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ルヴァインのものとなったといっても、リューイの生活が急に様変わりするということはない。共に食事をし、昼間は仕事をこなすミアサと何気ない会話をしつつ時折手伝いをする。夕方に帰ってくるルヴァインと共に再び食事をし、部屋で休む。その繰り返しだ。
未だ屋敷の敷地の外には出ることは許されていないが、不便は感じていない。いや、不自由と言えば不自由だが、それも仕方ないのかと思っている。あれ程しつこかった賊たちだ。未だにこの街に潜伏しているのかもしれない。そう思えば、この不自由もやむを得ないと思えた。
「なあ、ミアサ」
何時ものように洗濯物を干すミアサの背中を見つめながら、テラスの手すりに凭れ掛かり話しかける。
「なんですか?」
「……その、さ……」
顔を俯きながら、言葉を探す。空になった籠を抱え、ミアサはリューイの元にやってくる。すぐ隣までやってきた彼女に、リューイは言葉を発した。
「その……いつになったら、自由になると思う?」
顔を上げ、ミアサと視線を交える。じっと見つめながら発したその言葉に、ミアサは口元に指を当て、考える素振りをした。「そうですね……」と言葉を発すると、ミアサはリューイに向かって微笑んだ。
「その言葉は、どういった意味での自由になりますか?」
「どうって……」
返された返答に、言葉を詰まらせる。確かに、自由と言っても多くの自由がある。肉体的な自由だったり、精神的な自由であったり。自分は、何方の意味で言ったのだろうか……?
「もし、お屋敷に不自由があるならば、旦那様に報告しましょう。お買い物程度ですが、私と一緒に行けるかもしれません。でも、精神的なものであったら……それはリューイ様、あなた様の感じるものになります」
そう、確かにそうだ。
リューイは悩み、再び顔を俯かせた。
肉体的な自由は、ミアサの言う通り、ルヴァインに頼めばどうとでもなる。だが、精神的な自由は?
「難しい回答をしてしまいましたか」
苦笑しながら、ミアサはリューイの頭を撫でる。母に撫でられた時のような温もりに、リューイは目を細めた。
「焦らなくていいと思いますよ? きっと、時間が解決してくれるものもあります」
「……そう、だな」
ミアサの言葉に、リューイは小さく頷いた。
今日、帰ってきたらルヴァインに外出の許可を聞いてみよう。
そう、思ったリューイだった。
夕方、何時も通りの時間に帰ってくるルヴァインを渋々といった風に出迎えるリューイ。ほぼ毎日そうしてる訳ではないが、今日は何となく、出迎えたい気分になった。
「……よう」
「ただいま」
出迎えるだけでも恥ずかしくて、「おかえり」の一言がどうしても言えない。だが、ルヴァインは気にすることもなく挨拶を返してくれる。それが嬉しくて、照れくさくて、リューイはそのまま何も言わず先に食堂に向かって行く。後ろからついて来るルヴァインの足音に嬉しさを噛み締めながら。
「なあ」
パンをちぎりながら、ルヴァインにチラリと視線を向ける。ルヴァインは「なんだ」とすぐに返事をし、リューイに視線を向けた。
「その……外に出てもいいか?」
その言葉を聞き、じっとこちらを見つめるルヴァインにリューイは慌てて弁解する。
「その、違くて……外出、してもいいかって話だよ」
「外出か……」
リューイの言葉に、暫し考えだすルヴァイン。
まだ、しつこくこの街に賊は居るのだろうか?
そう考えるリューイに、ルヴァインは言葉を発した。
「賊がまだ捕まっていない以上、一人では危険だが……ミアサやガルスと一緒なら大丈夫だろう」
まさかの反応に、リューイの目が輝きだす。目を瞬かせ、前のめりになる。
「本当か!」
「ただし、先程も言ったが、ミアサかガルスが同伴だ」
「ああ!」
久方ぶりの外出が出来ることが、こんなにも嬉しいとは思いもよらなかった。リューイは顔を綻ばせながら、パンを口に放り込んだ。嬉々として浮かれているリューイの視界の端では、ルヴァインが口角を上げていた。
未だ屋敷の敷地の外には出ることは許されていないが、不便は感じていない。いや、不自由と言えば不自由だが、それも仕方ないのかと思っている。あれ程しつこかった賊たちだ。未だにこの街に潜伏しているのかもしれない。そう思えば、この不自由もやむを得ないと思えた。
「なあ、ミアサ」
何時ものように洗濯物を干すミアサの背中を見つめながら、テラスの手すりに凭れ掛かり話しかける。
「なんですか?」
「……その、さ……」
顔を俯きながら、言葉を探す。空になった籠を抱え、ミアサはリューイの元にやってくる。すぐ隣までやってきた彼女に、リューイは言葉を発した。
「その……いつになったら、自由になると思う?」
顔を上げ、ミアサと視線を交える。じっと見つめながら発したその言葉に、ミアサは口元に指を当て、考える素振りをした。「そうですね……」と言葉を発すると、ミアサはリューイに向かって微笑んだ。
「その言葉は、どういった意味での自由になりますか?」
「どうって……」
返された返答に、言葉を詰まらせる。確かに、自由と言っても多くの自由がある。肉体的な自由だったり、精神的な自由であったり。自分は、何方の意味で言ったのだろうか……?
「もし、お屋敷に不自由があるならば、旦那様に報告しましょう。お買い物程度ですが、私と一緒に行けるかもしれません。でも、精神的なものであったら……それはリューイ様、あなた様の感じるものになります」
そう、確かにそうだ。
リューイは悩み、再び顔を俯かせた。
肉体的な自由は、ミアサの言う通り、ルヴァインに頼めばどうとでもなる。だが、精神的な自由は?
「難しい回答をしてしまいましたか」
苦笑しながら、ミアサはリューイの頭を撫でる。母に撫でられた時のような温もりに、リューイは目を細めた。
「焦らなくていいと思いますよ? きっと、時間が解決してくれるものもあります」
「……そう、だな」
ミアサの言葉に、リューイは小さく頷いた。
今日、帰ってきたらルヴァインに外出の許可を聞いてみよう。
そう、思ったリューイだった。
夕方、何時も通りの時間に帰ってくるルヴァインを渋々といった風に出迎えるリューイ。ほぼ毎日そうしてる訳ではないが、今日は何となく、出迎えたい気分になった。
「……よう」
「ただいま」
出迎えるだけでも恥ずかしくて、「おかえり」の一言がどうしても言えない。だが、ルヴァインは気にすることもなく挨拶を返してくれる。それが嬉しくて、照れくさくて、リューイはそのまま何も言わず先に食堂に向かって行く。後ろからついて来るルヴァインの足音に嬉しさを噛み締めながら。
「なあ」
パンをちぎりながら、ルヴァインにチラリと視線を向ける。ルヴァインは「なんだ」とすぐに返事をし、リューイに視線を向けた。
「その……外に出てもいいか?」
その言葉を聞き、じっとこちらを見つめるルヴァインにリューイは慌てて弁解する。
「その、違くて……外出、してもいいかって話だよ」
「外出か……」
リューイの言葉に、暫し考えだすルヴァイン。
まだ、しつこくこの街に賊は居るのだろうか?
そう考えるリューイに、ルヴァインは言葉を発した。
「賊がまだ捕まっていない以上、一人では危険だが……ミアサやガルスと一緒なら大丈夫だろう」
まさかの反応に、リューイの目が輝きだす。目を瞬かせ、前のめりになる。
「本当か!」
「ただし、先程も言ったが、ミアサかガルスが同伴だ」
「ああ!」
久方ぶりの外出が出来ることが、こんなにも嬉しいとは思いもよらなかった。リューイは顔を綻ばせながら、パンを口に放り込んだ。嬉々として浮かれているリューイの視界の端では、ルヴァインが口角を上げていた。
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