D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第二十八章

消防車は呼ぼう

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 試合は久しぶりにアローズの攻めの局面を迎えていた。起点はボナザさんのゴールキックだ。彼女がボールをセットするとDF陣はいつもの様にラインを上げた。GKのキックをハーピィが跳ね返しFWに繋いでも、ラインの向こうに残った選手がオフサイドになる状態にする為だ。
 しかしあのミノタウロス戦から数ヶ月経ちアローズがこのシステムで戦う事も5試合を越えた。その意図を十分に理解したハーピィチームのFWたちはオフサイドポジションに取り残されないよう、エルフ達のDFラインを追走した。
「お、追いかけっこですね!」
 ところが。アリスさんが興奮し、最近ではも単純にオフサイドが取りにくくなっているな……と俺が嘆く最中に、ルーナさんが反転して自陣ゴール方向へ戻りボナザさんはハーフエルフめがけて短いパスを送った。
『ぴよ?』
 スワッグがたまにやるみたいな感じで鳥乙女達が首を傾げる先で、ルーナさんは完全にフリーの状態でパスを受ける。
「ナイス! まあ贅沢言えば受ける前から半身になって前を向ける状態でトラップして欲しかったなあ」
 俺はだまし討ちの一つが上手く行って笑顔になるのを隠すように、敢えて厳しい事を言った。今のルーナさんはボールの軌道に対して真正面から、お臍を向けて受けに行った。フットサルであったり中央の選手であったりすればそれも一つの手だが、彼女のポジションであれば俺の言った様な受け方を覚えて欲しい所だ。
 てかルーナさんみたいに身体能力が高い選手はそういう所が雑になりがちなんだよなあ。
「そうするとどうなるんですか、ショーキチ先生?」
 アリスさんは実際に体を半身にして俺に向けて構えながら問う。
「相手のプレスを受けずに次のプレーへ移れるんですよ。あと背中で相手を防ぎながらだと選択肢も狭まりますけど、前を向けばパスもドリブルも全方向へ選べますし。って誰も来てませんけどね」
 悠長にそう解説できる程に、間があった。なんとハーピィチームの誰もルーナさんの元へ行っていないのである!
「ほんとだ! なんか独りで可哀想ですね」
 そういうのに敏感そうな学校の先生がぽつりと呟く。確かにアローズで唯一、人間の父親を持つエルフはぼっちであった。何故ならハーピィチームの誰もルーナさんの元へ行っていないのである!
「まあ可哀想なのはどっちだ? って話でもありますが」
 燃えさかる家をバックに消防車はまだか!? と叫ぶアフロの漫画を思い出して俺は言った。アレは傍観者効果によって火事を見ても誰も消防車を呼んでいない悲劇を描いたモノだが、それはサッカーにおいてもしばしば起こる。誰かがシュートブロックへ走っていれば、あの得点は防げたのに……みたいに。
 ましてここは異世界でいま行われているのはサッカードウ。アローズ以外で相手DFへ厚いプレスをかけるチームはぼぼいないし、ルーナさんの様な存在――ライナー性のボールを最後尾から最前線へ蹴り飛ばせる――をフリーにする危険性を認知している選手も監督も少ない。
 なので、ルーナさんは余裕をもってパスコースを探し俺の期待通りの事をした。つまり、エルフの繊細さと人間のパワーを持った左足を振り抜き、弾丸シュートの様なパスを前線へ送ったのだ。

「うわ、避けて!」
 心優しい教師が届くはずのない助言を送る。だが彼女が心配するまでもなく、ルーナさんのレーザービームの様なパスに触れられるハーピィはいなかった。
 鳥乙女たちは空中戦が得意だ。誰かが宙へ蹴り上げたボールを自身も宙へ飛び上がりながらトラップし、落下する前にまたパスする事さえできる。だからもし、ルーナさんのキックの弾道が山形の――モンテディオではない。やまなり、中央が高い緩やかな曲線の形だ――ものであれば、彼女らの誰かがパスカットに成功しただろう。ちょうど練習で俺が手を使ってキャッチしたみたいに。
 しかし彼女が蹴ったボールは僅かな高度と凄い速度でフィールドを横切った。それでもなんとか触れようとしたハーピィDFの足の羽毛を吹き飛ばすほどの勢いで。
 それほどのパスは、やはり受け手を選ぶものだ。ティアさんはいける。何故か仲の良い逆サイドのSBは、ルーナさんのパスの癖を知っている。しかし彼女はまだDFラインにいる。レイさんもいける。あのファンタジスタは魔法の様に回転をかけて、暴れ馬の様なパスを手懐けてしまう。だが彼女は交代で下がっている。
 では誰がそのボールを受けたのか? それは自分が脚光を浴びる瞬間を虎視眈々と狙っているあのエルフ娘であった。

『待ってたよーっ!』
 エオンさんは余裕でルーナさんの殺人パスを太股の外側でトラップし、足下へ落とした。
『そうじゃない! むしろ……お待たせみんなーっ!』
 いや余裕でトラップしたどころではない。メインスタンドに自分のレプリカユニフォームを着たファンか自分向けの旗でも見つけたのか、そちらを向いて手を振る。
『どこを見てる……? あっ!』
 その様子を見たハーピィのSBがそちらを向き、直後に横をすり抜けられバランスを崩す。
「ああ、ホーム限定の『あっちむいてホイ』か」
 俺も騙された今の動きは特訓中の視線を利用したフェイントだったのだ。ゴールや対面するDFとは90度以上違う方向へ目をやって相手の集中が切れた瞬間にドリブルで抜き去る。なまじ首の稼働域が広いハーピィだけに見てしまったのだろう。
『本当のアイドル……見せてあげるっ!』
 エオンさんはそこから加速し、単純なスピードでカバーにきたCBをぶち抜いた。彼女は選手としてはリーシャさんとレイさんの間くらいにいる。背番号11並のスピードと、14に匹敵するテクニックを持っているのだ。
「あとはGK……!」
 俺は祈るように両手を併せて呟く。抜群の才能を持つがボールを貰う為の動きをあまりしないアタッカーは、逆にその分ゴールに近い位置にいた。SBとCBを外すだけでもうゴール前GKと一対一だ。
「いけーっ!」
 アリスさんは俺と対照的に飛び上がって叫ぶ。他にも何百名何千名の観衆の声を背に、エオンさんは右足を振った。
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