勘違い令嬢と3人の男

ringo69

文字の大きさ
27 / 31
Story 3

わからない心

しおりを挟む

「レティ!」

ドアを開けて入ってきたのは、お医者様ではなく、血相を変えたロバート様だった。

────わからない。

昨日あんなにセレスと楽しそうに仲睦まじく踊っていたのに、なぜそんなに必死で私のところまで会いにくるのか。

「…皇太子殿下にご挨拶申し上げます。このような状態でのご挨拶になり、申し訳ございません。」
「なにを言っているんだレティ。挨拶なんかいいんだ。それより体調は??」
「はい、まだ目覚めたばかりなので少しめまいがするくらいですが、特に問題はありません。」
「よかった…倒れた時はどうしようかと思ったよ。」

なぜあなたはそんなにさも私を心配していて仕方なかったみたいな表情をするの?
セレスのことが好きなのではないの?
それとも同じ委員会の仲間としてなの?私はあなたの心がわかりません。

私が困惑している間にまたドアの向こうから違う足音が響いてくる。
次に扉を開けたのは正真正銘、お医者様だった。その後ろからサリーとご公務が忙しいであろう皇帝陛下と皇妃陛下がついてきている。
その面々にびっくりした私の体が反射的に起きあがろうとした。が、それはロバート様の手によって制される。

「レティシア嬢、安静にしていてください。
いま、お体をみますので…」

私のその行動を見てお医者様はそう言ってロバート様のいた場所に腰を下ろした。

「レティシア嬢、どうかそのままで、私たちのことは気にしないでくれ」

皇帝陛下が私にそう言った。
彼らは私の父の兄にあたる人達で、昔から父の子供である私たち姉弟のことを可愛がってくれていた人物であるけれど、この国の皇帝と皇妃にこんな格好での挨拶は一般的には無礼な行為だ。
私はその言葉に申し訳なさそうに会釈する。

「ふむ。鼓動も安定しておりますし、熱も下がったようです。ただ少しばかりめまいや気持ち悪さがあるかな?」
「はい、体がなんとなく怠いです。」
「まぁ無理もないでしょう。今日は一日安静にして、明日また様子を見ましょう。」

お医者様は診察をしてそう言った。
薬を必ず飲んで安静にしてと。なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいだ。王宮の一室を私が使ってしまっていることに関しても、皆の時間を使わせてしまっていることも。
私はそれについて謝罪をした。

「本当に、申し訳ございません。
両陛下と皇太子殿下のお心に感謝いたします。」

皇后陛下が膝をついて私の手を握った。

「いいのよレティ。貴女は私の娘みたいなものだし、その娘が体調を崩したとなれば、王宮が援助をするのは当たり前でしょう?
貴女も色々とお仕事があるだろうし、疲れが出たのよ。ゆっくりしていきなさいな」

私は皇妃様の言葉に涙を流しそうになった。
いつだってこの方は優しく、清く、美しい。
ブラウンの光沢のいい髪の毛に綺麗なティアラを乗せた彼女はまさに聖母である。
飾らない性格は陛下だけでなく国民をも魅了する。私もその虜の1人だ。

「はい、ありがとうございます。」
「貴女のご両親にはすでに目覚めたという報告の手紙を送ってあります。もう時期こちらにくるでしょうから、それまで体を休めてね」
「リリーの言うとおりだ。レティ。
すまないね、押しかけてしまって」

殿下も皇妃殿下の後ろからそう声をかけてくれた。本当に、この国になくてはならない人達だと、私は改めて確信した。
そんな心優しい2人に会釈して2人を見送った。
これでゆっくりできるかと思ったらもう1人の存在を忘れていた。

「ごめんね、母上も父上も来るって聞かなくてさ。」

彼はその端正な顔に申し訳ないような表情を浮かべて私に謝った。
いやいやいや、貴方もですよ??
普通にこの頃疲れも溜まっていたとは思うけれど、昨夜のことの発端は貴方なんです!と声を大にして言いたかった。
が、私が発した言葉は「いえ、嬉しいです。」の一言。流石である。
私が心の中で葛藤していることなどつゆ知らずロバート様は私の手を取る。

「レティに話しておきたいことがある。」

これはまさかの、最近の私の悩みの種であるセレスとのことでは?と生唾をごくりと飲み込んだ。

「な、なんでしょうか?」

絞り出した声はなんとも情けない声だった。

「実は僕は…「レティ!!!!」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。

いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。 「僕には想い合う相手いる!」 初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。 小説家になろうさまにも登録しています。

幼馴染の許嫁

山見月あいまゆ
恋愛
私にとって世界一かっこいい男の子は、同い年で幼馴染の高校1年、朝霧 連(あさぎり れん)だ。 彼は、私の許嫁だ。 ___あの日までは その日、私は連に私の手作りのお弁当を届けに行く時だった 連を見つけたとき、連は私が知らない女の子と一緒だった 連はモテるからいつも、周りに女の子がいるのは慣れいてたがもやもやした気持ちになった 女の子は、薄い緑色の髪、ピンク色の瞳、ピンクのフリルのついたワンピース 誰が見ても、愛らしいと思う子だった。 それに比べて、自分は濃い藍色の髪に、水色の瞳、目には大きな黒色の眼鏡 どうみても、女の子よりも女子力が低そうな黄土色の入ったお洋服 どちらが可愛いかなんて100人中100人が女の子のほうが、かわいいというだろう 「こっちを見ている人がいるよ、知り合い?」 可愛い声で連に私のことを聞いているのが聞こえる 「ああ、あれが例の許嫁、氷瀬 美鈴(こおりせ みすず)だ。」 例のってことは、前から私のことを話していたのか。 それだけでも、ショックだった。 その時、連はよしっと覚悟を決めた顔をした 「美鈴、許嫁をやめてくれないか。」 頭を殴られた感覚だった。 いや、それ以上だったかもしれない。 「結婚や恋愛は、好きな子としたいんだ。」 受け入れたくない。 けど、これが連の本心なんだ。 受け入れるしかない 一つだけ、わかったことがある 私は、連に 「許嫁、やめますっ」 選ばれなかったんだ… 八つ当たりの感覚で連に向かって、そして女の子に向かって言った。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

処理中です...