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ルガードと会話をしてから数日。リューイの頭の中には、未だに後継ぎという言葉が残っていた。
やっぱり、ルヴァインに俺は重荷なのかな……。
そんなことまで考えてしまう。
でも、彼はそんなことはないと言ってくれた。自分がいればいいと言ってくれた。
頭を振り、先程までの暗い考えを振り払う。
買い物も済ませたことだし、さっさと帰ろう。
そう思い、来た道を戻りだす。
「ん?」
昨日まではなかった露店が一件増えていた。人だかりが多いその店から、芳しい香りが漂って来ている。そっと人だかりを移動し掻き分け、露店に並べられた品物を見る。
見たこともない果物のドライフルーツや穀物が売られているその店は、何ともいい香りがした。鼻腔を擽る甘い果物の香りに、思わずうっとりしてしまう。
「いらっしゃい。何をお求めだい?」
その声に顔を上げると、見目麗しい青年が微笑んでいた。髪は白髪、目は薄い灰色。肩甲骨辺りまで伸ばされた髪を軽く結んだ青年は、並べられた品物を指さし、再びにこやかに微笑む。
「おススメはインジルのドライフルーツかな。試食してみるかい?」
営業スマイルが眩しい青年だ。周りの客がほぼ女性なのも頷ける。
リューイは差し出されたインジルというドライフルーツを受け取り、匂いを嗅ぐ。仄かに甘い匂いがするそれは、見た目は少々変な見た目だが……恐る恐る口に放り込んだ。
「っ!」
口の中いっぱいに広がった甘さに、目を見開く。噛めば噛むほど果物独自の甘さが口の中いっぱいに広がり、美味しさが長続きする。ゆっくり口の中で嚙み千切り、小さくして飲み込んでいった。
「うまいな、これ!」
「でしょ?」
リューイは口の端をぺろりと舐め、残った風味も堪能する。
うん、これ美味い。ルヴァイン達にも食わせてやりたい。
「さっきの、五人分くれ」
「まいどあり。嬉しいよ」
営業スマイルと言えども、破壊力抜群の笑顔だ。リューイの周りにいた女性客がほう、と息を吐いている。
「君は獣人かい?」
突然そう切り出され、リューイは「そんなところだ」と答える。する彼は、嬉しそうに微笑んだ。
「僕も獣人なんだ。狼のね。この街は他の街よりも獣人が多いと聞いていたけど、こんなに早く仲間に会えるなんて嬉しいよ」
「そっか……俺はリューイ。お前は?」
「僕はスレイだ。宜しく、リューイ」
手を差し出され、その手を握り握手を交わす。
それが、スレイとの出会いだった。
夕飯、出されたデザートにルヴァインは首を傾げた。
「なんだ。これは……」
パウンドケーキの中に入った果物を見て、リューイとテーブルの上のデザートを交互に見比べる。
そんなルヴァインに、リューイは微笑みながら「食ってみろよ」と声を掛けた。
「……頂こう」
フォークを手に取り、パウンドケーキを小さく掬う。
ルヴァインが口に入れる姿をじっと見ながら、リューイはにこにこと笑顔を向ける。
その表情を見つめながら、ルヴァインはケーキを口に含んだ。
「……うまいな」
「だろ! 今日から店だしたばっかの露店で買ったんだよ」
ルヴァインの言葉に、リューイは満面の笑みで話す。
ルヴァインはそんなリューイを見ながら、小さく口角を上げた。
「こんな果物は見たことはなかったな」
「なんでも、専用の伝手を使って遠くの街から仕入れてるらしいぜ。インジルって言うらしい」
「ほう……」
説明を聞きつつケーキを食べ続けるルヴァインを見て、リューイは笑みを浮かべる。
彼も気に入ってくれて良かった。
そんなことを思いながら、リューイもジェニス特製のパウンドケーキを口に運んだ。
やっぱり、ルヴァインに俺は重荷なのかな……。
そんなことまで考えてしまう。
でも、彼はそんなことはないと言ってくれた。自分がいればいいと言ってくれた。
頭を振り、先程までの暗い考えを振り払う。
買い物も済ませたことだし、さっさと帰ろう。
そう思い、来た道を戻りだす。
「ん?」
昨日まではなかった露店が一件増えていた。人だかりが多いその店から、芳しい香りが漂って来ている。そっと人だかりを移動し掻き分け、露店に並べられた品物を見る。
見たこともない果物のドライフルーツや穀物が売られているその店は、何ともいい香りがした。鼻腔を擽る甘い果物の香りに、思わずうっとりしてしまう。
「いらっしゃい。何をお求めだい?」
その声に顔を上げると、見目麗しい青年が微笑んでいた。髪は白髪、目は薄い灰色。肩甲骨辺りまで伸ばされた髪を軽く結んだ青年は、並べられた品物を指さし、再びにこやかに微笑む。
「おススメはインジルのドライフルーツかな。試食してみるかい?」
営業スマイルが眩しい青年だ。周りの客がほぼ女性なのも頷ける。
リューイは差し出されたインジルというドライフルーツを受け取り、匂いを嗅ぐ。仄かに甘い匂いがするそれは、見た目は少々変な見た目だが……恐る恐る口に放り込んだ。
「っ!」
口の中いっぱいに広がった甘さに、目を見開く。噛めば噛むほど果物独自の甘さが口の中いっぱいに広がり、美味しさが長続きする。ゆっくり口の中で嚙み千切り、小さくして飲み込んでいった。
「うまいな、これ!」
「でしょ?」
リューイは口の端をぺろりと舐め、残った風味も堪能する。
うん、これ美味い。ルヴァイン達にも食わせてやりたい。
「さっきの、五人分くれ」
「まいどあり。嬉しいよ」
営業スマイルと言えども、破壊力抜群の笑顔だ。リューイの周りにいた女性客がほう、と息を吐いている。
「君は獣人かい?」
突然そう切り出され、リューイは「そんなところだ」と答える。する彼は、嬉しそうに微笑んだ。
「僕も獣人なんだ。狼のね。この街は他の街よりも獣人が多いと聞いていたけど、こんなに早く仲間に会えるなんて嬉しいよ」
「そっか……俺はリューイ。お前は?」
「僕はスレイだ。宜しく、リューイ」
手を差し出され、その手を握り握手を交わす。
それが、スレイとの出会いだった。
夕飯、出されたデザートにルヴァインは首を傾げた。
「なんだ。これは……」
パウンドケーキの中に入った果物を見て、リューイとテーブルの上のデザートを交互に見比べる。
そんなルヴァインに、リューイは微笑みながら「食ってみろよ」と声を掛けた。
「……頂こう」
フォークを手に取り、パウンドケーキを小さく掬う。
ルヴァインが口に入れる姿をじっと見ながら、リューイはにこにこと笑顔を向ける。
その表情を見つめながら、ルヴァインはケーキを口に含んだ。
「……うまいな」
「だろ! 今日から店だしたばっかの露店で買ったんだよ」
ルヴァインの言葉に、リューイは満面の笑みで話す。
ルヴァインはそんなリューイを見ながら、小さく口角を上げた。
「こんな果物は見たことはなかったな」
「なんでも、専用の伝手を使って遠くの街から仕入れてるらしいぜ。インジルって言うらしい」
「ほう……」
説明を聞きつつケーキを食べ続けるルヴァインを見て、リューイは笑みを浮かべる。
彼も気に入ってくれて良かった。
そんなことを思いながら、リューイもジェニス特製のパウンドケーキを口に運んだ。
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