなのだ。あくまで第一目標は生存。次に地上の不穏因子の排除。目標をはき違えないようにしなければ。
とりあえずパソコンからそっと離れると、牢の様子を見に行った。
今では牢は地下十階層に保管されている。とはいっても二人しか入っていない。いや、三人か。
飯を与えるつもりで十階層に行く。
階層が五十を超えたときにスキルダンジョンテレポートを自動習得して、それでダンジョン内どこでも行き来できるようになった。
「ほうら、飯だぞ」
「「......」」
二人はだんまりとしたままだった。
「わぁ、ご飯だ! こんなにたくさん、いつもありがとう!」
このガキ......と初日は思っていたが、少しずつかわいく見えて来た。
ぼさぼさとした群青の髪色と翡翠のような目をした子供だ。磨いたら容姿は端麗かもしれない。
「ってか、一週間風呂に入れないとか地獄だったな......よし、いっちょ風呂に入れますか!」
手錠をつけ、牢から出す。
ついでに勇者の仲間二人も。そっちはピクシーで大丈夫だろう。
「よっし、お前はこっちだ」
そう言ってガキンチョを連れて男風呂へと向かった。
「きゃっ! くすぐったいよぉ」
服を脱がせてから風呂に突っ込み、髪を洗った。
次はからだ......ん?
「お前、女か?」
「うん! 女の子!」
キャッキャ、と手錠の付いたままの手で泡を動かして遊んでいる。
その楽しそうなガキンチョ......いや、彼女というべきだろうその少女......いや幼女と一緒に風呂に入った俺の心は罪悪感でいっぱいだった。
「犯罪じゃねぇかよ......タッチしちゃったよ......」
「どうしたの? あくぎゃくひどう? のだんじょんますたー? さん!」
いやいつ聞いたしそれ。十中八九というよりもう確定であの二人だろう。ここまで魔の手が伸びていたか......俺が魔の手なのだが。
「それは忘れること! いいか?」
あくまで平静を装い、さっさと体を洗って、湯船につける。
鉄が錆びそうだが、気にしない、というより心の中はそんなこと気にしている余裕などない。
「あがるー」
「そうか、上がるか」
風呂から上げ、服を着せた。手錠を外して着せたが、特に抵抗する様子もなかった。
「こっち風呂終わったぞー、そっちはどうだー」
「答、こちらも今終わりました」
どうやら一件落着のようだ。
服を着せて、手錠をつけなおした様子の二人は、先ほどまでとは大きく違った。
やつれていた顔も少しだけましになった。髪もしっとりとして色気が出ているが、それで勘違いするような俺ではないことを俺自身が知っている。
「さて。それでは牢に戻れ」
普通、ここで反抗心のあるものはチャンスとばかりに抵抗するだろう。こちらとしてはここで抵抗するような不安要素の塊は排除したい。
「「わかりました」」
......ん? なんか従順になってる?
「答、私が教育しました」
「一体何があった!?」
その秘密の花園の出来事は、彼女らだけが知る。
「......っ! どこまでも非道な!」
「だって、お前は俺を殺しに来たんだろう?」
「当たり前だ! お前は悪なのだから!」
「来なければ、俺に殺されることはなかったのにな」
「ッッッッッ!!!」
「お前が警戒を怠らなければ、二人は捕まらなかったのにな」
「貴様ぁぁぁぁああああ!」
しかし、勇者は地の底から上がってこない。
どうやら勇者スキルの中に限界突破とかそう言った覚醒するだの第二段階だのというものはないらしい。となるとそれが起きたときはスキルではなく百パーセント石の力か......恐ろしい。こいつは可能性ないが。
「それで、どうするんだ?」
「屈するものか、この悪逆非道のダンジョンマスターめ!」
「ほう、その発言、後悔するなよ」
そう言って、俺は牢につながれていた二人を見える位置に移動させる。とはいっても、こんな重いものに人が一人入っていて、それをやすやすと移動できるような筋力はないため、ピクシーに手伝ってもらっている。というか大半が彼女が運んでいる。
「それじゃ、どっちからおいしくいただこうかな......?」
「......! まさか! やめろ!」
「お前は俺を身勝手に殺そうとしたくせに、俺の身勝手はやめろだなんて、そんな勝手が通じると思うか?」
「......すまなかった。俺は何でもしよう。その代わり、彼女たちを解放してくれ」
「わかった、お前がそこまで言うなら、俺は彼女たちの手錠を解いてやろう」
「本当か!」
「あぁ、本当さ。さて、ピクシー、やれ」
「了。右腕、変形。キャノンモード」
そう言った瞬間、ガパ、と腕が展開され、白い砲身が覗いていた。
その奥では、青白い光が今か今かと漏れ出ていた。
「究極電磁式魔法、ライトニングバースト 縮小規模で発動します」
その瞬間、腕が開き、巨大な光の柱が勇者目掛けて襲い掛かった。
「おい、これ殺してないか?」
「勇者スキル『限定蘇生』と『HP自動回復(極)』によりすぐさま回復します。なお十三秒後に体力が一割を超えるので注意してください」
「マジか」
急いで牢を購入し、勇者を放り込んだ。
瞬間、青い水晶が彼の全身をはい回り、そのまま固まってしまった。
これは地下二階に厳重保管.....いや、あそこの先は何もないからもし牢から出されたら厄介だ。落とし穴の横穴にでも部屋を作っておこう。
編集し、それを移動させると、約束通りに彼女たちの手錠を解いてやった。
「ちょっと、この牢から出しなさいよ!」
「いや、牢の鍵、あいつが持ったままだし、てか、俺は手錠しか外す約束してないし」
「な......それでも人間か!」
「正確にはダンジョンマスターらしいぞ」
そう言って、二人の牢を所定の位置に戻し、エレベーターで地下二階へと移動させた。
「いやー、落とし穴、あそこに掘っててよかった」
物理的な罠は勇者には感知されない。なにせ魔法的なものを感じ取っているから、一切使っていないものはわかりようがない。
「それに、あいつら飛んだ間抜けさんだったしな」
普通仲間が二人いなくなって気づかないとか、そんなことあるかよ......
「まぁ、ともあれ一件落着か」
パソコンのモニターも赤い帯が消え、通常運行を示していた。
さて、戦利品の確認と行きますか。
殺した女の死体、身に着けていた装飾品に装備の数々。牢に入れられた二人の仲間で毎時二千のDP収入。そしてメインディッシュの勇者の入った特別牢。こっちは毎時三千に加え、ダンジョン設置物強化一段階のバフが入る。
これの適用範囲はモンスターをはじめ、罠もそうだ。
範囲がおおきくなったり、展開が速くなったり、罠での強化はそれぞれ違うが、あって無駄ということは一切ない。
正直リスクよりもリターンが大きい。
序盤でここまでの好スタートを切れたのは俺くらいのものだろう。が、慢心してはならない。
これから現れるのは今回みたいな甘っちょろい敵ではないかもしれない。決して死にたいわけではないから、俺の代わりにダンジョンを維持できる存在をもう育成しておくか。
「そうだな......ちょうどいい、お前だ」
そう言って呼び出したのは一体の悪魔。
とはいってもかわいらしい三俣の槍を携え、悪魔の羽でパタパタと飛んでいるモンスター。名前はプチデビル。かわいい。
「お前、意地悪が好きなんだって?」
そう言うと、コクコクと頷く。どうやら言葉はわかるが向こうが言葉を発することはできないらしい。
「そんじゃ、これ、やってみろ」
渡したのは一つのノートパソコン。
首をかしげる、そこで俺は説明をする。
「これで罠を設置出来て、これでモンスターを設置できる。それで侵入者を追い返してくれ。ここを超えたら殺してよし。ここを超えたら俺を起こしてくれ」
そう言ったらこくこくと頷いた。可愛い。
そんじゃ、俺は寝るか。もう疲れた、頭使いたくない。
そのままベッドにダイブを決めると、すぐに眠気が訪れ、やがて深い眠りに入った。
翌朝。長い長い夜を超えた気分、というより実際にそうだったのだろう。日課のログイン感覚でダンジョンを見に行く。
「お」
深夜の侵入者は五人。一人、一人、三人と別のグループが入ってきていたようだ。
一人目は矢が飛び出してくるなり逃走。二人目はダンジョン内の天井にある明かりを見ていると足をとられて牢の中。三人はラインを超えたようで、照明の影に隠れていた小さな穴から矢を撃ちだして一人ずつ倒していたようだ。
「お前、なかなかやるなぁ!」
頭をなでると、とてもうれしそうに頭をこすりつけてくる。
かわいい。
「お前、性別あるのか?」
そう聞いてみると、ほっぺを膨れさせて、パソコンのペイントで何かを書き始めた。
「何々......♀? お前、そうだったのか、悪かったな.......」
そう言ったら、ようやく腹の虫がおさまったのか、俺のほうに抱き着いてきた。
よーしよし。
「それじゃ、これから俺も作るかね......」
ドンドンと上に伸ばし、ドンドンと地下も伸ばす。
頂上の最奥の落とし穴の横穴、定番のところに部屋を作って勇者を保管し、コアをそこからさらに深く行き、地下も超えた最奥に俺の部屋の奥に設置した。
DPが結構な速さで溜まるので、ドンドン高くしていた結果、地上五十階層、地下二十五階層、複雑に折り重なる迷路ダンジョンがひとまず完成した。
そして最初の襲撃から一週間が経過した。階層が多いおかげで楽に、深夜に起こされることもなく、防衛に成功している。
しかし、裏方要員こそ育成できているものの、進軍するための軍を作れていない。
というのも、侵入者が多く、罠で対応して、ダンジョンを増築して、を繰り返すとポイントがたまらない。
まぁ、ここまで大きくなったから、とりあえず軍を作るか? まぁ、出口が出口だから、結構強力な大群を揃えないとな。死んでしまっては元も子もない的なあれだ。
俺はあの噴水を思い出す。あのスクランブル交差点を例えに出したぐらいのあの人混みの人数が、すべて勇者レベルとは言わないが、ぶっ壊しスキルがあることぐらい可能性では無きにしも非ず、というか一人ぐらい絶対にいる。
その時に、このダンジョンが有害と判断されたらおしまいなのだ。あくまで第一目標は生存。次に地上の不穏因子の排除。目標をはき違えないようにしなければ。
とりあえずパソコンからそっと離れると、牢の様子を見に行った。
今では牢は地下十階層に保管されている。とはいっても二人しか入っていない。いや、三人か。
飯を与えるつもりで十階層に行く。
階層が五十を超えたときにスキルダンジョンテレポートを自動習得して、それでダンジョン内どこでも行き来できるようになった。
「ほうら、飯だぞ」
「「......」」
二人はだんまりとしたままだった。
「わぁ、ご飯だ! こんなにたくさん、いつもありがとう!」
このガキ......と初日は思っていたが、少しずつかわいく見えて来た。
ぼさぼさとした群青の髪色と翡翠のような目をした子供だ。磨いたら容姿は端麗かもしれない。
「ってか、一週間風呂に入れないとか地獄だったな......よし、いっちょ風呂に入れますか!」
手錠をつけ、牢から出す。
ついでに勇者の仲間二人も。そっちはピクシーで大丈夫だろう。
「よっし、お前はこっちだ」
そう言ってガキンチョを連れて男風呂へと向かった。
「きゃっ! くすぐったいよぉ」
服を脱がせてから風呂に突っ込み、髪を洗った。
次はからだ......ん?
「お前、女か?」
「うん! 女の子!」
キャッキャ、と手錠の付いたままの手で泡を動かして遊んでいる。
その楽しそうなガキンチョ......いや、彼女というべきだろうその少女......いや幼女と一緒に風呂に入った俺の心は罪悪感でいっぱいだった。
「犯罪じゃねぇかよ......タッチしちゃったよ......」
「どうしたの? あくぎゃくひどう? のだんじょんますたー? さん!」
いやいつ聞いたしそれ。十中八九というよりもう確定であの二人だろう。ここまで魔の手が伸びていたか......俺が魔の手なのだが。
「それは忘れること! いいか?」
あくまで平静を装い、さっさと体を洗って、湯船につける。
鉄が錆びそうだが、気にしない、というより心の中はそんなこと気にしている余裕などない。
「あがるー」
「そうか、上がるか」
風呂から上げ、服を着せた。手錠を外して着せたが、特に抵抗する様子もなかった。
「こっち風呂終わったぞー、そっちはどうだー」
「答、こちらも今終わりました」
どうやら一件落着のようだ。
服を着せて、手錠をつけなおした様子の二人は、先ほどまでとは大きく違った。
やつれていた顔も少しだけましになった。髪もしっとりとして色気が出ているが、それで勘違いするような俺ではないことを俺自身が知っている。
「さて。それでは牢に戻れ」
普通、ここで反抗心のあるものはチャンスとばかりに抵抗するだろう。こちらとしてはここで抵抗するような不安要素の塊は排除したい。
「「わかりました」」
......ん? なんか従順になってる?
「答、私が教育しました」
「一体何があった!?」
その秘密の花園の出来事は、彼女らだけが知る。
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