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第八章
距離を詰めるのは徐々にで
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城についた俺たちは前以上に様々な種族で溢れるエルフサッカードウ協会の本部を歩き、ダリオさんが待つであろう会長室を目指していた。
確か受付ができてたよな、と思い出しながら廊下の角を曲がると、なんとダリオさんが受付ドアの横の壁にもたれながら待っている。
「あ、ダリオさん!」
「ショウキチ殿! それにみなさん! ごめんなさい、会長室では面接の人数が入りきらないので別の部屋を会場にするんです。早速ですがこちらへ来て貰えますか?」
そう言うとダリオさんは殆ど足音を立てず優雅に歩き出す。ちなみに服装はサッカードウ協会で仕事する時はお馴染みとなったジャケットとスカートだ。
「あ、はい! 了解です。行くよ、みんな」
俺はダリオさんに返事しステフたちを誘導する。振り向いて見たところリストさんとレイさんの目は以前のようにダリオさんの腰付近に集中していた。
「(ダリオ姫さん、ちょっとスッキリになってへん?)」
「(きっと忙しくてお痩せになったのでござる。おいたわしや……)」
「(君ら毎度毎度、ダリオさんのスタイルを品評すんな!)」
こちらは相変わらずで頭が痛い。忙しいのに廊下でわざわざ俺たちを待ってくれてたダリオさんの苦労と気遣いの半分でも見習って欲しい。
「なあ、ショーキチ?」
歩きながら小声でツッコミを入れていると、やや浮かない顔のステフが俺に聞いてきた。
「地球の映画でさ。アル・パチーノとジョニー・デップが共演してたマフィアもののヤツがあったよな?」
「ああ。あったけど?」
なんだよ唐突に。
「知ってたか、オーケー。確信がついたらまた言うわ」
よく分からんがつくづくハリウッド映画が好きなエルフだな。俺は腑に落ちないまま、目的の部屋らしい所についたダリオさんに続いてドアをくぐった。
その部屋はフットサルコートくらいにだた広くて、机も椅子もなく窓にカーテンが引かれて薄暗かった。
「あら? 用意をお願いしていたのに……手違いかしら?」
ダリオさんがキョロキョロと辺りを見渡しながら腕を組む。僅かに胸が盛り上がったが、確かにいつも程の迫力が無いような気がする。
「みなさん、申し訳ないけど倉庫から椅子を六脚ほど持ってきてくれますか? 私とショウキチ殿は残って打ち合わせと、早くに来てしまうかもしれない面接希望者の対応をします」
「御意!」
ダリオさんがそう指示するとリストさんがビシっ! と敬礼を決めて廊下へ戻った。
「はーい。ってリストねえさん倉庫の位置知ってんの?」
闇雲に走り出しそうなリストさんを追ってレイさんも部屋を出る。
「……ステフ? どうした?」
ただステフだけがまだ部屋の入り口に立っていた。意外な事にキリっとした顔で。確か確信がどうとか言ってたが。
「(ダリオはジョニデだ)」
「え? なに?」
「どうしました?」
小声でよく分からない事を囁くステフと困惑する俺に、ダリオさんが気にかけて声をかける。
「うんにゃ。なんでもない。ふぉあげっとあばうといっと! あたしも行くわ」
ステフはそう言うと軽くウインクして部屋を出る。
「なんだアイツ?」
「どうしたのでしょう?」
ダリオさんはそう言いながら部屋から半身を乗り出してステフを見送った後、ドアを閉める。
『ふぉあげっとあばうといっと』か。直訳すると『忘れろ』て感じだが意訳だと『気にするな』とかそういう意味だよな。変な事を言ったが気にするな、って事か?
「さて」
そしてガチャリと鍵をかけてダリオさんが言った。
「二人きりになったところで、ショウキチ殿に改めて聞きたい事があります」
「はい?」
そう言い放ったダリオさんは怪しい雰囲気で音もなく俺に歩み寄ってくる。なんとなくその雰囲気に押されて、俺は壁際まで後退した。
「ショウキチ殿はレイさんの事を一人のサッカー選手としてちゃんと見てらっしゃる? それとも恋人候補として?」
「なっ!?」
問いつつ俺を部屋の端に追いつめたダリオさんは、ドスン! と右腕を俺の頭上の壁に押しつけた。
「サッカー選手として真剣に育てる気があるなら構いません。しかし恋人候補として考えてるなら、それはおよしになって。代わりに……」
左手の人差し指ですぅ、と俺の首から顎をなぞり上げる。
「私を選んで下さい。貴方が『抱きたい』と言うなら、何時だって応える準備はあります」
「えっ!? いや、俺は……」
ちょっと待てこれはどういう状況だ?
「俺は?」
「……レイさんを恋人候補だなんて考えてもいません! それはダリオさんもです!」
俺が叫ぶように応えると、ダリオさんは指を俺の頸動脈に当てて更に訊ねる。
「それは本心ですか?」
「本心です!」
ダリオさんは見た事も無い様な真剣な表情で問う。俺を壁に押しつける仕草も相まってハリウッド・スターばりのイケメンだ。そう、ジョニデの様な。
ん? ジョニー・デップ?
「ではサッカー選手としてちゃんと育成するプランがあると?」
「はい。レイさんだけでなく、アローズみんなを一流のサッカードウ選手として……」
そう口にしながら急に色んな事が頭の中で繋がりつつあった。少し痩せたダリオさん、ステフが言っていたジョニー・デップの映画のタイトルとその役柄、サッカー選手……。
「そうですか。でも安心したいんです、少しで良いですから、そのプランを具体的に教えて貰えますか?」
「あーすみませんがそれはできかねます。部外者にはね」
俺はダリオさんの後ろに見えた風景に勇気を貰って拒絶した。
「えっ? 私は……」
「逆にこちらが聞きたいよな? お前、ここから脱出するプランはあるのか?」
「えっ!? 嘘!?」
ダリオさんは慌てて振り向く。そこにはこちらもまた音を立てずにドアを開き、すぐ側に仁王立ちになったステフの姿があった。
「ショウキチ殿! ご無事ですか!?」
ステフの更に後ろにはレイさん、リストさん、そして……心配そうにこちらを見つめるもう一名のダリオさんの姿もあった。
確か受付ができてたよな、と思い出しながら廊下の角を曲がると、なんとダリオさんが受付ドアの横の壁にもたれながら待っている。
「あ、ダリオさん!」
「ショウキチ殿! それにみなさん! ごめんなさい、会長室では面接の人数が入りきらないので別の部屋を会場にするんです。早速ですがこちらへ来て貰えますか?」
そう言うとダリオさんは殆ど足音を立てず優雅に歩き出す。ちなみに服装はサッカードウ協会で仕事する時はお馴染みとなったジャケットとスカートだ。
「あ、はい! 了解です。行くよ、みんな」
俺はダリオさんに返事しステフたちを誘導する。振り向いて見たところリストさんとレイさんの目は以前のようにダリオさんの腰付近に集中していた。
「(ダリオ姫さん、ちょっとスッキリになってへん?)」
「(きっと忙しくてお痩せになったのでござる。おいたわしや……)」
「(君ら毎度毎度、ダリオさんのスタイルを品評すんな!)」
こちらは相変わらずで頭が痛い。忙しいのに廊下でわざわざ俺たちを待ってくれてたダリオさんの苦労と気遣いの半分でも見習って欲しい。
「なあ、ショーキチ?」
歩きながら小声でツッコミを入れていると、やや浮かない顔のステフが俺に聞いてきた。
「地球の映画でさ。アル・パチーノとジョニー・デップが共演してたマフィアもののヤツがあったよな?」
「ああ。あったけど?」
なんだよ唐突に。
「知ってたか、オーケー。確信がついたらまた言うわ」
よく分からんがつくづくハリウッド映画が好きなエルフだな。俺は腑に落ちないまま、目的の部屋らしい所についたダリオさんに続いてドアをくぐった。
その部屋はフットサルコートくらいにだた広くて、机も椅子もなく窓にカーテンが引かれて薄暗かった。
「あら? 用意をお願いしていたのに……手違いかしら?」
ダリオさんがキョロキョロと辺りを見渡しながら腕を組む。僅かに胸が盛り上がったが、確かにいつも程の迫力が無いような気がする。
「みなさん、申し訳ないけど倉庫から椅子を六脚ほど持ってきてくれますか? 私とショウキチ殿は残って打ち合わせと、早くに来てしまうかもしれない面接希望者の対応をします」
「御意!」
ダリオさんがそう指示するとリストさんがビシっ! と敬礼を決めて廊下へ戻った。
「はーい。ってリストねえさん倉庫の位置知ってんの?」
闇雲に走り出しそうなリストさんを追ってレイさんも部屋を出る。
「……ステフ? どうした?」
ただステフだけがまだ部屋の入り口に立っていた。意外な事にキリっとした顔で。確か確信がどうとか言ってたが。
「(ダリオはジョニデだ)」
「え? なに?」
「どうしました?」
小声でよく分からない事を囁くステフと困惑する俺に、ダリオさんが気にかけて声をかける。
「うんにゃ。なんでもない。ふぉあげっとあばうといっと! あたしも行くわ」
ステフはそう言うと軽くウインクして部屋を出る。
「なんだアイツ?」
「どうしたのでしょう?」
ダリオさんはそう言いながら部屋から半身を乗り出してステフを見送った後、ドアを閉める。
『ふぉあげっとあばうといっと』か。直訳すると『忘れろ』て感じだが意訳だと『気にするな』とかそういう意味だよな。変な事を言ったが気にするな、って事か?
「さて」
そしてガチャリと鍵をかけてダリオさんが言った。
「二人きりになったところで、ショウキチ殿に改めて聞きたい事があります」
「はい?」
そう言い放ったダリオさんは怪しい雰囲気で音もなく俺に歩み寄ってくる。なんとなくその雰囲気に押されて、俺は壁際まで後退した。
「ショウキチ殿はレイさんの事を一人のサッカー選手としてちゃんと見てらっしゃる? それとも恋人候補として?」
「なっ!?」
問いつつ俺を部屋の端に追いつめたダリオさんは、ドスン! と右腕を俺の頭上の壁に押しつけた。
「サッカー選手として真剣に育てる気があるなら構いません。しかし恋人候補として考えてるなら、それはおよしになって。代わりに……」
左手の人差し指ですぅ、と俺の首から顎をなぞり上げる。
「私を選んで下さい。貴方が『抱きたい』と言うなら、何時だって応える準備はあります」
「えっ!? いや、俺は……」
ちょっと待てこれはどういう状況だ?
「俺は?」
「……レイさんを恋人候補だなんて考えてもいません! それはダリオさんもです!」
俺が叫ぶように応えると、ダリオさんは指を俺の頸動脈に当てて更に訊ねる。
「それは本心ですか?」
「本心です!」
ダリオさんは見た事も無い様な真剣な表情で問う。俺を壁に押しつける仕草も相まってハリウッド・スターばりのイケメンだ。そう、ジョニデの様な。
ん? ジョニー・デップ?
「ではサッカー選手としてちゃんと育成するプランがあると?」
「はい。レイさんだけでなく、アローズみんなを一流のサッカードウ選手として……」
そう口にしながら急に色んな事が頭の中で繋がりつつあった。少し痩せたダリオさん、ステフが言っていたジョニー・デップの映画のタイトルとその役柄、サッカー選手……。
「そうですか。でも安心したいんです、少しで良いですから、そのプランを具体的に教えて貰えますか?」
「あーすみませんがそれはできかねます。部外者にはね」
俺はダリオさんの後ろに見えた風景に勇気を貰って拒絶した。
「えっ? 私は……」
「逆にこちらが聞きたいよな? お前、ここから脱出するプランはあるのか?」
「えっ!? 嘘!?」
ダリオさんは慌てて振り向く。そこにはこちらもまた音を立てずにドアを開き、すぐ側に仁王立ちになったステフの姿があった。
「ショウキチ殿! ご無事ですか!?」
ステフの更に後ろにはレイさん、リストさん、そして……心配そうにこちらを見つめるもう一名のダリオさんの姿もあった。
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