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久方ぶりの外出は、念のためと言うこともありガルス同伴で買い物になった。買うのはジェニスに頼まれた食材。久方ぶりの外出が楽しみだったリューイは、柄にもなく口元がにやついてしまっていた。
「では、行きましょうか。リューイ様」
「おう」
フードを被り、なるべく顔が見えないようにしておく。ガルスと二人、屋敷の外に出て敷地の出入口である門の側まで近づいた。側にいた長身のフットマンにガルスが「買い物です」と告げると、フットマンが門を開けてくれた。見た目からしても頑強そうな門を簡単に開ける辺り、彼も獣人なのだろう。
視線を向けていると、小さく微笑まれた。「いってらっしゃい」と挨拶され、目を瞬かせる。見ず知らずの居候に対してこんなにも爽やかな笑みで挨拶をされるとは思ってもいなかったリューイは、取り敢えず会釈し、その場から急いで立ち去った。
「彼はフットマンのアランです。爽やかな好青年ですよ」
ガルスが簡単に自己紹介してくれる。
確かに、自分みたいなみたいな屋敷の人間でない奴にも笑顔で挨拶をしてくれるのだ。好青年なのだろう。
そうした他愛もない話をしながら、街の大通りに出た。土木作業を営んでいた親方の所で日雇いの仕事をしている時も思っていたが、この街の大通りは賑やかだ。また、豊富な食材がずらりと並んでいるのも魅力的だった。
「まずは、頼まれた食材の買い出しをしましょう」
「まずは?」
ガルスの言い方に何か含みを感じたリューイは、首を傾げた。だが、ガルスはにこやかに微笑むだけで何も言わなかった。仕方なく、メモに書かれた食材の手に入る店に入っていく。目当ての食材を見つけると、鮮度の良い食材の見分け方のコツなどを教えて貰いながら買い物を済ませていった。
買い物を済ませ、肩に掛けた鞄には頼まれた食材がぎっしりと詰まった頃、ガルスは徐にリューイをある店に連れていった。
「へえ…」
そこは服飾店だった。ガルスは目当てのものを見つけると、リューイを側に呼んだ。
「さあ、お選びください」
「……なんだこれ?」
目の前にあるのは、何やら丸い布だった。ガルスを見上げると、彼は静かに微笑んだ。
「チョーカーというものです。首に付ける、アクセサリーのようなものになります」
「それを、俺に?」
陳列されているチョーカーとガルスを交互に見ながら、リューイは訊ねる。「はい」と答えるガルスは、たくさん陳列されているチョーカーの一つを手に取り、リューイの首元に当てた。
「旦那様が、リューイ様にプレゼントをと仰っていました」
ルヴァインが、俺に?
そう思いながら、並べられたチョーカーを見つめる。
「チョーカーでしたら、常にリューイ様でも付けられるかと思いまして」
「……そっか」
少々照れ臭い。
あのルヴァインが、自分にプレゼントをと思ってくれたのが嬉しい。
だが、果たして似合うだろうか。
「なあ、俺に似合うと思うか?」
単刀直入にガルスに訊ねる。するとガルスは、にこやかに「ええ」と答えながら幾つか手に取り、リューイに手渡した。
「私の偏見ですが、これらはリューイ様に似合うと思われますよ?」
そう言われ、リューイはガルスに向けていた視線を落とす。手渡された幾つかのチョーカーの中に、黒の細いレザーが編み込まれ、その先に小さな赤紫の石が吊るされたものが入っていた。ルヴァインの色だ。そう思った瞬間、自然とそれを手に取り、首に当ててみる。
「……変か?」
そう訊ねれば、ガルスはにこやかに微笑んだまま「お似合いですよ」と答えた。
結局、赤紫の石の付いたチョーカーを二つ買って貰い、帰路に着いた。早速チョーカーを付けてみると、意外にも付け心地も良かった。首の項付近にある留め具を嵌め、鏡で確認する。違和感もない。チョーカーの先から吊るされている赤紫も石を見て、思わず顔が綻んだ。
ルヴァインが帰ってきたのを聞き付け、渋々といった風に出迎えをする。勿論、チョーカーも付けてだ。
「……よう」
「……」
じっとリューイを見つめるルヴァイン。
何も言わず凝視されるのは気持ちの良いものではない。
「……何か言えよ」
結局いたたまれなくなり、リューイが言葉をかける。すると、ルヴァインはハッとしたような素振りをし、食堂に向かって歩きだした。その際、リューイの頭を優しく撫でていった。
「……似合っている」
その言葉に頬を赤らめ、リューイは慌てて食堂に向かいだしたルヴァインに振り替える。
「待てよ、置いていくなっ」
そう言葉をかけながら、ルヴァインの後を追い、食堂に向かった。
「では、行きましょうか。リューイ様」
「おう」
フードを被り、なるべく顔が見えないようにしておく。ガルスと二人、屋敷の外に出て敷地の出入口である門の側まで近づいた。側にいた長身のフットマンにガルスが「買い物です」と告げると、フットマンが門を開けてくれた。見た目からしても頑強そうな門を簡単に開ける辺り、彼も獣人なのだろう。
視線を向けていると、小さく微笑まれた。「いってらっしゃい」と挨拶され、目を瞬かせる。見ず知らずの居候に対してこんなにも爽やかな笑みで挨拶をされるとは思ってもいなかったリューイは、取り敢えず会釈し、その場から急いで立ち去った。
「彼はフットマンのアランです。爽やかな好青年ですよ」
ガルスが簡単に自己紹介してくれる。
確かに、自分みたいなみたいな屋敷の人間でない奴にも笑顔で挨拶をしてくれるのだ。好青年なのだろう。
そうした他愛もない話をしながら、街の大通りに出た。土木作業を営んでいた親方の所で日雇いの仕事をしている時も思っていたが、この街の大通りは賑やかだ。また、豊富な食材がずらりと並んでいるのも魅力的だった。
「まずは、頼まれた食材の買い出しをしましょう」
「まずは?」
ガルスの言い方に何か含みを感じたリューイは、首を傾げた。だが、ガルスはにこやかに微笑むだけで何も言わなかった。仕方なく、メモに書かれた食材の手に入る店に入っていく。目当ての食材を見つけると、鮮度の良い食材の見分け方のコツなどを教えて貰いながら買い物を済ませていった。
買い物を済ませ、肩に掛けた鞄には頼まれた食材がぎっしりと詰まった頃、ガルスは徐にリューイをある店に連れていった。
「へえ…」
そこは服飾店だった。ガルスは目当てのものを見つけると、リューイを側に呼んだ。
「さあ、お選びください」
「……なんだこれ?」
目の前にあるのは、何やら丸い布だった。ガルスを見上げると、彼は静かに微笑んだ。
「チョーカーというものです。首に付ける、アクセサリーのようなものになります」
「それを、俺に?」
陳列されているチョーカーとガルスを交互に見ながら、リューイは訊ねる。「はい」と答えるガルスは、たくさん陳列されているチョーカーの一つを手に取り、リューイの首元に当てた。
「旦那様が、リューイ様にプレゼントをと仰っていました」
ルヴァインが、俺に?
そう思いながら、並べられたチョーカーを見つめる。
「チョーカーでしたら、常にリューイ様でも付けられるかと思いまして」
「……そっか」
少々照れ臭い。
あのルヴァインが、自分にプレゼントをと思ってくれたのが嬉しい。
だが、果たして似合うだろうか。
「なあ、俺に似合うと思うか?」
単刀直入にガルスに訊ねる。するとガルスは、にこやかに「ええ」と答えながら幾つか手に取り、リューイに手渡した。
「私の偏見ですが、これらはリューイ様に似合うと思われますよ?」
そう言われ、リューイはガルスに向けていた視線を落とす。手渡された幾つかのチョーカーの中に、黒の細いレザーが編み込まれ、その先に小さな赤紫の石が吊るされたものが入っていた。ルヴァインの色だ。そう思った瞬間、自然とそれを手に取り、首に当ててみる。
「……変か?」
そう訊ねれば、ガルスはにこやかに微笑んだまま「お似合いですよ」と答えた。
結局、赤紫の石の付いたチョーカーを二つ買って貰い、帰路に着いた。早速チョーカーを付けてみると、意外にも付け心地も良かった。首の項付近にある留め具を嵌め、鏡で確認する。違和感もない。チョーカーの先から吊るされている赤紫も石を見て、思わず顔が綻んだ。
ルヴァインが帰ってきたのを聞き付け、渋々といった風に出迎えをする。勿論、チョーカーも付けてだ。
「……よう」
「……」
じっとリューイを見つめるルヴァイン。
何も言わず凝視されるのは気持ちの良いものではない。
「……何か言えよ」
結局いたたまれなくなり、リューイが言葉をかける。すると、ルヴァインはハッとしたような素振りをし、食堂に向かって歩きだした。その際、リューイの頭を優しく撫でていった。
「……似合っている」
その言葉に頬を赤らめ、リューイは慌てて食堂に向かいだしたルヴァインに振り替える。
「待てよ、置いていくなっ」
そう言葉をかけながら、ルヴァインの後を追い、食堂に向かった。
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