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姫たちの約束
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思いがけず手に入った白ワインで、アンソニーさんは急遽スネック料理を追加で作る。その間にクジャは興味を持ったスネックについてペーターさんに問いかける。
「このスネックは食べるために捕まえておるのか?」
「いいや、この国では元々は腰紐として皮を使うために捕まえていたのだが、この町では余った肉がもったいなくて食べ始めたんだ」
ペーターさんの話を聞いたクジャはしばし考えてから口を開いた。
「我が国は森や林が多くスネックもたくさんいる。そのスネックを捕まえれば……」
クジャがそこまで言うとペーターさんはそれを遮る。
「やめたほうがいい。私たちも同じようなことを考えた時もあったが、このスネックは毒もないし臭みがない。毒のあるスネックは危険だし、毒が無くても他のものは臭みで食べられんよ」
それを聞いたクジャはしょんぼりとしている。よほどこのスネック料理が気に入ったようだ。ちなみにスネックを好んで食べない街などでは、このスネック以外も捕まえるらしい。皮だけ剥がし、身は捨てるそうだ。
「そうだわ!クジャ、さっき言ってた『セウユ』と『ミィソ』を分けてもらうことは可能かしら?」
私はどうしてもその調味料が欲しく、図々しくお願いをした。
「ふふ。少量で悪いが持って来ておる。ニコライが『カレン嬢がカレン嬢が』とうるさかったのでな。後ほど渡そう。それにしてもなぜカレンはセウユとミィソを知っておるのだ?」
単純な疑問なんだろうが、前世が日本人でしたと言えるはずもなくじいやに犠牲になってもらうことにした。
「……うちのじいやは昔シャイアーク城で弓や槍の使い方を教えていたらしくて、その時に食べたことがあるらしいのよ!ね!?じいや!」
無理やり話題を振ったのでじいやは驚いていたが、必死な私を見て察してくれたようで上手く話に乗ってくれた。
「えぇ美味でした」
おそらく本当は口にしたこともなければ全く知らない調味料だろうに、じいやは爽やかな笑顔でそう答えた。だけれどクジャとモズさんは驚いた顔をして顔を見合わせ、そしてじいやに向かって口を開いた。
「レオナルドという弟子がいたことは?」
「……レオナルド?……あぁ!赤毛のレオナルドですかな!?」
するとじいやもその名前に覚えがあったらしく興奮気味に声を発する。
「そなた、あの『稀代の森の民』であったか!まさか会えるとは……実はレオナルドはリーンウン国との国境警備隊としているのじゃよ。いつも『あの頃は毎日が楽しかった』と申しておる。そしてシャイアーク王のことを嫌っておってな、わらわの味方である。故に闇市の為にシャイアーク国に入る時は秘密にしてくれるのじゃ。我が国の国境警備隊とも仲良しじゃ」
それを聞いたじいやは珍しく声を出して笑い始めた。どうやらヒーズル王国との国境にいるジェイソンさんと同じようなことをしているようだ。ジェイソンさんとレオナルドさんはほとんど同時期に教えていた生徒らしい。
「そうじゃ!今度リーンウン国に遊びに来るが良い!いや、ぜひ来て欲しいのじゃ!さすがに今すぐとは言わぬ。こちらも父上に報告せねばならぬし……さっきは秘密にすると申したが、わらわの家族には森の民の存在は知らせても良いか?」
この問いかけに私とじいやは顔を見合わせる。出来る限り森の民の存在は秘密にしたい。けれどクジャとせっかく友人になれたのだ。複雑な思いでいるとクジャが口を開いた。
「心配はいらぬ。わらわの家族も皆、シャイアーク王に良い感情を持っておらぬ。皆味方になってくれるであろう。わらわの家族と打ち解けると良い」
そしてペーターさんに「王の悪口を散々言って悪いな」と言うと、ペーターさんもまた「この町の人間も同じくらい王を嫌っている」と言い笑い合っている。
「ねぇじいや。おババさんの占いの『仲間』って、人数までは言っていなかったわよね?もしかしたらクジャもその『仲間』なんじゃないかしら?」
「ふむ……そうですな。……レオナルドもまた信頼出来る男でありましたからな。そのレオナルドとの関係が良好なのであればこの方は大丈夫ではないかと……。もし何かあったとしたら、このじいが全力でお守りしますよ」
小声で会話をするじいやのナイト的な発言にときめいてしまった。するとそれを察したオヒシバも「全力でお守りします」と話に入って来た。うん、今すぐは無理だけれど、リーンウン国に行ってみよう。
「クジャ、ぜひ行かせて欲しいわ。ただね、一度帰ってからやることがたくさんあって、少し先の話になると思うの」
眉尻を下げそう言うと、クジャは「やること?」と不思議そうに聞いてくる。
「ヒーズル王国は砂と岩しかない場所だったの。そして民たちはちゃんとした家すら無かったの。今はその砂の地に畑を作って森の再建をしていて、帰ったら民の家を作って水場を得るために水路も作っていて……。あぁあとテックノン王国とこの町の為に輸出する物も作らないといけないわね。収穫したものも加工しないといけないし……あとはなんだったかしら……?」
指を折りながらやることを話しているとクジャとモズさん、そして隣で聞いていたニコライさんたちも絶句している。
「カレンよ……もしや、そなた姫でありながらそれをこなしておるのか……?」
「え?うん、そうよ。私だけでなく王であるお父様も王妃であるお母様も、王子である私の弟も全員で作業をしているわ。だって私たちの国だもの。私たちがやらなければ誰がやるの?ふんぞり返っていたって民の暮らしは良くならないわ」
自分では当たり前のことを言ったつもりだったが、クジャは立ち上がりわざわざテーブルを回り込んでこちらに来て「本当に頭が下がる!カレンのことが大好きじゃ!」と抱き着いてきた。どさくさに紛れてニコライさんも「カレン嬢!素敵です!」と抱き着こうとしたが、オヒシバに首根っこを掴まれ席に引きずり戻されていた。
「このスネックは食べるために捕まえておるのか?」
「いいや、この国では元々は腰紐として皮を使うために捕まえていたのだが、この町では余った肉がもったいなくて食べ始めたんだ」
ペーターさんの話を聞いたクジャはしばし考えてから口を開いた。
「我が国は森や林が多くスネックもたくさんいる。そのスネックを捕まえれば……」
クジャがそこまで言うとペーターさんはそれを遮る。
「やめたほうがいい。私たちも同じようなことを考えた時もあったが、このスネックは毒もないし臭みがない。毒のあるスネックは危険だし、毒が無くても他のものは臭みで食べられんよ」
それを聞いたクジャはしょんぼりとしている。よほどこのスネック料理が気に入ったようだ。ちなみにスネックを好んで食べない街などでは、このスネック以外も捕まえるらしい。皮だけ剥がし、身は捨てるそうだ。
「そうだわ!クジャ、さっき言ってた『セウユ』と『ミィソ』を分けてもらうことは可能かしら?」
私はどうしてもその調味料が欲しく、図々しくお願いをした。
「ふふ。少量で悪いが持って来ておる。ニコライが『カレン嬢がカレン嬢が』とうるさかったのでな。後ほど渡そう。それにしてもなぜカレンはセウユとミィソを知っておるのだ?」
単純な疑問なんだろうが、前世が日本人でしたと言えるはずもなくじいやに犠牲になってもらうことにした。
「……うちのじいやは昔シャイアーク城で弓や槍の使い方を教えていたらしくて、その時に食べたことがあるらしいのよ!ね!?じいや!」
無理やり話題を振ったのでじいやは驚いていたが、必死な私を見て察してくれたようで上手く話に乗ってくれた。
「えぇ美味でした」
おそらく本当は口にしたこともなければ全く知らない調味料だろうに、じいやは爽やかな笑顔でそう答えた。だけれどクジャとモズさんは驚いた顔をして顔を見合わせ、そしてじいやに向かって口を開いた。
「レオナルドという弟子がいたことは?」
「……レオナルド?……あぁ!赤毛のレオナルドですかな!?」
するとじいやもその名前に覚えがあったらしく興奮気味に声を発する。
「そなた、あの『稀代の森の民』であったか!まさか会えるとは……実はレオナルドはリーンウン国との国境警備隊としているのじゃよ。いつも『あの頃は毎日が楽しかった』と申しておる。そしてシャイアーク王のことを嫌っておってな、わらわの味方である。故に闇市の為にシャイアーク国に入る時は秘密にしてくれるのじゃ。我が国の国境警備隊とも仲良しじゃ」
それを聞いたじいやは珍しく声を出して笑い始めた。どうやらヒーズル王国との国境にいるジェイソンさんと同じようなことをしているようだ。ジェイソンさんとレオナルドさんはほとんど同時期に教えていた生徒らしい。
「そうじゃ!今度リーンウン国に遊びに来るが良い!いや、ぜひ来て欲しいのじゃ!さすがに今すぐとは言わぬ。こちらも父上に報告せねばならぬし……さっきは秘密にすると申したが、わらわの家族には森の民の存在は知らせても良いか?」
この問いかけに私とじいやは顔を見合わせる。出来る限り森の民の存在は秘密にしたい。けれどクジャとせっかく友人になれたのだ。複雑な思いでいるとクジャが口を開いた。
「心配はいらぬ。わらわの家族も皆、シャイアーク王に良い感情を持っておらぬ。皆味方になってくれるであろう。わらわの家族と打ち解けると良い」
そしてペーターさんに「王の悪口を散々言って悪いな」と言うと、ペーターさんもまた「この町の人間も同じくらい王を嫌っている」と言い笑い合っている。
「ねぇじいや。おババさんの占いの『仲間』って、人数までは言っていなかったわよね?もしかしたらクジャもその『仲間』なんじゃないかしら?」
「ふむ……そうですな。……レオナルドもまた信頼出来る男でありましたからな。そのレオナルドとの関係が良好なのであればこの方は大丈夫ではないかと……。もし何かあったとしたら、このじいが全力でお守りしますよ」
小声で会話をするじいやのナイト的な発言にときめいてしまった。するとそれを察したオヒシバも「全力でお守りします」と話に入って来た。うん、今すぐは無理だけれど、リーンウン国に行ってみよう。
「クジャ、ぜひ行かせて欲しいわ。ただね、一度帰ってからやることがたくさんあって、少し先の話になると思うの」
眉尻を下げそう言うと、クジャは「やること?」と不思議そうに聞いてくる。
「ヒーズル王国は砂と岩しかない場所だったの。そして民たちはちゃんとした家すら無かったの。今はその砂の地に畑を作って森の再建をしていて、帰ったら民の家を作って水場を得るために水路も作っていて……。あぁあとテックノン王国とこの町の為に輸出する物も作らないといけないわね。収穫したものも加工しないといけないし……あとはなんだったかしら……?」
指を折りながらやることを話しているとクジャとモズさん、そして隣で聞いていたニコライさんたちも絶句している。
「カレンよ……もしや、そなた姫でありながらそれをこなしておるのか……?」
「え?うん、そうよ。私だけでなく王であるお父様も王妃であるお母様も、王子である私の弟も全員で作業をしているわ。だって私たちの国だもの。私たちがやらなければ誰がやるの?ふんぞり返っていたって民の暮らしは良くならないわ」
自分では当たり前のことを言ったつもりだったが、クジャは立ち上がりわざわざテーブルを回り込んでこちらに来て「本当に頭が下がる!カレンのことが大好きじゃ!」と抱き着いてきた。どさくさに紛れてニコライさんも「カレン嬢!素敵です!」と抱き着こうとしたが、オヒシバに首根っこを掴まれ席に引きずり戻されていた。
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