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32話
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タカラside
キイチのお母さんが俺の手を引き、ソファに座らせると隣に座りゆっくりと話し始めた。
「タカラくん……実はキイチね?イオリくんとの記憶だけがないみたいなの…」
T「え……」
「他の記憶には問題ないみたいなんだけどね。実はね…事故の前、キイチはイオリくんとの関係ですごい悩んでて苦しんでたの…私も詳しくは知らないんだけどね…お医者さんも今はストレスを避けた方がいいって言われたから…しばらくはイオリくんの話は避けてもらえるかな…」
キイチのお母さんは申し訳なさそうな顔をしてそう言った。
キイチがイオリの事ですごく悩んでいたなんて知らなかった。
毎朝、方向が違うにも関わらず一緒に通学したりしていて、少なくともキイチの立場から見てみれば2人は順調に交際していたようにみえた。
まさか、キイチはイオリが本当はミズキのことを好きという事実を知ってしまい苦しんでいたのだろうか。
キイチが苦しむほど恋をして悩んでいた相手のイオリ。
なのに無責任なイオリはキイチの気持ちも考えず、キイチが重体になった途端に態度を急変させ別れるなんて勝手に言っていた。
もし、キイチが記憶を取り戻しそんなイオリの事を知ってしまったらさらに心を痛め傷つき苦しむだろう…
そう思うと俺はイオリに嫉妬して息が止まりそうだった。
T「分かりました…イオリの話はしません。実はイオリはもうすぐ遠くに行くことになってて…」
この頃には両親の離婚が決まり、イオリは退院後そのまま母ちゃんの実家に母ちゃんと行くことが決まっていた。
「そうなの?」
T「両親が離婚することになって。もし、キイチがイオリのことを忘れてるならもう、何も言わずにいます…」
「ごめんなさいね…」
T「いえ…そうしてください。謝るのは俺たちの方なんですから…」
そうして俺たちは家族や幼なじみを含めたみんなで口裏を合わせて、キイチを刺激しないようにイオリがこの世に存在しなかったことにした。
キイチは目覚めてから驚くほどの回復力を発揮し、本当にイオリの記憶以外はなんの問題もなく、順調に回復していったように見えた。
俺とキイチの仲も目に見えない溝があったのが嘘だったかのように、仲が良かったあの頃の2人に完全に戻っていった。
イオリが退院すると母ちゃんはあっさりと俺と父ちゃんに別れを告げ、イオリは精神が病んでしまったようで薬の影響でぼんやりとしたまま俺たちは別れの言葉を交わした。
俺と父ちゃんの二人暮らしはなんの不自由もなく、それまでの生活が嘘だったかのようにとても居心地のいい高校生活を送り、俺は高校を無事卒業させてもらった。
つづく
キイチのお母さんが俺の手を引き、ソファに座らせると隣に座りゆっくりと話し始めた。
「タカラくん……実はキイチね?イオリくんとの記憶だけがないみたいなの…」
T「え……」
「他の記憶には問題ないみたいなんだけどね。実はね…事故の前、キイチはイオリくんとの関係ですごい悩んでて苦しんでたの…私も詳しくは知らないんだけどね…お医者さんも今はストレスを避けた方がいいって言われたから…しばらくはイオリくんの話は避けてもらえるかな…」
キイチのお母さんは申し訳なさそうな顔をしてそう言った。
キイチがイオリの事ですごく悩んでいたなんて知らなかった。
毎朝、方向が違うにも関わらず一緒に通学したりしていて、少なくともキイチの立場から見てみれば2人は順調に交際していたようにみえた。
まさか、キイチはイオリが本当はミズキのことを好きという事実を知ってしまい苦しんでいたのだろうか。
キイチが苦しむほど恋をして悩んでいた相手のイオリ。
なのに無責任なイオリはキイチの気持ちも考えず、キイチが重体になった途端に態度を急変させ別れるなんて勝手に言っていた。
もし、キイチが記憶を取り戻しそんなイオリの事を知ってしまったらさらに心を痛め傷つき苦しむだろう…
そう思うと俺はイオリに嫉妬して息が止まりそうだった。
T「分かりました…イオリの話はしません。実はイオリはもうすぐ遠くに行くことになってて…」
この頃には両親の離婚が決まり、イオリは退院後そのまま母ちゃんの実家に母ちゃんと行くことが決まっていた。
「そうなの?」
T「両親が離婚することになって。もし、キイチがイオリのことを忘れてるならもう、何も言わずにいます…」
「ごめんなさいね…」
T「いえ…そうしてください。謝るのは俺たちの方なんですから…」
そうして俺たちは家族や幼なじみを含めたみんなで口裏を合わせて、キイチを刺激しないようにイオリがこの世に存在しなかったことにした。
キイチは目覚めてから驚くほどの回復力を発揮し、本当にイオリの記憶以外はなんの問題もなく、順調に回復していったように見えた。
俺とキイチの仲も目に見えない溝があったのが嘘だったかのように、仲が良かったあの頃の2人に完全に戻っていった。
イオリが退院すると母ちゃんはあっさりと俺と父ちゃんに別れを告げ、イオリは精神が病んでしまったようで薬の影響でぼんやりとしたまま俺たちは別れの言葉を交わした。
俺と父ちゃんの二人暮らしはなんの不自由もなく、それまでの生活が嘘だったかのようにとても居心地のいい高校生活を送り、俺は高校を無事卒業させてもらった。
つづく
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