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【勇者が仲間になりたそうにこちらを見ている】
【第二十二章】 孤高の戦士
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すっかり日も沈み、月明かりが世界を照らしている。
虎のマスクをかぶっている大男を引き連れ、国王と一人の女性を背負って歩く道中は大層衆目を集めたものの地下牢獄を出た僕達はその足で城下町まで戻ると、どうにか王様を城に送り届けた。
とはいえセミリアさんがいるというだけで怪しまれたり止められたりすることもなく無事に城まで辿り着き、国王の不在や偽者騒動が広まらないようにあれこれ働いてくれていたルルクさん、スレイさんという二人の給仕に王様を預けるとひとまず退散し宿を取って今に至る。
宿屋の大部屋には僕、セミリアさん、みのり、春乃さん、高瀬さん、虎の人、そしてサミュエルさんの七人プラスジャックが揃っている。
サミュエルさんも町に戻ってくる頃には体の痺れも収まってきており、宿屋に入る前に寄ったお店(病院というものは存在しないらしく、ジャックによると薬屋らしい)で薬を買って飲んだおかげでほとんど元通りに動けるぐらいにはなっていた。
敢えて補足するならばセミリアさんが持っていた毒消しは痺れ薬の類には効かない物だったということぐらいか。
おかげで寝たふりも止めてくれたので幸いだったかといえば、そうとも言えないのが悲しいところだ。
だってすぐ喧嘩するんだもん……春乃さんと。
「でも良かったね。猫さんも入れてもらえて」
それぞれが荷物を置き、五つあるベッドやソファに腰を下ろしたタイミングで無駄にピリピリしたばかりの空気を分かっているのかいないのか、みのりがにこやかな顔を浮かべた。
まだそう云い張るのかと、僕にしてみれば呆れるしかない。
「まぁ……そもそも人間だからね」
「あの受付のオバさん頭堅いから断られると思ったわよ。ペット禁止、とか言ってさ」
僕のツッコミなど聞こえていないのか、春乃さんも同じ意見の様だ。
それを聞いていた虎の人はやはり渋い声で腕を組んだまま、ついでに一人だけ立ったまま悟った風である。
「余計な心配を掛けてすまないトラ、レディーマスター。なにぶんオイラは人とも魔物とも相容れない存在ゆえ……な」
「いや、だから……マスク取ればいいのでは」
しかもキャラ戻ってるし。
帰り道では一人称が『俺』になったり、語尾に『トラ』付けるの止めてたのに!
「まあ良いではないかコウヘイ。虎でも人でも私達の仲間であることに違いはあるまい」
「それは勿論そう思いますけど……」
なぜ僕側が空気読んでないみたいに思われねばならないのか。
毎度のことながら納得出来ないです。
「今回は皆よくやってくれた、本当にご苦労だったな。おかげで国王もサミュエルも無事で済んだ。そしてサミュエルが仲間になってくれたことは私達にとってとても意味のあることだ。それも含めて喜ばしいことだと思う」
「勘違いはやめなさいクルイード、私は仲間になったワケじゃないわ。協力してあげるだけよ、借りを返すためだけに、今回だけ」
「それでも構わないさ。私個人としても心強く思っているし、何より今回だけで十分さ。今回で全てを終わらせればよいだけの話だ、次回など必要無い」
「フン、口だけは一丁前な奴」
「まーた偉そうにしちゃって」
ボソリと、後ろで聞いていた春乃さんが呟いた。
悩むべくはサミュエルさんがそれを気にしない、或いは聞こえなかった振りをする、といった平和な性格をしていらっしゃらないことである。
「ちょっと、そこの召し使い! ナメたことばっか言ってたら張り倒すわよ」
「誰が召し使いよ! あんたこそふざけたことばっか言ってんじゃないわよ」
「召し使いでもないのになんでそんな格好してんのよ。召し使いになりたいわけ? それとも召し使いにすらなれないわけ?」
「ファッションよ! ただ露出してるだけで色気振り撒いてる気になってるあんたに服装のことで文句言われたくないし!」
だいぶ今更という感じではあるけど、確かにサミュエルさんの服装には露出が目立っている。
肘と膝に鉄製の防具を着けているだけで、太ももから下全部と、腕も、肩も、背中も腹も全部剥き出しだ。
そんなことはさておき、また凄い言い争いがあったものである。
文字で見たらどっちがどっちだかわかったものじゃない。
『相棒……気苦労倍増だな』
当の二人以外はこぞって呆れながらだったり『また始まった』といった感じで眺めているだけの残念な空気の中、ジャックが嘆息交じりに呟いた。
その気苦労を理解してくれる唯一の存在だと言えばその通りだけど、どこか他人事な感じのニュアンスなのが悲しいよ?
「そう思うならジャックもちょっとは言ってやってよ」
『俺ぁ聞き分けのねえじゃじゃ馬は苦手でね』
「得意なのは虎の人ぐらいなんだろうけど、基本的にみのりに被害が及ばない限り仲裁してくれないしなぁ」
『それはさておき相棒よ、あの半裸女も勇者なんだって?』
半裸女って……大概口の悪いネックレスだな君も。
「そう聞いたけど。ジャックから見てその、いわゆる強さ? とかはどうなの?」
『クルイードと比べりゃやや劣るようにも見えるが、それなりに鍛えてはいるな』
「へえ、町の人の信頼も厚いみたいだし凄い人なんだろうなとは思ってたけど、やっぱりそうなんだ」
セミリアさんもそうだが、一見すれば細身の女の子なのに剣術の達人だったり、国で一番強かったり、世界を救おうとしていたり、未だ存在すら夢か幻か現実かも定かではない世界の出来事とはいえ凄いものだ。
そのセミリアさんが勝てない魔王ってどんな化け物なのやら……。
そんなことを不安に思っている間にも口論は続いている。
「だからミュージシャンって何だって言ってんでしょうが! ワケ分からない芸人用語使うな!」
「なんでわかんないのよ! だったらいいわ、召し使いでも芸人でもない肩書きを用意してあげるから」
もはや口論の内容が斜め上に逸れていっている気しかしない中、不意に春乃さんは室内を見回した。
そして虎の人を見て一瞬止まったかと思うと、なぜか勝ち誇った様な顔でサミュエルさんに向き直る。
「みんな聞いて。このパーティーでのあたしの新しい立ち位置を思い付いたわ」
見つけた。のではなく思い付いただけらしい。
恐らくはほぼ全員が高瀬さんの溜め発言を待っている時と同じぐらい聞きたくなかったことだろう。
唯一サミュエルさんだけが『言ってみなさいよ』と挑発的に返しただけだったのに春乃さんはお構い無しに胸を張った。腰に手を当てて。
「あたしのジョブ、それは珍獣使いよ! 二匹の珍獣を操り敵を倒すわ」
「おいこらゴスロリ。二匹ってお前それ俺を入れただろ」
「そもそもオイラはお前さんに使われる覚えはないトラぞ。オイラの主はレディマスターだトラ」
「ちょっとあんた達! 何で乗っかってこないのよ! 後から入ってきて主力面してるベジータ女の肩持つわけ?」
「俺様はいつだって可愛い女の子の味方だがそれが何か?」
「つまりあたしの味方ってことじゃない」
「違えよ! 自惚れも甚だしいわ。大体髪の毛からしてお前の方がよっぽどベジータじゃねえか。金髪嫌いな俺は断然サミュたんの味方だ」
「誰がサミュたんよ! 気持ち悪い呼び方するな珍獣」
「えぇぇ!? 今俺味方宣言したのに!?」
この後もしばらく騒がしい夜が続いた。
○
翌朝を迎えた。
カーテン越しにも分かる太陽の光は、晴天を告げている。
正確な時間が分からないので今が朝なのか昼なのか、それとも昼前なのかは定かではないが、感覚的には結構長い時間寝ていたと思う。
ベッドが五つしか無かったためみのりと春乃さんが一つのベッドを使い、虎の人はソファーで十分だとか言い出したことで無事に割り振ったのだが、昨日の疲れが残っているのかまだ皆は寝ているみたいだ。
ただ一つ空っぽのベッドがある以外は、だけど。
「どこに行ったんだろう……ご飯でも食べに行ったのかな」
二つ隣のサミュエルさんが使っていたベッドを見て、思わず声が漏れる。
まさか逃げたなんてことはないよね……うん、大いにあり得る!
気付いてしまったからには放置するわけにもいかず、慌てて布団から出ると音を立てない様に気をつけつつ部屋を出た。
二階建ての二階にある僕達の大部屋だが、廊下に出たところでそれ以外にも部屋が並んでいるだけでこの階に共用スペースなどはない。
となると、一階に居るか出て行ったかということになる。
まずはそれを確認するべく僕はまっすぐに受付に向かった。
「おばさん、サミュエルさんって出て行ったりしませんでした?」
「サミュエル? ああ、セリムス様のことかい? だったら出て行ってはいないよ。あんた達の部屋の子は誰もここを通ってないさね」
「そうですか、ありがとうございます」
「なんだか兄ちゃん、いつも人を探しているねぇ」
なんて呆れられていたが、返事もせずに受付を後にする。
出て行っていない。となればセミリアさんの時と同様に屋上に居る可能性が高い。
逃げたわけじゃなかったことにまずは一安心しつつ二階に戻り梯子を登って屋上に出ると、そこにはどこか哀愁漂う後ろ姿があった。
「サミュエルさん」
その背中に声を掛ける。
特に驚いた風でもなくサミュエルさんはゆっくりと振り向いた。
「なんだ、アンタか」
横目で僕を見るその表情には意外さといったものは感じられない。
どちらかというと、どうでもいい、興味がない、呼ばれたから確認がてら振り向いただけ、そんな感じだ。
「どうしたんですか? こんなところで」
「別に。アンタ達がいつまでも寝てるから暇だっただけ。そういうアンタは何?」
「起きたらサミュエルさんが居なかったので探してたんですよ。もしかしたら逃げちゃったんじゃないかと心配で」
「逃げていいならそうするけど?」
「ま……まさかあの誇り高き勇者であられるサミュエルさんともあろうお方が命を救われた借りを忘れて逃げ出すなんてことが……」
「あー、もう分かったってのよ! 大袈裟に驚いた振りしてんじゃないわよ、ほんっと性格悪いガキなんだから。その借りが無かったらぶっ殺してるところよアンタ」
「ガキって……ほとんど歳変わらないでしょう」
「多分私の方が一つ二つ上でしょ。じゃあガキなのよ」
「そんな無茶苦茶な……」
童顔具合では良い勝負だと思うけどなぁ。
僕もよく言われるけどサミュエルさんも顔立ちはちょっと子供っぽいし。
「黙れ芸人A。略してA。生意気言ってたら蹴り飛ばすわよ」
「…………」
なんとなく分かって来た。
昨日は捕まって連れ去られたことや、気に入らない存在であろう僕達に保護されたことに苛立っていたのかと思ったけど、多分それは僕が思っているほど言動には影響していない。
この人にとってこれがごく普通の態度なのだ。
天然で単純に悪意無く、ただ口が悪いだけだと理解した。
そう思うと、罵られても嫌な感じもしなくなってくる不思議。
「大体いつまでグースカ寝てんのよ。暢気に寝てる場合かっての」
「昨日はみんな大変な思いをしましたから」
「あんな面子じゃ大変じゃないものも大変になるわよ。ほんっと身の程を弁えない奴ばっかり」
「まあ僕達は元々魔王だとか化け物だなんて居ない世界から来ていますからね。いきなり慣れろというのも難しいものです」
頑張ろうとはしてるんですけど、中々ね。と付け加える。
サミュエルさんは、なぜか隣に立つ僕に怪訝そうな顔を近付けてきた。
「私が疑問に思うのはそこなのよ。なんでアンタ達みたいな戦闘能力の欠片もない奴等がクルイードの仲間なんてやってんのよ」
そうか、サミュエルさんは事の顛末を知らないのか。
僕の口から話してしまっていいものかとも考えたが、聞かれた以上何らかの返答はせねばなるまい。
誤魔化そうにも僕はこの世界の事を知らなさ過ぎるし、何よりセミリアさんと敵対しているならまだしもそういうわけでもない。
そもそもサミュエルさんもノスルクさんの世話になっているのだから隠す必要もないだろう。
そんな判断の下、僕は説明した。
僕達がセミリアさんに会ってからここに来るまでの事を。
粗方話が終わると、黙って聞いていたサミュエルさんは呆れた様に、少し小馬鹿にした様に鼻で笑う。
「掲示板ねえ。仲間を集めに行くとは聞いてたけど、またぶっ飛んだことを考えるわクルイードといいジジイといい」
「まあ僕自身未だに理解出来ていないですからね。事実としてここに居るから無理矢理納得しているだけで」
「アンタの感想は別にどうだっていいけど、なんていうかクルイードらしいわね」
「どういうところがですか?」
「気持ちとか想いだとか、信頼、絆、志、使命感……そういう目に見えないものに力を見出だそうとするところよ」
「サミュエルさんは違うんですね」
「全く違うわね。誇りや矜持はあるけど、それはあくまで力に付随するものよ。私にとっての強さは純粋に敵を倒す能力」
「だから……セミリアさんと協力するのが嫌なんですね」
考え方に大きな違いがあるから相容れない。
命懸けで戦う二人の違った考え。
そのどちらが正しいなんて議題の答えは実際存在しないのかもしれないけど、誰かの代わりに多くを背負って血を流す覚悟はとても崇高なものなのだと思う。
これがゲームならば、設定ならば、当たり前の様に、戦う使命だなんて一言でプレイヤーの誰もが受け入れる。
だが現実の出来事として、例えば僕達の側の人間の誰が受け入れられるだろうかと言われたなら難しい問題なのだろう。
本来、少なくとも果たそうとしなければならない誰かがそれを放棄し、その人間に『あなたが命を賭して成し遂げなければ大勢が死にます』なんてことを言われているも同じなわけだ。
軍隊の代わりに戦ってこいと言われていることと、同じなのだ。
「奪われた何かを取り戻す為に必要なのは取り戻す為の術ではなく、再び奪われることを防ぐ強さなんだ」
ふと僕から街の方へと視線を戻したかと思うと、サミュエルさんは呟く様な声でそんなことを言った。
真意が分からずすぐにリアクションをすることが出来なかったが、それでも独り言みたく言葉は続く。
「昔そんな事を言われたことがあるわ。それが必ずしも正しい主張であるとは思わないけど、私はどちらかというとその考えに近い。クルイードよりはね」
「奪われることを防ぐ……強さ、ですか」
「目先の平和や眼前の人間の命も大事じゃないとは言わない。いくら私だって目の前に敵が居れば倒すし、人が襲われていたら助けることもあるわよ。だけど大局的に見れば、力を合わせて目先の勝利をもぎ取る事は強さとは言わない。そうしないと勝ち取れないような平和なんて、また別の誰かが奪いに来る。シェルムを倒したって、魔界にはいくらでも魔族はいる。魔族が居なくなったって同じ人間が敵になるかもしれない。実際何年も内戦が続いている国もあるし、いつ戦争が始まってもおかしくない関係の国もある。天界の連中だっていつまで不干渉でいるかなんて分からない。必要なのは奪われては奪い返す事を繰り返すことじゃない、奪われない強さなのよ」
魔界だとか天界だとか言われても僕にはピンと来ないが、意志の強さや志の高さは伺える力強い言葉だった。
どこか自分に言い聞かせる様に聞こえる程に。
「私には私の取り戻さなきゃいけないものがある。だから私には」
私には、と
そこまで言って少し間を置いた。
そして、一段と強い眼差しで遠くを見つめながら続きを口にする。
私には強さが必要なのよ。
サミュエルさんは、そう続けた。
その言葉を最後にサミュエルさんはその真剣な表情を崩し、
「なーんでアンタみたいな奴にこんな話してんだか。ま、仲間なんて必要ないし協力してあげるのも今回だけだけど、アンタの姑息な脳みそは少しは役に立つのかもね。実際不本意ながらそのおかげで私も助かったわけだし」
「姑息な脳みそ……それ褒めてるんですか?」
「さぁ? どっちにしてもあの召使いや気持ち悪い奴よりはマシなんじゃないの? 戦闘力なんて求めない使いっ走りとしてはね」
僕も含めて酷い言われ様だ。みのりやジャックに至っては忘れられてるし。
まあこの人なりのお褒めの言葉なのかもしれないけどさ。
「アンタ、名前なんだっけ?」
「何度も言いましたけど、樋口康平です」
答えたところで呼び名は芸人Aだからね。
「コウヘイ、ね」
どんな心変わりがあったのか、ここで初めてまともに名前を呼ばれた。
どこか認めてもらえた様な気がしてむず痒いものがある。
「コウヘイ。略してコウ」
略された。
僕の勘違いだったのかもしれない。
「私は私の強さを追い求める。だから仲間は必要無い。だけど、強さ以外の力があるとするなら、それはアンタやクルイードが持っているものなのかもしれない。それは認めるわよ。事実私には出来なかった王の奪還をアンタ達はやってのけて、アンタは私を助けた」
別に頼んだ覚えはないけど、とサミュエルさんは付け加える。
「それでも借りが出来たのは事実だし、その借りを返す意味でアンタを私の子分にしてあげるわ。アンタは小賢しい頭を持ってるみたいだし、駆け引きとか雑用を私の代わりにやりなさい」
「………………」
借りを返される、つまりは恩を返された立場なのに手下に成り下がるという不思議な現象が起きていた。
謎過ぎる……。
「何よ、文句あんの?」
「いえ、まあ、芸人だったり子分だったり、この世界で生きていくのは大変だなぁと思いまして」
「当然でしょ。生きていく為にはどんな小さな事であれそれぞれ役割を果たさないと駄目なんだから。何もせずに守って貰えるほど世の中甘くないわ」
どこか論点が違う気がするが、わざわざ指摘してまた不機嫌にさせることもあるまい。
きっと気を張ってシビアな言動を人に見せる時よりも、今の姿が本来のサミュエルさんなのだろう。
だったら、そっちの方がいいじゃないか。
色々怖い思いもしたし危ない目にも遭ったけど、みんなが無事に帰って来て、サミュエルさんが力を貸してくれることになった。
それが結果であり、それが全てだ。
敵の恐ろしさも知った。
命を懸けるということの意味も知った。
それでも、まだまだ分からないことだらけのこの世界で何かを成し遂げようとしている。
目的も動機もはっきりしないのかもしれない。
セミリアさんの様に多くを背負ってはいないのかもしれない。
サミュエルさんの様に不屈の強さを持ってはいないのかもしれない。
だけど。
世界を救う二人の勇者と共に進もうとするこの意志は、少なくともこの世界では誇れることであって欲しいと、そう思った。
「ほら、そろそろ戻るわよ。ジジイの所に行くんでしょ、いい加減いつまでも待ってらんないわ。部屋で寝てる奴等を叩き起こしなさい」
ペシっと、僕の肩をはたいてサミュエルさんは歩き出す。
自然と先陣を切るサミュエルさんもやはり勇者気質なのだろうか。
ともあれ。
また一人、頼りになる仲間が出来た。
そして今日もまた冒険は続いてゆく。
虎のマスクをかぶっている大男を引き連れ、国王と一人の女性を背負って歩く道中は大層衆目を集めたものの地下牢獄を出た僕達はその足で城下町まで戻ると、どうにか王様を城に送り届けた。
とはいえセミリアさんがいるというだけで怪しまれたり止められたりすることもなく無事に城まで辿り着き、国王の不在や偽者騒動が広まらないようにあれこれ働いてくれていたルルクさん、スレイさんという二人の給仕に王様を預けるとひとまず退散し宿を取って今に至る。
宿屋の大部屋には僕、セミリアさん、みのり、春乃さん、高瀬さん、虎の人、そしてサミュエルさんの七人プラスジャックが揃っている。
サミュエルさんも町に戻ってくる頃には体の痺れも収まってきており、宿屋に入る前に寄ったお店(病院というものは存在しないらしく、ジャックによると薬屋らしい)で薬を買って飲んだおかげでほとんど元通りに動けるぐらいにはなっていた。
敢えて補足するならばセミリアさんが持っていた毒消しは痺れ薬の類には効かない物だったということぐらいか。
おかげで寝たふりも止めてくれたので幸いだったかといえば、そうとも言えないのが悲しいところだ。
だってすぐ喧嘩するんだもん……春乃さんと。
「でも良かったね。猫さんも入れてもらえて」
それぞれが荷物を置き、五つあるベッドやソファに腰を下ろしたタイミングで無駄にピリピリしたばかりの空気を分かっているのかいないのか、みのりがにこやかな顔を浮かべた。
まだそう云い張るのかと、僕にしてみれば呆れるしかない。
「まぁ……そもそも人間だからね」
「あの受付のオバさん頭堅いから断られると思ったわよ。ペット禁止、とか言ってさ」
僕のツッコミなど聞こえていないのか、春乃さんも同じ意見の様だ。
それを聞いていた虎の人はやはり渋い声で腕を組んだまま、ついでに一人だけ立ったまま悟った風である。
「余計な心配を掛けてすまないトラ、レディーマスター。なにぶんオイラは人とも魔物とも相容れない存在ゆえ……な」
「いや、だから……マスク取ればいいのでは」
しかもキャラ戻ってるし。
帰り道では一人称が『俺』になったり、語尾に『トラ』付けるの止めてたのに!
「まあ良いではないかコウヘイ。虎でも人でも私達の仲間であることに違いはあるまい」
「それは勿論そう思いますけど……」
なぜ僕側が空気読んでないみたいに思われねばならないのか。
毎度のことながら納得出来ないです。
「今回は皆よくやってくれた、本当にご苦労だったな。おかげで国王もサミュエルも無事で済んだ。そしてサミュエルが仲間になってくれたことは私達にとってとても意味のあることだ。それも含めて喜ばしいことだと思う」
「勘違いはやめなさいクルイード、私は仲間になったワケじゃないわ。協力してあげるだけよ、借りを返すためだけに、今回だけ」
「それでも構わないさ。私個人としても心強く思っているし、何より今回だけで十分さ。今回で全てを終わらせればよいだけの話だ、次回など必要無い」
「フン、口だけは一丁前な奴」
「まーた偉そうにしちゃって」
ボソリと、後ろで聞いていた春乃さんが呟いた。
悩むべくはサミュエルさんがそれを気にしない、或いは聞こえなかった振りをする、といった平和な性格をしていらっしゃらないことである。
「ちょっと、そこの召し使い! ナメたことばっか言ってたら張り倒すわよ」
「誰が召し使いよ! あんたこそふざけたことばっか言ってんじゃないわよ」
「召し使いでもないのになんでそんな格好してんのよ。召し使いになりたいわけ? それとも召し使いにすらなれないわけ?」
「ファッションよ! ただ露出してるだけで色気振り撒いてる気になってるあんたに服装のことで文句言われたくないし!」
だいぶ今更という感じではあるけど、確かにサミュエルさんの服装には露出が目立っている。
肘と膝に鉄製の防具を着けているだけで、太ももから下全部と、腕も、肩も、背中も腹も全部剥き出しだ。
そんなことはさておき、また凄い言い争いがあったものである。
文字で見たらどっちがどっちだかわかったものじゃない。
『相棒……気苦労倍増だな』
当の二人以外はこぞって呆れながらだったり『また始まった』といった感じで眺めているだけの残念な空気の中、ジャックが嘆息交じりに呟いた。
その気苦労を理解してくれる唯一の存在だと言えばその通りだけど、どこか他人事な感じのニュアンスなのが悲しいよ?
「そう思うならジャックもちょっとは言ってやってよ」
『俺ぁ聞き分けのねえじゃじゃ馬は苦手でね』
「得意なのは虎の人ぐらいなんだろうけど、基本的にみのりに被害が及ばない限り仲裁してくれないしなぁ」
『それはさておき相棒よ、あの半裸女も勇者なんだって?』
半裸女って……大概口の悪いネックレスだな君も。
「そう聞いたけど。ジャックから見てその、いわゆる強さ? とかはどうなの?」
『クルイードと比べりゃやや劣るようにも見えるが、それなりに鍛えてはいるな』
「へえ、町の人の信頼も厚いみたいだし凄い人なんだろうなとは思ってたけど、やっぱりそうなんだ」
セミリアさんもそうだが、一見すれば細身の女の子なのに剣術の達人だったり、国で一番強かったり、世界を救おうとしていたり、未だ存在すら夢か幻か現実かも定かではない世界の出来事とはいえ凄いものだ。
そのセミリアさんが勝てない魔王ってどんな化け物なのやら……。
そんなことを不安に思っている間にも口論は続いている。
「だからミュージシャンって何だって言ってんでしょうが! ワケ分からない芸人用語使うな!」
「なんでわかんないのよ! だったらいいわ、召し使いでも芸人でもない肩書きを用意してあげるから」
もはや口論の内容が斜め上に逸れていっている気しかしない中、不意に春乃さんは室内を見回した。
そして虎の人を見て一瞬止まったかと思うと、なぜか勝ち誇った様な顔でサミュエルさんに向き直る。
「みんな聞いて。このパーティーでのあたしの新しい立ち位置を思い付いたわ」
見つけた。のではなく思い付いただけらしい。
恐らくはほぼ全員が高瀬さんの溜め発言を待っている時と同じぐらい聞きたくなかったことだろう。
唯一サミュエルさんだけが『言ってみなさいよ』と挑発的に返しただけだったのに春乃さんはお構い無しに胸を張った。腰に手を当てて。
「あたしのジョブ、それは珍獣使いよ! 二匹の珍獣を操り敵を倒すわ」
「おいこらゴスロリ。二匹ってお前それ俺を入れただろ」
「そもそもオイラはお前さんに使われる覚えはないトラぞ。オイラの主はレディマスターだトラ」
「ちょっとあんた達! 何で乗っかってこないのよ! 後から入ってきて主力面してるベジータ女の肩持つわけ?」
「俺様はいつだって可愛い女の子の味方だがそれが何か?」
「つまりあたしの味方ってことじゃない」
「違えよ! 自惚れも甚だしいわ。大体髪の毛からしてお前の方がよっぽどベジータじゃねえか。金髪嫌いな俺は断然サミュたんの味方だ」
「誰がサミュたんよ! 気持ち悪い呼び方するな珍獣」
「えぇぇ!? 今俺味方宣言したのに!?」
この後もしばらく騒がしい夜が続いた。
○
翌朝を迎えた。
カーテン越しにも分かる太陽の光は、晴天を告げている。
正確な時間が分からないので今が朝なのか昼なのか、それとも昼前なのかは定かではないが、感覚的には結構長い時間寝ていたと思う。
ベッドが五つしか無かったためみのりと春乃さんが一つのベッドを使い、虎の人はソファーで十分だとか言い出したことで無事に割り振ったのだが、昨日の疲れが残っているのかまだ皆は寝ているみたいだ。
ただ一つ空っぽのベッドがある以外は、だけど。
「どこに行ったんだろう……ご飯でも食べに行ったのかな」
二つ隣のサミュエルさんが使っていたベッドを見て、思わず声が漏れる。
まさか逃げたなんてことはないよね……うん、大いにあり得る!
気付いてしまったからには放置するわけにもいかず、慌てて布団から出ると音を立てない様に気をつけつつ部屋を出た。
二階建ての二階にある僕達の大部屋だが、廊下に出たところでそれ以外にも部屋が並んでいるだけでこの階に共用スペースなどはない。
となると、一階に居るか出て行ったかということになる。
まずはそれを確認するべく僕はまっすぐに受付に向かった。
「おばさん、サミュエルさんって出て行ったりしませんでした?」
「サミュエル? ああ、セリムス様のことかい? だったら出て行ってはいないよ。あんた達の部屋の子は誰もここを通ってないさね」
「そうですか、ありがとうございます」
「なんだか兄ちゃん、いつも人を探しているねぇ」
なんて呆れられていたが、返事もせずに受付を後にする。
出て行っていない。となればセミリアさんの時と同様に屋上に居る可能性が高い。
逃げたわけじゃなかったことにまずは一安心しつつ二階に戻り梯子を登って屋上に出ると、そこにはどこか哀愁漂う後ろ姿があった。
「サミュエルさん」
その背中に声を掛ける。
特に驚いた風でもなくサミュエルさんはゆっくりと振り向いた。
「なんだ、アンタか」
横目で僕を見るその表情には意外さといったものは感じられない。
どちらかというと、どうでもいい、興味がない、呼ばれたから確認がてら振り向いただけ、そんな感じだ。
「どうしたんですか? こんなところで」
「別に。アンタ達がいつまでも寝てるから暇だっただけ。そういうアンタは何?」
「起きたらサミュエルさんが居なかったので探してたんですよ。もしかしたら逃げちゃったんじゃないかと心配で」
「逃げていいならそうするけど?」
「ま……まさかあの誇り高き勇者であられるサミュエルさんともあろうお方が命を救われた借りを忘れて逃げ出すなんてことが……」
「あー、もう分かったってのよ! 大袈裟に驚いた振りしてんじゃないわよ、ほんっと性格悪いガキなんだから。その借りが無かったらぶっ殺してるところよアンタ」
「ガキって……ほとんど歳変わらないでしょう」
「多分私の方が一つ二つ上でしょ。じゃあガキなのよ」
「そんな無茶苦茶な……」
童顔具合では良い勝負だと思うけどなぁ。
僕もよく言われるけどサミュエルさんも顔立ちはちょっと子供っぽいし。
「黙れ芸人A。略してA。生意気言ってたら蹴り飛ばすわよ」
「…………」
なんとなく分かって来た。
昨日は捕まって連れ去られたことや、気に入らない存在であろう僕達に保護されたことに苛立っていたのかと思ったけど、多分それは僕が思っているほど言動には影響していない。
この人にとってこれがごく普通の態度なのだ。
天然で単純に悪意無く、ただ口が悪いだけだと理解した。
そう思うと、罵られても嫌な感じもしなくなってくる不思議。
「大体いつまでグースカ寝てんのよ。暢気に寝てる場合かっての」
「昨日はみんな大変な思いをしましたから」
「あんな面子じゃ大変じゃないものも大変になるわよ。ほんっと身の程を弁えない奴ばっかり」
「まあ僕達は元々魔王だとか化け物だなんて居ない世界から来ていますからね。いきなり慣れろというのも難しいものです」
頑張ろうとはしてるんですけど、中々ね。と付け加える。
サミュエルさんは、なぜか隣に立つ僕に怪訝そうな顔を近付けてきた。
「私が疑問に思うのはそこなのよ。なんでアンタ達みたいな戦闘能力の欠片もない奴等がクルイードの仲間なんてやってんのよ」
そうか、サミュエルさんは事の顛末を知らないのか。
僕の口から話してしまっていいものかとも考えたが、聞かれた以上何らかの返答はせねばなるまい。
誤魔化そうにも僕はこの世界の事を知らなさ過ぎるし、何よりセミリアさんと敵対しているならまだしもそういうわけでもない。
そもそもサミュエルさんもノスルクさんの世話になっているのだから隠す必要もないだろう。
そんな判断の下、僕は説明した。
僕達がセミリアさんに会ってからここに来るまでの事を。
粗方話が終わると、黙って聞いていたサミュエルさんは呆れた様に、少し小馬鹿にした様に鼻で笑う。
「掲示板ねえ。仲間を集めに行くとは聞いてたけど、またぶっ飛んだことを考えるわクルイードといいジジイといい」
「まあ僕自身未だに理解出来ていないですからね。事実としてここに居るから無理矢理納得しているだけで」
「アンタの感想は別にどうだっていいけど、なんていうかクルイードらしいわね」
「どういうところがですか?」
「気持ちとか想いだとか、信頼、絆、志、使命感……そういう目に見えないものに力を見出だそうとするところよ」
「サミュエルさんは違うんですね」
「全く違うわね。誇りや矜持はあるけど、それはあくまで力に付随するものよ。私にとっての強さは純粋に敵を倒す能力」
「だから……セミリアさんと協力するのが嫌なんですね」
考え方に大きな違いがあるから相容れない。
命懸けで戦う二人の違った考え。
そのどちらが正しいなんて議題の答えは実際存在しないのかもしれないけど、誰かの代わりに多くを背負って血を流す覚悟はとても崇高なものなのだと思う。
これがゲームならば、設定ならば、当たり前の様に、戦う使命だなんて一言でプレイヤーの誰もが受け入れる。
だが現実の出来事として、例えば僕達の側の人間の誰が受け入れられるだろうかと言われたなら難しい問題なのだろう。
本来、少なくとも果たそうとしなければならない誰かがそれを放棄し、その人間に『あなたが命を賭して成し遂げなければ大勢が死にます』なんてことを言われているも同じなわけだ。
軍隊の代わりに戦ってこいと言われていることと、同じなのだ。
「奪われた何かを取り戻す為に必要なのは取り戻す為の術ではなく、再び奪われることを防ぐ強さなんだ」
ふと僕から街の方へと視線を戻したかと思うと、サミュエルさんは呟く様な声でそんなことを言った。
真意が分からずすぐにリアクションをすることが出来なかったが、それでも独り言みたく言葉は続く。
「昔そんな事を言われたことがあるわ。それが必ずしも正しい主張であるとは思わないけど、私はどちらかというとその考えに近い。クルイードよりはね」
「奪われることを防ぐ……強さ、ですか」
「目先の平和や眼前の人間の命も大事じゃないとは言わない。いくら私だって目の前に敵が居れば倒すし、人が襲われていたら助けることもあるわよ。だけど大局的に見れば、力を合わせて目先の勝利をもぎ取る事は強さとは言わない。そうしないと勝ち取れないような平和なんて、また別の誰かが奪いに来る。シェルムを倒したって、魔界にはいくらでも魔族はいる。魔族が居なくなったって同じ人間が敵になるかもしれない。実際何年も内戦が続いている国もあるし、いつ戦争が始まってもおかしくない関係の国もある。天界の連中だっていつまで不干渉でいるかなんて分からない。必要なのは奪われては奪い返す事を繰り返すことじゃない、奪われない強さなのよ」
魔界だとか天界だとか言われても僕にはピンと来ないが、意志の強さや志の高さは伺える力強い言葉だった。
どこか自分に言い聞かせる様に聞こえる程に。
「私には私の取り戻さなきゃいけないものがある。だから私には」
私には、と
そこまで言って少し間を置いた。
そして、一段と強い眼差しで遠くを見つめながら続きを口にする。
私には強さが必要なのよ。
サミュエルさんは、そう続けた。
その言葉を最後にサミュエルさんはその真剣な表情を崩し、
「なーんでアンタみたいな奴にこんな話してんだか。ま、仲間なんて必要ないし協力してあげるのも今回だけだけど、アンタの姑息な脳みそは少しは役に立つのかもね。実際不本意ながらそのおかげで私も助かったわけだし」
「姑息な脳みそ……それ褒めてるんですか?」
「さぁ? どっちにしてもあの召使いや気持ち悪い奴よりはマシなんじゃないの? 戦闘力なんて求めない使いっ走りとしてはね」
僕も含めて酷い言われ様だ。みのりやジャックに至っては忘れられてるし。
まあこの人なりのお褒めの言葉なのかもしれないけどさ。
「アンタ、名前なんだっけ?」
「何度も言いましたけど、樋口康平です」
答えたところで呼び名は芸人Aだからね。
「コウヘイ、ね」
どんな心変わりがあったのか、ここで初めてまともに名前を呼ばれた。
どこか認めてもらえた様な気がしてむず痒いものがある。
「コウヘイ。略してコウ」
略された。
僕の勘違いだったのかもしれない。
「私は私の強さを追い求める。だから仲間は必要無い。だけど、強さ以外の力があるとするなら、それはアンタやクルイードが持っているものなのかもしれない。それは認めるわよ。事実私には出来なかった王の奪還をアンタ達はやってのけて、アンタは私を助けた」
別に頼んだ覚えはないけど、とサミュエルさんは付け加える。
「それでも借りが出来たのは事実だし、その借りを返す意味でアンタを私の子分にしてあげるわ。アンタは小賢しい頭を持ってるみたいだし、駆け引きとか雑用を私の代わりにやりなさい」
「………………」
借りを返される、つまりは恩を返された立場なのに手下に成り下がるという不思議な現象が起きていた。
謎過ぎる……。
「何よ、文句あんの?」
「いえ、まあ、芸人だったり子分だったり、この世界で生きていくのは大変だなぁと思いまして」
「当然でしょ。生きていく為にはどんな小さな事であれそれぞれ役割を果たさないと駄目なんだから。何もせずに守って貰えるほど世の中甘くないわ」
どこか論点が違う気がするが、わざわざ指摘してまた不機嫌にさせることもあるまい。
きっと気を張ってシビアな言動を人に見せる時よりも、今の姿が本来のサミュエルさんなのだろう。
だったら、そっちの方がいいじゃないか。
色々怖い思いもしたし危ない目にも遭ったけど、みんなが無事に帰って来て、サミュエルさんが力を貸してくれることになった。
それが結果であり、それが全てだ。
敵の恐ろしさも知った。
命を懸けるということの意味も知った。
それでも、まだまだ分からないことだらけのこの世界で何かを成し遂げようとしている。
目的も動機もはっきりしないのかもしれない。
セミリアさんの様に多くを背負ってはいないのかもしれない。
サミュエルさんの様に不屈の強さを持ってはいないのかもしれない。
だけど。
世界を救う二人の勇者と共に進もうとするこの意志は、少なくともこの世界では誇れることであって欲しいと、そう思った。
「ほら、そろそろ戻るわよ。ジジイの所に行くんでしょ、いい加減いつまでも待ってらんないわ。部屋で寝てる奴等を叩き起こしなさい」
ペシっと、僕の肩をはたいてサミュエルさんは歩き出す。
自然と先陣を切るサミュエルさんもやはり勇者気質なのだろうか。
ともあれ。
また一人、頼りになる仲間が出来た。
そして今日もまた冒険は続いてゆく。
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