D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗

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第八章

馬脚を露した蛇

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「な! いつの間に!?」
「割と初めから。ただショーキチが騙されてブチューとしないかな? って期待してここまで待ってただけだ」
「せんわ!」
 俺がツッコムとダリオさん……いや、ニセダリオさんが慌ててステフの背後を指さし叫ぶ。
「ショウキチ殿、騙されないで! あちらこそ偽物です!」
「いやいや」
「ないわ~」
 リストさんとレイさんが苦笑しながら否定する。
「どうして!?」
「諦めきれんか? じゃあおいで」
 そう言いながらステフが両方のダリオさんを手招きする。片方はニコニコ顔のリストさんに背を押されて、片方は俺から離れつつ部屋の真ん中へ歩み寄る。
「「「ほら、ボリュームがぜんぜん違う!」」」
 ステフ、リストさんレイさんが嬉しそうに声を重ねて言った。
「もう、あなたたち……」
「そんな部分で!?」」
 上品な顔を赤らめて恥じらうダリオさんと、膝から崩れるニセダリオさん。確かに並べられると出るところは出て引っ込むところは引っ込む本物のダリオさんの優勝だった。更にそのボディを敢えて機能性重視色気の無いの軍用品に押し込むというアイデア。隠すからこそ出るエロス。悔しいがクラマさんは天才変態紳士だ。
「いや、俺は違う部分が切っ掛けですよ。ステフがヒント……というか答えそのものを教えてくれていたのもありますが」
 ステフが言ってたジョニー・デップとアル・パチーノのマフィアものの映画、タイトルは『フェイク』でジョニデの役割は潜入捜査官だ。つまりあの時のダリオさんは偽物(フェイク)で潜入捜査官だと教えたかったのだ。因みに『ふぉあげっとあばうといっと』は映画の中に出てくる有名な台詞でもある。
「良いですか、この世界であのスポーツの事を『サッカードウ』と言わずに『サッカー』と呼ぶのは三者しかいません。俺、ナイトエルフ、あともう一つ」
 俺はニセダリオさんに慰める様に説明した。その隙にステフが座り込んだ彼女の頭をポン、と叩く。
「アナタ達、ゴルルグ族しか」

 ステフの得意技、魔法解除によって(恐らく)変装魔術が解け、ダリオさんと同じ服装の上に蛇そのものな頭部が姿を現した。まさにゴルルグ族だ。
「きゃ! あわわ……」
 俺に蛇の男女を見分ける能力はないが多分女性だろう、そのゴルルグ族さんはあたふたと両手で顔を隠そうとした。
「え? なんかすみません!」
 俺は女性が何かを隠そうとしている時の咄嗟の反応と、間近で蛇頭を見た衝撃とで思わず目を逸らして謝罪した。
「何を恥ずかしがってるん?」
「きっと蛇の目は素顔を見られた相手を殺すか……愛するしかない、とかあるのでござる!」
「やべえなショーキチまた彼女が増えるぞ!」
「あら? そんな話は聞きませんが……」
 同じ女性かつゴルルグ族を見慣れた四者は平然と話している。しかしそんな彼女らも、次に起きた現象には流石に驚いた。
「あーすみません、この子へんそー解けたら人前はダメなんすわ」
「うわっ!?」
「うそやん!」
「ダリオ姫、こちらへでござる!」
 何の前触れもなくゴルルグ族さんの左肩からもう一本? の蛇頭が生えてきて、俺たちに話しかけてきたのだ。レイさんリストさんはダリオさんを守る様に抱きつく。
「ええ!? あの、貴女は……?」
 ナイトエルフ二名から地味に体をまさぐられながら――守る様に、と考えたのは俺の希望的観測で、実際は彼女の身体を堪能する為の口実に過ぎないと思われる――も冷静にダリオさんが問う。
「あたしはアカリ。こいつはサオリです。サオリは潜入や変装担当、あたしが交渉や分析担当なんす」
 こちらの頭さんはなかなか度胸がある様だった。この場の全員を見渡しペコペコと頭を下げながら自己紹介? をする。
「アカリさん? では貴女がスカウティング希望で今日、面接予定の?」 
 ダリオさんは素早く脳内で面接資料と照らし合わせている様だ。
「はい。自己アピール代わりに潜入接近情報収集をやってみましたけど、ちょっと詰めが甘かったっすね。やっぱダスクエルフと地球からやってきていきなり監督しようって人間は甘くないっすわ」
 そう言いながらアカリさんは左手で自分の顔を掻いた。そっちの手はアカリさんに使用権? があるのか。
「いえ、たまたまですよ。噂に聞く『蛇の目』の実力は確かに見せて貰いました。でもどうしてそんな優秀な貴女……達がアローズに?」
「もっ、元はと言えばアンタのせいなんだからね!」
 俺の言葉が文字通り逆鱗に触れたのだろうか、右手だけで顔を隠していたサオリさんが急にその指をこちらに突きつけて大声を出す。
「えっ、あ、すみません!」
 なんか謝ってばかりだな俺。
「はいはい~どうどう」
 アカリさんの首が少し伸び、サオリさんの顔の前に回り込む。実に奇妙な状態だが、二つの頭があるとこんな風景も日常茶飯事なのだろうか?
「取り乱しちゃってすみません。この子、色々と思い入れがあって」
「その話は会議室の方で聞きましょうか? 面接の準備もしてありますから」
 ダリオさんがスマートに割り込んで移動と話し合いの提案を行った。相変わらず切り換えの早い女性だ。トランジション――サッカーで攻守の入れ替わる局面――でも活躍してくれそうだな。
「では、そちらで面接もやっちゃいましょう」
 俺がその提案にのると、アカリさんが嬉しそうな声を出す。
「え!? 面接して貰えるんですか? やったねサオリ!」
「ええっ!? あ……はい。あの、お願いします」
 それを聞いたサオリさんが急にトーンダウンした。人前が苦手と聞いたが、これは既に面接のプレッシャーを感じているな?
「あー面接官の人数多いけどそんなに緊張しないで。この子たちは参考程度だから」
「ああん?」
 ひぃ! 俺の言葉にサオリさんが睨みつけてくる! 折角フォローしたのに……怖い。俺はリストさんレイさんを振り解き歩き出していたダリオさんの隣までダッシュして移動した。
「ショウキチ殿も……」
「はい?」
 並んだ俺をからかうような目で見つめるダリオさん。
「見てないようで女性のボディラインをちゃんとチェックしてらっしゃるんですね? ……えっち」
「違います! なんかお疲れじゃないかと気になっただけで!」
 いやほらフィジカルのコーチじゃなくても選手のコンディションはやっぱ確認するじゃん!
「ふふ、冗談ですよ」
 そう笑うダリオさんはやはりドーンエリフだった。
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