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第三十六章
監督答弁
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撮影の翌日と翌々日、金曜日と土曜日はあまりサッカードウ以外のイベントは無く、久しぶりに監督らしい仕事をして過ごせて幸せだった。何せ今週はアリスさんご両親と対面、記者会見、ニコルさんの演劇鑑賞、レジェンド選手達の撮影と監督以外の業務が多かったからね!
とは言えそれでチームが緩むという事も無かった。次の相手が宿敵ドワーフという事でエルフ達は自然と気合いが入っていたし、俺が他の用件で忙しくてもコーチ陣が抜かりなく指導する体勢は出来上がっていたからだ。特に後者については、生産がメインのサンドボックス型ゲームの終盤で自動化が完成した時みたいな感動がある。いやこれはゲーマーにしか通じない例えか。
それはそうと練習について。特に土曜日は朝から学生コンビが練習に参加できるので、午前午後と2部練習をかなりしっかりとやった。俺はドワーフ戦のポイントを3つ考えていてそれぞれ先制パンチ、密集戦、セットプレイとなるのだが、レイさんとポリンさんはその内ふたつに大いに関係あるからだ。
まず先制パンチ。どっしりと足場を固めたドワーフの守備を攻略するのは非常に困難だ。彼女らは身長のハンデこそあるものの、足腰とチームの一体感はとてつもなく強い。それにそんなチーム相手に攻め倦ねたら、ホームの大歓声が逆にプレッシャーになるかもしれない。
だからこそ早い段階で一撃、具体的に言えば開始早々に先制点を奪いたい。その為には試合が始まって少し経ちドワーフ達が落ち着く……前に初見殺しのレイさんをぶつけるつもりだ。
この『初見殺し』という言葉、実はここまでも何度か使っているがこちらもゲーム関連のワードだ。一般的には前提知識が無い、つまり初めて見た時だと回避防御できない攻撃をいきなりぶつけてくる敵、あるいはその行為を指す。
その意味で言えばレイさんは厳密には初見ではない。彼女の派手なプレイはハイライト映えするのでよく映像で流れているし、ドワーフのDFからしてもプレシーズンマッチで対戦済みである。
だが見るのとやるのは違う。しかもレイさんだって日々成長している。その天性と家庭環境により孤立していた天才少女は、アローズに加わる事で多くの事を学んでいるのだ。
ラビンさんの栄養管理のもと肉体を強化し、リーシャさんの攻撃姿勢を、ダリオさんの集中力を、シャマーさんの狡猾さを自分に取り入れていっている。天才肌の選手はしばしば怠け他者から学ぼうという姿勢が無かったりするが、レイさんにその心配は無用だった。
そんなニューレイさんを前にドワーフDFがどれだけきりきり舞いになるか……楽しみである。
もっとも、別の心配はあるのだけれど。クラブハウス食堂の栄養満点な食事を取り運動もしているレイさんの成長期の身体は、ほんとぉぉぉに成長した。悩ましい程に。学生コンビの身体データは学院から取り寄せたのだが、そのデータが見間違える余地のない程に現実を突きつけてきたのだ。詳細は彼女のプライバシーに配慮して伏せるけど。成長期の女性の身体だからね!
更に言うとレイさんは、俺的には望ましくない部分も吸収している。リーシャさんの我が儘さを、ダリオさんの色っぽい仕草を、シャマーさんの悪戯心を……。
これは非常に不味い。このまま進めばパーフェクトジオングの様な、
「僕が考えた最強の性悪娘」
の完成である。どこかで止めた方が良いかもしれない。
だが一方で、選手が自分の望むように成長することを期待し押しつけ過ぎるのは指導者失格だ。駄目な事は駄目と言わなければいけないが、理想を強制するのは違う。
俺はそんな考えに板挟みになりながら、次の練習の準備をしていた。
「なあなあ! ショーキチにいさん、とってー!」
レイさんのそんな声で俺は現実に戻った。
「何ですか? 芋けんぴか蝉でも髪についたんですか?」
俺はそう言いながら、準備していたヘッドバンドを駕籠の中に整頓していた。今は昼食後で、エルヴィレッジに降り注ぐ日差しも眩しい。体感気温で言えば日本の初夏くらいか。蝉みたいな虫もそろそろ出てくるだろう。
「髪やなくて、こっち~」
その声にようやく頭を上げると、レイさんの身体に数名の子エルフがしがみついている。それこそ木にたかる蝉の様に。それぞれ肩車されている子、足にしがみついている子、よりにもよって真正面から抱きつき胸に顔を埋めている子までいる。
「おおすげ! レイさん意外と力持ちですね……」
「弟や妹を抱っこしてきたからな! でも限界やわ~」
そう言えば初めて会った時もジョアちゃんを抱いていたな。あの時は誤解から冷たい眼で睨まれたが、今は甘えるような眼でこちらに訴えかけている。あれから随分、変わったなあ。
「じゃあこの子から。ほい、離れて」
「やーだー!」
俺は真正面の子の胴を掴んで受け取ろうとしたが、その子は首を振って拒否する。その動きであるモノがプルプルと揺れた。こちらもあれから随分と変わったなあ。
「あはは! くすぐったいって~!」
「わーい、柔らかーい! みんなも来いよー!」
レイさんは笑い少年は仲間に呼びかける。これはいけない。おねショタにおいて少年がイニシアチブをとったり仲間を呼ぶのは到底、許されない。あくまでもお姉さん主導でなければ!
しかしそれは身勝手な感想で……。
「お姉さんだショタだっつっても、これお前より全員年上なんじゃねえのか」
俺の脳内政治家数名がおねショタについて答弁を行っている所に、そんなツッコミが入って振り返った。
とは言えそれでチームが緩むという事も無かった。次の相手が宿敵ドワーフという事でエルフ達は自然と気合いが入っていたし、俺が他の用件で忙しくてもコーチ陣が抜かりなく指導する体勢は出来上がっていたからだ。特に後者については、生産がメインのサンドボックス型ゲームの終盤で自動化が完成した時みたいな感動がある。いやこれはゲーマーにしか通じない例えか。
それはそうと練習について。特に土曜日は朝から学生コンビが練習に参加できるので、午前午後と2部練習をかなりしっかりとやった。俺はドワーフ戦のポイントを3つ考えていてそれぞれ先制パンチ、密集戦、セットプレイとなるのだが、レイさんとポリンさんはその内ふたつに大いに関係あるからだ。
まず先制パンチ。どっしりと足場を固めたドワーフの守備を攻略するのは非常に困難だ。彼女らは身長のハンデこそあるものの、足腰とチームの一体感はとてつもなく強い。それにそんなチーム相手に攻め倦ねたら、ホームの大歓声が逆にプレッシャーになるかもしれない。
だからこそ早い段階で一撃、具体的に言えば開始早々に先制点を奪いたい。その為には試合が始まって少し経ちドワーフ達が落ち着く……前に初見殺しのレイさんをぶつけるつもりだ。
この『初見殺し』という言葉、実はここまでも何度か使っているがこちらもゲーム関連のワードだ。一般的には前提知識が無い、つまり初めて見た時だと回避防御できない攻撃をいきなりぶつけてくる敵、あるいはその行為を指す。
その意味で言えばレイさんは厳密には初見ではない。彼女の派手なプレイはハイライト映えするのでよく映像で流れているし、ドワーフのDFからしてもプレシーズンマッチで対戦済みである。
だが見るのとやるのは違う。しかもレイさんだって日々成長している。その天性と家庭環境により孤立していた天才少女は、アローズに加わる事で多くの事を学んでいるのだ。
ラビンさんの栄養管理のもと肉体を強化し、リーシャさんの攻撃姿勢を、ダリオさんの集中力を、シャマーさんの狡猾さを自分に取り入れていっている。天才肌の選手はしばしば怠け他者から学ぼうという姿勢が無かったりするが、レイさんにその心配は無用だった。
そんなニューレイさんを前にドワーフDFがどれだけきりきり舞いになるか……楽しみである。
もっとも、別の心配はあるのだけれど。クラブハウス食堂の栄養満点な食事を取り運動もしているレイさんの成長期の身体は、ほんとぉぉぉに成長した。悩ましい程に。学生コンビの身体データは学院から取り寄せたのだが、そのデータが見間違える余地のない程に現実を突きつけてきたのだ。詳細は彼女のプライバシーに配慮して伏せるけど。成長期の女性の身体だからね!
更に言うとレイさんは、俺的には望ましくない部分も吸収している。リーシャさんの我が儘さを、ダリオさんの色っぽい仕草を、シャマーさんの悪戯心を……。
これは非常に不味い。このまま進めばパーフェクトジオングの様な、
「僕が考えた最強の性悪娘」
の完成である。どこかで止めた方が良いかもしれない。
だが一方で、選手が自分の望むように成長することを期待し押しつけ過ぎるのは指導者失格だ。駄目な事は駄目と言わなければいけないが、理想を強制するのは違う。
俺はそんな考えに板挟みになりながら、次の練習の準備をしていた。
「なあなあ! ショーキチにいさん、とってー!」
レイさんのそんな声で俺は現実に戻った。
「何ですか? 芋けんぴか蝉でも髪についたんですか?」
俺はそう言いながら、準備していたヘッドバンドを駕籠の中に整頓していた。今は昼食後で、エルヴィレッジに降り注ぐ日差しも眩しい。体感気温で言えば日本の初夏くらいか。蝉みたいな虫もそろそろ出てくるだろう。
「髪やなくて、こっち~」
その声にようやく頭を上げると、レイさんの身体に数名の子エルフがしがみついている。それこそ木にたかる蝉の様に。それぞれ肩車されている子、足にしがみついている子、よりにもよって真正面から抱きつき胸に顔を埋めている子までいる。
「おおすげ! レイさん意外と力持ちですね……」
「弟や妹を抱っこしてきたからな! でも限界やわ~」
そう言えば初めて会った時もジョアちゃんを抱いていたな。あの時は誤解から冷たい眼で睨まれたが、今は甘えるような眼でこちらに訴えかけている。あれから随分、変わったなあ。
「じゃあこの子から。ほい、離れて」
「やーだー!」
俺は真正面の子の胴を掴んで受け取ろうとしたが、その子は首を振って拒否する。その動きであるモノがプルプルと揺れた。こちらもあれから随分と変わったなあ。
「あはは! くすぐったいって~!」
「わーい、柔らかーい! みんなも来いよー!」
レイさんは笑い少年は仲間に呼びかける。これはいけない。おねショタにおいて少年がイニシアチブをとったり仲間を呼ぶのは到底、許されない。あくまでもお姉さん主導でなければ!
しかしそれは身勝手な感想で……。
「お姉さんだショタだっつっても、これお前より全員年上なんじゃねえのか」
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