158 / 366
カレンの手抜き料理
しおりを挟む
いつもの状態に戻ったお父様とタデも一緒に広場に戻ると、その二人を見た民たちもまたピリピリとした空気がなくなる。私とスイレンよりも長い期間お父様たちを見てきた民たちはあの面倒くささを良く分かっているのだろう。
「カレンよ。あの茹でたタッケノコはまだ残っていたな? 何か別のものは作れないだろうか?」
ふいにお父様に声をかけられた。美樹の家では焼いて食べるのが定番だったので少し悩み、米のないこの場所では炊き込みご飯にすることも出来ずさらに頭を悩ませる。そして一日いっぱい砂を掘っていた私は実は疲労困憊である。そんな時は具材を全部鍋に放り込めば完成する味噌汁にしてしまおうと思う。美樹の家でもお母さんが仕事疲れでおかずを作る気力も体力もない時は、とにかく具だくさんの味噌汁を作っていたものだ。そして手抜き料理も多かったのだ。疲れきっている私もそれに倣おうと思う。
まずエビネとタラを呼んで数種類の野菜を畑から調達してもらった。キャロッチとポゥティトゥをひと口大の大きさに切り鍋に入れて茹でる。その間に数個だけ残しておいたタッケノコの皮を剥き、火が通りやすいように薄く切る。これはもうえぐみやアクが出始めているかもしれないが、とにかく疲れている私は細かいことは気にしないことにした。そして熱したフライパンにタッケノコを放り込んだ。
キャロッチとポゥティトゥに火が通ってきた頃に、残りものの茹でたタッケノコを適当な大きさに切り鍋に入れる。沸騰する前にミィソを入れねばと思っていると、近くの女性陣がやってくれると言うので感謝の言葉を述べつつお願いした。
同時進行でざく切りにしたキャベッチと細長く切った緑のペパーの丸いほう、最近私はこれを『ピーマン』と名付けたが、それを入れて炒める。さらに種を取るためにあえて収穫しないでいた緑のペパーの細長い方、同じくこれを『シシトウ』と名付けたのだが、収穫せずに放っておくと実は緑から赤くなる。当たり外れはあるが多少辛味はある。鷹の爪のように刺激的な辛味は期待できないが、彩りの為に細かく輪切りにして一緒に炒める。
「さぁ出来たわよ」
今夜の夕食はタッケノコの味噌汁と炒めものだ。こんな簡単な手抜き料理ですら民たちは「美味しい美味しい」と食べてくれ少し申し訳ない気持ちになってしまった。
────
翌日になり貯水池に行こうとしているところでエビネとタラに声をかけられた。
「姫様、ムギンの粉の消費が追い付かなくなってきています……」
少し申し訳なさそうに話しているが、最近は食についてアドバイスをしていなかったのは私である。さらにムギンの種類まで増やしてしまったのだ。これは解決しないといけない問題だ。さらに中途半端に開発を止めてしまっているものもある。これも完成させてしまった方が良いだろう。
「お父様、スイレン。今日は私はここで作業するわ。ヒイラギはこっちを手伝ってほしいの。オヒシバの方はどんな感じかしら?」
ヒイラギは「分かったよ」と軽く返事をし、オヒシバは凛々しい表情で口を開いた。
「はい。蛇籠は間もなく人工オアシスに到達します。ほぼ完成に近いと言っても良いでしょう」
「じゃあ水路の建設の人たちの半分をこちらの作業に充てたいの。良いかしら? オヒシバは水路作りの中心人物となってちょうだい」
そう言うとオヒシバは目を輝かせ半分以上の人をこちらに充ててくれた。そしてハマナスや他数名を引き連れ意気揚々と水路へと向かって行った。お父様たちもこちらは任せると言い貯水池へと向かった。
まず森の手入れをする者も農作業の者も最低限の人数にし、木材の加工が出来る者を一ヶ所に集めた。これから作ってもらう物にもムギンの製粉にも必要な『とうみ』という風の力で必要なものとゴミとを分けてくれる機械が必要だ。機械と言っても全て木材で作るのだ。美樹のご近所さんがこれを持っていたので構造は熟知している。まずはこれの設計図を描きヒイラギに渡す。
構造は分かるが細かい寸法が分からず『大体』や『おおよそ』で描いたのにもかかわらず、ヒイラギはそれを見て新たに設計図を描き直し集まった者に指示をしていく。
さらに本来作ってもらいたい物も描いていき、それもヒイラギが細かく描き直しまた別の者に指示をしていく。
「姫、これだけ人数がいれば数日で終わるよ。私に任せて」
手先が器用で仕事が早いヒイラギはそう言い自信たっぷりに笑う。
「だから姫は他にやりたいことがあったらそちらを優先して良いからね。分からない部分があったら呼ぶから」
木材加工といっても危ない作業もある。怪我などしないようにヒイラギは手伝おうとした私を気遣いそう言ってくれたのだ。あれもこれもやりたいことは山ほどある。ヒイラギの気遣いに甘えることにして私はその場を離れた。
「カレンよ。あの茹でたタッケノコはまだ残っていたな? 何か別のものは作れないだろうか?」
ふいにお父様に声をかけられた。美樹の家では焼いて食べるのが定番だったので少し悩み、米のないこの場所では炊き込みご飯にすることも出来ずさらに頭を悩ませる。そして一日いっぱい砂を掘っていた私は実は疲労困憊である。そんな時は具材を全部鍋に放り込めば完成する味噌汁にしてしまおうと思う。美樹の家でもお母さんが仕事疲れでおかずを作る気力も体力もない時は、とにかく具だくさんの味噌汁を作っていたものだ。そして手抜き料理も多かったのだ。疲れきっている私もそれに倣おうと思う。
まずエビネとタラを呼んで数種類の野菜を畑から調達してもらった。キャロッチとポゥティトゥをひと口大の大きさに切り鍋に入れて茹でる。その間に数個だけ残しておいたタッケノコの皮を剥き、火が通りやすいように薄く切る。これはもうえぐみやアクが出始めているかもしれないが、とにかく疲れている私は細かいことは気にしないことにした。そして熱したフライパンにタッケノコを放り込んだ。
キャロッチとポゥティトゥに火が通ってきた頃に、残りものの茹でたタッケノコを適当な大きさに切り鍋に入れる。沸騰する前にミィソを入れねばと思っていると、近くの女性陣がやってくれると言うので感謝の言葉を述べつつお願いした。
同時進行でざく切りにしたキャベッチと細長く切った緑のペパーの丸いほう、最近私はこれを『ピーマン』と名付けたが、それを入れて炒める。さらに種を取るためにあえて収穫しないでいた緑のペパーの細長い方、同じくこれを『シシトウ』と名付けたのだが、収穫せずに放っておくと実は緑から赤くなる。当たり外れはあるが多少辛味はある。鷹の爪のように刺激的な辛味は期待できないが、彩りの為に細かく輪切りにして一緒に炒める。
「さぁ出来たわよ」
今夜の夕食はタッケノコの味噌汁と炒めものだ。こんな簡単な手抜き料理ですら民たちは「美味しい美味しい」と食べてくれ少し申し訳ない気持ちになってしまった。
────
翌日になり貯水池に行こうとしているところでエビネとタラに声をかけられた。
「姫様、ムギンの粉の消費が追い付かなくなってきています……」
少し申し訳なさそうに話しているが、最近は食についてアドバイスをしていなかったのは私である。さらにムギンの種類まで増やしてしまったのだ。これは解決しないといけない問題だ。さらに中途半端に開発を止めてしまっているものもある。これも完成させてしまった方が良いだろう。
「お父様、スイレン。今日は私はここで作業するわ。ヒイラギはこっちを手伝ってほしいの。オヒシバの方はどんな感じかしら?」
ヒイラギは「分かったよ」と軽く返事をし、オヒシバは凛々しい表情で口を開いた。
「はい。蛇籠は間もなく人工オアシスに到達します。ほぼ完成に近いと言っても良いでしょう」
「じゃあ水路の建設の人たちの半分をこちらの作業に充てたいの。良いかしら? オヒシバは水路作りの中心人物となってちょうだい」
そう言うとオヒシバは目を輝かせ半分以上の人をこちらに充ててくれた。そしてハマナスや他数名を引き連れ意気揚々と水路へと向かって行った。お父様たちもこちらは任せると言い貯水池へと向かった。
まず森の手入れをする者も農作業の者も最低限の人数にし、木材の加工が出来る者を一ヶ所に集めた。これから作ってもらう物にもムギンの製粉にも必要な『とうみ』という風の力で必要なものとゴミとを分けてくれる機械が必要だ。機械と言っても全て木材で作るのだ。美樹のご近所さんがこれを持っていたので構造は熟知している。まずはこれの設計図を描きヒイラギに渡す。
構造は分かるが細かい寸法が分からず『大体』や『おおよそ』で描いたのにもかかわらず、ヒイラギはそれを見て新たに設計図を描き直し集まった者に指示をしていく。
さらに本来作ってもらいたい物も描いていき、それもヒイラギが細かく描き直しまた別の者に指示をしていく。
「姫、これだけ人数がいれば数日で終わるよ。私に任せて」
手先が器用で仕事が早いヒイラギはそう言い自信たっぷりに笑う。
「だから姫は他にやりたいことがあったらそちらを優先して良いからね。分からない部分があったら呼ぶから」
木材加工といっても危ない作業もある。怪我などしないようにヒイラギは手伝おうとした私を気遣いそう言ってくれたのだ。あれもこれもやりたいことは山ほどある。ヒイラギの気遣いに甘えることにして私はその場を離れた。
21
お気に入りに追加
1,950
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
恩恵沢山の奴隷紋を良かれと思ってクランの紋章にしていた俺は、突然仲間に追放されました
まったりー
ファンタジー
7つ星PTに昇格したばかりのPTで、サポート役をしていた主人公リケイルは、ある日PTリーダーであったアモスにクランに所属する全員を奴隷にしていたと告げられてしまいます。
当たらずとも遠からずな宣告をされ、説明もさせてもらえないままに追放されました。
クランの紋章として使っていた奴隷紋は、ステータスアップなどの恩恵がある以外奴隷としての扱いの出来ない物で、主人公は分かって貰えずショックを受けてしまい、仲間はもういらないと他のダンジョン都市で奴隷を買い、自分流のダンジョン探索をして暮らすお話です。
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
かわいい孫と冒険の旅に出るはずたったのに、どうやらここは乙女ゲーの世界らしいですよ
あさいゆめ
ファンタジー
勇者に選ばれた孫の転生に巻き込まれたばーちゃん。孫がばーちゃんも一緒じゃなきゃ嫌だとごねてくれたおかげで一緒に異世界へ。孫が勇者ならあたしはすっごい魔法使いにして下さいと神様にお願い。だけど生まれ変わったばーちゃんは天使のようなかわいい娘。孫にはなかなか会えない。やっと会えた孫は魔王の呪いで瀕死。どうやらこの状態から助ける事がばーちゃんの役割だったようだ。だけど、どうやらここは本当は乙女ゲーの世界らしい。
異世界で家族と新たな生活?!〜ドラゴンの無敵執事も加わり、ニューライフを楽しみます〜
藤*鳳
ファンタジー
楽しく親子4人で生活していたある日、交通事故にあい命を落とした...はずなんだけど...??
神様の御好意により新たな世界で新たな人生を歩むことに!!!
冒険あり、魔法あり、魔物や獣人、エルフ、ドワーフなどの多種多様な人達がいる世界で親子4人とその親子を護り生活する世界最強のドラゴン達とのお話です。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる