貧乏育ちの私が転生したらお姫様になっていましたが、貧乏王国だったのでスローライフをしながらお金を稼ぐべく姫が自らキリキリ働きます!

Levi

文字の大きさ
上 下
159 / 366

新たな料理

しおりを挟む
 今現在、農作業で収穫した食材は生で食べられるものは生で食べ、それ以外は茹でたり焼いたりしただけで料理らしい料理というものをしていない。なので先日クジャからいただいたリーンウン国の調味料は非常に助かっている。とはいえもう少し料理の手間がかかったとしてもバリエーションを増やしたほうが民たちも喜ぶだろう。そうと決まれば即実行だ。私はシャイアーク国から香草を採取してくれたことのあるナズナさんの元へと走った。

 ナズナさんは糸や布を作る場所にいた。あの騒ぎは何だったのだろうと思うほど、お母様とハコベさんと楽しそうに会話をしながら作業をしている。まだ手に持っていた黒板にチョークンで絵と特徴を描いてナズナさんに話しかけた。

「ねぇナズナさん。前にシャイアーク国から香草を持ってきて植えたでしょう? こういうのはある?」

 ナズナさんに話しかけたのだが、当然のようにお母様とハコベさんも黒板を覗き込む。

「これは……ガンリックかなぁ? こっちはべージル?」

「この特徴はセルリンじゃない?」

 お母様たちはそう話しながら黒板を見ている。

「多分そうだわ。私が住んでいた場所でも似たような名前だったから。これらが欲しいのだけれど」

 嬉しさから笑顔でそう言うとお母様が心配そうな顔をしてこちらを向いた。

「ガンリックは美味しいけれど、刺激が強すぎて子どもには与えないようにする決まりなのよ」

 お母様はそう言う。ガンリックは私が求めているニンニクだろう。確かに丸焼きにしたものはホクホクとした食感であまりの美味しさに手が止まらなくなるが、翌日にお腹を下したり何よりも臭いが気になってしまう。子どもに与えないというのは頷ける。

「あぁやっぱり私が求めているものだわ。そのまま食べるには子どもには向かないわね。でも少量を隠し味に使うから子どもでも大丈夫よ。夕飯に新しい料理を作ろうと思うの」

 それを聞いた三人は作業を中断し「手伝うわ」「任せて」と言い残し森へと入って行った。少しその場で待つと三人は手にたくさんの香草を抱えて戻って来てくれた。確認してみると日本のスーパーで見かけるものとは多少違いがあるが、味見をしてみるとまさしく私が欲しかったニンニク、バジル、セロリだった。どうやら糸や布作りの女性陣は、休憩時に森へと入りこれらの香草を摘んで食べたりしていたらしいことから馴染みのある香草のようである。ただやはり葉をちぎって食べるくらいしか使いみちを知らないようだった。

「夕飯の為に今から仕込みをするわ。お母様たちも興味があるなら作り方を見る?」

 そう声をかけると三人はワクワクとした表情で「うん!」と少女のような返事をした。ならばとそのまま広場へと移動する。

 私一人であれば同時に作業を進めることが出来るが、新しい料理を知りたいと思っているお母様たちの為に一つ一つの工程を見せるように作るべきだろう。まずは必要なものを準備することにした。
 普段は皮を使うがキャロッチを皮ごと適当な大きさに切って鍋に入れる。そして後から使う予定のオーニーオーンの皮を剥き、普段なら使わない頭とおしりの部分も皮と一緒に鍋に入れ、セルリンもそのまま鍋に入れる。さらにまだギリギリ食べられそうな干し肉も鍋に入れて水を入れて煮る。

「不思議な組み合わせの汁物なのね」

 お母様たちは顔を見合わせそんな感想を漏らしていた。

「汁物として飲むことは出来るけれど、これはまだ料理の一部にしかすぎないわ。まだまだ工程がたくさんあるのよ」

 そう言うと三人は驚いている。グツグツと十五~二十分ほど煮ている間に、肉体労働や細かい作業が出来ない老人たちが興味を示して集まってくる。お料理教室の先生になった気分だ。煮えたところでザルを用意し、ザルを使って別の鍋に濾し入れる。

「この具材はどうするの?」

 ザルに残った野菜を見てナズナさんは口を開いた。

「それはもう使わないからいつもなら捨てるけれど……もうそんなに味はないと思うけれど、食べたいなら食べても大丈夫よ」

 捨てるという言葉に反応した者たちは食べると言い始めた。さすがにオーニーオーンの皮や根の部分まで食べようとするのは止めたが。

「この汁物が別のものになるの?」

 今度はハコベさんが不思議そうに鍋の中を覗いている。これから作ろうと思っているものにはコンソメが必要なのだが、ここにコンソメの素はない。野菜と肉を煮込めばコンソメスープの完成だ。これから味付けをするので、これはまだ味はないものだけれど。

「えぇ。全く別のものになるのよ。きっと想像出来ないものに」

 いたずらっぽく笑うと周りのみんなは「どんな汁物になるのだろう」と話し合っている。残念ながら今夜の夕食は汁物ではない。みんなの度肝を抜くために私は次の工程へと移ることにした。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

処理中です...